執行猶予とは?要件・期間・取消しと、在留資格への影響
2026/10/07
執行猶予とは、有罪の刑を言い渡す際に、情状により一定期間その刑の執行を猶予し、その期間を無事に経過すれば刑の言渡しが効力を失う制度である(刑法25条、27条1項)。
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この記事の要点
- 執行猶予が付き得るのは、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言渡しを受けた場合で、前科の状況などの要件を満たし、情状があるときである(刑法25条1項)。猶予期間は、裁判が確定した日から1年以上5年以下である。
- 執行猶予が付いても、有罪判決であることは変わらない。猶予期間中に再び罪を犯して拘禁刑の実刑を受けるなどすると、取り消される(同法26条)。
- 判決で刑の全部の執行猶予が言い渡されると、勾留状は効力を失い、釈放される(刑事訴訟法345条)。
- 外国籍の方では、入管法24条4号リは全部執行猶予を除外しているが、薬物関係の有罪判決(同号チ)など除外のない事由もあり、罪名によって結論が異なる。
執行猶予とは何か?
執行猶予とは、有罪の刑を言い渡しつつ、一定期間その執行を見送り、期間を無事に経過すれば刑の言渡しが効力を失う制度である。
拘禁刑は、刑事施設に拘置する刑である(刑法12条2項)。実刑の場合は刑事施設に収容されるが、執行猶予が付けば、猶予期間中、通常の生活を送ることができる。執行猶予は、刑の言渡しと同時に、判決でその言渡しをしなければならない(刑事訴訟法333条2項)。
ただし、執行猶予は無罪ではなく、有罪判決である。執行猶予が付いても、前科はつく。
執行猶予が付く要件は何か?
刑の全部の執行猶予は、言い渡される刑が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金で、前科の状況などの要件を満たし、情状があるときに付き得る。
刑法25条1項は、次の者が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、「情状により」、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予できると定める。前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者、又は、その執行を終わった日等から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者である。
情状として、犯罪の内容、被害の回復(示談など)、反省、家族による監督、再発防止の環境などが考慮され得る。事案ごとに判断される。
| 種類 | 対象となる刑 | 要点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 全部執行猶予(初度) | 3年以下の拘禁刑、50万円以下の罰金 | 前科の状況などの要件を満たし、情状があるとき。期間は1年以上5年以下 | 刑法25条1項 |
| 全部執行猶予(再度) | 2年以下の拘禁刑 | 前に全部の執行猶予を受けた者で、情状に特に酌量すべきものがあるとき。保護観察に付される | 刑法25条2項、25条の2第1項 |
| 一部執行猶予 | 3年以下の拘禁刑 | 再び犯罪をすることを防ぐために必要かつ相当と認められるとき。一部を実際に執行し、残りを猶予する | 刑法27条の2 |
猶予期間と保護観察はどうなるのか?
猶予期間は裁判が確定した日から1年以上5年以下で、その間、保護観察に付されることがある。
初度の全部執行猶予では、猶予期間中に保護観察に付すことができる。再度の全部執行猶予では、保護観察に付される(刑法25条の2第1項)。保護観察に付されると、遵守事項を守る必要があり、これを守らず情状が重いときは、執行猶予が取り消され得る(同法26条の2第2号)。
執行猶予はどのような場合に取り消されるのか?
執行猶予は、猶予期間内に再び罪を犯して拘禁刑の実刑を受けた場合などに取り消されなければならず、罰金に処せられた場合などには取り消されることがある。
取消しには、取り消さなければならない必要的取消し(刑法26条)と、取り消すことができる裁量的取消し(同法26条の2)がある。取り消されると、猶予されていた刑を執行されるほか、執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も取り消される(同法26条の3)。
取消しは、検察官の請求により、裁判所が決定する(刑事訴訟法349条)。裁判所は、猶予の言渡しを受けた者の意見を聴かなければならない(同法349条の2第1項)。
- 必要的取消し:猶予期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき(刑法26条1号)
- 必要的取消し:猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき(同条2号)
- 裁量的取消し:猶予期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき(同法26条の2第1号)
- 裁量的取消し:保護観察の遵守事項を守らず、その情状が重いとき(同条2号)
猶予期間が過ぎるとどうなるのか?
