上陸拒否期間とは|5年・10年・1年の区分と薬物事件で期間の定めがない理由
2026/09/10
上陸拒否期間とは、退去強制を受けた外国人や出国命令により出国した外国人について、出国した日から一定の期間、日本への上陸が拒否される制度をいう。(入管法5条1項9号)
- 退去強制を受けた場合は原則5年、繰り返した場合は10年。
- 出国命令により出国した場合は原則1年(違反調査が始まった後に出国の意思を表明した人が短期滞在で来日する場合は5年)。
- 退去強制でも、自費出国の許可と法務大臣の決定を受けて期限内に退去した場合は1年(短期滞在での来日を除く)。
- 期間は出国した日から起算する。
- 薬物に関する法令違反は期間の定めのない上陸拒否となる。
- 期間中の入国は上陸特別許可によるほかない。
上陸拒否期間は何年になるのか
退去強制を受けたのが初めてかどうか、出国命令により出国したかどうか、どの段階で出国の意思を示したかによって、1年、5年、10年に分かれる。入管法5条1項9号イからヘまでの区分は次のとおりである。
| 区分 | 上陸拒否期間 |
|---|---|
| 薬物や銃砲刀剣類などの不法所持(5条1項6号・8号)を理由に上陸を拒否された場合(9号イ) | 拒否された日から1年 |
| 退去強制を受けた人が、自らの負担で出国する許可(52条4項)と上陸拒否期間を1年とする法務大臣の決定(同条5項)を受け、定められた日までに退去した場合(9号ロ。短期滞在で来日しようとする場合を除く) | 退去した日から1年 |
| 違反調査が始まる前に自ら出頭し、出国命令により出国した場合(9号ホ) | 出国した日から1年 |
| 違反調査が始まった後に出国の意思を表明して出国命令により出国した人が、短期滞在で来日しようとする場合(9号ヘ) | 出国した日から5年 |
| 退去強制を受けた場合で、過去に退去強制も出国命令による出国もない場合(9号ハ) | 退去した日から5年 |
| 過去に退去強制または出国命令による出国がある人が、再び退去強制を受けた場合(9号ニ) | 退去した日から10年 |
| 薬物に関する法令違反で刑に処せられた場合(5条1項5号) | 期間の定めなし |
| 24条4号オからヨまで(売春・人身取引・テロ関係など)を理由に退去強制を受けた場合(5条1項10号) | 期間の定めなし |
1年と5年の差は小さくない。不法残留が判明した場合、退去強制により送還されるか、自ら出頭して出国命令により出国するかで、次に来日できる時期が4年変わる。
期間はいつから数えるのか
退去強制または出国命令により実際に日本を出国した日から起算する(上陸を拒否された場合は、拒否された日から)。退去強制令書が発付された日でも、収容が始まった日でもない。送還までに時間がかかれば、その分だけ再び来日できる時期は後ろにずれ、手続の途中で滞留した期間も算入されない。
出国命令で出国すれば1年になるのはなぜか
出国命令は、違反調査が始まる前に自ら出頭して速やかに出国する意思を示した人(または違反調査が始まった後でも早い段階で出国の意思を表明した人)を対象とする簡易な手続であり、収容を経ずに出国できることと併せて、上陸拒否期間も短く設定されているためである。もっとも、誰でも利用できるわけではない。不法残留であること、自ら入管に出頭したこと、過去に退去強制も出国命令による出国もないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることなどが要件とされ、いずれかを欠けば通常の退去強制手続に移る。入管法24条の3は、退去強制事由のうち一定の類型に該当しないことも要件としており、薬物に関する事由に当たる人や、窃盗などの一定の罪により刑に処せられたことがある人は利用できない。
薬物事件ではなぜ期間の定めがないのか
