不起訴処分とは?起訴猶予と嫌疑不十分の違い、在留への影響
2026/10/07
不起訴処分とは、検察官が事件について公訴を提起しないと決める処分であり、証拠が足りない場合のほか、犯罪は認められても訴追の必要がないとして見送る起訴猶予(刑事訴訟法248条)も含まれる。
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この記事の要点
- 不起訴になれば刑事裁判は開かれず、有罪判決も出ないため、前科はつかない。
- 主な理由は嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予の3つで、意味も、その後の見通しも異なる。
- 起訴猶予は、性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況から検察官が判断する(刑事訴訟法248条)。示談や被害弁償は、犯罪後の情況として考慮され得る。
- 外国籍の方は、入管法24条4号リ・チなど有罪判決を前提とする退去強制事由には、不起訴では形式上当たらない。ただし、刑事処分を要件としない事由や在留審査での評価は別に問題となる。
不起訴処分とは何か?
不起訴処分とは、検察官が公訴(起訴)を提起しないと決める処分であり、これにより事件は裁判にかからないまま終了する。
刑事事件では、起訴するかどうかを決める権限は検察官にある(刑事訴訟法247条)。警察が捜査した事件は検察官に送られ、検察官が証拠を検討したうえで、起訴するか、不起訴にするかを決める。不起訴処分は、その結果の1つである。
不起訴になると、刑事裁判は開かれず、有罪・無罪の判決も出ない。勾留されていた場合は、通常、釈放される。
起訴猶予と嫌疑不十分は何が違うのか?
嫌疑不十分は有罪を立証する証拠が足りないという判断、起訴猶予は犯罪が認められることを前提に訴追を見送るという判断であり、前提となる評価が異なる。
検察の実務では、不起訴の理由は、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予などに区分されている。各区分の意味は、下の表のとおりである。
起訴猶予は、犯罪の成立に問題はないが、刑事訴訟法248条により訴追を必要としないと判断する場合である。条文は「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と定めている。
| 区分 | 意味 | 主な判断材料 |
|---|---|---|
| 嫌疑なし | 犯罪の嫌疑が認められない | 証拠関係、人違い、事実の不存在など |
| 嫌疑不十分 | 嫌疑はあるが、有罪を立証する証拠が足りない | 証拠の質と量、供述の信用性 |
| 起訴猶予 | 犯罪は認められるが、訴追を必要としない(刑事訴訟法248条) | 性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、示談や反省など犯罪後の情況 |
不起訴になれば前科はつくのか?
不起訴処分には有罪判決が伴わないため、前科はつかない。ただし、捜査を受けた記録は残り、不起訴処分は確定判決と同じ効力をもつものでもない。
前科とは、一般に有罪判決を受けた経歴をいう。不起訴処分では有罪判決が出ないため、前科にはならない。略式手続で罰金が科される場合は有罪の裁判を受けることになるため、この点で不起訴とは大きく異なる。
他方、捜査を受けた記録は残る。また、不起訴処分には確定判決のような効力はないため、公訴時効(刑事訴訟法250条)が完成するまでは、新たな証拠が出れば再び捜査される可能性が理論上は残る。
不起訴を目指すために何ができるのか?
不起訴かどうかは事案ごとに検察官が判断するため結果は約束できないが、取調べへの対応、示談、再発防止の環境づくりを早い段階から準備することは意味がある。
通訳を介して作成された供述調書は、内容を十分に確認し、誤りがあれば訂正を求める。署名押印は、納得できなければ拒むことができる(刑事訴訟法198条4項・5項)。外国籍の方は、供述内容や処分の結果が在留資格に影響し得るため、取調べの前に入管法上のリスクを理解しておくことが望ましい。
- 取調べでは自己の意思に反して供述する必要がなく(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)、何をどこまで述べるかを弁護人と相談して決める。
- 被害者のいる事件では、被害弁償や示談の可否を検討する(詳しくは示談の記事を参照)。
- 家族の監督、仕事や住居の安定、再発防止策などを資料にして検察官に伝える。
不起訴処分の結果はどのように知らされるのか?
被疑者は、請求すれば公訴を提起しない処分をした旨を告げてもらえる(刑事訴訟法259条)。理由を告げる規定は、被疑者については置かれていない。
告訴・告発をした人(被害者を含む)には処分が通知され(同法260条)、請求があれば理由が告げられる(同法261条)。
処分に不服がある被害者などは、検察審査会に審査の申立てをすることができ(検察審査会法2条2項、30条)、起訴を相当とする議決(起訴議決)がされた場合には起訴に至る制度もある(同法41条の6)。
外国籍の方は在留資格にどう影響するのか?
