退去強制・強制送還を弁護士に相談するには|手続の各段階でできることと期限・注意点
2026/09/11
退去強制(強制送還)の手続で弁護士に相談すべきなのは、入管に収容された、監理措置の決定を受けた、違反審査で退去強制事由に該当すると認定された、といった場面であり、弁護士は口頭審理や異議の申出への対応、在留特別許可の申請と資料の準備、不許可後の取消訴訟と執行停止の申立てを行う。在留特別許可は退去強制令書が発付された後は申請できないため、令書の発付前に動くことが重要である。
- 退去強制手続は違反調査から令書発付まで段階的に進みます
- 在留特別許可の申請は退去強制令書の発付前に限られます
- 口頭審理の請求と異議の申出には短い期限があります
- 不許可の後は取消訴訟と執行停止の申立てを検討します
- 出国命令と退去強制では上陸拒否期間が異なります
退去強制手続で弁護士に相談すべきなのはどんなときか
入管から呼出しを受けたとき、または収容や監理措置が始まったときが、弁護士に相談すべき時期です。手続は短い期限で次の段階へ進み、後になるほど選べる手段が少なくなります。
| 場面 | 放置した場合に起こりうること | 弁護士がすること |
|---|---|---|
| 入管から呼出しを受けた、自ら出頭するか迷っている | 事情を整理しないまま調査に応じ、有利な事情を伝えられないことがあります | 出国命令の要件に当たるか、在留特別許可を目指すかを見極め、出頭の方法と説明する内容を一緒に準備します |
| 収容令書により収容された | 収容が続き、家族との連絡や資料集めが難しくなります | 施設で面会して事情を聴き取り、監理措置の請求や仮放免の請求を検討します |
| 監理措置の決定を受けた | 条件に違反すると決定が取り消され、収容に移ることがあります | 条件と監理人の役割を確認し、在留特別許可の申請準備を並行して進めます |
| 違反審査で退去強制事由に該当すると認定された | 口頭審理を請求しないまま認定を受け入れると、令書の発付に向けて手続が進みます | 認定の当否を検討し、口頭審理の請求と在留特別許可の申請の要否を判断します |
| 口頭審理で認定に誤りがないと判定された | 異議の申出の期限を過ぎると、法務大臣に事情を示す機会が失われます | 異議の申出書を作成し、在留特別許可を求める事情と資料を補充します |
| 在留特別許可が認められず、退去強制令書が発付された | 送還が実施されると、原則として5年間は日本への上陸が拒否されます | 取消訴訟の提起と執行停止の申立てを検討し、収容や監理措置への対応を行います |
弁護士に依頼すると何をしてもらえるのか
弁護士は、本人の代理人として入管とやり取りし、手続の各段階で主張と資料を提出します。
- 収容施設での面会と、経緯・家族関係・在留歴の聴き取り
- 監理措置の請求や仮放免の請求など、収容からの解放を求める手続
- 違反審査や口頭審理に向けた主張と証拠の準備、代理人としての対応
- 口頭審理の判定に対する異議の申出書の作成
- 在留特別許可の申請と、法律が定める考慮事情に沿った意見書・資料の提出
- 婚姻や認知など、在留の判断に関わる身分関係の手続の調整
- 不許可の場合の取消訴訟と、送還や収容を止める執行停止の申立て
手続はどう進み、弁護士はどの段階で関わるのか
退去強制手続は違反調査から始まり、在留特別許可をするか、退去強制令書を発付するかに分かれます。弁護士はどの段階からでも関われますが、早いほど選べる手段が多くなります。
- 違反調査:入国警備官が、退去強制事由(入管法24条)に当たる事実があるかを調べます。
- 収容または監理措置:主任審査官が、収容令書により収容するか、監理措置に付するかを判断します(入管法39条2項)。収容期間は30日以内で、やむを得ない事由があればさらに30日を限り延長されます(41条)。
- 違反審査:入国審査官が、退去強制事由に該当するかを審査します(47条)。
- 口頭審理:認定に不服があれば、特別審理官による口頭審理を請求できます(48条)。
- 異議の申出:口頭審理の判定にも不服があれば、法務大臣に異議を申し出ることができます(49条)。
- 在留特別許可の判断(50条)または退去強制令書の発付(51条)。
- 令書発付後:送還に向けた収容または監理措置(52条の2)、仮放免(54条)、取消訴訟と執行停止の申立て。
各段階でできることと期限・注意点は次のとおりです。
| 段階 | この段階でできること | 期限・注意点 |
