偽造在留カード・偽造身分証の事件とは(所持・行使と退去強制)
2026/10/07
偽造在留カード事件とは、偽造・変造された在留カードを作る、提供・収受する、所持する、使うなどの行為が問われる事件であり、入管法第73条の3から第73条の6に罰則が定められている。これらの行為は、刑事処分とは別に、退去強制事由にも当たる(入管法第24条第3号の5)。
総合ガイド:外国人の刑事事件ガイド(状況別の記事一覧)
この記事の要点
- 偽造・変造は1年以上10年以下の拘禁刑、行使・提供・収受も同じ刑である(入管法第73条の3)。
- 行使の目的で偽造カードを所持した場合は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金である(第73条の4第1項)。
- 第24条第3号の5は、有罪判決を要件とせず、偽造カードの所持・行使などを退去強制事由とし、出国命令の対象からも除く。
- 偽造運転免許証などは、入管法ではなく刑法の公文書偽造等(第155条、第158条)が問題となる。
偽造在留カードの事件ではどのような罪に問われるのか
カードの偽造・変造、行使、提供・収受、所持、器械・原料の準備、他人名義カードの使用などが、入管法で細かく処罰される。
偽造在留カードに関する罪は、行為の段階ごとに条文が分かれている。偽造・変造(第73条の3第1項)、偽造カードの行使(同条第2項)、行使の目的での提供・収受(同条第3項)が最も重く、1年以上10年以下の拘禁刑である。未遂も処罰される(同条第7項)。
| 行為 | 根拠条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 偽造・変造、偽造カードの行使、提供・収受 | 入管法第73条の3第1項から第3項 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 行使の目的での偽造カードの所持 | 第73条の4第1項 | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 偽造のための器械・原料の準備 | 第73条の5第1項 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 他人名義のカードの行使・提供・収受・所持 | 第73条の6第1項 | 1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金 |
どのようなきっかけで事件になるのか
職務質問などで在留カードの提示を求められた際に偽造が発覚する場合や、就職・契約などで提示したカードから発覚する場合がある。
中長期在留者は、在留カードを常に携帯し(入管法第23条第2項)、警察官などから提示を求められたときは応じなければならない(同条第3項)。提示されたカードの真偽に疑いが生じた場合に、所持や行使の事件として扱われることがある。
行使の目的で偽造カードを所持したことが問われる場合(第73条の4第1項)のほか、他人名義のカードを使った場合は、第73条の6の罪が問題となる。
偽造だと知らなかった場合はどうなるのか
偽造罪の処罰には、偽造されたものだと認識していたことが必要であり、認識の有無は個別の事情から判断される。
刑法第38条第1項は、罪を犯す意思がない行為は罰しないと定める。偽造カードの所持や行使が問われる場合も、そのカードが偽造・変造されたものであると認識していたかどうかが争点となる。
認識の有無は、カードの入手の経緯、対価の有無や額、入手先との関係、カードの外観や使用の状況、取調べでの説明の一貫性などから総合的に判断される。取調べでは、「普通は分かるはずだ」という方向の質問で、認識があった旨の調書が作られないよう注意が必要である。
偽造の運転免許証や身分証の場合はどうなるのか
運転免許証など公務所が作る文書の偽造は刑法の公文書偽造罪、社員証や学生証などは私文書偽造罪が問題となる。
行使の目的で公務所又は公務員の作成すべき文書を偽造すると、1年以上10年以下の拘禁刑に処される(刑法第155条第1項)。偽造した文書を使った場合も同一の刑である(同法第158条第1項)。
私人の作成名義の文書で、権利、義務又は事実証明に関するものを偽造した場合は、私文書偽造等として処罰される(同法第159条)。偽造カードを日常的に身分証として使っていた場合は、入管法と刑法の双方の罪が問題となることもある。
逮捕後の手続はどう進むのか
逮捕後は時間制限のある手続が続き、勾留まで進むと逮捕から最大23日間、身体拘束が続き得る。
逮捕から48時間以内に送致(刑事訴訟法第203条)、受取りから24時間以内に勾留請求(同法第205条)、勾留は10日で延長は最大10日(同法第208条)である。被疑者には黙秘権があり(憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項)、勾留状が発せられた事件では国選弁護人を請求できる(同法第37条の2)。
