入管法違反(不法残留・不法就労)で逮捕されたらどうなるか
2026/10/07
入管法違反(不法残留・不法就労)で逮捕された外国籍の方には、刑事手続と退去強制の手続(入管手続)が並行して、又は連続して進む。不法残留は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(入管法第70条第1項第5号)、資格外活動は同条第1項第4号又は第73条第1号により処罰される。
総合ガイド:外国人の刑事事件ガイド(状況別の記事一覧)
この記事の要点
- 不法残留(在留期間の経過)は、入管法第70条第1項第5号により処罰され、同時に退去強制事由(第24条第4号ロ)となる。
- 事案によっては、逮捕後に刑事手続へ進まず、収容令書により入国警備官へ引き渡される場合がある(第65条)。
- 刑事手続の途中でも退去強制の手続は進められ、令書の執行は刑事手続の終了後となる(第63条)。
- 出国命令や在留特別許可の可否は、本人の事情と手続の進み方によって変わるため、早い段階の検討が重要である。
入管法違反ではどのような罪に問われるのか
不法残留と専ら行う資格外活動は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、それ以外の資格外活動は1年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金である。
刑事罰の対象は、行為の内容によって条文が分かれる。いずれも拘禁刑と罰金を併せて科すことができる。
| 行為 | 根拠条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 不法入国、不法上陸 | 入管法第70条第1項第1号、第2号 | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科 |
| 不法残留(在留期間の経過) | 同条第1項第5号 | 同上 |
| 資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる | 同条第1項第4号 | 同上 |
| それ以外の資格外活動(報酬を伴う活動) | 第73条第1号 | 1年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又は併科 |
逮捕後、刑事手続と入管手続はどう関わるのか
事案によっては、入管法違反の被疑者が刑事手続ではなく、入国警備官への引渡しにより入管手続へ移ることがある。
司法警察員は、第70条の罪の被疑者を逮捕した場合に、収容令書が発付され、他に罪を犯した嫌疑がないときは、書類・証拠物とともに被疑者を入国警備官に引き渡すことができる(入管法第65条第1項)。この場合は、被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に、引渡し又は釈放の手続をとる(同条第2項)。
他に嫌疑がある場合などは、通常の刑事手続(送致、勾留請求、勾留)が進む(刑事訴訟法第203条、第205条、第208条)。刑事手続が行われている場合でも、入管法は退去強制の手続を進められるとし、令書の執行は刑事手続の終了後としている(第63条第1項、第2項)。
刑事処分はどのようになるのか
処分は不起訴、略式命令による罰金、公判請求などに分かれ、結論は個別の事情による。
検察官は、犯罪の軽重や犯罪後の情況により起訴しないことができ(刑事訴訟法第248条)、起訴する場合も略式命令による罰金で終わることがある(同法第461条)。拘禁刑が言い渡される場合も、3年以下であれば情状により全部の執行猶予が付く可能性がある(刑法第25条第1項)。
なお、不法残留や資格外活動の事案では、刑事処分の結果にかかわらず、退去強制の手続の中で在留の可否が判断される。
外国籍の方は在留資格にどう影響するのか
不法残留と、専ら行う資格外活動は、刑事処分とは別に退去強制事由に当たり、資格外活動では在留資格の取消しもあり得る。
在留期間を経過して残留する者(入管法第24条第4号ロ)と、資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者(同号イ)は、退去強制の対象となる。第73条の罪により拘禁刑に処せられた者も同様である(同号ヘ)。また、本来の活動を行わず他の活動を行って在留している場合は、在留資格を取り消されることがある(第22条の4第1項第5号)。
退去強制により出国した場合は、一定期間、上陸を拒否される(第5条第1項第9号)。期間は、出国命令による出国が1年、退去強制が5年又は10年である。
- 出国命令により出国した場合:出国した日から1年(第5条第1項第9号ホ)
- 初めての退去強制で、過去に退去強制や出国命令の経験がない場合:退去の日から5年(同号ハ)
