経営・管理ビザで飲酒運転・無免許運転をしたら|退去強制・更新・会社の責任
2026/09/10
飲酒運転や無免許運転は道路交通法違反であり、入管法24条4号の2の列挙罪には含まれていません。そのため、経営・管理の在留資格をお持ちの方が拘禁刑・執行猶予の判決を受けても、それだけで退去強制事由に当たることはなく、退去強制が問題になるのは1年を超える拘禁刑の実刑を受けた場合(4号リ)です。
もっとも、安心できる事件ではありません。更新審査では素行が問われ、刑期が1年以上なら執行猶予付きでも上陸拒否事由に当たります。さらに事故を起こせば、罪名次第で4号の2の対象に変わります。経営者の方の場合は、社用車の運転や従業員への飲酒の勧めなど、会社の責任に波及する点も見逃せません。
本記事の要点
- 酒気帯び運転・酒酔い運転・無免許運転は入管法24条4号の2の対象外で、執行猶予付きの拘禁刑でも同号の退去強制事由には当たりません。
- 1年を超える拘禁刑の実刑を受ければ、在留資格の種類を問わず4号リの退去強制事由に当たります。
- 飲酒運転で人を負傷させ危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条)となれば、拘禁刑で執行猶予付きでも退去強制事由です。
- 従業員の飲酒運転を命じ又は容認した経営者には独自の罰則があり、会社にも罰金が科されうる規定があります。
飲酒運転と無免許運転には、どのような罰則がありますか
アルコール濃度や酔いの程度で罪が分かれます。政令で定める程度以上のアルコールを保有して運転する酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(道交法117条の2の2第1項3号)、酒に酔った状態での運転(酒酔い運転)は5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(同法117条の2第1項1号)です。
無免許運転も3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(同法117条の2の2第1項1号)。見落とされやすいのが、国際運転免許証等での運転は上陸の日から1年以内に限られ、滞在が1年を超えた後の運転は無免許運転として扱われるという点です。来日当初から国際運転免許証で運転を続けてきた経営者の方は、特に注意が必要です。なお、中国は国際運転免許証の根拠となる1949年の道路交通条約の締約国ではないため、中国の運転免許証だけでは、上陸直後であっても国際運転免許証等による運転はできません(日本の免許への切替えが必要です)。
経営・管理の在留資格で、退去強制事由に当たるのはどの場合ですか
道路交通法違反だけであれば、1年を超える拘禁刑の実刑を受けた場合に限られます。経営・管理は別表第一の在留資格ですが、4号の2が列挙するのは刑法の一部の章と一部の特別法の罪であり、道路交通法は含まれていないためです。一方、事故を伴う場合は罪名によって結論が変わります。
| 罪名 | 4号の2の列挙 | 拘禁刑・全部執行猶予の場合 | 1年を超える実刑の場合 |
|---|---|---|---|
| 酒気帯び・酒酔い・無免許運転(道交法) | 含まれない | 退去強制事由に当たらない | 4号リに当たる |
| 準危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法3条) | 含まれない | 退去強制事由に当たらない | 4号リに当たる |
| 過失運転致死傷(同法5条) | 含まれない | 退去強制事由に当たらない | 4号リに当たる |
| 危険運転致死傷(同法2条)・無免許による加重(同法6条1項) | 含まれる | 4号の2に当たる | 4号の2及び4号リに当たる |
罰金であれば、いずれの罪名でも退去強制事由には当たりません。なお、令和8年7月21日に施行された自動車運転死傷処罰法の改正により、危険運転致死傷罪の「アルコール影響正常運転困難状態」には、呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上等のアルコールを保有する状態が含まれることが条文上明記されました。改正後の行為については、酔いの程度が数値で判断される場面が増えると考えられます。
在留期間の更新では、どのように評価されますか
退去強制事由に当たらない場合でも、更新が認められなければ在留を続けることはできません。在留期間の更新(入管法21条)は「相当の理由」があるときに許可され、その判断では素行が考慮されます。飲酒運転は重大な事故につながりうる行為として見られやすく、罰金や執行猶予付きの判決でも不利な事情になりえます。
経営者の場合は、運転免許の行政処分で本人が運転できなくなったとき、営業や配送をどう回すのかという事業運営上の問題も生じます。更新申請では、事業が継続していること、同様の違反を繰り返さないための具体策を講じていることを、資料とともに説明することが大切です。
社用車の運転や従業員の飲酒について、会社の責任はありますか
あります。道交法65条は、酒気を帯びた運転を禁止するだけでなく、運転するおそれのある人への車両の提供(2項)、酒類の提供や飲酒の勧め(3項)、飲酒運転の車への同乗の要求・依頼(4項)も禁止しています。会食の場で従業員にお酒を勧めた経営者自身が、処罰の対象となることがあるわけです。
さらに自動車の使用者は、業務に関して運転者に飲酒運転や無免許運転を命じ、又は容認してはならないとされ(同法75条1項)、違反すると罰則があります(同法117条の2第2項1号、117条の2の2第2項)。これらの違反には両罰規定があり、行為者のほか法人にも罰金刑が科されうる仕組みです(同法123条)。社用車で事故が起きれば、損害賠償の面でも会社の責任が問題になります。
