オーバーステイで弁護士に相談すべき時|出国命令・在留特別許可・摘発の3つの道を比較
2026/09/11
オーバーステイ(不法残留)について弁護士に相談すべきなのは、在留期限が過ぎていると気づいたとき、出頭するかどうか迷っているとき、そして警察や入管に発覚したときである。弁護士は、出国命令と在留特別許可のどちらを目指すかを本人の事情に即して検討し、出頭前の資料準備や出頭への同行、逮捕された場合の刑事弁護と入管手続を一体として担う。
- 在留期限を過ぎて残ると、刑事罰と退去強制の対象になります
- 自ら出頭すれば、出国命令(上陸拒否は原則1年)を使える場合があります
- 日本に家族や生活基盤がある人は、在留特別許可を求める道があります
- 摘発を待つと逮捕や退去強制につながり、上陸拒否は原則5年です
- 出頭の前に、弁護士と方針と資料を整えておくことが有益です
オーバーステイで弁護士に相談すべきなのはどんなときか
在留期限が過ぎていると気づいた時点が、最初に弁護士へ相談すべきときです。在留期間を経過して日本に残ることは、入管法70条1項5号の不法残留にあたり、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科という刑事罰の対象となります。同時に、入管法24条4号ロの退去強制事由にもあたります。どの段階で当局と向き合うかによって、その後の選択肢が変わります。
| 場面 | 放置した場合に起こりうること | 弁護士がすること |
|---|---|---|
| 在留期限を過ぎていることに気づいた(数日でも) | 不法残留の状態が続き、発覚すれば摘発の対象になる | 期限前の申請の有無を確認し、出国命令と在留特別許可のどちらを目指すかを検討する |
| 日本人や永住者の家族、子どもがいて日本に残りたい | 摘発されると、家族の事情を十分に示す前に手続が進むおそれがある | 家族関係や生活の資料を集め、出頭申告に向けた準備をする |
| 勤務先や周囲にオーバーステイを知られた | 通報や解雇により、準備が整わないまま発覚することがある | 本人と雇用主それぞれの立場を整理し、今後の対応を助言する |
| 警察に逮捕された | 取調べで不利な供述調書が作られ、刑事処分と退去強制が続けて進む | 速やかに接見し、取調べへの対応を助言し、処分と入管手続の見通しを立てる |
| 入管に収容された、又は監理措置となった | 在留特別許可を求める機会を十分に生かせないまま手続が進む | 在留特別許可の申請や監理措置・仮放免の請求を行う |
在留期限切れに気づいたとき、選べる3つの道はどう違うのか
在留期限を過ぎてしまった人の前には、大きく分けて、自ら出頭して出国命令を受ける道、自ら出頭して在留特別許可を求める道、何もしないまま摘発される道の3つがあります。どれを選ぶかによって、身柄を拘束される可能性や、再び日本に入国できるようになるまでの期間が異なります。
| 道 | 手続 | 身柄拘束の可能性 | 再入国までの期間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 1.出国命令 | 違反調査が始まる前に自ら入管へ出頭し、出国命令を受けて15日以内の出国期限までに自分で出国する(入管法24条の3、55条の85) | 本人が自分で出国することを前提とする手続であり、比較的低い。ただし要件を欠くと判断されれば退去強制手続に移る | 上陸拒否期間は原則1年 | 帰国するつもりがあり、過去に退去強制や出国命令を受けたことがなく、一定の罪で拘禁刑に処せられていない人 |
| 2.在留特別許可を求める | 自ら出頭し、退去強制手続の中で、収容又は監理措置の決定を受けた後に在留特別許可を申請する(入管法50条) | 収容令書による収容か監理措置かを主任審査官が審査する。刑事手続が先に進むこともある | 許可されれば日本に残ることができる。許可されなければ退去強制となり、上陸拒否期間は原則5年 | 日本人・永住者の配偶者や子がいる、長く日本で暮らしてきたなど、日本での家族・生活基盤がある人 |
| 3.何もせず摘発される | 警察や入管に発見され、逮捕・送致などの刑事手続と、退去強制手続が進む | 高い。逮捕・勾留や収容となる可能性がある | 退去強制となれば原則5年。過去にも退去強制や出国命令を受けていれば10年 | 選ぶべき道ではない。すでに摘発された場合は、速やかに弁護士の助けを受ける |
