在宅事件とは?逮捕されないまま捜査が進むときの流れと呼び出しへの対応
2026/10/07
在宅事件とは、被疑者を逮捕・勾留せず、普段の生活を続けたまま捜査と処分の判断が進められる事件の実務上の呼び名であり、身体拘束がなくても刑事手続は続いている(刑事訴訟法198条1項)。
総合ガイド:外国人の刑事事件ガイド(状況別の記事一覧)
この記事の要点
- 在宅事件は、逮捕・勾留がないだけで、捜査も起訴・不起訴の判断も続く
- 出頭要求は逮捕・勾留されていなければ拒めるが(刑訴198条1項ただし書)、拒み続けると逮捕の判断材料になり得る(199条)
- 取調べでは黙秘権があり、調書は読み聞かせを受け、誤りがなければ署名する(198条2項から5項)
- 在宅事件は被疑者国選弁護の対象外(37条の2)のため、早めに自分で弁護人を選ぶ
- 外国籍の方は、処分の種類により在留の更新・永住・退去強制に影響し得る
在宅事件とは何か、逮捕・勾留される事件とどう違うのか
在宅事件とは、逮捕・勾留で身柄を拘束されず、自宅などで生活しながら捜査が進む事件をいう。法律上の定義語ではなく、実務上の呼び方である。
在宅であることは、事件が軽いことを意味しない。警察は捜査を続けて事件を検察官に送致(いわゆる書類送検、刑訴246条)し、検察官が起訴か不起訴かを決める。
逮捕された事件には、逮捕後48時間以内の送致(203条)、24時間以内の勾留請求(205条)、勾留10日と延長最大10日(208条)という時間制限があり、最大23日となる。在宅事件にはこの制限がなく、長期化することがある。
| 比較項目 | 在宅事件 | 逮捕・勾留される事件 |
|---|---|---|
| 身体拘束 | なし(自宅などで生活する) | あり(警察署の留置施設等に拘束される) |
| 時間制限 | 捜査期間について法律上の上限はない | 逮捕から最大で23日(203条・205条・208条) |
| 取調べへの出頭 | 逮捕・勾留されていなければ拒否・退去できる(198条1項ただし書) | 身体拘束を受けている |
| 被疑者国選弁護 | 対象外(37条の2) | 勾留状が発せられた場合は請求できる(37条の2) |
警察から呼び出されたら、必ず出頭しなければならないのか
警察や検察官の出頭要求は、逮捕・勾留されていない限り、拒むことも、出頭後にいつでも退去することもできる(刑訴198条1項ただし書)。ただし、何も対応しなくてよいという意味ではない。
正当な理由なく出頭要求に応じない場合や、逃亡・罪証隠滅のおそれが疑われる場合には、裁判官の発する逮捕状により逮捕される可能性がある(199条1項)。ただし、裁判官は明らかに逮捕の必要がないと認めるときは逮捕状を発しない(同条2項ただし書)ため、定まった住居があり呼び出しに誠実に応じていることは、有利な事情になる。反対に、連絡を絶つ、関係者に供述を合わせるよう働きかける、証拠を処分するといった行動は、在宅のまま進む可能性を損なう。
日程の都合がつかないときは、理由を伝えて調整する。出頭前に、容疑の内容と通訳の手配を確認し、弁護人に相談してから日程を決めることが望ましい。
取調べでは、何に気をつければよいのか
取調べでは黙秘権があり、調書は内容を確認したうえで、誤りがなければ署名押印する。納得できないときは署名を拒むことができる(刑訴198条)。
取調官は、取調べの前に、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない(198条2項)。黙秘権は憲法38条1項にも根拠がある。調書は、被疑者に閲覧させ又は読み聞かせて誤りがないかを問い、被疑者は増減変更を申し立てることができ(同条4項)、署名押印を拒絶することもできる(同条5項)。
日本語が十分でない場合は、通訳を求め、調書の内容を母語で説明してもらい、理解してから署名する。いったん署名した調書は、後から争うことが難しくなる場合がある。スマートフォンなどの任意提出は、提出するかどうかを本人が判断できる(221条)。令状がある場合は別であり(218条)、範囲を確認する。
在宅事件は、どのような流れで終わるのか
在宅事件は、警察の捜査後に書類送検され、検察官が起訴・略式命令の請求・不起訴のいずれかを決めて終了する。
略式手続は書面審理だけで終わるが、略式命令による罰金も有罪の裁判である。検察官は請求の前に、被疑者へ手続を説明し、異議がないことを書面で確認する(461条の2)。書面に署名する前に弁護人に相談することが重要である。不服があるときは、告知を受けた日から14日以内に正式裁判を請求できる(465条)。
| 処分 | 内容 | 根拠 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 起訴(公判請求) | 起訴状により公判が開かれ、判決が言い渡される | 刑訴256条 | 有罪判決が確定すれば前科になる |
| 略式命令の請求 | 書面審理で100万円以下の罰金または科料が科される | 461条・461条の2 | 罰金も有罪であり、前科になる |
| 不起訴 | 犯罪の嫌疑がない場合のほか、訴追を必要としない場合(起訴猶予)を含む | 248条 | 裁判は開かれず、有罪の判決も出ない |
外国籍の方は、在宅事件でも在留資格にどう影響するのか
外国籍の方は、在宅事件でも、最終的な刑事処分の内容によって、在留期間の更新・永住の審査や退去強制の可否に影響が及ぶ場合がある。
