執行猶予判決でも強制送還されることがあるのか?退去強制事由の見分け方
2026/10/07
執行猶予判決でも、罪名や在留資格によっては退去強制事由に当たることがあり、その可否は入管法24条の各号ごとに異なる(入管法24条4号リ・チ、4号の2等)。
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この記事の要点
- 1年を超える拘禁刑でも、全部の執行猶予が付けば24条4号リの対象外である
- 薬物関係の法令違反による有罪判決は、罰金・執行猶予でも24条4号チに当たる
- 別表第一の在留資格の方は、一定の刑法犯で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても24条4号の2の対象になり得る
- 不法就労助長など、行為そのものが退去強制事由となる規定は、刑事処分の有無と別に判断される
- 退去強制の手続には期限が短いものがあり、在留特別許可(50条)を含めて早期の検討が重要である
執行猶予とは何か、有罪判決との関係はどうなるのか
執行猶予は、有罪の刑の言渡しを受けたうえで、一定期間その刑の執行を猶予される制度であり、有罪であることに変わりはない。
刑の全部の執行猶予は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けた場合に、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間付けることができる(刑法25条)。猶予期間を取り消されることなく経過すると、刑の言渡しは効力を失う(27条1項)。
執行猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、猶予は取り消される(26条1号)。取り消されると、猶予されていた刑を受けることになり、退去強制事由の判断にも影響し得る。
執行猶予判決でも、強制送還されることがあるのか
ある。退去強制事由は、刑の執行の有無ではなく、入管法24条の各号の要件に当たるかどうかで決まる。
退去強制事由に当たる外国人は、手続を経て本邦からの退去を強制される(入管法24条)。執行猶予が付いたことで結論が変わる条文もあれば、変わらない条文もあるため、判決の種類だけを見て安心することはできない。
たとえば、1年を超える拘禁刑でも全部の執行猶予が付けば24条4号リの対象外だが、薬物関係の有罪判決は、条文上、執行猶予を除く定めがなく4号チに当たる。事案ごとの確認が必要である。
| 条文 | 対象 | 全部の執行猶予が付いた場合 |
|---|---|---|
| 4号リ | 1年を超える拘禁刑に処せられた者 | 対象外(全部の執行猶予を除く旨の定めがある) |
| 4号チ | 麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法等の違反で有罪の判決を受けた者 | 対象になり得る(有罪の判決で足りる) |
| 4号ヘ | 入管法73条の罪(資格外活動)で拘禁刑に処せられた者 | 条文上、執行猶予を除く定めがない |
| 4号ホ・ニ | 入管法74条から74条の6の3まで等の罪、旅券法の一定の罪で刑に処せられた者 | 刑に処せられた者が対象(罰金も含む) |
| 4号の2 | 別表第一の在留資格で、刑法の一定の罪等により拘禁刑に処せられた者 | 条文上、執行猶予を除く定めがない |
| 3号の4・4号ヌ等 | 不法就労助長、売春関係の業務従事など | 行為自体が要件であり、刑の言渡しを要件としない |
退去強制事由は、どのように見分ければよいのか
見分けるには、在留資格の種類、罪名、刑の種類と長さ、入管法違反の行為の有無の4点を順に確認する。
第1に、在留資格が別表第一(就労系・留学・家族滞在など)か、別表第二(永住者・日本人の配偶者等など)かを確認する。4号の2は別表第一の在留資格の方が対象である。
第2に、罪名が薬物関係か、入管法違反か、刑法犯かを確認する。薬物関係は4号チに当たり得る。
第3に、刑の種類と長さ(罰金・全部の執行猶予・実刑、1年を超えるか)を確認する。4号リは、1年を超える拘禁刑で、全部の執行猶予が付かないものが対象である。
第4に、刑事処分とは別に、入管法上の行為(不法就労助長、資格外活動、不法残留など)が問題になっていないかを確認する。
外国籍の方は、退去強制の手続でどのような点に注意すべきか
退去強制の手続には、短い期限が定められた段階があるため、刑事処分と並行して早期に見通しを立てる必要がある。
