外国人の刑事事件と在留(ビザ)を同じ弁護士に相談すべき理由|刑事と入管を分けると何が起きるか
2026/09/11
外国人の刑事事件では、刑事処分の内容がそのまま在留資格の結論を左右するため、刑事弁護と入管手続を同じ弁護士に相談し、逮捕直後から一つの方針で進めることが大切です。刑事と入管を別々に任せると、在留への影響を計算に入れない刑事の方針、入管手続で使える資料の取りこぼし、手続の切れ目での対応の遅れが起こりやすくなります。
- 罰金か拘禁刑か、執行猶予か実刑かによって、退去強制事由に当たるかどうかが変わる(入管法24条)。
- 不起訴でも、不法残留や不法就労助長のように行為そのもので退去強制事由となる類型がある。
- 示談書、反省文、身元引受書などは、刑事の処分でも在留特別許可の審査でも使われる資料になる。
- 在留特別許可の申請は、退去強制令書が発付される前までに限られる(入管法50条3項)。
外国人の刑事事件では、なぜ在留資格が問題になるのか
出入国管理及び難民認定法(入管法)が、一定の刑事処分を受けたことを退去強制事由として定めているからです。覚醒剤や大麻などの薬物に関する法令に違反して有罪の判決を受けた場合は、罰金や執行猶予でも退去強制事由に当たります(入管法24条4号チ)。その他の罪では、無期または1年を超える拘禁刑が基準となり、刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます(同号リ)。留学や就労系の資格など入管法別表第一の在留資格で在留する人は、窃盗、傷害、詐欺、文書偽造など一定の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても該当します(同条4号の2)。
退去強制事由に当たらない場合でも、罰金や執行猶予付きの判決を受けたことは、在留期間の更新や変更の審査で素行として考慮されることがあります。また、勾留が長引いて勤務先や学校を失うこと自体が、次の更新の基盤を崩すという二次的な危険もあります。永住者や日本人の配偶者等といった身分に基づく在留資格であっても、退去強制事由に当たれば手続は進みます。
刑事と入管を別々に任せると、何が起きるのか
起こりやすいのは、刑事では望ましい結果に見えても在留を失うという食い違いです。たとえば、罰金で早く事件を終わらせるという判断は、薬物事件では罰金でも退去強制事由に当たり、別の罪名では更新の審査で素行として考慮されるというように、同じ処分でも在留への意味は罪名と在留資格によって変わります。
- 方針の食い違い:刑事の弁護方針が、不起訴、罰金、執行猶予のどれを目指すかを在留への影響と切り離して決めてしまう。
- 資料の取りこぼし:刑事段階でしか集めにくい示談書や家族の陳述書が、入管の手続の時点で手元にない。
- 手続の切れ目:刑事手続が終わると入管の手続に移り、身体の拘束が続くことがあるが、その時点で入管側の準備が始まっていない。
不起訴にも、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予の別があります。起訴猶予は罪を犯したが起訴を猶予したという判断であり、在留審査で考慮され得ます。どの理由による不起訴を目指すかも、在留を見据えて検討すべき点です。
刑事段階で作る資料は、入管の手続でどのように使われるのか
示談書、被害弁償の記録、反省文、身元引受書、家族の陳述書、勤務先や学校の資料は、刑事の処分を軽くするための資料であると同時に、在留特別許可の審査で考慮される事情を示す資料にもなります。入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国することとなった経緯、在留している期間とその間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを考慮すると定めています。
判決書に書かれた量刑の理由も、その後の手続で事情を示す資料になります。さらに、無期または1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた人については、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限って在留特別許可が認められます(入管法50条1項ただし書)。実刑を避けられるかどうかは、刑事の結論であると同時に、在留特別許可の判断の枠組みも変える点です。
刑事手続が終わった後、入管の手続はどのように進むのか
退去強制事由に当たる場合は、刑事手続の終了後に入管の手続へ移り、身体の拘束が続くことがあります。手続は、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣の裁決の順に進みます。違反審査の認定に異議があれば通知を受けた日から3日以内に口頭審理を請求でき(入管法48条)、その判定に異議があればさらに3日以内に法務大臣に異議を申し出ることができます(同法49条)。
