外国人の刑事事件で弁護士に相談すべきとき|接見・不起訴・在留への影響まで
2026/09/11
外国人の方やそのご家族が日本で逮捕された、警察から呼出しを受けた、起訴されるかもしれないという場面では、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが有益である。弁護士は、接見と取調べへの助言、勾留に対する不服申立て、示談、不起訴に向けた活動、公判での弁護を行い、あわせて刑事処分が在留資格や退去強制に与える影響を刑事段階から見通して方針を立てる。
- 起訴前の身体拘束は、逮捕から最大で23日間ほど続きます
- 執行猶予でも退去強制事由に当たる罪と在留資格があります
- 在留への影響を考えると、不起訴が最優先の目標になります
- 取調べの通訳は捜査機関が手配するため、本人側の確認が大切です
- 弁護士は刑事と入管の両面から処分の見通しを説明します
外国人の刑事事件で弁護士に相談すべきなのはどんなときか
ご本人やご家族が逮捕されたとき、警察から出頭や事情聴取を求められたとき、起訴されそうなときは、弁護士に相談すべき場面です。外国人の場合は、処分の結果によって在留資格を失ったり退去強制の対象になったりすることがあるため、早い段階から入管手続への影響を踏まえて動くことが大切です。代表的な場面を表にまとめます。
| 場面 | 放置した場合に起こりうること | 弁護士がすること |
|---|---|---|
| 家族が逮捕されたと連絡があった | 本人の状況や容疑が分からないまま取調べが進み、不利な内容の供述調書が作られるおそれがあります | 速やかに接見し、容疑の内容、今後の流れ、取調べへの対応を本人の言語で伝えます |
| 警察から任意の出頭や事情聴取を求められた | 準備のないまま話した内容が、後の逮捕や起訴の根拠とされることがあります | 事前に事実関係を聴き取り、何をどう話すか、黙秘を選ぶかを含めて助言します |
| 勾留が決まった、延長された | 身体拘束が長引き、仕事や学業、在留期間の更新などに支障が出ます | 勾留の要件を検討し、不服申立て(準抗告)や早期の釈放に向けた働きかけを行います |
| 被害者のいる事件で疑われている | 謝罪や被害回復の機会を逃し、起訴や重い処分につながりやすくなります | 本人に代わって被害者側と連絡を取り、示談の交渉を行います |
| 起訴されそうだ、または起訴された | 処分の内容によっては在留資格の喪失や退去強制につながります | 不起訴を求める意見書を提出し、起訴後は保釈請求と公判での弁護を行います |
| 薬物事件の疑いをかけられている | 罰金や執行猶予でも退去強制事由に当たり、上陸拒否も期間の定めのないものになりえます | 証拠を精査し、事実を争うかどうかを含めて方針を立てます |
弁護士に依頼すると何をしてもらえるのか
弁護士に依頼すると、逮捕直後の接見から、取調べへの助言、身体拘束からの解放、示談、不起訴に向けた活動、公判での弁護までを一貫して任せることができます。外国人の事件では、在留への影響の見通しと通訳への対応も加わります。
- 接見:警察官の立会いなしで本人と面会し、容疑の内容と本人の権利を説明します。ご家族の面会が禁止される接見禁止が付いていても、弁護士は接見できます。
- 取調べへの助言:黙秘権、供述調書への署名押印を拒める権利、調書の内容の確かめ方を、具体的な場面に即して伝えます。
- 通訳の問題への対応:取調べの通訳に疑問がある場合は、その内容を記録し、捜査機関に申入れを行います。
- 身体拘束からの解放:検察官に勾留請求をしないよう働きかけ、勾留決定に対しては準抗告を、起訴後は保釈請求を行います。
- 示談交渉:被害者のいる事件では、謝罪と被害弁償について交渉し、示談書を整えます。
- 不起訴に向けた活動:本人に有利な事情と資料を集め、検察官に意見書を提出します。
- 公判での弁護:証拠を検討し、事実を争う事件では尋問で問題点を明らかにし、事実を認める事件では情状を立証します。
- 在留への影響の見通し:在留資格の種類と見込まれる処分から、退去強制事由や在留審査への影響を整理し、刑事段階から入管手続を見据えた方針を立てます。
- 領事通報とご家族への連絡:逮捕された外国人は、領事関係に関するウィーン条約36条により自国の領事への通報を求めることができます。その希望を確認し、ご家族への状況説明も行います。
手続はどう進み、弁護士はどの段階で関わるのか
刑事手続は、逮捕、送致、勾留、起訴または不起訴の判断、公判という順に進み、弁護士はそのすべての段階で関わることができます。とくに起訴されるかどうかが決まるまでの期間は短く、この間の活動が処分と在留の両方に影響します。
