入管・外国人刑事事件の法律相談の前に準備するもの|場面別チェックリスト
2026/09/19
入管や外国人の刑事事件の相談には、在留カードと旅券、警察や入管から受け取った書類、経緯を日付順に並べたメモの3つを持っていけば、初回から具体的な見通しを話し合えます。在留特別許可の申請は退去強制対象者との認定に服した日から3日以内にしないと退去強制令書が発付され(入管法47条5項2号)、取消訴訟は処分を知った日から6か月以内に限られる(行政事件訴訟法14条1項)など、期限の短い手続があります。資料がそろうのを待たずに相談してください。
- どの場面でも、在留カード・旅券、在留資格と期限、家族構成、経緯の時系列メモを整理しておく
- 警察や入管から受け取った書類は、封筒も含めて受け取った日が分かる状態で持っていく
- 逮捕の場面では、勾留請求から最長20日のうちに起訴するかどうかが決まる
- 在留特別許可は、退去強制令書が発付された後は申請できない
- 中国本土の書類は公証書と日本語訳が必要になることが多く、取り寄せに時間がかかる
相談の前に、どの場面でも共通して整理しておくことは何ですか?
在留カードと旅券、現在の在留資格と在留期限、家族構成、そしてこれまでの経緯を日付順に並べたメモの4つです。この4つがあれば、弁護士は最初の相談で、どの手続がどの段階まで進んでいるかを判断できます。
| 整理しておくこと | 具体的な中身 | 弁護士が見る点 |
|---|---|---|
| 在留カード・旅券 | 在留カードの表と裏、旅券の身分事項のページ、査証と出入国の記録があるページ(写しや写真で足ります) | 在留資格の種類、入国の時期と方法、正規に入国したかどうか |
| 在留資格と在留期限 | 現在の在留資格、期限の日付、更新や変更を申請中かどうか、過去の更新・変更の履歴 | 期限を過ぎているか、申請中の特例期間の中にいるか |
| 家族構成 | 日本にいる配偶者・子・親の国籍と在留資格、同居の有無、子の年齢と学校 | 在留特別許可の考慮事情(家族関係)、監理人や身元保証人になれる人がいるか |
| 経緯の時系列メモ | 入国から現在までの出来事を、年月日・出来事・手元にある資料の3列で書いたもの | 期限の起算日、説明が食い違いやすい点 |
| 過去の手続 | 過去の逮捕・起訴・罰金、入管での呼出し、退去強制や出国命令で出国したことの有無 | 退去強制事由や出国命令の要件に関わる事実 |
時系列メモは、正確な文章でなくてかまいません。覚えていない日付は「2024年春ごろ」、分からないことは「不明」と書いておけば足ります。後から記憶で埋めた日付と、書類で確かめた日付を区別しておくと、入管や捜査機関での説明と食い違うことを防げます。本人が逮捕や収容をされていて在留カードが手元にないときは、在留カードの番号や、以前に撮った写真でも役に立ちます。
家族が逮捕されたときは、何を持って相談に行けばよいですか?
逮捕された日時と場所、留置されている警察署の名前、警察から聞いた罪名の3点が分かれば相談できます。資料がそろうのを待つ必要はありません。
| 持っていく資料 | 本人の在留カードと旅券の写し(自宅にあれば)、警察からの連絡を書き留めたメモ(警察署名、担当者、電話番号)、差入れをした場合はその記録 |
|---|---|
| 確認しておく事実 | 逮捕の日時と場所、罪名、当番弁護士や国選弁護人が付いているか、接見禁止が付いているか、本人の在留資格と在留期限、本人の使用言語 |
| 急ぐ理由と期限 | 警察は逮捕から48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内(身体拘束から72時間以内)に勾留を請求します(刑事訴訟法203条1項、205条1項・2項)。勾留は請求の日から10日、延長されても通じて10日までで(同法208条)、起訴するかどうかはこの期間のうちに決まります。「留学」など別表第一の在留資格では執行猶予でも退去強制事由に当たる罪があり(入管法24条4号の2)、薬物事犯は罰金でも該当します(同条4号チ)。 |
接見禁止が付いて家族が面会できないときでも、弁護人となろうとする弁護士は立会人なしで接見できます(刑事訴訟法39条1項)。勾留の仕組みは勾留とはで説明しています。
入管から呼出しを受けた、違反調査が始まったときは何を準備しますか?