入管法違反の事件として、刑事手続とあわせて退去強制の手続が進む場合がある。刑事手続の途中でも、入管法は退去強制の手続を進められるとし、令書の執行は刑事手続の終了後としている(同法第63条第1項、第2項)。
外国籍の方は在留資格にどう影響するのか
偽造カードの所持・行使などは、有罪判決を要件とせず退去強制事由に当たり、出国命令の対象にもならない。
入管法第24条第3号の5は、行使の目的などで在留カードを偽造・変造すること、偽造カードを提供・収受・所持・保管すること、行使すること、他人名義のカードを提供・収受・所持・行使することなどを、行い、唆し、又は助けた者を退去強制事由とする。条文上、有罪判決は要件とされていない。出国命令の対象にもならない(第24条の3第2号)。
1年を超える拘禁刑に処せられた場合は、全部執行猶予を除き、第24条第4号リにも該当し得る。また、刑法第2編第17章の文書偽造の罪(運転免許証の偽造など)で拘禁刑に処せられた場合は、別表第一の在留資格で在留する者について退去強制事由となる(第24条第4号の2)。なお、第50条第1項ただし書の例外に第3号の5は挙げられておらず、条文上は在留特別許可の申請の余地がある。許否は個別事情による。
| 対象 | 刑事上の主な罪 | 入管法上の主な退去強制事由 |
|---|---|---|
| 偽造在留カード | 入管法第73条の3から第73条の6 | 第24条第3号の5(有罪判決は要件とされていない) |
| 偽造運転免許証など公文書 | 刑法第155条、第158条 | 別表第一の在留資格の人は第24条第4号の2(拘禁刑に処せられた場合) |
就労との関係では、どのような問題が生じるのか
偽造カードを使って働いていた場合は、本人は入管法違反が、働かせた側は不法就労助長罪が、それぞれ問題となり得る。
偽造カードで就職した場合、在留資格に応じた活動に属しない就労であれば、資格外活動などの問題も生じる。雇用した側は、カードの確認に過失がなかったかが、不法就労助長罪(入管法第73条の2第2項)の判断で問われる。
弁護士に相談すべきタイミングはいつか
逮捕された時、又は警察から呼出しを受けた時点で、取調べの前に相談するのが望ましい。
弁護人は、身体を拘束された被疑者と立会人なしで接見できる(刑事訴訟法第39条第1項)。弁護士を選ぶ際は、第1に通訳を介して十分に意思疎通できるか、第2に刑事手続と入管手続の両方を見通して説明してくれるか、第3に結果を断定せず見込みと不確実な点を分けて説明してくれるか、を確認するとよい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、弁護士の松村大介(第一東京弁護士会)が外国人の刑事事件と入管手続(在留特別許可・退去強制)を扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師も在籍)。
よくある質問
偽造カードを持っていただけで逮捕されるのか。
行使の目的で偽造カードを所持した場合は処罰の対象となる(入管法第73条の4第1項)。逮捕されるかどうかは事案による。
カードが偽造だと知らずに使っていた場合も処罰されるのか。
偽造であるという認識が必要である。認識の有無は入手の経緯などから判断され、個別の事情による。
執行猶予が付けば、在留資格は守られるのか。
守られるとは限らない。第24条第3号の5は有罪判決を要件としておらず、刑の重さとは別に問題となる。結論は個別事情による。
家族が中国にいて、来日できない場合はどうすればよいか。
弁護人が本人と接見し、状況の説明や伝言を行える。ご家族とはメッセージアプリ等で連絡を取りながら進める方法がある。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法第23条、第24条、第24条の3、第50条、第63条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法第73条の2、第73条の3、第73条の4、第73条の5、第73条の6(e-Gov法令検索)
- 刑法第38条、第155条、第158条、第159条(e-Gov法令検索)
- 刑事訴訟法第37条の2、第39条、第198条、第203条、第205条、第208条(e-Gov法令検索)
- 日本国憲法第38条第1項(e-Gov法令検索)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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