薬物事件で逮捕された外国籍の方はどうなるか(大麻・覚醒剤と退去強制)
2026/10/07
薬物事件で逮捕された外国籍の方は、刑事手続に加えて、有罪の判決を受けると罰金や執行猶予付きであっても退去強制事由に該当する(入管法第24条第4号チ)という在留上の問題にも直面する。このため、不起訴となるか有罪判決を受けるかが、在留の可否を分ける分岐点となる。
総合ガイド:外国人の刑事事件ガイド(状況別の記事一覧)
この記事の要点
- 大麻は麻薬に含まれ、所持も使用も処罰される(麻薬及び向精神薬取締法第66条第1項、第66条の2第1項)。
- 覚醒剤の所持・使用は10年以下の拘禁刑である(覚醒剤取締法第41条の2第1項、第41条の3第1項)。
- 薬物犯罪で有罪の判決を受けると、罰金や執行猶予でも退去強制事由となり、出国命令の対象にもならない(入管法第24条第4号チ、第24条の3第2号)。
- 不起訴や無罪となれば、この退去強制事由には当たらない。刑事手続と入管手続を併せて見通す必要がある。
大麻・覚醒剤の事件では、どのような罪に問われるのか
薬物の種類と行為(使用・所持・譲渡・輸入など)により罪名と法定刑が異なる。
覚醒剤は、所持・譲渡・譲受(覚醒剤取締法第14条、第41条の2第1項)や使用(同法第19条、第41条の3第1項第1号)が10年以下の拘禁刑とされ、営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑となる(第41条の2第2項)。輸入・輸出・製造は1年以上の有期拘禁刑である(第41条第1項)。
大麻は、近年の法改正により麻薬及び向精神薬取締法の「麻薬」に含まれる(同法第2条第1号、第1号の2)。所持は7年以下の拘禁刑(第66条第1項)、使用は7年以下の拘禁刑(第27条、第66条の2第1項)である。大麻草の栽培は、大麻草の栽培の規制に関する法律第24条第1項により1年以上10年以下の拘禁刑である。
| 薬物・行為 | 根拠条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 覚醒剤の使用 | 覚醒剤取締法第19条、第41条の3第1項第1号 | 10年以下の拘禁刑 |
| 覚醒剤の所持・譲渡・譲受 | 同法第14条、第41条の2第1項 | 10年以下の拘禁刑 |
| 覚醒剤の輸入・輸出・製造 | 同法第41条第1項 | 1年以上の有期拘禁刑 |
| 大麻の所持 | 麻薬及び向精神薬取締法第66条第1項 | 7年以下の拘禁刑 |
| 大麻の使用 | 同法第27条、第66条の2第1項 | 7年以下の拘禁刑 |
逮捕された後、勾留や接見はどうなるのか
逮捕後は48時間以内に送致、24時間以内に勾留請求と進み、勾留されると最大20日間(逮捕から最大23日間)の身体拘束となり得る。
送致は逮捕から48時間以内(刑事訴訟法第203条)、勾留請求は受取りから24時間以内(同法第205条)、勾留は10日で延長は最大10日(同法第208条)である。勾留状が発せられた事件では、国選弁護人を請求できる(同法第37条の2)。
薬物事件では、共犯関係や入手経路の捜査を理由に、弁護人以外との面会を禁じる接見禁止(同法第207条第1項、第81条)が付く場合がある。この場合でも、弁護人は立会人なしで接見できる(同法第39条第1項)。ご家族が面会できない時期も、弁護人を通じて状況の把握や伝言ができる。
処分はどうなり、刑の見通しはどう考えるのか
処分は不起訴、略式命令による罰金、公判請求などに分かれ、薬物の種類・量・前科の有無などの個別事情による。
検察官は、犯罪後の情況などにより訴追を必要としないときは起訴しない(刑事訴訟法第248条)こともできる。拘禁刑が言い渡される場合も、3年以下の拘禁刑であれば、情状により刑の全部の執行猶予が付く可能性がある(刑法第25条第1項)。
起訴後は、勾留されている被告人や弁護人が保釈を請求できる(刑事訴訟法第88条)。外国籍の方は在留への影響が大きいため、起訴前の段階で事実関係の確認と不起訴を求める活動を行うことが重要になる。
外国籍の方は在留資格にどう影響するのか
薬物犯罪で有罪の判決を受けると、罰金や執行猶予でも退去強制事由に該当し、出国命令も使えない。不起訴や無罪の場合は、この事由には当たらない。
入管法第24条第4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法などに違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由とする。刑の重さや執行猶予の有無は問われない。永住者を含め、在留資格を持つ人は対象となり得る。
このほか、薬物関係の法令に違反して刑に処せられたことのある者は、上陸を拒否される(第5条第1項第5号)。この規定には期間の定めがない。また、出国命令の対象者となるには、第24条第4号ハからヨまでに該当しないことが必要であり、同号チに該当する場合は利用できない(第24条の3第2号)。
| 刑事事件の結果 | 入管法上の主な影響 | 根拠 |
