不同意わいせつ・不同意性交等で逮捕されたらどうなるか
2026/10/07
不同意わいせつ罪(刑法176条、6月以上10年以下の拘禁刑)と不同意性交等罪(同法177条、5年以上の有期拘禁刑)は、令和5年7月13日施行の改正後、同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態にあることに乗じて行為をした場合に成立する。
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この記事の要点
- 刑法176条・177条は、暴行・脅迫、アルコール・薬物、恐怖・驚愕など8つの事由その他これらに類する事由を例示し、同意しない意思を全うすることが困難な状態を要件とする。
- 16歳未満の相手方に対する行為は、各条3項により、困難な状態を要件とせずに処罰対象となり得る。
- 逮捕後は、逮捕から最長23日間の身体拘束があり得る。この間の取調べ対応と、供述調書への署名の判断が重要である。
- 外国籍の方は、1年を超える拘禁刑の実刑となれば、入管法24条4号リにより退去強制の対象になる。
不同意わいせつ・不同意性交等とは何か。
令和5年の刑法改正で、強制わいせつ・強制性交等が整理され、「同意しない意思を全うすることが困難な状態」を中心とする罪に改められた。
刑法176条1項は、後述の事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者を処罰する。同法177条1項は、同様の状態で性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(性交等)をした者を処罰する。
未遂も処罰される(同法180条)。人を死傷させた場合は、致死傷罪としてさらに重く処罰される(同法181条)。
| 罪名 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 不同意わいせつ | 刑法176条 | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
| 不同意性交等 | 刑法177条 | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 不同意わいせつ等致死傷 | 刑法181条1項 | 無期又は3年以上の拘禁刑 |
| 不同意性交等致死傷 | 刑法181条2項 | 無期又は6年以上の拘禁刑 |
「同意しない意思を全うすることが困難な状態」とは、どのような状態か。
刑法176条1項は8つの行為・事由を掲げ、これらに類するものも含めて、困難な状態にさせた場合、又はその状態に乗じた場合を対象とする。
事由は次のとおり列挙されており、個別の事情を踏まえて判断される。
- 暴行・脅迫を用いること、又はそれらを受けたこと。
- 心身の障害を生じさせること、又はそれがあること。
- アルコール・薬物の摂取、又はその影響があること。
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、又はその状態にあること。
- 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させること、又はその状態にあること。
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること、又はそれがあること。
- 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力により受ける不利益を憂慮させること、又は憂慮していること。
相手が16歳未満の場合は、どのように扱われるか。
相手が16歳未満の場合は、刑法176条3項・177条3項の対象となり、年齢差が一定以上であるなどの要件があるときに処罰される。
同条3項は、16歳未満の者に対する行為について、1項のような「同意しない意思を全うすることが困難な状態」を要件としていない。ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、行為をした者が、相手が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者である場合に限られる。
逮捕されたら、手続はどのように進むのか。
逮捕から48時間以内の送致、24時間以内の勾留請求を経て、勾留が認められると、最長23日間の身体拘束となる。
司法警察員は、逮捕から48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求する(刑事訴訟法203条・205条)。勾留は10日間で、やむを得ない事由があれば最大10日延長される(同法208条)。
勾留中は、裁判所の決定により、弁護人以外の者との面会や物のやり取りが禁止される場合がある(接見等禁止、同法81条)。勾留の裁判に不服があるときは、準抗告で争える(同法429条)。弁護人は立会人なしで接見できる(同法39条1項)。
取調べでは、どのような点に注意すべきか。
黙秘権があり、調書の署名押印は拒絶でき、相手方への直接の接触は避けて、弁護人を通じて進めることが基本である。