- 逮捕:警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官へ送致します。この段階から接見ができ、最初の取調べの前後に助言を受けることが大切です。
- 送致と勾留請求:検察官は送致を受けてから24時間以内に、勾留を請求するかどうかを判断します。弁護士は勾留請求をしないよう意見を述べることができます。
- 勾留:裁判官が勾留を決めると原則10日間、延長されるとさらに最大10日間、身体拘束が続きます。準抗告、示談、不起訴を求める意見書の提出は、この期間に集中して行います。
- 起訴または不起訴の判断:検察官が、正式な起訴、略式手続による罰金、不起訴のいずれかを決めます。略式手続に応じるかどうかは、在留への影響も踏まえて検討します。
- 起訴後:保釈請求を行い、公判で弁護します。判決が罰金か、執行猶予か、実刑かによって、在留への影響が変わります。
- 刑事手続の後:退去強制事由に当たる場合は、入管の違反調査、収容または監理措置へと手続が移ることがあります。入管手続の詳しい流れは退去強制を弁護士に相談すべきときで解説しています。
刑事処分の種類によって在留への影響はどう違うのか
在留への影響は、刑事処分の種類、罪名、在留資格の種類の3つの組合せで大きく変わります。まず在留資格が「留学」「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」などの別表第一の資格か、「永住者」「日本人の配偶者等」などの別表第二の資格かを確認し、次に処分の種類と罪名を当てはめます。入管法24条のうち、刑事処分と結びつく主な退去強制事由を表にまとめます。
| 刑事処分 | 24条4号の2(別表第一の資格で、窃盗・詐欺・傷害・住居侵入・偽造などの一定の罪) | 24条4号チ(薬物関係法令違反) | 24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑の実刑) |
|---|---|---|---|
| 不起訴 | 該当しません | 該当しません | 該当しません |
| 罰金 | 該当しません(拘禁刑が要件のため) | 該当します | 該当しません |
| 拘禁刑・全部執行猶予 | 該当します | 該当します | 該当しません(全部執行猶予は除かれます) |
| 拘禁刑・実刑1年以下 | 該当します | 該当します | 該当しません |
| 拘禁刑・実刑1年超 | 該当します | 該当します | 該当します(別表第二の資格の人も対象です) |
この表から分かるとおり、別表第一の在留資格の人が一定の罪で拘禁刑に処せられた場合や、薬物事件で有罪となった場合は、執行猶予が付いても退去強制事由に当たります。そのため当事務所では、起訴前の段階で不起訴を得ることを最優先の目標としています。ただし、不起訴になっても、不法残留のように行為そのものが退去強制事由となる類型では、入管の手続が進むことがあります。無期又は1年を超える拘禁刑の実刑を受けた人については、在留特別許可は人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限られます(入管法50条1項ただし書)。個別の在留資格ごとの整理は外国人の刑事事件と在留もご覧ください。
取調べと通訳について何に気を付ければよいのか
取調べでは、話した内容が通訳を介して日本語の供述調書にまとめられるため、調書の内容が本人の言いたいことと一致しているかを慎重に確かめる必要があります。取調べの通訳は捜査機関が手配しており、言葉の選び方やニュアンスの違いがそのまま調書に残ることがあります。内容が違うと感じたら訂正を求めることができ、署名押印を拒むこともできます。どの点を話し、どの点で黙秘するかは、接見で弁護士と相談して決めることをお勧めします。当事務所では、中国語の専属通訳が接見に同行し、本人の立場で言葉のずれがないかを確認します。
行政書士や支援団体への相談とどう違うのか
刑事事件で弁護人として活動できるのは弁護士であり、ここが行政書士や支援団体との役割の違いです。それぞれの主な役割は次のとおりで、事案に応じて連携することがあります。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 刑事事件の弁護人としての接見、身体拘束からの解放に向けた活動、示談交渉、公判での弁護。入管手続では、代理人としての活動、退去強制令書発付処分などに対する取消訴訟や執行停止の申立て |
| 行政書士 | 在留資格の変更や在留期間の更新などの申請書類の作成、申請取次 |
