略式命令・罰金とは?同意する前に確認すべき点
2026/10/07
略式命令とは、簡易裁判所が検察官の請求により、公判を開かずに書面審理だけで100万円以下の罰金または科料を科す手続であり(刑事訴訟法第461条)、被疑者が書面で同意することを前提とする(同法第461条の2)。
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この記事の要点
- 略式手続は被疑者本人の同意が前提であり、同意書に署名する前に、通常の裁判を受けられることを理解しておく必要がある。
- 略式命令は、告知から14日以内に正式裁判を請求しなければ確定し、確定判決と同一の効力を生じる(同法第465条第1項・第470条)。
- 罰金のみで終わる場合、入管法第24条第4号の2・第4号リの対象(いずれも拘禁刑が要件)には通常当たらないが、薬物事犯などは罰金でも退去強制事由になる(同条第4号チ)。
- 罰金であっても、在留期間の更新や永住許可の審査で考慮される場合があり、個別事情によって結論が分かれる。
- 事実に争いがある事件では、略式手続に同意すると有罪が確定するため、同意前の相談が重要である。
略式命令とはどのような手続か?
略式命令は、法廷での審理を行わず、検察官が提出した書類をもとに簡易裁判所が罰金または科料を命じる、簡易な裁判手続である。
根拠は刑事訴訟法第461条である。簡易裁判所は、検察官の請求により、公判前に、略式命令で100万円以下の罰金または科料を科すことができ、罰金について刑の執行猶予を付けることもできる(同条第2項、刑法第25条)。
手続は、検察官が起訴と同時に書面で略式命令を請求することで始まる(刑事訴訟法第462条第1項)。裁判所が略式命令をすることが相当でないと考えたときは、通常の公判手続に移る(同法第463条第1項)。
略式命令では拘禁刑を科すことはできない。どの事件を略式にするかは、検察官の判断による。
略式手続に同意する前に何を確認すべきか?
同意は被疑者の自由な意思で行うものであり、検察官は、通常の裁判を受けられることを告げたうえで、異議がないかを確かめなければならない(同法第461条の2第1項)。
被疑者が略式手続に異議がないときは、書面でその旨を明らかにする必要がある(同条第2項)。この書面への署名は、公開の法廷で争う機会を自分で手放す意味を持つ。
とくに日本語の読み書きに不安がある場合は、内容を十分に理解しないまま署名してしまうおそれがある。署名の前に、通訳を介して説明を受けることが重要である。
- 第1に、自分の行為が罪名どおりの事実か(認める内容に誤りがないか)を確認する。
- 第2に、罰金の金額と納付期限、納付できない場合の扱いを確認する。
- 第3に、前科として残ることと、在留資格・ビザ更新への影響を確認する。
- 第4に、通常の裁判で争う余地(故意の有無、正当防衛など)がないかを確認する。
- 第5に、被害者がいる事件では、示談や被害弁償の状況を確認する。
略式命令を受けた後に争うことはできるか?
略式命令を受けた者は、告知を受けた日から14日以内であれば、正式裁判を請求できる(刑事訴訟法第465条第1項)。
請求は、略式命令をした裁判所に書面で行う(同条第2項)。正式裁判が請求されると、通常の公判手続で審理される。
この期間を過ぎるか、請求を取り下げると、略式命令は確定判決と同一の効力を生じる(同法第470条)。確定後に内容を争うことは、原則としてできない。
このため、略式命令を受け取った日付を確認し、14日の期限を管理することが重要である。
罰金を払えないとどうなるか?
罰金は検察官の命令で執行され、完納できない場合は、労役場に留置される場合がある。
罰金・科料の裁判は、検察官の命令によって執行される(同法第490条第1項)。罰金は1万円以上とされている(刑法第15条)。
罰金を完納できない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置される(同法第18条第1項)。留置の期間は、罰金の言渡しとともに定められる(同条第4項)。
どの罪で略式手続が使われるのか?
