前科がつくと在留期間更新・永住はどうなる?罰金・執行猶予・実刑の別
2026/10/07
前科がつくと在留期間の更新や永住許可の審査で素行が問われ、刑の種類(罰金・全部の執行猶予・実刑)によっては退去強制や上陸拒否の問題にもなるが、結論は事案ごとに異なる(入管法21条3項・22条2項・24条4号)。
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この記事の要点
- 前科とは、一般に有罪判決を受けた経歴をいい、略式命令による罰金も含まれる。不起訴は前科ではない
- 更新・永住は、いずれも法務大臣が相当と認める場合に限って許可され(入管法21条3項・22条2項)、素行が考慮される
- 1年を超える拘禁刑でも、全部の執行猶予が付けば24条4号リの対象外だが、薬物関係の有罪判決などは罰金・執行猶予でも対象となる
- 実刑では、退去強制のほか、服役中の在留資格や出国後の上陸拒否も問題になる
- 刑の言渡しが効力を失った後の扱いは、個別事情による
前科とは何か、不起訴や略式命令の罰金はどう扱われるのか
前科は法律上の定義語ではなく、一般に、有罪の裁判を受けた経歴をいう。罰金も有罪であり、略式命令による罰金を含む。
検察官が起訴しない処分(不起訴。刑訴248条の起訴猶予を含む)には、有罪の判決は伴わないため、前科にはならない。ただし、捜査を受けた記録は残り得る。
他方、起訴されて有罪が確定した場合は、罰金・全部の執行猶予付き・実刑のいずれでも前科となる。略式命令(刑訴461条)は、書面審理で100万円以下の罰金または科料を科す手続だが、有罪である点は変わらない。
外国籍の方は、有罪判決で在留資格にどう影響するのか
有罪判決の影響は、刑の種類と罪名によって異なる。罰金でも退去強制事由に当たる場合があり、執行猶予が付いても当たる場合がある。
退去強制事由は入管法24条各号に定められている。4号リは、1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とするが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれる。他方、4号チは、薬物関係の法令に違反して有罪の判決を受けた者を対象とし、条文上、刑の種類による限定がない。4号ホは、入管法74条から74条の6の3まで等の罪により刑に処せられた者、4号ニは旅券法の一定の罪により刑に処せられた者を対象とする。
また、4号の2は、別表第一の在留資格(就労系・留学・家族滞在など)で在留する者が、窃盗・傷害・詐欺など刑法の一定の罪等により拘禁刑に処せられた場合を対象とし、全部の執行猶予を除く旨の定めがない。永住者・日本人の配偶者等などの別表第二の在留資格は、この4号の2の対象ではない。
| 刑の種類 | 退去強制(24条4号) | 更新・永住 | 上陸拒否(5条1項) |
|---|---|---|---|
| 罰金 | リの対象外。ただしチ(薬物)、ホ、ニに該当する罪は対象 | 素行の審査で不利に扱われ得る | 薬物関係の刑は5号に該当 |
| 全部の執行猶予 | リは対象外。チ、ホ、4号の2などは対象になり得る | 素行の審査で不利に扱われ得る | 4号は条文上、執行猶予を除かない |
| 実刑(1年以下) | リの対象外。ただし4号の2などは対象になり得る | 影響が大きい | 1年以上の拘禁刑は4号に該当 |
| 実刑(1年を超える) | リの対象 | 影響が大きい | 同上 |
在留期間の更新では、有罪判決はどのように見られるのか
在留期間の更新は、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるため(入管法21条3項)、素行も審査の対象となる。
出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(最終改正令和8年6月)は、素行について、善良であることが前提で、良好でない場合は消極的な要素として評価されると定めている。具体例として、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為や、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過できない行為は、初犯であっても素行が不良と判断されるとしている。
このため、罰金であっても、罪名や事案によって評価は異なる。更新申請の時期に判決が重なる場合は、満了日と判決の時期を踏まえた対応が必要となる。
永住許可では、前科はどのように影響するのか
永住許可は、素行が善良であること等の要件を満たし、永住が日本国の利益に合すると法務大臣が認めたときに限られ(入管法22条2項)、罰金刑や拘禁刑を受けていることは重く見られる。
入管庁の「永住許可に関するガイドライン」(令和8年2月24日改訂)は、永住が日本国の利益に合すると認められるかの考慮要素として、「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと」を挙げる。令和8年10月1日付で改定された同ガイドラインも、過去に拘禁刑や罰金刑を受けた者は原則として消極評価をするとしている。