在留特別許可の申請は、収容令書により収容されている人か、監理措置の決定を受けている人がすることができ(同法50条2項)、退去強制令書が発付された後はできません(同条3項)。監理措置は、収容しないで監理人のもとで生活しながら手続を進める制度で、住居及び行動範囲の制限などの条件が付されます(同法44条の2)。
刑事と在留を同じ弁護士に相談するとき、何を確認すべきか
確認すべきなのは、刑事の方針を在留への影響と結びつけて説明できるか、刑事の終了後の入管の手続まで担当できるかという点です。次の表で、具体的な確認の仕方を整理します。
| 確認すべき点 | なぜ重要か | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 罪名と在留資格の組み合わせによる見通し | 同じ処分でも在留への影響が異なるため | 在留カードと容疑の内容を示し、処分ごとの在留への影響の説明を求める |
| 刑事段階からの資料づくり | 在留特別許可の考慮事情の立証に使われるため | どの資料をいつ集めるのかを尋ねる |
| 身柄解放に向けた活動 | 勾留が長引くと職や学籍を失い、在留の基盤が崩れるため | 勾留に対する準抗告や保釈請求の方針を確認する |
| 入管の手続と監理措置の担当 | 刑事の終了後すぐに入管の手続に移ることがあるため | 口頭審理、在留特別許可の申請、監理措置の請求まで担当するかを確認する |
| 行政訴訟への対応 | 不許可や令書の発付に対して訴訟で争う場面があるため | 取消訴訟と執行停止の申立ての担当範囲を確認する |
| 在留資格の申請手続との連携 | 更新や変更の申請が必要になることがあるため | 申請手続を誰が担うのか、連携先がどこかを確認する |
舟渡国際法律事務所ではどう対応しているか
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区、高田馬場駅から徒歩約5分)は、刑事弁護と入管手続・行政訴訟の双方を扱っています。代表弁護士の松村大介(第一東京弁護士会、登録番号59077)が、外国人の刑事事件を刑事手続の段階から入管手続への影響を見通して担当し、接見初日から示談書、反省文、監督誓約などの在留を守るための資料づくりを並行して進めます。
刑事処分が出た後も、在留期間の更新や変更への影響の検討、違反審査・口頭審理・異議の申出への対応、在留特別許可の申請、監理措置の利用まで対応し、在留資格の申請手続は提携の行政書士と連携します。中国語の専属通訳が常駐し、微信(WeChat ID:matsumura1119)で弁護士本人と直接やり取りできます。
刑事と在留にかかわる事件としては、退去強制処分の取消訴訟を最高裁判所まで争い、その後に入管から在留特別許可が認められた事件、不法残留で逮捕・起訴された方について、婚姻・認知の手続と刑事裁判での尋問を経て在留特別許可が認められた事例、大麻の所持・使用事件で自首の成立が量刑の理由で評価された執行猶予付き判決などがあります。結果は事案ごとに異なります。
よくある質問
執行猶予が付けば、在留資格は安全ですか。
安全とは言えません。薬物事件は執行猶予でも退去強制事由に当たり(入管法24条4号チ)、別表第一の在留資格の方は一定の罪で拘禁刑に処せられると執行猶予でも該当します(同条4号の2)。通常の犯罪でも、次の在留期間の更新で素行として考慮されることがあるため、判決後の在留の手当てまで考えておく必要があります。
不起訴になれば、入管の手続は始まりませんか。
有罪判決を要件とする退去強制事由には当たらなくなります。ただし、不法残留や不法就労助長のように行為そのものが退去強制事由となる類型では、不起訴でも入管の手続が進むことがあります。起訴猶予は在留審査で考慮され得るため、刑事と入管の両方の見通しを踏まえて対応することが大切です。
入管の手続だけを弁護士に依頼することはできますか。
依頼できます。舟渡国際法律事務所では、在留資格の更新・変更の不許可、在留資格の取消し、入管からの呼出しや違反調査、収容、退去強制手続、在留特別許可の申請、不許可処分に対する取消訴訟や執行停止の申立てまで対応します。刑事事件が並行している場合は、その記録もあわせてお持ちください。
刑事と入管の両方を依頼する場合、費用はどう決まりますか。
事案の内容、緊急性、手続の段階等により個別に見積もります。刑事手続と入管手続の両方への対応が必要か、訴訟に進むかによって活動の量が変わるためです。依頼の前に活動の範囲と費用の内訳を説明し、委任契約書で書面化します。
関連ページとご相談の方法
ご相談は完全予約制です。電話 050-7587-4639(受付10時〜19時、土曜日・日曜日・祝日は定休日)、微信(WeChat ID:matsumura1119)、またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
最終更新日:2026年9月11日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)