入管法5条1項5号が、薬物に関する法令違反で刑に処せられたことのある者を、期間を区切らずに上陸拒否の対象としているためである。この条項は刑の重さを問わず、罰金でも、全部執行猶予付きの拘禁刑でも該当する。日本の法令違反に限られず、外国の法令に違反して刑に処せられた場合も含まれる。年数で区切られる他の事由と異なり、時の経過だけでは解消しない。
関連して、退去強制の場面でも薬物は別扱いになっている。入管法24条4号チは薬物に関する事由を定めており、有罪判決を受けたこと自体で該当するため、執行猶予が付いても、刑が免除されても退去強制事由となる。1年を超える拘禁刑の実刑を要件とする同条4号リとは要件が異なる。なお、1年以上の拘禁刑に処せられたことのある人についても、政治犯罪による場合を除き、期間の定めのない上陸拒否事由が別に設けられている。
上陸拒否期間中に日本へ入る方法はあるのか
上陸特別許可を受けるほかない(入管法12条1項)。実務上は、あらかじめ在留資格認定証明書の交付を申請し、上陸拒否事由がある事情も含めて審査を受ける流れをとることが多い。日本人の配偶者や子との関係、来日の必要性、事案の内容、出国後の経過などが総合的に考慮される。
在留資格や再来日にどう影響するのか
上陸拒否期間は、在留資格の種類を問わず上陸そのものを妨げる。退去強制を受けた事実は入管に記録として残るため、期間の経過後に改めて申請する際にも、出国後の生活状況や来日の必要性を具体的に説明する必要がある。刑事事件で捜査を受けている外国人が量刑の見通しだけを考えて処分を受け入れると、退去強制と上陸拒否の面で不利な結果を招くことがある。特に薬物事件では、罰金や執行猶予であっても在留と再来日の双方に影響が及ぶため、捜査の早い段階から刑事と入管の両面を見据えた対応が必要になる。
よくある質問
上陸拒否期間が過ぎれば必ず入国できますか。
期間の経過により、その事由による上陸拒否はなくなりますが、入国が保証されるわけではありません。上陸の条件を満たすかどうかは改めて審査され、他の上陸拒否事由があればそちらが適用されます。退去強制を受けた経緯は記録に残りますので、来日の目的や生活の基盤を資料で示すことが重要になります。
不法残留が見つかりました。出国命令を選べますか。
違反調査が始まる前に自ら入管に出頭したこと(または違反調査が始まった後でも一定の段階までに出国の意思を表明したこと)、過去に退去強制や出国命令による出国がないこと、速やかに出国することが確実であることなど、複数の要件をすべて満たす必要があります。薬物に関する事由に該当する場合や、一定の罪により刑に処せられたことがある場合は利用できません。出頭の前に要件を確認しておくことをお勧めします。
罰金で済んだ薬物事件でも影響がありますか。
あります。薬物に関する法令違反は、刑の重さを問わず、期間の定めのない上陸拒否の対象とされています。退去強制の場面でも、有罪判決を受けたこと自体で事由に該当し、執行猶予が付いた場合も同じです。罰金だから軽い、という判断は入管の手続では通用しません。
上陸特別許可はどのように申請しますか。
上陸の申請をして口頭審理を経る手続のほか、実務では在留資格認定証明書の交付申請の中で事情を審査してもらう方法がとられます。日本での身分関係や生活の実態、来日の必要性、過去の事案の内容と反省の状況などを、資料とともに具体的に示すことになります。
10年になるのはどのような場合ですか。
過去に退去強制を受けたことがある人、または出国命令により出国したことがある人が、再び退去強制を受けた場合です。1回目が出国命令による出国であっても、2回目に退去強制を受ければ10年となります。手続を繰り返すことの負担は非常に大きいため、1回目の段階での対応が重要です。
関連する用語解説
最終更新日:2026年9月19日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119
中文版:上陆拒否期间是什么|1年、5年、10年的区分、起算日与毒品案件无期限(日本律师解说)
関連する総合ガイド:不法滞在はどうなる?総合ガイド|不法残留・不法入国、出国命令と在留特別許可