不起訴になれば、有罪判決を要件とする退去強制事由には形式上当たらないが、刑事処分を要件としない事由や、在留期間更新などの審査での評価は別に問題となる。
入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予を除く)と同号チ(薬物関係法令違反による有罪判決)は、いずれも刑に処せられたこと又は有罪判決を前提とするため、不起訴処分では形式上、該当しない。
他方、不法就労助長(同条3号の4)や資格外活動を専ら行う場合(同条4号イ)のように、条文上、刑事処分を要件としていない事由がある。これらは、不起訴になっても、入管が事実関係を調べて退去強制の手続を進める可能性がある。刑事手続と退去強制の手続は別であり、入管法63条1項は、刑事手続が行われている場合にも退去強制の手続を行えると定めている。
在留期間の更新は、「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」許可される(入管法21条3項)。捜査を受けた事実や処分の内容が、素行の評価に影響する可能性はある。不起訴であったことは、有利な事情として説明できる。
| 結果 | 主な見方 | 補足 |
|---|---|---|
| 不起訴 | 4号リ・チなど、刑に処せられたこと又は有罪判決を要件とする事由には形式上当たらない | 3号の4、4号イなど、刑事処分を要件としない事由は別途問題となる |
| 罰金 | 4号リは拘禁刑のみが対象。薬物関係の有罪判決(4号チ)は罰金でも対象 | 罪名ごとの確認が必要 |
| 拘禁刑(全部執行猶予) | 4号リは全部執行猶予を除外している | 4号チなど除外のない号がある |
| 拘禁刑(実刑) | 1年を超えると4号リの対象 | 在留特別許可は50条1項ただし書により厳しくなる |
弁護士に相談すべきタイミングはいつか?
不起訴を目指す活動は、検察官が処分を決める前でなければ意味が薄れるため、逮捕や取調べを受けた直後からの相談が望ましい。
逮捕・勾留されている場合は、勾留期間(最長20日、刑事訴訟法208条)の満了までに処分が決まることが多く、示談や資料の準備は早いほど選択肢が広がる。在宅事件でも、呼出しを受けた時点で相談する意味がある。
外国籍の方は、刑事の結果が在留資格に及ぼす影響を踏まえて方針を決める必要があるため、刑事弁護と入管手続の両方を扱う弁護士に相談することが重要である。弁護士を選ぶ際は、次の点が確認の目安になる。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区、弁護士松村大介・第一東京弁護士会)は、中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐し、中国律師も在籍している。外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱っている。
- 中国語で直接説明を受けられるか。
- 刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)の両方を扱っているか。
- 身体拘束されている場合に、早期に接見へ行ける体制か。
- 見通しとリスクを、断定せずに説明してくれるか。
よくある質問
不起訴処分になったら前科はつきますか。
つかない。前科は有罪判決を受けた経歴を指し、不起訴処分では有罪判決が出ないためである。ただし、捜査を受けた記録は残る。
起訴猶予は「罪を認められた」という意味ですか。
起訴猶予は、犯罪の成立を前提に、刑事訴訟法248条に基づいて訴追を見送る判断である。証拠が足りないことを理由とする嫌疑不十分とは性質が異なる。
不起訴になれば、在留資格の更新に問題はありませんか。
有罪判決を要件とする退去強制事由には形式上当たらないが、問題がないとは言い切れない。刑事処分を要件としない事由があり、在留期間の更新(入管法21条3項)でも捜査の経緯が考慮される可能性がある。個別の事情による。
不起訴処分の理由は教えてもらえますか。
被疑者本人は、請求により、公訴を提起しない処分をした旨を告げてもらえる(刑事訴訟法259条)。理由を告げる規定は被疑者については置かれていない。
家族が中国にいても、不起訴を目指す依頼はできますか。
できる。被疑者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる(刑事訴訟法30条2項)。来日できない場合でも、微信(WeChat)などで連絡を取りながら進めることが考えられる。
根拠条文・出典
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)247条、248条、250条、259条から261条まで、30条2項、198条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/)
- 検察審査会法(昭和23年法律第147号)2条、30条、41条の6(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)21条3項、24条(3号の4、4号イ・リ・チ)、50条1項、63条1項(e-Gov法令検索)
- 日本国憲法38条1項(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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