出国命令は身柄拘束の負担が比較的小さく、再入国までの期間も短い道です。一方、在留特別許可は日本での生活を続けられる可能性がある道ですが、許可されるかどうかは家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、人道上の配慮の必要性などを総合して判断され(入管法50条5項)、許可されなければ退去強制となります。令和6年3月に改定された在留特別許可のガイドラインでは、自ら出入国在留管理官署に出頭したことが積極要素として挙げられています。どちらを目指すかは、日本での家族や生活の実情、母国での生活の見通し、刑事処分歴の有無などを踏まえ、出頭の前に決めておくことが大切です。
何もしないまま時間が過ぎると、自ら出頭したという事情を示す機会を失い、出国命令の要件も満たせなくなるおそれがあります。早い段階でのご相談が有益です。
出頭の前に弁護士が準備し、同行する意味は何か
弁護士が出頭の前から関わる意味は、本人にとって最もよい道を選んだうえで、その道に必要な事情と資料をそろえて当局に示せることにあります。出国命令を目指す場合は、旅券の有無、帰国の費用や航空券の手配、過去の違反歴や刑事処分歴を確認し、要件を満たすかどうかを事前に見極めます。在留特別許可を目指す場合は、家族関係、子どもの就学、仕事や住まい、生活歴、健康状態など、考慮される事情を裏付ける資料を集めて整理します。
出頭の当日に弁護士が同行すれば、本人が緊張や言葉の壁から事情を十分に説明できないという事態を避けやすくなります。出頭後に収容となった場合も、監理措置や仮放免の請求、在留特別許可の申請に途切れなく取り組めます。
弁護士に依頼すると何をしてもらえるのか
弁護士に依頼すると、出頭前の方針決定から、刑事手続、入管手続、必要な場合の訴訟まで、一貫した支援を受けることができます。
- 在留期限や過去の申請の経緯を確認し、出国命令と在留特別許可のどちらを目指すかを検討する
- 出頭に向けて、説明すべき事情を整理し、家族関係や生活基盤の資料を集める
- 入管への出頭に同行し、本人の事情を当局に伝える
- 逮捕された場合に接見し、取調べへの対応を助言し、不起訴や刑の軽減に向けて活動する
- 収容された場合に監理措置や仮放免を請求し、監理人となる親族等との調整を行う
- 在留特別許可の申請書や意見書を作成し、口頭審理に立ち会う
- 退去強制令書が発付された場合に、取消訴訟の提起や執行停止の申立てを検討する
手続はどう進み、弁護士はどの段階で関わるのか
弁護士は、出頭を考え始めた段階から訴訟まで、どの段階でも関わることができます。在留特別許可を求めて出頭した場合や摘発された場合の流れは次のとおりです。
- 相談と方針決定:在留期限、家族や生活の状況、過去の違反歴を確認し、目指す道を決めます。
- 出頭又は摘発:自ら入管に出頭するか、警察・入管に発見されます。警察に逮捕された場合は、48時間以内に検察官へ送致され、検察官は24時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、延長によりさらに最大10日です。
- 違反調査:入国警備官が違反の事実を調べます。
- 収容又は監理措置:主任審査官が、収容令書による収容とするか監理措置とするかを審査します。収容の期間は30日以内で、やむを得ない事由があれば30日を限り延長されます。
- 違反審査・口頭審理・異議の申出:入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理を経て、法務大臣への異議の申出に進みます。在留特別許可の申請は、退去強制令書が発付される前に行う必要があります。
- 在留特別許可の判断又は退去強制令書の発付:許可されなかった場合は、理由を付した書面で通知されます。
- 取消訴訟・執行停止:処分を知った日から6か月以内であれば取消訴訟を提起でき、送還や収容を止めるための執行停止の申立ても検討します。
行政書士や支援団体への相談とどう違うのか
弁護士、行政書士、支援団体は、それぞれ担える役割が異なります。オーバーステイの問題では、刑事手続や訴訟に進む可能性があるかどうかが、相談先を選ぶ一つの目安になります。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 逮捕された場合の刑事弁護、代理人としての交渉、退去強制令書発付処分の取消訴訟や執行停止の申立てなど訴訟の代理を行うことができます。入管手続にも代理人として関わります。 |
| 行政書士 | 在留資格の申請取次など、入管への各種申請手続を担います。 |
| 支援団体 | 生活の支援や情報提供、面会活動などを通じて、本人や家族を支えます。 |
弁護士を選ぶときに何を確かめればよいか
オーバーステイの相談で弁護士を選ぶときは、刑事手続と入管手続の両方を見通して方針を立てられるかを確かめることが大切です。