猶予が取り消されることなく猶予期間を経過すると、刑の言渡しは効力を失い、猶予された刑は執行されなくなる。
刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う(刑法27条1項)。ただし、猶予期間内に更に犯した罪で罰金以上の刑に当たるものについて公訴の提起がされているときは、結論が出るまで、刑の言渡しの効力が継続する(同条2項)。
外国籍の方は在留資格にどう影響するのか?
入管法24条4号リは全部執行猶予を除外しているが、薬物関係の有罪判決などは執行猶予でも退去強制の対象となり得るため、罪名によって結論が異なる。
同号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制の対象とするが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いている。一方、同号チ(薬物関係法令違反による有罪判決)は、有罪判決を受けたことが要件であり、罰金や執行猶予でも対象となる。同号ヘ(入管法73条の罪により拘禁刑)や、4号の2(一定の罪により拘禁刑)にも、執行猶予を除外する文言はない。
在留期間の更新は、相当の理由があるときに限り許可されるため(入管法21条3項)、執行猶予の期間中は、素行の面で慎重に審査される可能性がある。また、上陸拒否の事由として、1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者が挙げられており(同法5条1項4号)、執行猶予を除外する定めは条文上置かれていない。いったん出国して再入国する場合は、事前に確認が必要である。
| 判決の内容 | 主な見方 | 補足 |
|---|---|---|
| 拘禁刑(全部執行猶予) | 4号リは全部執行猶予を除外している | 4号チ(薬物)、ヘ(入管法73条の罪)などには除外の文言がない |
| 罰金 | 4号リは拘禁刑のみが対象 | 薬物関係の有罪判決(4号チ)は罰金でも対象 |
| 拘禁刑(実刑、1年を超える) | 4号リの対象 | 在留特別許可は50条1項ただし書により厳しくなる |
| 執行猶予が取り消された場合 | 取消し後の入管法上の扱いは、個別の検討が必要 | 取消しの原因となる再犯や違反を避けることが重要 |
弁護士に相談すべきタイミングはいつか?
執行猶予が付くかどうかは判決で決まるため、起訴された時点、できれば起訴前から弁護士に相談して、情状の準備を始めるのが望ましい。
示談や被害弁償、家族による監督、再発防止の環境づくり、在留面の見通しの確認は、判決までに整える必要がある。被告人の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任できるため(刑事訴訟法30条2項)、家族が中国にいる場合も、微信などで連絡を取って依頼できる。
弁護士を選ぶ際は、次の点が確認の目安になる。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区、弁護士松村大介・第一東京弁護士会)は、中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐し、中国律師も在籍している。外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱っている。
- 中国語で直接説明を受けられるか。
- 刑事事件と入管手続の両方を扱っているか。
- 判決の見通しと在留へのリスクを、断定せずに説明してくれるか。
よくある質問
執行猶予が付けば、前科はつきませんか。
前科はつく。執行猶予は、有罪の刑の執行を猶予する制度であり、無罪ではない。猶予期間を無事に経過すると、刑の言渡しは効力を失う(刑法27条1項)。
初めての事件であれば、執行猶予になりますか。
断定はできない。執行猶予が付き得るのは、3年以下の拘禁刑などの言渡しを受けた場合で、情状が必要である(刑法25条1項)。事案によっては実刑となる。
執行猶予が取り消されるとどうなりますか。
猶予されていた刑が執行され、拘禁刑の場合は刑事施設に収容される。執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も取り消される(刑法26条の3)。取消しは検察官の請求により、裁判所が決定する(刑事訴訟法349条)。
執行猶予の期間中でも、在留資格の更新はできますか。
更新は、相当の理由があるときに限り許可される(入管法21条3項)。執行猶予が付いたことのみで更新できなくなるわけではないが、素行の面で慎重に審査される可能性がある。個別の事情による。
家族が中国にいても、依頼できますか。
できる。被告人の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条2項)。微信などで連絡を取りながら進めることが考えられる。
根拠条文・出典
- 刑法(明治40年法律第45号)12条、25条、25条の2、26条、26条の2、26条の3、27条、27条の2(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/)
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)333条、345条、349条、349条の2、30条2項(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)5条1項4号、21条3項、24条(4号リ・チ・ヘ、4号の2)、50条1項(e-Gov法令検索)
- 刑法25条から27条の7まで(執行猶予に関する規定)(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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