|---|---|---|
| 不起訴・無罪 | 第24条第4号チには当たらない(その他の事情は別に検討される) | 同号チは有罪の判決を要件とする |
| 罰金・全部執行猶予付きの有罪 | 退去強制事由に該当し得る。上陸拒否の対象にもなる | 第24条第4号チ、第5条第1項第5号 |
| 実刑(拘禁刑) | 第24条第4号チに該当し得る | 同号チ |
退去強制の手続はどのように進み、在留特別許可の余地はあるのか
刑事手続の途中でも退去強制の手続は進められ、条文上は在留特別許可(第50条第1項)の余地があるが、許否は個別事情による。
退去強制対象者に当たる外国人について刑事手続が行われている場合も、入管法は退去強制の手続を進められると定め、退去強制令書が発付されても、刑事手続が終了した後に執行するとしている(第63条第1項、第2項)。手続は、違反調査(第27条)、入国審査官の審査と認定(第45条、第47条)、口頭審理の請求(第48条、通知から3日以内)、法務大臣への異議の申出(第49条、同じく3日以内)と進む。
法務大臣は、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを考慮して、在留特別許可を判断する(第50条第5項)。同条第1項ただし書の例外に第4号チは挙げられておらず、条文上は申請の余地がある(1年を超える実刑を受けた場合は、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限られる)。薬物事犯がどう評価されるかは個別事情による。
取調べや家族の対応で注意すべきことは何か
黙秘権を適切に行使し、記憶と異なる供述調書に署名しないことが重要であり、証拠に関わる行動は控える。
被疑者には黙秘権があり(憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項)、供述調書の記載が誤っている場合は訂正を求めることができる(同法第198条第4項、第5項)。内容を理解できない書面には署名しないことが基本となる。
ご家族は、薬物や関連する物を自分の判断で処分しないよう注意が必要である。罪証隠滅のおそれは勾留の理由の一つであり(同法第60条第1項第2号、第207条第1項)、善意の行動が不利に働くことがある。迷ったときは、先に弁護士へ相談するのが望ましい。
弁護士に相談すべきタイミングはいつか
逮捕された直後、遅くとも勾留の判断が出るまでに相談するのが望ましい。起訴前の対応が在留の結論に直結し得るためである。
勾留前の逮捕直後は国選弁護人が付かないため、早期の接見には私選での選任が必要となる。弁護士を選ぶ際は、第1に通訳を介して十分に意思疎通できるか、第2に刑事手続と退去強制手続の両方を見通して説明してくれるか、第3に結果を断定せず見込みと不確実な点を分けて説明してくれるか、を確認するとよい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、弁護士の松村大介(第一東京弁護士会)が外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師も在籍)。
よくある質問
大麻は使っただけでも逮捕されるのか。
大麻は麻薬に含まれ、使用も処罰の対象である(麻薬及び向精神薬取締法第27条、第66条の2第1項)。逮捕されるかどうかは事案による。
初犯で執行猶予が付けば、在留資格は守られるのか。
守られるとは限らない。執行猶予付きでも有罪の判決を受ければ退去強制事由に該当する(入管法第24条第4号チ)。その後の判断は個別事情による。
不起訴になれば、在留資格に影響はないのか。
不起訴の場合は、有罪の判決を要件とする第24条第4号チには当たらない。ただし、更新などの審査で事情が考慮される場合がある。
家族が中国にいて、すぐに来日できない場合はどうすればよいか。
弁護人が本人と接見し、状況の説明や伝言を行える。ご家族とはメッセージアプリ等で連絡を取りながら進める方法がある。
根拠条文・出典
- 覚醒剤取締法第13条、第14条、第19条、第41条、第41条の2、第41条の3(e-Gov法令検索)
- 麻薬及び向精神薬取締法第2条、第27条、第28条、第66条、第66条の2(e-Gov法令検索)
- 大麻草の栽培の規制に関する法律第24条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法第5条、第24条、第24条の3、第27条、第45条、第47条から第50条まで、第63条(e-Gov法令検索)
- 刑事訴訟法第37条の2、第39条、第81条、第88条、第198条、第203条、第205条、第207条、第208条、第248条(e-Gov法令検索)
- 刑法第25条(e-Gov法令検索)、日本国憲法第38条第1項(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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