被疑者には、自己の意思に反して供述をする必要がない旨が告げられる(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)。調書は読み聞かせや閲覧を受け、誤りがあれば訂正を求めることができ、署名押印を拒絶することもできる(同法198条4項・5項)。日本語に不慣れな場合は、理解できない書面に署名しないことが重要である。
事件の相手方への連絡は、証拠隠滅や圧力と受け取られるおそれがあり、本人が直接行うことは避けるべきである。示談を検討する場合も、相手方の意思が最優先であり、弁護人を通じて慎重に進める。
不起訴や刑の重さは、どのような事情で分かれるのか。
同意の有無や状態の認識をめぐる事実認定、示談の成否、前科の有無などによって、処分の見通しは大きく異なる。
検察官は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法248条)。不同意わいせつ罪には罰金刑がなく、不同意性交等罪は法定刑の下限が5年であるため、刑の全部の執行猶予(3年以下の拘禁刑が要件、刑法25条1項)を付けるには、酌量減軽(同法66条)などの減軽が前提となる。有期拘禁刑を減軽するときは、長期と短期が2分の1になる(同法68条3号)。
公訴時効は、不同意わいせつ罪が12年、不同意性交等罪が15年であり、相手方が行為の時に18歳未満の場合は18歳に達するまでの期間が加算される(刑事訴訟法250条3項・4項)。
外国籍の方は在留資格にどう影響するか。
不同意わいせつ・不同意性交等は、拘禁刑の長さと執行猶予の有無によって、退去強制や上陸拒否への影響が決まる。
入管法24条4号リは、1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予を受けた者を除く)を退去強制の対象とする。刑法第2編第22章の罪は、同条4号の2に列挙された章に含まれないが、傷害(第27章)や住居侵入(第12章)などが併せて問われる場合は、同号の確認が必要である。また、1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者は上陸拒否の対象となり(同法5条1項4号)、同号は執行猶予を除外していない。
1年を超える実刑の場合の在留特別許可は、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限られる(同法50条1項ただし書)。
| 結果 | 24条4号リ | 留意点 |
|---|---|---|
| 不起訴 | 該当しない | 更新・変更の審査で事件の内容が考慮され得る |
| 拘禁刑(全部執行猶予) | 除外される | 上陸拒否(5条1項4号)は個別に確認する |
| 1年以下の拘禁刑の実刑 | 該当しない | 1年以上は上陸拒否の対象となり得る |
| 1年を超える拘禁刑の実刑 | 退去強制の対象 | 在留特別許可には特別の事情が必要 |
弁護士に相談すべきタイミングはいつか。
家族が逮捕された直後、または警察から呼出しを受けた時点が、最初の相談のタイミングである。
逮捕直後から、取調べへの対応、署名押印の判断、示談の進め方を検討することが重要である。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、弁護士の松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)が、外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱っている。中国語での相談に対応し、専属の通訳が常駐しているほか、中国律師が在籍している。微信ID matsumura1119 でも連絡できる。
よくある質問
相手が同意していたと思っていた場合は、犯罪にならないのか。
同意があったと誤信していたことは争点になり得るが、結論は、当時の状況や経緯、相手の状態などの事実関係による。個別の事情を整理して検討する必要がある。
示談が成立すれば、不起訴になるのか。
当然にそうなるわけではない。示談は、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な事情の一つであるが、事案の内容、被害の程度、前科の有無など他の事情も総合して判断される。
家族が日本に来られない場合は、どうすればよいのか。
来日できなくても、弁護人が接見で本人の状況を確認し、微信や電話で家族に伝えることができる。
勾留中に保釈は認められるのか。
起訴前は保釈の規定が使えず(刑事訴訟法207条1項ただし書)、保釈は起訴後の手続である(同法88条)。
根拠条文・出典
- 刑法25条1項・66条・68条3号・176条・177条・179条・180条・181条(e-Gov法令検索)
- 刑事訴訟法37条の2・39条1項・81条・88条・198条・203条・205条・207条・208条・248条・250条・429条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法5条1項4号・24条4号リ・24条4号の2・50条1項・63条(e-Gov法令検索)
- 日本国憲法38条1項(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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