監理措置とは|収容に代わる措置の要件・監理人・仮放免との違いを弁護士が解説
2026/09/10
監理措置とは、退去強制の手続の対象となった外国人を収容することなく、監理人による監理のもとで社会内での生活を認めながら手続を進める措置をいう。(入管法44条の2)
- 令和6年6月10日に施行された、収容に代わる措置
- 主任審査官が収容の要否を個別に判断して決定する
- 親族や知人などの中から監理人が選定される
- 逃亡しないことなどの遵守事項が課される
- 被監理者は3か月を超えない間隔で生活状況などを届け出る。退去強制令書により収容が3か月続いた人については、監理措置への移行が検討される
- 監理措置決定をしないときは理由を付した書面で通知される(入管法44条の2第9項)
- 不許可は取消訴訟、義務付けの訴え、国家賠償請求で争う余地がある
※請求の手続、監理人の義務、就労、取消し、不許可後の争い方までを通して知りたい方は「監理措置の総合ガイド」を、仮放免との違いは「仮放免とは」をご覧ください。
監理措置はなぜ設けられたのか
収容によらずに退去強制の手続を進める選択肢を、法律上の制度として設けるために導入された。従来の運用では収容が原則とされ、送還が実現しない事案で収容が長期に及ぶ例があった。令和5年の法改正は、収容の要否を逃亡のおそれの程度などに応じて個別に判断する仕組みに改め、その受け皿として監理措置を新設した。出入国在留管理庁の統計によると、令和6年6月10日から同年末までの監理措置決定は1,123件で、退去強制令書の発付前が647件、発付後が476件であった。同じ期間の仮放免は127件であって、身柄の解放は監理措置が中心となっている。
監理措置は誰がどのように決めるのか
主任審査官が決定する。本人やその代理人から申請することもでき、職権による検討も行われる。判断にあたっては、逃亡のおそれ、証拠を隠滅するおそれ、生活の基盤、監理人となる者の有無と適格性などが考慮される。監理措置に付された後は、被監理者は主任審査官が定める日(3か月を超えない間隔)までに生活状況や監理人との連絡状況を届け出る義務を負い(44条の6・52条の5、施行規則36条の8)、遵守事項に違反するなど事情が変われば条件の変更や取消しが行われる。なお、3か月ごとの見直しが法律上定められているのは、退去強制令書により収容されている人についてであり、収容が3か月に達するごとに、監理措置に移行すべきかが検討される(52条の8)。
監理人には誰がなれるのか
本人を監理する者として適当と認められれば、資格の限定はない。実務では、親族、知人、支援者、雇用主、弁護士などが選定されている。前記の統計では、監理人の9割以上を親族または知人が占めた。監理人は、本人の生活状況などについて届け出る義務を負い、出入国在留管理庁から求められた場合には報告することが求められる。届出義務に違反した場合の過料の定めも置かれている。
どのような遵守事項が課されるのか
逃亡しないこと、証拠を隠滅しないこと、指定された住居に居住すること、出頭の求めに応じることなどが定められる。これに加えて、活動の範囲に制限が付されることがある。報酬を受ける活動は原則として認められないが、退去強制令書の発付前の監理措置では、生計を維持するために必要と認められる場合に許可されることがある。遵守事項に違反すると、監理措置の決定が取り消され、収容されることがある。
監理措置は仮放免とどう違うのか
監理措置は収容しないまま手続を進める措置であり、仮放免は収容されている者の身柄を一時的に解く措置である。令和5年の改正により、仮放免は健康上または人道上の理由などによる一時的な解放という位置づけに整理された。
| 項目 | 監理措置 | 仮放免 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 収容に代わる措置 | 収容の一時的な解除 |
| 主な判断要素 | 逃亡等のおそれ、監理人の有無 | 健康上または人道上の理由など |
| 監理人 | 必要 | 不要 |
| 見直し・届出 | 3か月を超えない間隔で生活状況等を届出。条件違反があれば取消し | 期間を定めて許可し、更新を要する |
| 報酬を受ける活動 | 令書発付前は許可されることがある | 認められない |
退去強制令書の発付前と発付後で何が違うのか
発付前は退去強制事由に該当するかどうかを審査している段階であり、発付後は送還に向けた段階であって、それぞれ別に規定が置かれている。発付前の監理措置は収容令書による収容に、発付後の監理措置は令書に基づく収容に代わるものである。発付後は、送還が可能になるまでの期間を社会内で過ごすことになる。もっとも、在留特別許可の申請ができるのは令書が発付される前までであり、発付後は申請することができない。
監理措置に付されると在留資格はどうなるのか
監理措置は在留資格を与える制度ではなく、退去強制の手続が続いている状態に変わりはない。在留資格が回復するわけではないため、原則として就労することはできず、行政サービスの取扱いにも制限が生じる。他方で、在留特別許可との関係は重要である。収容令書により収容されている者と監理措置の決定を受けている者には在留特別許可の申請権が認められており(入管法50条2項)、退去強制令書が発付された後は申請することができない(同条3項)。監理措置の段階でどこまで資料を整えられるかが、その後の結論を大きく左右する。
監理措置が認められなかったとき、どう争うのか
監理措置決定をしないときは、理由を付した書面で通知しなければならないとされている(入管法44条の2第9項)。退去強制令書の発付後の監理措置についても、同項が準用される(入管法52条の2第7項)。したがって、まず確認すべきは、その理由書に何が書かれているかである。
監理措置は、職権で付される場合のほか、本人の請求によって検討される。収容されている容疑者は、主任審査官に対し、自己を監理措置に付することを請求することができる(入管法44条の2第4項)。本人が16歳に満たない場合や、疾病その他の事由により自ら請求できない場合には、同居する配偶者、子、父又は母、その他の親族が、この順序で本人に代わって請求することができる(同条第5項)。退去強制令書の発付後についても、収容されている者又は仮放免されている者が同様に請求することができる(入管法52条の2第4項)。
