永住者が不同意わいせつ・盗撮・痴漢で有罪になったら在留資格は?|退去強制と上陸拒否の分かれ目
2026/09/10
不同意わいせつ罪、盗撮(性的姿態等撮影罪)、条例違反の痴漢は、いずれも入管法が特に列挙する罪に含まれていません。永住者の方がこれらの罪で有罪となっても、2027年4月に始まる永住者の在留資格の取消制度の対象にはならず、退去強制が問題となるのは1年を超える拘禁刑の実刑を受けた場合です。
ただし、不同意わいせつ罪には罰金刑がなく、有罪であれば6月以上の拘禁刑となります。刑期が1年以上なら執行猶予付きでも上陸拒否事由に当たり、盗撮のために建物へ入れば取消制度の列挙罪である住居侵入罪が加わるおそれもあります。罪名の細かな違いが、在留上の結論を分けます。
本記事の要点
- 刑法第22章の罪(不同意わいせつ等)、性的姿態等撮影罪、迷惑防止条例違反は、24条4号の2にも2027年施行の新22条の4第1項9号にも列挙されていません。
- 永住者が退去強制事由に当たるのは、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑(24条4号リ)の場合です。
- 不同意わいせつ罪は法定刑が6月以上10年以下の拘禁刑で罰金がなく、起訴されれば有罪は拘禁刑を意味します。
- 盗撮目的で建造物や住居に入ると住居侵入罪(刑法第12章)が成立しうるため、拘禁刑に処せられれば取消制度の対象となりえます。
不同意わいせつ・盗撮・痴漢は、それぞれどの法律で処罰されますか
同じ「性犯罪」でも、適用される法律と刑の重さは大きく異なります。最も重いのは刑法176条の不同意わいせつ罪で、罰金刑の定めがありません。
| 罪名(根拠) | 法定刑 | 罰金の有無 |
|---|---|---|
| 不同意わいせつ(刑法176条) | 6月以上10年以下の拘禁刑 | なし |
| 不同意性交等(刑法177条) | 5年以上の有期拘禁刑 | なし |
| 性的姿態等撮影(性的姿態撮影等処罰法2条) | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 | あり |
| 住居侵入・建造物侵入(刑法130条) | 3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 | あり |
| 痴漢(各都道府県の迷惑防止条例) | 条例ごとに定め | 多くの条例で定めあり |
電車内の痴漢は、行為の態様により条例違反にとどまる場合と、不同意わいせつ罪に問われる場合があります。どちらで処理されるかによって、罰金で終わる余地があるかどうかが変わるため、罪名の選択そのものが重要な争点になります。
永住者が性犯罪で有罪になると、退去強制事由に当たりますか
退去強制事由に当たるのは、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑判決を受けた場合です(入管法24条4号リ)。刑の全部に執行猶予が付けば当たりません。
4号の2は別表第一の在留資格の方を対象とする規定で、別表第二の永住者には適用されません。そもそも性犯罪は4号の2の列挙罪ではありません。刑の種類ごとの帰結は次のとおりです。
| 刑事手続の結果 | 退去強制事由(24条) | 永住取消し(2027年4月以降の新9号) | 上陸拒否事由(5条1項4号) |
|---|---|---|---|
| 不起訴 | 当たらない | 当たらない | 当たらない |
| 罰金(盗撮・条例違反など) | 当たらない | 当たらない | 当たらない |
| 1年未満の拘禁刑 | 当たらない | 当たらない(列挙外) | 当たらない |
| 1年以上の拘禁刑・執行猶予付き | 当たらない | 当たらない(列挙外) | 当たる |
| 1年を超える拘禁刑・実刑 | 4号リに当たる | 当たらない(列挙外) | 当たる |
| 住居侵入罪を含めて拘禁刑 | 刑期による | 対象となりうる | 刑期による |
不同意性交等罪は法定刑の下限が5年であり、刑の全部の執行猶予は3年以下の拘禁刑でなければ付けられないため(刑法25条)、減軽がない限り実刑となり、4号リの問題に直結します。退去強制事由に当たっても、在留特別許可(入管法50条)を求めることはできます。
2027年の永住者の取消制度は、性犯罪には適用されないのですか
不同意わいせつ罪・性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例違反そのものには適用されません。新22条の4第1項9号の一覧は4号の2と同じ範囲で、刑法第22章(わいせつ、不同意性交等の罪)も、性的姿態撮影等処罰法も、条例も含まれていないからです。
この制度は2027年4月1日施行で、2026年9月時点では未施行です。列挙された罪で拘禁刑に処せられた場合でも、取消しは裁量によるもので、意見聴取を経て判断され、在留が適当でない場合を除き定住者などへの変更が許可されます(新22条の6)。施行前の判決がどう扱われるかは、今後の運用を確認する必要があります。
盗撮のために建物や住居に入った場合、扱いは変わりますか
変わる可能性があります。更衣室やトイレ、他人の住居などに盗撮目的で立ち入れば、性的姿態等撮影罪とは別に、住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法130条)が成立しえます。この罪は刑法第2編第12章に属し、新9号の列挙罪です。