- 刑事手続と入管手続の両方を見通して、出国命令と在留特別許可の選択を説明できるか
- 出頭前の資料準備や、出頭への同行に対応しているか
- 取消訴訟や執行停止の申立てなど、訴訟まで担えるか
- 本人の母語に対応した通訳の体制があるか
- 逮捕や収容の際に、接見や面会に速やかに動けるか
- 許可の見通しとリスクを、率直に説明してくれるか
舟渡国際法律事務所ではどのように対応するか
舟渡国際法律事務所では、外国人の刑事事件と入管手続(退去強制・在留特別許可・監理措置・収容)を重点的に取り扱い、刑事手続と入管手続を一体として見通した弁護方針を採っています。オーバーステイのご相談では、出国命令と在留特別許可のどちらを目指すかを一緒に検討し、出頭前の準備から、逮捕や収容となった場合の対応まで、弁護士 松村大介が直接担当します。
外国人事件に通じた中国語の専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、ご本人の立場で動く通訳を利用できます。中国語以外の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。東京以外の警察署や入管施設の事件も受任しており、全国からのご相談に対応しています。在留特別許可が認められた後の在留資格の手続は、提携の行政書士と連携して進めます。
当事務所が扱った事案には、次のようなものがあります。
- 観光目的で来日し、日本人女性との間に子が生まれたものの、不法滞在で逮捕・起訴された事案。婚姻と認知の手続を当局と交渉して実現し、刑事裁判での尋問も見据えて資料を集め、在留特別許可を得ました。
- 身に覚えのない不法就労助長の疑いで退去強制の危機に置かれた女性の事案。退去強制事由に故意・過失は不要とする実務を訴訟で争い、その後、在留特別許可が認められました。退去強制事由の判断にも故意・過失を問うべきではないかという論点は、現在も係争中の論点として争っています。
費用はどのように決まるのか
費用は、事案の内容、緊急性、手続の段階等により個別にお見積もりします。必要な活動の範囲は事案により異なるため、ご相談の際に活動の内容とあわせてご説明します。
よくある質問
在留期限を数日過ぎただけでも問題になりますか
数日であっても、在留期間を経過して残っていれば不法残留にあたります。短期間だから大丈夫と考えて放置すると、出頭の機会を逃し、選べる道が狭まるおそれがあります。期限前に更新や変更の申請をしていたかどうかで状況が変わることもあるため、手元の書類を持ってご相談ください。
入管に出頭したら、その場で逮捕されますか
出頭後にどのような扱いになるかは、違反の内容や過去の経歴などによって異なり、一概には言えません。出国命令の要件を満たす場合は、本人が自分で出国することを前提に手続が進みます。在留特別許可を求める場合は、収容又は監理措置のいずれかとなるため、監理人となる親族等の準備も含めて、事前に弁護士と相談しておくことが有益です。
雇用主にオーバーステイを知られました。どうすればよいですか
慌てて姿を隠すのではなく、まず弁護士にご相談ください。在留期限を過ぎた状態で働き続けることは認められておらず、雇用主の側にも法的な問題が生じうるため、本人と雇用主それぞれの立場を整理する必要があります。雇用主からのご相談にも応じ、出頭に向けた準備や今後の雇用関係の整理について助言します。
出国命令で帰国した後、また日本に来られますか
出国命令により出国した場合の上陸拒否期間は、原則1年です。その期間が過ぎれば、改めて在留資格やビザの手続を行うことになりますが、許可されるかどうかは、その時点の審査によります。退去強制となった場合は原則5年、過去にも退去強制や出国命令を受けていた場合は10年と、期間が長くなります。
日本に家族がいる場合、出国命令を選ぶべきではないのですか
日本に配偶者や子どもがいる場合は、在留特別許可を求める道を検討する意味があります。ただし、在留特別許可は家族関係や素行などを総合して判断されるもので、許可されなければ退去強制となり、上陸拒否期間も長くなります。家族の状況や過去の経緯を踏まえ、それぞれの道の見通しとリスクを比べたうえで選ぶことが大切です。
関連ページ:オーバーステイ特集、出国命令とは、在留特別許可とは、上陸拒否期間とは、監理措置とは、不法滞在で弁護士に相談すべき時、退去強制で弁護士に相談すべき時、お問い合わせ
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年9月11日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119