- 上記以外の退去強制:退去の日から10年(同号ニ)
出国命令の対象になるのはどのような場合か
不法残留の場合は、出国命令の要件を満たせば、退去強制ではなく出国命令となる余地がある。
出国命令の対象となるのは、不法残留者などのうち、法定の要件をすべて満たす者である(入管法第24条の3)。第1に、違反調査の開始前に自ら出入国在留管理官署に出頭した場合(第1号イ)、又は調査の開始後、認定の通知を受ける前に速やかに出国する意思を表明した場合(第1号ロ)である。
第2に、不法就労助長や偽造在留カード関係、薬物犯罪などの退去強制事由に該当しないこと、一定の罪で拘禁刑に処せられていないこと、過去に退去強制や出国命令を受けていないこと、速やかな出国が確実と見込まれることも必要である(第2号から第5号)。要件の当否は個別に判断される。
在留特別許可を求める余地はあるのか
退去強制対象者であっても、法務大臣が特別に在留を許可する在留特別許可(入管法第50条第1項)の余地があり、許否は個別事情による。
許可の判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などが考慮される(第50条第5項)。申請は、認定に服するか、判定や異議の裁決を受けた後でなければできず(同条第4項)、退去強制令書が発付された後はできない(同条第3項)。
口頭審理の請求(第48条)と異議の申出(第49条)は、通知を受けた日から3日以内に行う必要がある。期限があるため、認定に服するか争うかを決める前に、早期に弁護士へ相談する必要がある。
収容されたらどうなるのか、解放される方法はあるのか
収容令書による収容は30日以内(延長は30日まで)で、収容に代わる監理措置や仮放免が認められる場合がある。
収容令書により収容できる期間は30日以内で、やむを得ない事由があれば30日を限り延長できる(入管法第41条第1項)。警察の留置施設に留置される場合もある(同条第3項)。主任審査官は、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、収容による不利益の程度などを考慮して、収容せず監理措置に付す決定をすることがある(第44条の2第1項)。
収容されている本人又はその配偶者、直系親族、兄弟姉妹などは、健康上、人道上の理由により一時的な解除を求める仮放免を請求できる(第54条第1項、第2項)。
弁護士に相談すべきタイミングはいつか
逮捕された直後、遅くとも入管手続の通知を受ける前に相談するのが望ましい。期限の短い手続が含まれるためである。
弁護人は、身体を拘束された被疑者と立会人なしで接見できる(刑事訴訟法第39条第1項)。弁護士を選ぶ際は、第1に通訳を介して十分に意思疎通できるか、第2に刑事手続と入管手続の両方を見通して説明してくれるか、第3に結果を断定せず見込みと不確実な点を分けて説明してくれるか、を確認するとよい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、弁護士の松村大介(第一東京弁護士会)が外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師も在籍)。
よくある質問
不法残留で逮捕されても、必ず起訴されるのか。
必ずではない。入国警備官への引渡しにより入管手続へ移る場合や、不起訴となる場合もある。事案による。
自分から出頭すれば、逮捕されないのか。
出頭した事実は、出国命令の要件に関わる(入管法第24条の3第1号イ)。ただし、逮捕されないことまで保証するものではない。
日本人と結婚していれば、退去強制にはならないのか。
家族関係は在留特別許可の判断で考慮される事情の一つである(第50条第5項)が、結論は個別事情による。
家族が中国にいて来日できない場合、どうすればよいか。
弁護人が本人と接見し、状況の説明や伝言を行える。ご家族とはメッセージアプリ等で連絡を取りながら進める方法がある。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法第5条、第22条の4、第24条、第24条の3(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法第41条、第44条の2、第48条から第50条まで、第54条、第63条、第65条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法第70条、第73条(e-Gov法令検索)
- 刑事訴訟法第39条、第203条、第205条、第208条、第248条、第461条(e-Gov法令検索)
- 刑法第25条(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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