|---|---|---|
| 違反調査・出頭 | 出頭の準備、出国命令の要件の確認、有利な事情の整理 | 出国命令は違反調査の開始前に自ら出頭したことなどが要件です。不法入国は対象外です |
| 収容・監理措置 | 監理措置の請求(44条の2第4項)、仮放免の請求(54条)、在留特別許可の申請 | 収容は30日以内、延長は30日までです。監理措置は条件違反などで取り消されることがあります |
| 違反審査 | 事実関係の説明、在留特別許可の申請(50条2項) | 認定を受け入れると、令書の発付に向けて手続が進みます |
| 口頭審理 | 口頭審理の請求、主張と証拠の提出 | 請求できる期間は認定の通知から短く限られています。期間を過ぎると請求できません |
| 異議の申出 | 異議の申出書の提出、在留特別許可を求める事情の補充 | こちらも期限が短いため、判定の通知を受けたらすぐに準備を始める必要があります |
| 在留特別許可の判断 | 追加資料の提出、不許可の理由の確認(50条10項) | 退去強制令書の発付後は、在留特別許可を申請できません(50条3項) |
| 退去強制令書の発付後 | 取消訴訟、執行停止の申立て、監理措置や仮放免の請求 | 出訴期間は処分を知った日から6か月です。訴訟を起こしただけでは送還は止まりません |
在留特別許可の申請はいつまでに、どのような資料で行うのか
在留特別許可の申請は、収容令書により収容された人、または監理措置決定を受けた人が、退去強制令書が発付される前に行う必要があります(入管法50条2項・3項)。令書が発付された後は申請できないため、収容や監理措置が始まった段階から準備を始めることが大切です。
判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などが考慮されます(50条5項)。令和6年3月に改定されたガイドラインでは、自ら出入国在留管理官署に出頭したことが積極要素として挙げられています。一方、無期または1年を超える拘禁刑の実刑を受けた人などは、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限られます(50条1項ただし書)。
考慮事情に対応して、次のような資料を整えます。
- 家族関係:戸籍や婚姻・出生の証明、住民票、子の在学を示す資料
- 生活の実態:住まい、仕事、収入など、日本での生活基盤が分かる資料
- 素行:前科の有無、刑事事件の処分結果、反省や再発防止の取組み
- 入国の経緯と在留の経過:本人の陳述書と、出来事を時系列で整理した資料
- 人道上の事情:病気の治療状況、子の養育、本国での生活が難しい事情
- 周囲の支え:家族、知人、雇用主などの陳述書
弁護士は、これらを考慮事情ごとに整理し、意見書にまとめて提出します。資料を整えても許可が約束されるわけではありませんが、認められる可能性を高めるための準備はできます。不許可のときは理由を付した書面で通知される(50条10項)ため、その理由がその後の訴訟を検討する材料になります。
不許可や退去強制令書の発付の後、何ができるのか
退去強制令書が発付された後も、取消訴訟を起こし、送還を止めるための執行停止を申し立てることができます。対象となるのは、退去強制令書の発付処分や在留特別許可をしない処分などで、出訴期間は処分を知った日から6か月です(行政事件訴訟法14条)。訴訟を起こしただけでは送還や収容は当然には止まらないため、執行停止の申立て(同法25条)を併せて検討します。
令書発付後の収容については、監理措置(入管法52条の2)や仮放免(54条)を求めることができます。仮放免は、健康上・人道上その他これに準ずる理由で収容を一時的に解除する制度です。
送還や出国の方法によって、その後に日本へ上陸できない期間(上陸拒否期間、入管法5条1項9号)が異なります。
- 出国命令により出国した場合:原則1年
- 退去強制された場合:5年
- 過去にも退去強制や出国命令を受けていた場合:10年
- 薬物関係で有罪となった人など:期間の定めのない上陸拒否
出国命令は不法残留など一定の場合に限られ、違反調査の開始前に自ら出頭したこと、一定の罪で拘禁刑に処せられていないこと、過去に退去強制や出国命令を受けていないこと、速やかに出国する見込みがあることなどが要件です。在留特別許可を目指すか出国命令を選ぶかによって、再入国の見通しも変わります。
行政書士や支援団体への相談とどう違うのか
