舟渡国際法律事務所

不法就労助長罪で雇用主・仲介者が逮捕されたらどうなるか

お問い合わせはこちら

不法就労助長罪で雇用主・仲介者が逮捕されたらどうなるか

不法就労助長罪で雇用主・仲介者が逮捕されたらどうなるか

2026/10/07

不法就労助長罪とは、事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせるなどの行為をした者を処罰する罪であり(入管法第73条の2第1項)、法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科である。雇用主だけでなく、不法就労活動をさせるために外国人を自己の支配下に置いた者や、業として仲介した者も対象となる。

総合ガイド:外国人の刑事事件ガイド(状況別の記事一覧)

この記事の要点

  • 不法就労助長罪は、外国人本人ではなく、働かせた側(雇用主・仲介者など)を処罰する罪である。
  • 「在留資格を知らなかった」だけでは処罰を免れず、免れるのは過失がない場合に限られる(入管法第73条の2第2項)。
  • 従業員が法人の業務に関して行った場合は、行為者のほか法人にも罰金刑が科される(第76条の2)。
  • 雇用主が外国籍の場合は、刑事処分とは別に退去強制事由(第24条第3号の4)にも当たり得る。

不法就労助長罪とはどのような罪か

事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた者などを処罰する罪で、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科が定められている。

不法就労活動とは、就労が認められていない在留資格での活動、許可を受けない資格外活動、不法残留などの状態にある人が行う報酬を伴う活動をいう(入管法第24条第3号の4イ)。外国人が働くことそのものではなく、外国人にそのような活動をさせる側の行為が、第73条の2で処罰される。働いた外国人本人は、別に入管法違反が問われる。

不法就労助長罪の行為類型(入管法第73条の2第1項)
号行為主な対象
第1号事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた雇用主、事業の経営者、現場の責任者など
第2号不法就労活動をさせるために外国人を自己の支配下に置いた外国人の生活や行動を管理下に置く者など
第3号業として、不法就労活動をさせる行為や支配下に置く行為に関しあっせんした紹介・仲介を業とする者

法人や会社の担当者も処罰されるのか

従業者が業務に関して行った場合は、行為者のほか、その法人又は人にも罰金刑が科される。

入管法第76条の2は、法人の代表者や代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第73条の2の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、法人又は人にも罰金刑を科すと定める。採用を担当した従業員が逮捕され、会社も処罰の対象となる場合がある。

外国人を採用する際は、事業主に在留資格などの確認と届出の義務もある(労働施策総合推進法第28条第1項)。確認を誰が、どのような方法で行ったかが、後の過失の判断で問題となる。

「不法就労だと知らなかった」という主張は通るのか

知らないことを理由に処罰を免れることはできないが、過失がないときは免れる。過失の有無は個別の事情による。

入管法第73条の2第2項は、その活動が在留資格に応じた活動に属しないこと、資格外活動の許可を受けていないこと、本人が不法残留者などに当たることを知らなかったとしても、処罰を免れないとする。ただし、過失がないときは例外とされている。

過失の有無は、在留カードの提示を受けて内容を確認したか、就労制限の有無や資格外活動の許可の記載を確かめたか、疑わしい事情がありながら確認を怠っていないか、といった事情から判断される。確認の記録(在留カードの写しなど)が残っているかも重要な資料となる。

逮捕された場合、手続はどう進むのか

逮捕後は時間制限のある手続が続くが、事案によっては逮捕されず在宅で捜査が進むこともある。

逮捕から48時間以内に送致(刑事訴訟法第203条)、受取りから24時間以内に勾留請求(同法第205条)、勾留は10日で延長は最大10日(同法第208条)である。勾留状が発せられた事件では、国選弁護人を請求できる(同法第37条の2)。

取調べでは、「在留資格を知っていたのではないか」という点が中心となる。被疑者には黙秘権があり(憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項)、供述調書の記載が事実と異なる場合は訂正を求められる(同条第4項)。従業員(外国人本人)の供述が、雇用主の認識の認定に用いられることもある。