永住者であっても、24条の退去強制事由に当たれば退去強制の対象となる。有罪判決が見込まれる場合は、永住申請の時期も含め、事前に検討することが重要である。
実刑になった場合、在留資格はどうなるのか
実刑では、服役中の在留資格の維持、退去強制、出国後の上陸拒否が問題になる。
別表第一の在留資格で在留する者が、その資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないで在留しているときは、正当な理由がある場合を除き、在留資格の取消事由となる(入管法22条の4第1項6号)。服役や勾留で活動できない場合がどう扱われるかは、個別事情による。
退去強制事由に当たる外国人は、刑の執行中であっても退去強制の手続の対象となり得て、退去強制令書は、刑事手続が終了した後に執行するのが原則である(63条)。在留特別許可は、1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部の執行猶予を除く)の場合、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限られる(50条1項ただし書)。
さらに、1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者は、上陸が拒否される(5条1項4号)ため、出国後に再入国できない場合がある。
前科はいつまで影響するのか
刑の言渡しには法律上の消滅の仕組みがあるが、入管での扱いまで直ちに変わるとは限らない。
全部の執行猶予が取り消されずに猶予期間を経過すると、刑の言渡しは効力を失う(刑法27条1項)。拘禁刑以上の刑の執行を終えた後、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき、罰金以下の刑の執行を終えた後、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、刑の言渡しは効力を失う(34条の2第1項)。
もっとも、入管の審査で過去の事実がまったく考慮されなくなると断定することはできない。個別の事情を確認する必要がある。
弁護士に相談すべきタイミングはいつか
刑事事件の処分や判決が決まる前に、在留への影響を含めて相談しておくのが望ましい。
罰金か執行猶予か、猶予期間や刑の長さが1年を超えるか否かで、在留の見通しが変わるため、刑事弁護の段階から入管法の観点を踏まえる必要がある。弁護士を選ぶときは、第1に外国人の刑事事件と入管の双方を扱っているか、第2に母語で相談できるか、第3に刑の種類ごとの在留への影響を説明してくれるか、を確認するとよい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の弁護士松村大介(第一東京弁護士会所属・登録番号59077)は、外国人の刑事事件と入管(在留特別許可・退去強制)を取り扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師が在籍)。微信IDはmatsumura1119である。
よくある質問
罰金だけなら、在留期間の更新は問題なくできるのか。
罰金は24条4号リの対象外だが、素行の審査で不利に扱われ得る。罪名によっては退去強制事由に当たる場合もあり、個別事情による。
執行猶予中でも、在留期間の更新を申請できるのか。
申請自体はできる。ただし、素行が審査される(入管法21条3項)ため、結果は個別事情による。
不起訴になった場合、在留への影響はあるのか。
有罪の判決を受けていないため、24条4号リ・チ等の有罪を前提とする退去強制事由には当たらない。ただし、不法就労助長など、行為自体が事由となる規定(24条3号の4等)もある。
永住者が罰金を科された場合、永住は取り消されるのか。
刑事処分によって直ちに永住が取り消される制度は、現行の入管法22条の4にはない。ただし、24条の退去強制事由に当たれば、永住者でも退去強制の対象となる。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第5条第1項・第21条第3項・第22条第2項・第22条の4・第24条・第50条・第63条(e-Gov法令検索)
- 刑法(明治40年法律第45号)第27条・第34条の2(e-Gov法令検索)
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第248条・第461条(e-Gov法令検索)
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(最終改正令和8年6月)・「永住許可に関するガイドライン」(令和8年2月24日改訂、同年10月1日改定)(出入国在留管理庁ウェブサイト)
ご相談について
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最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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