法は、判断にあたって考慮すべき事情を明示している。退去強制令書の発付前は、逃亡し又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により受ける不利益の程度その他の事情である(入管法44条の2第1項、第6項)。発付後は、逃亡し又は不法就労活動をするおそれの程度、収容により受ける不利益の程度その他の事情である(入管法52条の2第1項、第5項)。
ここが争点になる。法が「収容により受ける不利益の程度」を考慮事情として明示している以上、健康状態、治療の必要性、家族の生活状況、就学や就労の状況は、判断において考慮されなければならない。理由を付した書面がこれらの事情にまったく触れておらず、逃亡のおそれを一般的に述べるにとどまる場合には、考慮すべき事情を考慮していないという主張が成り立つ余地がある。
| 比較の観点 | 退去強制令書の発付前 | 発付後 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 入管法44条の2 | 入管法52条の2 |
| 防止の対象 | 逃亡、証拠の隠滅 | 逃亡、不法就労活動 |
| 請求できる人 | 収容されている容疑者。一定の場合は同居する親族が代わって請求できる | 収容されている者又は仮放免されている者 |
| 不許可の理由付記 | 入管法44条の2第9項 | 入管法52条の2第7項による準用 |
なお、監理措置に付されている間は、入管法70条の不法残留等に該当しないものとみなされ、その間の在留は不法に在留することに該当しないものとみなされる(入管法44条の2第10項、52条の2第8項)。監理措置を求めることには、収容を免れること以外の意味もある。
不許可を裁判で争う方法にはどのようなものがあるか
取消訴訟、義務付けの訴えとこれに伴う仮の義務付けの申立て、国家賠償請求が考えられる。それぞれ要件が異なるため、事案に応じて組み合わせることになる。
| 手段 | 根拠 | 要件の要点 |
|---|---|---|
| 取消訴訟 | 行政事件訴訟法3条2項 | 判断の過程又は結論に違法があること |
| 義務付けの訴え | 行政事件訴訟法3条6項 | 監理措置決定をすべきことを求めるもの |
| 仮の義務付け | 行政事件訴訟法37条の5第1項 | 償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ本案について理由があるとみえること |
| 国家賠償請求 | 国家賠償法1条1項 | 公務員が職務を行うについて、故意又は過失により違法に損害を加えたこと |
実務上、最も高い壁になるのは仮の義務付けの要件である。「償うことのできない損害」は、執行停止における「重大な損害」(行政事件訴訟法25条2項)よりも厳格に解されている。収容が続くことによって具体的にどのような回復しがたい不利益が生じるのかを、診断書その他の資料によって疎明できるかどうかが分かれ目になる。健康上の問題がある場合には、収容が始まった時点から診療の記録を確保しておくことが重要である。
もっとも、監理措置決定をしない旨の通知が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかどうかについては、争いのある論点である。法が本人に請求権を認め(入管法44条の2第4項)、不許可の場合に理由を付した書面による通知を義務づけている(同条第9項)ことをどう評価するかが問題となる。この点を含め、主張の組み立ては事案ごとに検討する必要がある。
よくある質問
申請すれば必ず監理措置になりますか
そうとは限りません。逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、生活の基盤、監理人となる方の有無などを個別に判断して決められます。適切な監理人の候補を用意し、住居や生計の見通しを具体的な資料で示すことが、判断に影響します。見込みについては早い段階で弁護士にご相談ください。
監理人になると重い責任を負いますか
監理人は、本人の生活状況などを届け出る義務を負い、求めがあれば報告することが求められます。届出義務に違反した場合には過料の定めがあります。もっとも、本人の身柄を物理的に拘束する義務を負うものではありません。引き受ける前に義務の範囲を確認しておくことをお勧めします。
監理措置の間に働くことはできますか
原則として報酬を受ける活動は認められません。ただし退去強制令書の発付前の監理措置では、生計を維持するために必要と認められる場合に許可されることがあります。許可を受けずに就労すると、監理措置の決定が取り消される事由となりますので、必ず事前に確認してください。
保証金は返ってきますか
決定に際して保証金の納付を求められることがあります。遵守事項を守り、出頭の求めに応じて手続に協力していれば、手続の終了に伴って返還されます。逃亡した場合や遵守事項に違反した場合には没取されることがありますので、条件の内容を正確に把握しておく必要があります。
今は仮放免中ですが、監理措置に変えられますか
制度上、監理措置を求めて申請することは可能です。認められるかどうかは、逃亡のおそれの程度や監理人の有無などによる個別の判断となります。就労の可否など生活面の扱いが変わる場合がありますので、現在の条件と比較したうえで検討することをお勧めします。
監理措置が認められなかった場合、理由は教えてもらえますか
請求に対して監理措置決定をしないときは、理由を付した書面で通知されます(入管法44条の2第9項)。退去強制令書の発付後についても同様です(同法52条の2第7項)。まずこの書面を確認し、健康状態や家族の状況といった、法が考慮すべきものとしている事情に触れているかどうかを見ることになります。
本人が収容されていて自分で請求できない場合はどうすればよいですか
本人が16歳に満たない場合や、疾病その他の事由により自ら請求できない場合には、同居する配偶者、子、父又は母、その他の親族が、この順序で本人に代わって請求することができます(入管法44条の2第5項)。そのほか、代理人である弁護士を通じて手続を進めることもできます。
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最終更新日:2026年10月21日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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