国または地方公共団体の職員は、職務の遂行にあたり、退去強制事由に該当すると思料する外国人を知ったときは、通報しなければならない(入管法62条2項)。在留期間を超えて残留している場合などは、入管に情報が伝わる前提で考える。退去強制の手続は、刑事手続が行われていても、収容しない形で進められることがある(63条1項)。
在留期間の満了日が近いときは、更新申請を忘れないことが重要である。更新も変更も受けずに期間を経過して残留すると、退去強制事由(24条4号ロ)にあたる。満了日までに更新を申請していれば、一定の期間は引き続き在留できる(20条6項・21条4項)。有罪となった場合の影響は、罰金・執行猶予・実刑で異なり、関連記事「前科がつくと在留期間更新・永住はどうなるか」で解説している。
家族が国外にいる場合や、帰国したい場合はどうすればよいのか
本人が日本にいて家族が国外にいる場合でも、家族は独立して弁護人を選任でき(刑訴30条2項)、微信などで弁護士と連絡を取ることができる。
被疑者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹などは、独立して弁護人を選任できる(30条2項)。家族が中国にいて来日できない場合でも、弁護士から状況の説明を受けることはできる。委任の具体的な方法は、相談時に確認する。
在宅事件では自由に出国できるように見えるが、安易な帰国はすすめられない。捜査は続くため、呼び出しに応じられなければ手続に支障が出る。死刑・無期または長期3年以上の拘禁刑に当たる罪で訴追されている者などは、関係機関の通知があれば出国確認が留保されることもある(入管法25条の2)。
弁護士に相談すべきタイミングはいつか
警察から連絡を受けた時点で相談するのが望ましく、遅くとも最初の取調べの前に相談しておきたい。
在宅事件は被疑者国選弁護の対象にならないため(刑訴37条の2は勾留状が発せられた場合を対象とする)、弁護人が必要なときは自分で選任する。起訴後は、貧困その他の事由により弁護人を選任できないとき、国選弁護人を請求できる(36条)。
弁護士を選ぶときは、第1に外国人の刑事事件と入管の双方を扱っているか、第2に母語で相談でき通訳が確保されているか、第3に処分の見通しと在留への影響を事案に即して説明してくれるか、を確認するとよい。
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の弁護士松村大介(第一東京弁護士会所属・登録番号59077)は、外国人の刑事事件と入管(在留特別許可・退去強制)を取り扱い、中国語での相談に対応している(専属通訳が常駐し、中国律師が在籍)。微信IDはmatsumura1119である。
よくある質問
警察に呼ばれたが、行かないとどうなるのか。
逮捕・勾留されていなければ出頭を拒むことはできる(刑訴198条1項ただし書)。ただし、正当な理由なく応じ続けると、逮捕の必要性を判断する材料になり得る(199条)。弁護人に相談して調整するのが望ましい。
在宅事件なら、前科はつかないのか。
そうとは限らない。不起訴(起訴猶予を含む)なら有罪にならないが、起訴されて有罪が確定した場合や、略式命令で罰金が科された場合は、前科になる。
在宅事件に国選弁護人はつくのか。
捜査段階の被疑者国選弁護は勾留状が発せられた場合が対象であり(刑訴37条の2)、在宅事件は対象外である。起訴後は、要件を満たせば国選弁護人を請求できる(36条)。
在宅事件の間に、母国へ一時帰国してもよいのか。
捜査は続くため、出国確認が留保される場合がある(入管法25条の2)ほか、呼び出しに応じられず手続に支障が出るおそれがある。出国前に弁護士に相談してほしい。
根拠条文・出典
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第30条・第37条の2・第198条・第199条・第203条・第205条・第208条・第218条・第221条・第246条・第248条・第250条・第256条・第461条・第461条の2・第465条(e-Gov法令検索)
- 日本国憲法第38条第1項(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第20条第6項・第21条第4項・第24条・第25条・第25条の2・第62条・第63条(e-Gov法令検索)
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(出入国在留管理庁ウェブサイト)
ご相談について
ご家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた、という場合は、早い段階でご連絡ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。微信(WeChat)ID:matsumura1119。中国人の刑事事件|刑事事件と在留資格|お問い合わせ
最終更新:2026年10月7日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区) 微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な法律情報であり、個別の事案の結論は具体的な事情によって異なる。
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