届いた呼出しの書面を封筒ごと持っていき、何の件で呼ばれたと考えられるかを、仕事や学校の実態が分かる資料と合わせて説明できるようにしておきます。
| 持っていく資料 | 呼出しの書面と封筒、在留カード、雇用契約書・給与明細・勤務シフト(資格外活動が疑われている場合)、学校の在籍・出席の証明、以前に入管へ提出した書類の控え |
|---|---|
| 確認しておく事実 | 呼出しの日時と部署、担当者の名前、電話で告げられた内容、過去に入管で供述調書に署名したことがあるか、在留期限を過ぎているか |
| 急ぐ理由と期限 | 入国警備官は容疑者の出頭を求めて取り調べ、供述を調書に記載します(入管法29条1項・2項)。調書はその後の審査の資料になるため、出頭の前に説明する事実を整理しておくことが大切です。不法残留の場合、違反調査の開始後でも、退去強制対象者に該当するとの通知を受ける前に速やかに出国する意思を表明すれば、出国命令の対象となる余地があります(同法24条の3第1号ロ)。 |
在留期間の更新や在留資格の変更が不許可になったときは、何を持っていけばよいですか?
不許可の通知書と、申請のときに提出した書類の控え一式です。不許可の理由と提出した資料を照らし合わせて、再申請で足りるのか、訴訟を考えるべきかを判断します。
| 持っていく資料 | 不許可の通知書、申請書と提出資料の控え、旅券(出国準備のための在留資格の指定書などが付いていればそのページ)、在留カード |
|---|---|
| 確認しておく事実 | 申請した日、もとの在留期限、不許可を告げられた日、窓口で説明された理由、その後に指定された在留期間 |
| 急ぐ理由と期限 | 更新・変更の申請中は、もとの期限を過ぎても、処分の時か期限から2か月を経過する日のいずれか早い時までは在留できます(入管法20条6項、21条4項)。不許可の後はこの根拠がなくなります。入管の処分には審査請求ができないため(行政不服審査法7条1項10号)、争うときは処分を知った日から6か月以内に取消訴訟を起こします(行政事件訴訟法14条1項)。 |
家族が収容されたとき、監理措置を求めたいときは何を準備しますか?
収容の日と施設を確かめたうえで、監理人になれる人の資料と、家族関係・住居・生活費の当てを示す資料をそろえます。監理措置の判断では、逃亡のおそれと収容による不利益の程度が考慮されるため(入管法44条の2第1項・第6項)、その両方を示す資料が中心になります。
| 持っていく資料 | 収容を知らせる書面や面会の記録、婚姻・出生などの家族関係の資料、子の在学証明、住居の賃貸借契約書、監理人候補の身分証・住民票・収入の資料、本人の病状が分かる診断書 |
|---|---|
| 確認しておく事実 | 収容された日と施設、収容令書による収容か退去強制令書による収容か、監理人を引き受けてくれる人がいるか、保証金として用意できる額 |
| 急ぐ理由と期限 | 収容令書による収容は30日以内で、やむを得ない事由があれば30日を限り延長されます(入管法41条1項)。監理措置の保証金は300万円を超えない範囲で定められることがあります(同法44条の2第2項)。健康上・人道上の理由があれば仮放免の請求も考えられ、配偶者や直系の親族、兄弟姉妹も請求できます(同法54条1項・2項)。 |
監理人の役割と責務は監理措置とはで説明しています。
在留特別許可を申請したい、出頭申告を考えているときは何を準備しますか?
日本で暮らしてきた事実と家族関係を裏付ける資料を、できるだけ古いものから集めます。在留特別許可の判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間などが考慮されるため(入管法50条5項)、これに沿って資料を並べます。
| 持っていく資料 | 旅券(有効期限が切れていても)、婚姻・出生・認知の資料、子の在学証明や母子手帳、住民票、課税・納税証明書、勤務先の証明、病院の診断書、日本人や永住者の知人の陳述書 |
|---|---|
| 確認しておく事実 | 入国した日と方法(正規に上陸したか)、在留期限が切れた日、過去の逮捕や有罪判決、過去に退去強制や出国命令で出国したことがあるか、帰国した場合の生活の見通し |
| 急ぐ理由と期限 | 在留特別許可を申請できるのは、収容令書で収容された人か監理措置決定を受けた人です(入管法50条2項)。退去強制対象者に該当するとの認定に服した日から3日以内に申請しないと退去強制令書が発付され(同法47条5項2号)、発付の後は申請できません(同法50条3項)。出国を選ぶ場合、出国命令の要件(同法24条の3)に当たるかどうかで上陸拒否期間が変わります。 |
在留を目指すか出国するかを決める前の段階で相談しておくと、選べる手続を比べて決められます。出頭の方法はオーバーステイの出頭申告をご覧ください。
退去強制令書が発付されたときは、何を急いで持っていけばよいですか?