処分と刑の見通しはどう考えるのか

処分は不起訴、略式命令による罰金、公判請求などに分かれ、事案の内容によって結論が異なる。

検察官は、犯罪の軽重や犯罪後の情況により起訴しないことができる(刑事訴訟法第248条)。起訴された場合も、略式命令による罰金で終わる場合がある(同法第461条)。拘禁刑が言い渡される場合でも、3年以下であれば全部の執行猶予が付く可能性がある(刑法第25条第1項)。

雇用した人数、期間、利益の程度、確認を怠った経緯、仲介の態様などが、処分の判断に影響し得る。これらの事情を踏まえた結論は、個別の事案によって異なる。

雇用主・仲介者が外国籍の場合、在留資格にどう影響するのか

外国籍の雇用主や仲介者は、第24条第3号の4により退去強制事由に当たり得る。この事由は有罪判決を要件としていない。

入管法第24条第3号の4は、外国人に不法就労活動をさせ、自己の支配下に置き、又は業としてあっせんする行為を行い、唆し、又は助けた者を退去強制事由とする。条文上、有罪判決は要件とされていない。出国命令の対象からも除かれる(第24条の3第2号)。

1年を超える拘禁刑に処せられた場合は、全部執行猶予を除き、同条第4号リにも該当し得る。一方、条文上、在留特別許可の申請の余地はある(第50条第1項)。許否は在留を希望する理由、家族関係、素行などを総合して判断される(同条第5項)。経営・管理などの在留資格の更新でも、事実が考慮され得る(第21条第3項)。

立場ごとの主な影響
立場刑事上の主な影響入管法上の主な影響
日本国籍の雇用主・仲介者第73条の2による処罰、法人への罰金(第76条の2)在留資格の問題は生じない
外国籍の雇用主・仲介者同上第24条第3号の4により退去強制事由に該当し得る

弁護士に相談すべきタイミングはいつか

警察から事情聴取の連絡を受けた時点、又は逮捕された時点で、取調べの前に相談するのが望ましい。

弁護人は、身体を拘束された被疑者と立会人なしで接見できる(刑事訴訟法第39条第1項)。弁護士を選ぶ際は、第1に通訳を介して十分に意思疎通できるか、第2に刑事手続と入管手続の両方を見通して説明してくれるか、第3に結果を断定せず見込みと不確実な点を分けて説明してくれるか、を確認するとよい。

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、弁護士の松村大介(第一東京弁護士会)が外国人の刑事事件と入管手続を扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師も在籍)。

よくある質問

外国人従業員が偽造の在留カードを見せていた場合も処罰されるのか。

処罰を免れるのは過失がない場合に限られるため、カードの確認の方法や程度が問われる(入管法第73条の2第2項)。結論は個別の事情による。

仲介しただけで、働かせていない場合も対象になるのか。

業として不法就労活動をさせる行為に関しあっせんした者は、第3号により処罰の対象となり得る(入管法第73条の2第1項第3号)。

会社と担当者の両方が処罰されることはあるのか。

従業者が会社の業務に関して行った場合は、行為者のほか会社にも罰金刑が科される(入管法第76条の2)。

家族が中国にいて、来日できない場合はどうすればよいか。

弁護人が本人と接見し、状況の説明や伝言を行える。ご家族とはメッセージアプリ等で連絡を取りながら進める方法がある。

根拠条文・出典

  • 出入国管理及び難民認定法第24条、第24条の3、第50条、第73条の2、第76条の2(e-Gov法令検索)
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条(e-Gov法令検索)
  • 刑事訴訟法第37条の2、第39条、第198条、第203条、第205条、第208条、第248条、第461条(e-Gov法令検索)
  • 刑法第25条(e-Gov法令検索)、日本国憲法第38条第1項(e-Gov法令検索)

ご相談について

ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ

最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119

本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。

刑事事件ガイド一覧

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。