略式命令の対象は、法定刑に罰金または科料がある罪に限られ、罰金のない罪では選択できない。
略式命令で科せるのは罰金・科料だけであるため、法定刑に罰金がない罪は、略式手続の対象にならない。以下は代表例である。実際に略式になるかどうかは、事案の内容と検察官の判断による。
| 罪名・根拠条文 | 法定刑に罰金があるか | 略式命令の可能性 |
|---|---|---|
| 窃盗(刑法第235条) | あり(50万円以下) | 事案による |
| 傷害(刑法第204条) | あり(50万円以下) | 事案による |
| 暴行(刑法第208条) | あり(30万円以下) | 事案による |
| 詐欺(刑法第246条) | なし(拘禁刑のみ) | 選択できない |
| 酒気帯び運転(道路交通法第117条の2の2第1項第3号) | あり(50万円以下) | 事案による |
| 危険運転致死傷(自動車運転死傷行為処罰法第2条) | なし(拘禁刑のみ) | 選択できない |
外国籍の方は略式命令・罰金で在留資格にどう影響するか?
罰金のみで終わる場合、入管法第24条第4号の2・第4号リ(いずれも拘禁刑が要件)には通常当たらないが、罪名によっては罰金でも退去強制事由になるため、個別の確認が必要である。
入管法第24条第4号リは、1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部執行猶予を除く)を対象とし、同条第4号の2は、別表第一の在留資格の者が、刑法の窃盗・傷害・詐欺等の罪などで拘禁刑に処せられた場合を対象とする。いずれも要件は拘禁刑であり、罰金は含まれない。
一方、同条第4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法などの違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、刑の種類を限定していない。同条第4号ニ(旅券法違反)・第4号ホ(入管法第74条等の罪)は「刑に処せられた者」とされ、罰金も含まれる。
退去強制事由に当たらない場合でも、在留期間の更新は「適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に限り許可され(入管法第21条第3項)、永住許可では素行が善良であることが要件となる(同法第22条第2項第1号)。罰金の事実は、これらの審査で考慮される場合がある。
なお、刑事手続が続いている間でも、退去強制対象者に当たる場合は退去強制の手続を進めることができる(同法第63条第1項)。
| 結果 | 第4号の2(別表第一の者) | 第4号リ | 第4号チ(薬物) |
|---|---|---|---|
| 不起訴 | 当たらない | 当たらない | 当たらない |
| 罰金(一般の罪) | 当たらない | 当たらない | 当たらない |
| 罰金(薬物関係の罪) | 当たらない | 当たらない | 当たる |
| 全部執行猶予付き拘禁刑 | 条文上、除外規定がない | 除外される | 薬物関係なら当たる |
| 拘禁刑(1年以下の実刑) | 対象罪名なら当たる | 当たらない | 薬物関係なら当たる |
| 拘禁刑(1年超の実刑) | 対象罪名なら当たる | 当たる | 薬物関係なら当たる |
弁護士に相談すべきタイミングはいつか?
略式手続に同意する書面に署名する前が最も重要であり、署名後でも、略式命令の告知から14日以内であれば正式裁判を請求できる。
略式手続では、同意の時点と、告知から14日の期間が、結果を左右する分かれ目になる。内容に納得できない場合や、在留への影響が不安な場合は、署名の前に相談することが望ましい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、弁護士の松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)が外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱っている。中国語での相談に対応しており(専属通訳が常駐)、中国律師も在籍している。微信ID matsumura1119からも連絡できる。
よくある質問
略式命令の罰金を払うと、在留資格は取り消されるか?
一般の罪で罰金のみの場合、入管法第24条第4号の2・第4号リの対象には通常当たらない。ただし、薬物関係の罪は罰金でも第4号チに当たり、更新や永住の審査で考慮される場合もある。個別事情による。
通訳なしで略式手続の同意書に署名してしまった場合はどうなるか?
署名後でも、略式命令の告知から14日以内であれば、正式裁判を請求できる(刑事訴訟法第465条第1項)。ただし、期間を過ぎると確定するため、早急に確認する必要がある。
略式命令は前科になるか?
略式命令は、確定すると確定判決と同一の効力を生じる(同法第470条)。罰金刑であっても、有罪の裁判として確定する点に注意が必要である。
家族が中国にいて来日できない場合、どう相談すればよいか?
家族が独立して弁護人を選任することができる(同法第30条第2項)。当事務所では、中国語(専属通訳が常駐)で対応しており、微信ID matsumura1119でも相談できる。
根拠条文・出典
- 刑事訴訟法第461条・第461条の2・第462条・第463条・第465条・第470条・第490条(e-Gov法令検索)
- 刑法第15条・第18条・第25条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法第21条第3項・第22条第2項・第24条第4号チ・ニ・ホ・ヘ・リ・第4号の2・第63条(e-Gov法令検索)
- 刑法第204条・第208条・第235条・第246条(e-Gov法令検索)
- 道路交通法第117条の2の2、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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