逮捕は、「在留」の危機でもある
退去強制・在留特別許可・監理措置の基礎知識
退去強制(強制送還)とは|入管法24条
退去強制とは、入管法24条が定める事由に当たる外国人を、日本から強制的に退去させる手続です。主な退去強制事由には、不法入国・不法上陸、不法残留(オーバーステイ)、資格外活動のほか、一定の刑罰法令違反があります。刑罰法令違反については罪名によって扱いが大きく異なり、通常の犯罪ではおおむね1年を超える実刑が基準となる一方、薬物犯罪や売春関係の犯罪などでは、執行猶予付きの判決や刑の軽重を問わず退去強制事由に当たり得ます。刑事事件で逮捕・起訴されたことをきっかけに、刑事手続とは別に、入管による違反調査が始まることがあります。
退去強制手続の流れと、各段階での争い方
① 違反調査▶② 収容 or
監理措置▶③ 違反審査▶④ 口頭審理▶⑤ 異議の申出▶⑥ 裁決
(在特 or 退令)
手続は、①入国警備官による違反調査、②収容または監理措置、③入国審査官による違反審査、④特別審理官による口頭審理、⑤法務大臣への異議の申出、⑥裁決、という段階を踏みます。重要なのは、各段階が「争う機会」だということです。違反審査・口頭審理では退去強制事由の該当性そのものを争うことができ、異議の申出の段階では在留特別許可を求める主張・立証を尽くすことができます。どの段階で何を主張し、どんな資料を出すかで結論が変わり得るため、早い段階から弁護士が関与する意味は大きいのです。裁決で在留特別許可が認められなければ退去強制令書が発付されますが、その後も取消訴訟などの司法的な争い方が残されています。
出国命令制度との違い|上陸拒否期間にも差
出国命令=1年退去強制=原則5年再度の退去強制等=10年薬物犯罪・1年超の実刑=期間の定めなし
不法残留のみで、自ら入管に出頭し、速やかな出国意思があるなど一定の要件を満たす場合には、収容されずに出国できる出国命令制度があります。出国命令で出国した場合の上陸拒否期間は1年であるのに対し、退去強制された場合は原則5年(過去にも退去強制歴等がある場合は10年)です。さらに、麻薬等の薬物犯罪や1年を超える実刑判決を受けた場合には、期間の定めなく上陸が拒否され得る類型があることは、あまり知られていません。「どの手続で日本を出るか」が、将来もう一度日本に入国できるかを左右します。ご家族が日本にいる方にとっては、この選択が人生の分かれ道になります。
在留特別許可|入管法50条と新ガイドライン
退去強制事由に当たる場合でも、法務大臣が特別に在留を認める制度が在留特別許可(入管法50条)です。令和5年改正により申請の手続が法律上整備され、令和6年に改定されたガイドラインでは、考慮事情がより明確になりました。日本人・永住者等との婚姻や親子関係などの家族的結合、日本で育つ子どもの利益、在留年数と生活基盤、素行、健康上・人道上の配慮の必要性などが総合的に考慮され、他方で、違反の悪質性や刑事処分歴は消極的な事情として働きます。許可を得るには、これらの積極的な事情を裏づける客観的資料(婚姻・親子関係の実態、生計、通学状況など)を丁寧に積み上げ、説得的な理由書にまとめて提出することが決定的に重要です。当事務所は、事情の聴き取りから立証資料の収集、理由書の作成、審査への対応までを一貫して行います。
監理措置|収容によらない手続(令和6年6月施行)
令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により、退去強制手続の対象となった外国人について、収容に代えて「監理人」による監理の下で社会内での生活を続けられる監理措置が導入されました。退去強制令書の発付前・発付後のいずれの段階でも利用があり得ること、保証金は300万円以下の範囲で必要な場合に定められること、収容が続く場合でも3か月ごとに収容の要否が見直されることなど、従来の全件収容を前提とした運用から仕組みが変わっています。もっとも、監理措置が認められるかどうかは、逃亡のおそれ、生活状況、監理人となる方の適格性などを踏まえた判断であり、監理人の確保と生活実態の立証が実務上の鍵になります。当事務所は、監理措置の申請、監理人を引き受ける方への説明とサポート、条件面の調整までお手伝いします。
収容されてしまった方のご家族へ
ご家族が入管に収容された場合でも、面会や差し入れは可能です。弁護士は一般の面会よりも柔軟に接見でき、本人の状況確認、帰国か在留かの方針決定、監理措置・仮放免の申請準備を速やかに進められます。また、逮捕・収容の場面では、本国の領事機関への通報や通訳の確保など、外国人特有の手続的な権利があります。ご本人と連絡が取れなくても、収容先とお名前、生年月日が分かればご相談いただけます。中国語でのご相談は微信(WeChat ID:matsumura1119)でも受け付けています。
退去強制令書が出てしまったら|取消訴訟・執行停止
裁決や退去強制令書の発付に不服がある場合、行政訴訟によって取消しを求める途があります。出訴には期間制限があり、送還を止めるためには執行停止の申立てを検討する必要があるなど、時間との勝負になる領域です。この分野を実際に訴訟まで担える事務所は多くありません。当事務所は、退去強制を最高裁まで争った経験を含む入管関係の訴訟経験を有しており、行政手続の段階から、訴訟になった場合の主張立証を見据えて資料を整えます。送還停止効の例外(難民認定申請を繰り返した場合等)や補完的保護など、令和5年改正後の制度状況も踏まえて対応します。
よくある質問
Q 執行猶予が付けば強制送還されませんか。──罪名によります。薬物犯罪などは執行猶予付きでも退去強制事由に当たり得ます。通常の犯罪でも、在留資格の更新に影響することがあります。
Q 在留特別許可はどのくらいで結果が出ますか。──事案によって幅があり、数か月から数年に及ぶこともあります。早く出頭・申請すればよいというものでもなく、準備の質が結果を左右します。
Q 一度退去強制されたら、もう日本に戻れませんか。──原則5年(事情により10年、一定の刑罰歴では期間の定めなし)の上陸拒否期間がありますが、事案によっては再入国の途を検討できる場合があります。個別にご相談ください。
当事務所の強み|刑事弁護と入管手続を一つのチームで
当事務所は、外国人の刑事弁護と入管手続の双方に取り組み、退去強制を最高裁まで争った経験を含む入管関係の訴訟経験を有しています。刑事段階から在留への影響を見据えて証拠を整え、在留特別許可・監理措置・ビザの再取得(提携行政書士と連携)まで、一つのチームで対応します。中国語でのご相談は、微信(WeChat ID:matsumura1119)またはお電話(050-7587-4639)でお受けしています。