在留特別許可とは|申請手続の法定化と考慮事情・不許可への対応を弁護士が解説
2026/09/10
在留特別許可とは、退去強制の手続の対象となった外国人について、退去強制事由に該当する場合であっても、法務大臣が特別に日本での在留を許可する処分をいう。(入管法50条)
- 退去強制事由に該当する者に例外的に在留を認める処分
- 令和5年改正で申請の手続が法律に定められた
- 考慮すべき事情が入管法50条5項に明示された
- 重い実刑がある場合は特別の事情が必要となる
- 不許可のときは理由を付した書面が交付される
在留特別許可はどのような場面で問題になるのか
退去強制事由に該当することが手続上確定した段階で、なお日本での在留を認めるかどうかとして判断される。違反審査と口頭審理を経てもなお退去強制事由に該当すると判断された場合、本人は法務大臣に異議を申し出ることができる。法務大臣は、異議に理由がないと判断するときであっても、なお在留を特別に許可することができる。この判断には従来から広い裁量があるとされてきたが、令和5年の改正により判断の枠組みが法律に書き込まれた。
令和5年の改正で何が変わったのか
申請手続の法定化、考慮事情の明示、不許可の理由付記の3点が主な変更点である。従来は在留特別許可を求める申請という手続が法律上存在せず、事実上の上申にとどまっていた。改正により、収容令書によって収容されている者と監理措置の決定を受けている者は、在留特別許可の申請をすることができることとなった(入管法50条2項)。他方で、退去強制令書が発付された後は申請することができない(同条3項)。また、許可をしない場合には、理由を付した書面が交付される(同条10項)。
どのような事情が考慮されるのか
在留を希望する理由、家族関係、素行など、法律に列挙された事情が考慮される。入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国することとなった経緯、在留している期間とその間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性を考慮するとともに、内外の諸情勢などその他の事情も考慮するものと定めている。
| 法律上の考慮事情 | 実務で用いられる主な資料 |
|---|---|
| 在留を希望する理由 | 本人、家族、勤務先の陳述書 |
| 家族関係 | 戸籍謄本、住民票、婚姻証明書、子の在学証明書 |
| 素行 | 納税証明書、社会保険の加入状況 |
| 入国することとなった経緯 | 旅券、出入国の記録、当時の事情に関する陳述書 |
| 在留期間と法的地位 | 在留カード、過去の許可の記録 |
| 退去強制の理由となった事実 | 判決書、処分に関する記録、示談書 |
| 人道上の配慮の必要性 | 診断書、本国の情勢に関する資料 |
重い前科があると許可されないのか
無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者などについては、特別の事情があると認められる場合に限って許可される(入管法50条1項ただし書)。全部について執行を猶予された場合はここでいう実刑には当たらない。通常の考慮事情に加えて特別の事情を要するため、判断は相当に厳しくなる。なお、薬物関係の退去強制事由(入管法24条4号チ)は、同項ただし書が列挙する対象には含まれていない。
手続はどのように進むのか
申請または職権により審査され、法務大臣が判断する。申請書のほか、家族関係や生活状況を示す資料を提出し、事情の聴取を受ける。許可されない場合には理由を付した書面が交付され、通常はこれと前後して退去強制令書が発付される。
不許可になった場合はどうすればよいのか
交付された書面の理由の記載を検討したうえで、行政訴訟による争い方を検討することになる。具体的には、法務大臣の裁決と退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起し、あわせて送還を止めるために執行停止を申し立てるのが基本的な形である。理由の記載が抽象的で、どの事情をどう評価したのか読み取れない場合には、その点自体を争う余地がある。
許可された場合、在留資格はどうなるのか
在留資格と在留期間が指定され、正規の在留に戻る。付与される在留資格は事案により異なり、日本人の配偶者等や定住者などが指定される例がある。もっとも、許可はその後の在留を保障するものではない。指定された在留期間が満了すれば更新の申請が必要となり、その際には素行が改めて審査される。刑事事件の段階から、示談、被害の弁償、再犯を防ぐための環境の整備といった資料を積み重ねておくことが、後の在留の手続にそのまま影響する。
よくある質問
在留特別許可の審査にはどのくらいかかりますか
事案によって大きく異なり、数か月で判断される例もあれば、1年を超える例もあります。提出資料の追完を求められた場合や、事情の聴取が複数回行われた場合には長くなる傾向があります。見通しは事案ごとに異なりますので、経緯を示す資料をお持ちのうえでご相談ください。
誰でも申請できるのですか
収容令書によって収容されている方と、監理措置の決定を受けている方が申請することができます(入管法50条2項)。退去強制令書が発付された後は申請することができません(同条3項)。したがって、令書が発付される前の段階で資料を整えることが重要になります。
日本人の配偶者がいれば必ず許可されますか
婚姻の事実だけで結論が決まるわけではありません。同居の実態、婚姻に至る経緯、生計の状況、子の有無や養育の状況などを含めて総合的に判断されます。実態を裏づける写真、送金や家計の記録、周囲の方の陳述書などを具体的に示すことが求められ、届出の事実だけでは足りません。
不許可の理由は教えてもらえますか
許可をしない場合には理由を付した書面が交付されます(入管法50条10項)。記載の程度は事案により差がありますが、この書面は不服を申し立てる際の出発点となります。受け取ったら破棄せず保管し、交付を受けた日が分かるものと併せて、速やかに内容の検討を受けてください。
薬物事件を起こした場合でも可能性はありますか
薬物関係の退去強制事由は有罪の判決があれば足り、罰金や執行猶予でも該当します。上陸拒否についても年限の定めがなく(入管法5条1項5号)、判断は厳しくなります。もっとも入管法50条1項ただし書が列挙する対象には含まれておらず、他の事情との総合判断となります。
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最終更新日:2026年9月10日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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