退去強制令書と、在留特別許可をしない処分の通知書(理由が書かれた書面)、それまでに入管へ提出した資料の控えです。受け取った日が期限の起算点になるため、日付を必ずメモしておいてください。
| 持っていく資料 | 退去強制令書の写し、在留特別許可をしない旨の通知書(入管法50条10項により理由が付されます)、異議の申出の裁決の通知、提出資料の控え一式 |
|---|---|
| 確認しておく事実 | 令書を受け取った日(処分を知った日)、収容されているか、送還の予定を告げられているか、家族の状況に令書発付後の変化があるか |
| 急ぐ理由と期限 | 取消訴訟は処分を知った日から6か月、処分の日から1年を過ぎると起こせません(行政事件訴訟法14条1項・2項)。訴訟を起こしても送還は止まらないため、執行停止の申立て(同法25条2項)を合わせて検討します。令書発付後も監理措置(入管法52条の2)や仮放免(同法54条)を求めることができます。 |
中国本土から取り寄せる書類には、公証書や翻訳が必要ですか?
家族関係や身分を証明する中国の書類は、多くの場合、公証処が発行する公証書の形で用意し、日本語訳を付けます。入管法令にもとづいて入管に提出する外国語の資料には訳文を付けることとされています(入管法施行規則62条)。
| 証明したいこと | 中国本土で用意する書類の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 出生・親子関係 | 出生公证、亲属关系公证 | 子の在留特別許可や監理人との関係を示すときに使います |
| 婚姻・離婚 | 结婚证・离婚证の公证、婚姻状况の公证 | 日本で婚姻の届出をする場合は、届出先で別の書類を求められることがあります |
| 犯罪歴がないこと | 无犯罪记录证明とその公证 | 発行先や必要な手続は地域によって異なります |
| 学歴・職歴 | 毕业证书の公证、在职证明 | 在留資格の変更や再申請で求められることがあります |
公証書は、本人が日本にいて収容されていると自分では申請できないため、中国にいる家族に委託して取り寄せることになり、時間がかかることがあります。提出先によってはアポスティーユ(中国は2023年11月からハーグ条約の締約国です)の付いたものを求められることもあります。どの書類を、どの形式で、いつまでに用意するかは期限との関係で決まるため、取り寄せを始める前に相談してください。翻訳には、翻訳者の氏名と翻訳した日を記載しておくのが一般的です。
相談の当日、弁護士に何を聞けばよいですか?
「次の期限はいつか」と「それまでに誰が何をするか」の2つを、必ず相談の中で確かめてください。この2つが分かれば、相談の後にすべきことがはっきりします。
- いまどの手続のどの段階にいて、次の期限はいつか
- 刑事の結果(不起訴、罰金、執行猶予、実刑)ごとに、在留にどのような影響があるか
- 在留を目指す場合と出国する場合で、上陸拒否期間や家族への影響がどう違うか
- 追加で集める資料は何で、家族が用意するもの、弁護士が取り寄せるものはどれか
- 取調べや入管での聴取で、本人にどう伝えればよいか
- 本人や海外の家族への報告は、どの言語・方法で受けられるか
弁護士の選び方そのものは外国人事件の弁護士の選び方にまとめています。舟渡国際法律事務所では中国語の専属通訳が常駐しており、資料が中国語のままでも相談に応じています。ご相談はお問い合わせ、電話 050-7587-4639、微信ID matsumura1119 から受け付けています。
よくある質問
資料がそろっていなくても相談してよいですか?
相談できます。期限の短い手続では、資料がそろうのを待つより先に相談したほうが、選べる手段が残ります。在留カードの写しと、入管や警察から受け取った書類があれば、最初の見通しは話せます。
在留カードや旅券を警察や入管に預けていて手元にありません。どうすればよいですか?
在留カードの番号、以前に撮った写真、過去の申請書の控えなど、分かる範囲の情報で足ります。どこに預けているかも伝えてください。
中国語の書類は、相談の前に日本語に翻訳しておく必要がありますか?
相談の段階では翻訳は不要です。入管に提出する段階では訳文を付けることとされているため(入管法施行規則62条)、どの書類を翻訳するかは相談の中で決めます。
本人ではなく家族だけで相談に行ってもよいですか?
家族だけでも相談できます。本人が逮捕や収容をされている場合は、家族が把握している事実と資料をもとに相談し、弁護士が本人に接見や面会をして事情を確かめます。
入管の呼出しの日が迫っています。出頭する前に相談したほうがよいですか?
出頭の前の相談をおすすめします。入管では供述が調書に記載され(入管法29条2項)、その後の手続の資料になるため、説明する事実を事前に整理しておくことが大切です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年9月19日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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