出国や再入国に注意すべき点はありますか
刑期が1年以上の拘禁刑であれば、執行猶予付きでも上陸拒否事由(入管法5条1項4号)に当たります。飲酒運転は退去強制事由に当たらないことが多いぶん、この点が見落とされがちです。再入国許可を受けている場合などに特例(同法5条の2)が働く余地はありますが、出国して戻れなくなる事態を避けるため、渡航の前に確認をしておくべきです。
また、拘禁刑の判決宣告を受けた後は、裁判所の許可を受けなければ出国できません(刑訴法342条の2)。海外の拠点や取引先を行き来する経営者の方は、公判の日程と出張の予定が重なる前にご相談ください。上陸拒否の仕組みは上陸拒否期間とはで詳しく説明しています。
逮捕された場合、どのように手続が進みますか
逮捕されれば、最長で23日間、起訴・不起訴の判断まで身柄を拘束される可能性があります。逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、逮捕から72時間以内に勾留が請求され、勾留は10日、延長で最長さらに10日です(刑訴法203条・205条・208条)。起訴前の保釈はありません。
事故がなく、住居や勤務先が安定していれば、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むこともあります。検察官は略式命令による罰金(100万円以下、本人の同意が前提)とするか、正式裁判を求めるかを判断します。どちらになるかで在留への影響が変わるため、同意する前に弁護人と結論を確認することが大切です。
弁護活動では、何を目指しますか
被害者のいない飲酒運転・無免許運転では、示談によって処分を軽くするという方法がとれません。そこで、まず事実と証拠を丁寧に確認します。呼気検査の経過、運転の事実、国際運転免許証の有効期間の起算日などに争う余地があれば、嫌疑不十分による不起訴を求めます。
争いがない場合は、公判請求ではなく罰金にとどめること、拘禁刑でも1年未満の刑期と執行猶予にとどめることが、在留を守るうえで具体的な目標になります。飲酒運転をしない誓約、車の処分や運転代行の利用、社内の飲酒ルールの整備、ご家族の監督を示す資料などを検察官や裁判所に提出します。執行猶予の仕組みは執行猶予とはをご覧ください。
舟渡国際法律事務所に依頼すると、どのような対応を受けられますか
当事務所は、刑事処分の軽重がそのまま在留の見通しにつながることを踏まえ、起訴前の段階から不起訴又は罰金にとどめる活動を最優先に進めます。刑事と入管を別々に扱わず、更新申請までを視野に入れて方針を立てます。
- 接見から在留手続まで、松村大介弁護士本人が一貫して担当します。
- 外国人事件専属の中国語通訳が接見に同行し、取調べの状況や供述の内容をご本人と正確に確認します。
- 社用車の管理体制や社内ルールの見直しなど、再発防止策の組み立ても一緒に考えます。
- 中国本土のご家族との連絡には、微信(WeChat ID:matsumura1119)をご利用いただけます。
そのほかの疑問は外国人刑事・在留Q&Aにもまとめています。
よくある質問
酒気帯び運転で拘禁刑・執行猶予の判決を受けました。退去強制になりますか。
道路交通法違反は入管法24条4号の2の列挙に含まれていないため、執行猶予付きの拘禁刑であれば、それだけで退去強制事由に当たることはありません。退去強制事由となるのは、1年を超える拘禁刑の実刑(4号リ)の場合です。ただし更新審査への影響や、刑期が1年以上なら上陸拒否事由の問題は残ります。
国際運転免許証で運転していましたが、無免許運転になるのはどのような場合ですか。
国際運転免許証等で運転できるのは、上陸した日から1年以内に限られます。滞在期間が1年を超えた後に国際運転免許証で運転すると、無免許運転(道交法117条の2の2第1項1号。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)に当たります。日本で長く事業を営む方は、日本の運転免許の取得や外国免許の切替えが必要です。
会食で従業員にお酒を勧め、その従業員が車で帰りました。社長の私も罪になりますか。
運転するおそれのある人に酒類を提供し又は飲酒を勧めることは禁止されており(道交法65条3項)、その人が酒に酔った状態で運転すれば処罰の対象になります。業務に関して従業員の酒気帯び運転を命じ又は容認した場合は、使用者としての罰則があり、会社にも罰金が科されうる規定があります(同法123条)。
飲酒運転で事故を起こし、相手がけがをしました。在留への影響は変わりますか。
変わりえます。アルコールの影響で正常な運転が困難な状態で走行して人を負傷させた場合は危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条)となり、これは入管法24条4号の2に列挙されているため、拘禁刑に処せられれば執行猶予付きでも退去強制事由に当たります。どの罪名で処理されるかが在留を大きく左右します。
罰金を払い終えれば、在留期間の更新に影響はありませんか。
影響がなくなるとは言えません。更新(入管法21条)では素行が考慮され、罰金前科も不利な事情になりえます。事件の経緯、再発防止策、事業の状況を具体的に説明できるよう、申請前に準備しておくことをお勧めします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
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