| 支援団体 | 生活面の支援、情報提供、面会活動など。活動内容は団体ごとに異なります |
弁護士を選ぶときに何を確かめればよいか
外国人の刑事事件で弁護士を選ぶときは、刑事と入管の両方を見通せるか、通訳の体制があるか、接見にすぐ動けるかを確かめることが大切です。次の点を相談の際に確認してみてください。
- 刑事処分が在留資格や退去強制に与える影響まで説明できるか
- 起訴前の不起訴に向けた活動を重視しているか
- 入管手続や取消訴訟、執行停止の申立てまで担えるか
- 本人の言語で話せる通訳の体制があるか
- 逮捕直後の接見に速やかに動けるか、遠方の警察署にも対応できるか
- 誰が実際に接見し、書面を書き、法廷に立つのか
- 見通しとリスクを率直に説明し、有利な点だけを強調しないか
選び方の詳しい考え方は外国人事件の弁護士の選び方で解説しています。
舟渡国際法律事務所ではどのように対応するか
舟渡国際法律事務所は、外国人の刑事事件と入管手続を重点的に取り扱い、刑事手続と入管手続を一体として見通した弁護方針を採っています。執行猶予でも退去強制になる類型があるため、起訴前の段階から不起訴を最優先の目標として活動します。接見の初動から公判、その後の入管手続まで、弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・2019年登録)が直接担当し、事務員や若手弁護士に任せることはありません。
外国人事件に通じた中国語の専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者本人の立場で動く通訳を利用できます。中国語以外の言語は事案に応じて通訳人を手配します。全国からのご相談に対応し、手続後の在留資格の手続は提携の行政書士と連携して対応します。
刑事事件の解決事例として、次のようなものがあります。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案で、各回の取調べへの対応を本人と打ち合わせ、事実関係に即した主張を尽くしました。その結果、全件で不起訴処分となりました。
- 覚醒剤の営利目的所持で起訴された事件で、捜査で集められた証拠を丹念に分析し、公判での尋問を通じて問題点を明らかにしました。その結果、無罪判決を得ました。
ほかの事例は解決事例でご紹介しています。
費用はどのように決まるのか
弁護士費用は、事案の内容、緊急性、手続の段階等により個別にお見積もりします。身体拘束の有無、事実を争うか、示談や入管手続への対応が必要かによって、活動の量が変わるためです。ご依頼の前に、活動の範囲と費用の内訳をご説明します。
よくある質問
家族が逮捕されましたが、日本語が十分に話せません。何から始めればよいですか。
まず、逮捕された方がどの警察署にいるか、どのような容疑かを分かる範囲で確認し、弁護士にご連絡ください。弁護士が接見すれば、本人の状況と今後の見通しをご家族にお伝えできます。当事務所では中国語でのご相談にも対応しています。
罰金で済めば、在留に影響はないのですか。
罰金であれば、別表第一の在留資格の人の一定の罪(24条4号の2)や、1年を超える実刑(24条4号リ)には当たりません。ただし、薬物事件は罰金でも退去強制事由に当たります。また、退去強制事由に当たらなくても、在留期間の更新などの審査で考慮されることがあるため、略式手続に応じる前に弁護士に相談することをお勧めします。
取調べで通訳を通して話した内容が、正しく伝わっているか心配です。
供述調書は日本語で作られるため、内容が違うと感じたら訂正を求め、納得できなければ署名押印を拒むことができます。接見の際に、どの質問にどう答えたかを弁護士に伝えてください。通訳に問題があると考えられる場合は、弁護士から捜査機関に申入れを行います。
すでに国選弁護人が付いていますが、私選弁護人に相談できますか。
ご相談いただくことは可能です。私選弁護人を選任するかどうかは、ご本人とご家族が決めることができ、選任した場合の手続もご相談の際にご説明します。
東京以外の警察署に勾留されていても依頼できますか。
依頼いただけます。当事務所は東京以外の警察署や入管施設の事件も受任しています。所在地と事件の状況を伺い、接見の日程をご相談します。
関連ページ:外国人の刑事事件と在留/外国人の刑事事件・在留のQ&A/不起訴処分とは/勾留とは/接見禁止とは/執行猶予とは/入管手続を弁護士に相談すべきとき/お問い合わせ
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年9月11日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119