盗撮と侵入が手段と結果の関係にあれば、刑法54条により重い方の刑で処断されますが、住居侵入罪を含めて拘禁刑に処せられた場合には、2027年4月以降、永住者の取消事由として問題となりうると考えられます。どの行為が起訴事実に含まれるか、立入りに正当な理由があったかは、弁護の重要な検討点です。
逮捕されてから起訴・不起訴が決まるまでの流れはどうなりますか
逮捕された場合、最長23日で起訴・不起訴が決まります。逮捕後48時間以内の送検(刑事訴訟法203条)、逮捕から72時間以内の勾留請求(同法205条)、原則10日・最長20日の勾留(同法208条)という流れで、起訴前の保釈はありません。
性犯罪では被害者の供述が中心的な証拠になることが多く、取調べでの受け答えが結論を大きく左右します。黙秘権(憲法38条1項)の行使を含め、早い段階で弁護人と方針を話し合うことが大切です。刑事手続の全体は性犯罪事件のご相談でも紹介しています。
有罪となった場合、海外渡航やご家族の在留に影響はありますか
不同意わいせつ罪で1年以上の拘禁刑に処せられると、執行猶予付きでも上陸拒否事由(入管法5条1項4号)に当たります。出国後の再入国で問題になりうるため、判決後にみなし再入国許可で出国する際は慎重な検討が必要です。再入国許可を受けた場合などに上陸を拒否しないことができる特例(5条の2)はあるものの、個別の判断です。詳しくは上陸拒否期間とはをご覧ください。
永住者には在留期間の更新(21条)がなく、新9号も適用されないため、罰金や執行猶予で直ちに在留資格が変わることは通常ありません。一方、1年を超える実刑で退去強制手続に進めば、「永住者の配偶者等」で暮らす配偶者や子の在留の前提も揺らぎます。
不起訴を目指すため、弁護人はどのような活動をしますか
被害者のいる性犯罪では、示談と宥恕の意思表示の獲得が最も大きな要素です。被害者の連絡先は加害者側に知らされないのが通常で、検察官を通じて被害者の了解を得たうえで、弁護人が交渉します。
罰金のない不同意わいせつ罪では、起訴されれば拘禁刑しか残りません。示談を尽くして不起訴を求めるか、行為の態様に照らして条例違反での処理が相当であることを主張するかが、実質的な分かれ目です。痴漢の冤罪が疑われる事件では、繊維片の鑑定や防犯カメラ映像、車内での位置関係などの客観的な証拠から、事実を争います。再発防止のための専門的な治療プログラムの受講や、家族の監督体制も意見書に盛り込みます。
舟渡国際法律事務所に依頼すると、どのように進めますか
当事務所は、起訴前の不起訴処分を最も重要な目標として活動します。性犯罪は罪名と刑期のわずかな違いが在留に響くため、刑事弁護と入管の見通しを一体で検討し、ご本人とご家族に説明しながら進めます。
最初の接見から在留の手続まで、松村大介弁護士が一貫して担当します。外国人事件専属の中国語通訳が接見に同行し、捜査機関の通訳とは別の立場で、ご本人の言い分を丁寧に聞き取ります。中国本土のご家族とは微信(WeChat ID:matsumura1119)で直接連絡を取り合えます。
よくある質問
永住者が盗撮で罰金になった場合、永住資格は取り消されますか
性的姿態等撮影罪は、2027年施行の新22条の4第1項9号の列挙罪ではなく、罰金も拘禁刑ではありません。この規定による取消しの対象にはならないと考えられます。
不同意わいせつ罪で執行猶予付き判決を受けた永住者は、退去強制になりますか
全部執行猶予の判決は24条4号リから除かれるため、退去強制事由には当たりません。ただし刑期が1年以上なら上陸拒否事由に当たり、出国と再入国に注意が必要です。
痴漢で逮捕されましたが、罰金で終わる可能性はありますか
迷惑防止条例違反として処理されれば、罰金で終わる余地があります。不同意わいせつ罪には罰金がないため、どちらの罪で扱われるかが重要です。
盗撮目的で商業施設のトイレに入った場合、住居侵入罪にもなりますか
施設の管理者の意思に反する立入りであれば建造物侵入罪が成立しうると考えられます。この罪は取消制度の列挙罪であり、拘禁刑に処せられれば2027年以降、取消しが問題となりえます。
性犯罪の前科があると、永住者が海外から戻れなくなりますか
1年以上の拘禁刑に処せられた場合は上陸拒否事由に当たるため、再入国の際に問題となりえます。特例が認められる場合もあるので、出国前に弁護士にご相談ください。
関連コラム
- 在留資格と罪名で見る退去強制・取消しの早見表|執行猶予でも強制送還になる組合せ
- 永住者が傷害・暴行で有罪になると在留資格はどうなる?|退去強制と2027年からの永住取消し
- 永住者が飲酒運転・無免許運転で処罰されたら在留資格はどうなる?|退去強制・永住取消し・再入国
- 永住者が人身事故を起こしたら在留資格はどうなる?|過失運転・危険運転・ひき逃げの違い
- 永住者が万引き・窃盗で有罪になったら在留資格はどうなる?|2027年の永住取消しと罰金の重要性
- 日本人の配偶者等の方が不同意わいせつ・盗撮・痴漢で処罰されたら|退去強制・上陸拒否・別居の影響
- 定住者が痴漢・盗撮・不同意わいせつで処罰されたら在留資格はどうなる?|罪名別の帰結
本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119