取消訴訟や執行停止の訴訟代理、刑事弁護、代理人としての交渉は、弁護士が担うことができる業務です。それぞれの役割は次のとおりです。
- 弁護士:刑事弁護、取消訴訟・執行停止などの訴訟代理、入管手続での代理人としての主張と交渉
- 行政書士:在留資格に関する申請取次など、申請書類の作成と提出の支援
- 支援団体:面会や生活面の支援、情報提供など、各団体の活動目的に応じた支援
在留が認められた後の在留資格の手続では、行政書士と連携することが有益な場面もあります。
弁護士を選ぶときに何を確かめればよいか
退去強制手続では、期限の管理と刑事手続との関係を見通せるかが重要です。
- 刑事手続と入管手続の両方を見通して説明できるか
- 取消訴訟や執行停止の申立てまで担えるか
- 本人の言語で直接話せる通訳の体制があるか
- 収容施設での面会に速やかに動けるか
- 口頭審理や異議の申出の期限を管理し、段階ごとの方針を示してくれるか
- 見通しとリスクを率直に説明するか
舟渡国際法律事務所ではどのように対応するか
当事務所は、外国人の刑事事件と入管手続(退去強制、在留特別許可、監理措置、収容)を重点的に取り扱い、刑事手続と入管手続を一体として見通した弁護方針を採っています。
接見の初動から公判、入管手続まで、弁護士 松村大介が直接担当します。外国人事件に通じた中国語の専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者本人の立場で動く通訳を利用できます。中国語以外の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。全国からのご相談に対応しています。在留が認められた後の在留資格の手続は、提携の行政書士と連携して対応します。
また、退去強制事由の判断にも故意・過失を問うべきではないかという論点を、実際の事件で訴訟として争っています(現在も係争中の論点です)。
退去強制手続に関する解決事例には、次のものがあります。
- 観光目的で来日し、日本人女性との間に子が生まれたものの、不法滞在で逮捕・起訴された方の事案です。婚姻と認知の手続を当局と交渉して実現し、刑事裁判での尋問も見据えて資料を集め、在留特別許可を得ました。
- 身に覚えのない不法就労助長の疑いで、退去強制の危機に置かれた女性の事案です。退去強制事由に故意・過失は不要とする実務を訴訟で争い、その後、在留特別許可が認められました。
費用はどのように決まるのか
費用は、事案の内容、緊急性、手続の段階等により個別にお見積もりします。取消訴訟や執行停止まで見込まれるか、刑事事件が並行しているかなどによって、活動の範囲が変わります。ご相談の際に活動の内容と費用をご説明します。
よくある質問
退去強制令書が出た後でも、在留特別許可を申請できますか
申請はできません。入管法50条3項により、在留特別許可の申請は退去強制令書の発付前に限られています。令書が発付された後は、令書発付処分などの取消訴訟と執行停止の申立てといった別の方法を検討することになります。
家族が入管に収容されました。まず何をすればよいですか
収容された本人は、収容の段階から在留特別許可を申請でき、監理措置を請求することもできます。収容期間は30日以内で、延長も30日までと限られているため、早い段階で面会して事情を整理することが有益です。ご家族は、家族関係の資料を集め始めてください。
出国命令と退去強制では、どちらを選ぶべきですか
一概には言えません。出国命令による上陸拒否期間は原則1年で、退去強制の5年より短くなりますが、出頭などの要件があり、不法入国は対象外です。日本で家族と暮らし続けたい事情がある場合は、在留特別許可も含めて早めに比較検討することが大切です。
取消訴訟を起こせば、送還されずに済みますか
訴訟を起こしただけでは、送還は当然には止まりません。送還を止めるには、執行停止を申し立て、裁判所がこれを認める必要があります。送還が迫っている場合は、出訴期間内でも早く動く必要があります。
中国語で相談できますか。東京以外に住んでいても依頼できますか
中国語の専属通訳が常駐しており、中国語でご相談いただけます。中国語以外の言語は事案に応じて通訳人を手配し、東京以外の警察署や入管施設の事件も受任しています。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年9月11日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119