入国警備官の違反調査(入管法27条)の結果、退去強制事由に当たると疑われると、主任審査官が監理措置に付すか収容するかを審査する(39条)。入国審査官が退去強制対象者に当たると認定し(47条3項)、これに異議があるときは、通知を受けた日から3日以内に口頭審理を請求でき(48条1項)、判定に異議があるときも、通知から3日以内に異議の申出ができる(49条1項)。認定に服した場合は、3日以内に在留特別許可を申請しないと、退去強制令書が発付される(47条5項)。
刑事手続が行われていても、退去強制の手続は収容しない形で並行して進められることがあり、退去強制令書は、刑事手続の終了後に執行されるのが原則である(63条)。
在留特別許可は、執行猶予の場合にどのような意味を持つのか
在留特別許可は、退去強制対象者に当たる場合でも、法務大臣が在留を特別に許可できる制度である(入管法50条1項)。
許可の判断にあたっては、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などが考慮される(50条5項)。永住許可を受けているときも、在留特別許可の対象となる(同条1項1号)。
ただし、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部の執行猶予等を除く)などは、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限られる(50条1項ただし書)。また、出国命令の制度は、薬物関係の4号チに当たる者などには使えない(24条の3)。薬物関係の刑に処せられたことのある者は、上陸拒否の対象にもなる(5条1項5号)。入管庁は、在留特別許可に係るガイドラインを公表しており、考慮の考え方を確認できる。
執行猶予が取り消されると、在留にどう影響するのか
執行猶予が取り消されて実刑になると、24条4号リなどの退去強制事由に当たる場合がある。
たとえば、1年を超える拘禁刑で全部の執行猶予が付いていたところ、猶予が取り消されて刑の執行を受けることになれば、24条4号リの除外(全部の執行猶予)に当たらなくなる可能性がある。猶予期間中は、再び罪を犯さないことが在留面でも重要である。
弁護士に相談すべきタイミングはいつか
刑事事件の判決が出る前に、入管法上の結論を見据えて相談しておくのが望ましい。
刑の種類や長さ、罪名の構成によって、退去強制事由に当たるかどうかが変わり得るため、刑事弁護の段階から入管法の観点を踏まえた弁護方針を立てることが重要である。弁護士を選ぶときは、第1に外国人の刑事事件と入管の双方を扱っているか、第2に母語で相談できるか、第3に条文ごとの見通しを説明してくれるか、を確認するとよい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の弁護士松村大介(第一東京弁護士会所属・登録番号59077)は、外国人の刑事事件と入管(在留特別許可・退去強制)を取り扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師が在籍)。微信IDはmatsumura1119である。
よくある質問
執行猶予が付けば、日本に残れるのか。
そうとは限らない。24条4号リは全部の執行猶予で対象外になるが、薬物関係の4号チなどは、執行猶予が付いても対象となり得る。
大麻の所持で執行猶予になった場合、強制送還されるのか。
大麻草の栽培の規制に関する法律の違反で有罪の判決を受けた場合は、24条4号チの対象となり得る。ただし、その後の手続や在留特別許可の可否は個別事情による。
永住者でも、強制送還されることがあるのか。
永住者であっても、24条の退去強制事由に当たれば、手続の対象となる。ただし、永住許可を受けていることは、在留特別許可の判断で考慮される(50条1項1号)。
刑事裁判の途中でも、入管の手続は進むのか。
退去強制対象者に当たる外国人については、刑事訴訟の手続が行われている場合でも、収容しない形で退去強制の手続を行うことができる(63条1項)。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第24条・第24条の3・第27条・第39条・第47条から第51条・第63条(e-Gov法令検索)
- 刑法(明治40年法律第45号)第25条・第26条・第27条(e-Gov法令検索)
- 出入国在留管理庁「在留特別許可に係るガイドライン」(出入国在留管理庁ウェブサイト)
- 出入国管理及び難民認定法 第5条第1項第5号(薬物関係の刑に処せられたことのある者の上陸拒否、e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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