舟渡国際法律事務所

黙秘権とは何か 取調べでの使い方と外国籍の方の注意点

お問い合わせはこちら

黙秘権とは何か 取調べでの使い方と外国籍の方の注意点

黙秘権とは何か 取調べでの使い方と外国籍の方の注意点

2026/10/07

黙秘権とは、自己に不利益な供述を強要されない権利であり、憲法38条1項に定められ、取調べでも被疑者に対し、あらかじめ自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない(刑事訴訟法198条2項)。

総合ガイド:外国人の刑事事件ガイド(状況別の記事一覧)

この記事の要点

  • 黙秘権は憲法38条1項に基づく権利であり、取調べの前に告知される(刑訴198条2項)。
  • 逮捕・勾留中は取調べの場から退去できないが、供述するかどうかは自分で決められる(刑訴198条1項ただし書)。
  • 調書は内容を確認し、増減変更を申し立てることができ、署名押印は拒絶できる(刑訴198条4項・5項)。
  • 署名押印のある調書は、証拠として使われ得る(刑訴322条1項)。外国籍の方は、通訳の内容を十分に理解したうえで判断する必要がある。

黙秘権とは何か

黙秘権は、何人も自己に不利益な供述を強要されないという憲法上の権利であり、取調べの前に告知される。

憲法38条1項は、何人も自己に不利益な供述を強要されないと定める。これを受けて、刑事訴訟法は、取調べに際し、被疑者に対し、あらかじめ自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないと定める(刑訴198条2項)。

起訴後の公判でも、被告人は終始沈黙し、または個々の質問に対し供述を拒むことができる(刑訴311条1項)。黙秘権は、捜査から公判まで続く権利である。

黙秘権は、取調べでどのように使うのか

全部について黙秘する方法のほか、質問ごとに答えるかどうかを選ぶ方法、調書への署名だけを拒む方法がある。

逮捕または勾留されている被疑者は、取調べのための出頭を拒み、または出頭後に退去することはできない(刑訴198条1項ただし書)。ただし、これは取調べの場にいる義務であり、質問に答える義務ではない。供述をするかどうかは、被疑者が決められる。

どの方法をとるかは、事件の内容、証拠の状況、本人の認否により異なる。弁護人と接見したうえで決めることが望ましい。

取調べでの主な対応方法
対応内容留意点
全面的に黙秘する質問にすべて答えない弁護人と方針を確認してから決める
部分的に供述する答える事項と答えない事項を分ける供述した部分は調書に記録される
供述するが署名しない口頭では答えるが調書への署名は拒む署名拒絶は認められている(刑訴198条5項)
全面的に供述する事実関係を説明する内容を確認し、誤りは訂正を求める

黙秘すると不利になるのか

黙秘したこと自体が有罪の根拠になるわけではなく、有罪かどうかは証拠によって判断される。

自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合は、有罪とされない(刑訴319条2項)。強制や脅迫による自白、任意にされたものでない疑いのある自白は、証拠とすることができない(同条1項)。

一方、取調べで供述しなければ、自分の言い分が捜査機関に伝わらない面がある。説明すべき事情があるか、供述した内容が後の手続でどう使われ得るかを考え、弁護人と相談して決めることになる。結論は事案による。

調書に署名する前に、何を確認すべきか

署名押印のある調書は証拠となり得るため、内容を理解し、誤りがないかを確認してから判断する。

調書は、被疑者に閲覧させるか読み聞かせて、誤りがないかを問うことになっており、増減変更の申立てがあれば、その供述を調書に記載しなければならない(刑訴198条4項)。署名押印を求められても、拒絶できる(同条5項)。署名拒否の場合は、警察官がその旨を記載する(犯罪捜査規範181条3項)。

被告人の供述を録取した書面で署名または押印のあるものは、被告人に不利益な事実の承認を内容とするときなどに証拠とすることができる(刑訴322条1項)。署名の有無が、後の手続に影響し得る。

  • 自分が話したとおりの内容か
  • 話していないことが書かれていないか
  • 「はい」「いいえ」の意味が通訳で正確に伝わっているか
  • 分からない箇所は、理解できるまで確認したか

外国籍の方が黙秘権を使うときの注意点は何か

取調べの説明や調書の内容を理解できているかが前提であり、通訳の内容に疑問があるときは、署名や供述を急がないことが重要である。

日本語に通じない外国人の取調べは、原則として通訳人を介して行われる(犯罪捜査規範233条1項)。通訳された内容が理解できないときや、母語と違う意味に聞こえるときは、その場で確認する。

母国の制度とは仕組みが異なる場合があるが、日本の刑事手続では、憲法38条1項により供述を強要されない。在留資格への不安から、不本意な供述をしてしまう場面もあるため、早い段階で弁護人に在留面の見通しを確認することが有益である。

外国籍の方は、供述や黙秘によって在留資格にどう影響するのか

黙秘権の行使そのものが退去強制の理由とされているわけではないが、供述内容や刑事処分の結果が在留資格に関わる場合がある。

退去強制の対象となる外国人について刑事手続が行われているときは、入管当局は、収容しない場合でも退去強制の手続を進めることができる(入管法63条1項)。刑事手続と入管手続は、別の手続として進み得る。

有罪判決の内容によっては、24条4号リやチの対象となる。たとえば、1年を超える拘禁刑でも刑の全部の執行猶予を受ければリからは除かれるが、薬物関係の罪は有罪判決のみでチに当たり得る。入管手続での供述の扱いは、刑事手続と別に確認が必要である。

弁護士に相談すべきタイミングはいつか

最初の取調べの前に弁護人と接見し、黙秘するかどうかの方針を決められるのが望ましい。

取調べは逮捕直後から始まり、その内容は調書として残る。逮捕の連絡を受けたら、できるだけ早く弁護士に連絡し、接見を依頼するとよい。

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の弁護士 松村大介は、中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐し、中国律師も在籍している。外国人の刑事事件と入管手続を扱っている。

よくある質問

黙秘すると、検察官や裁判官の印象が悪くなりますか。

黙秘は憲法上の権利であり、黙秘したこと自体を有罪の根拠にはできない。ただし、事案によって供述した方がよい場面もあるため、弁護人と方針を相談して決める。

取調べで署名を求められたら、署名しなければなりませんか。

署名押印を求められても、拒絶できる(刑訴198条5項)。拒絶した場合は、その旨が記載される(犯罪捜査規範181条3項)。

通訳の内容が理解できないとき、どうすればよいですか。

その場で、分からないことを伝えて確認する。内容を理解できないまま供述や署名をしないことが大切である。弁護人にも、通訳に関する疑問を伝えておく。

黙秘していることは、在留資格の審査で不利に扱われますか。

黙秘権の行使は憲法上の権利であり、それだけを理由に不利に扱う旨の規定は、本稿で確認した入管法24条4号等には含まれていない。刑事処分の結果や供述の内容が在留に関わる場合があるため、弁護人に個別に確認する。

根拠条文・出典

  • 日本国憲法 第38条(e-Gov法令検索)
  • 刑事訴訟法 第198条・第311条・第319条・第322条(e-Gov法令検索)
  • 犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第181条・第233条(e-Gov法令検索)
  • 出入国管理及び難民認定法 第24条・第63条(e-Gov法令検索)

ご相談について

ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ

最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119

本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。

刑事事件ガイド一覧

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。