外国人の刑事事件で、退去強制と在留特別許可まで任せられる弁護士の選び方|刑事と入管を別々に頼むと起きること
2026/10/07
外国人の刑事事件では、刑事手続の結果がそのまま退去強制と在留特別許可の問題になるため、捜査の初期から入管手続まで、一人の弁護士が通して担当できるかどうかを、弁護士選びの基準にするのがよい。
弁護士 松村大介(舟渡国際法律事務所・第一東京弁護士会・登録番号59077) 更新日:2026年10月7日 中文版(简体字)はこちら
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この記事の要点
- 刑事事件で決まる罪名、刑の種類、執行猶予の有無が、退去強制事由に当たるかどうかを左右する(入管法24条4号リ・チ、4号の2)。
- 1年を超える拘禁刑でも全部の執行猶予が付けば4号リの対象外だが、薬物関係は4号チ、別表第一の在留資格の方は4号の2で、結論が異なる。
- 刑事と入管を別々の弁護士に頼むと、量刑の目標のずれ、資料の引継ぎ漏れ、3日以内という短い期限の見落としが起きやすい。
- 在留特別許可の見込みは、出入国在留管理庁が公表する許可・不許可事例に照らして見通す。結果は保証できない。
- 弁護士を選ぶときは、入管法24条の理解、量刑の分かれ目を意識した方針、在留特別許可と訴訟の経験、取調べ・接見の動き、通訳、担当の一貫性の6点を、相談の場で質問して確かめる。
外国人の刑事事件では、なぜ刑事弁護と入管対応を同じ弁護士に任せるのがよいのか?
刑事事件で決まる罪名、刑の種類、執行猶予の有無が、退去強制事由に当たるかどうかと、在留特別許可の見込みを左右するからである。
退去強制事由は、刑の執行の有無ではなく、入管法24条の各号の要件に当たるかどうかで決まる。入管の手続は、刑事手続と並行して進むことがある。刑事弁護の結論が、そのまま在留の結論の前提になる。
| 条文 | 対象 | 全部の執行猶予が付いた場合 |
|---|---|---|
| 入管法24条4号リ | 無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者 | 対象外(全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれる) |
| 同条4号チ | 麻薬、大麻、覚醒剤などの薬物関係の法令に違反して有罪の判決を受けた者 | 条文上、執行猶予を除く定めがなく、罰金や執行猶予でも対象になり得る |
| 同条4号の2 | 別表第一の在留資格の方が、一定の刑法犯などで拘禁刑に処せられた場合 | 執行猶予が付いても対象になり得る |
実際に該当するかどうかは、罪名、在留資格、刑の内容ごとに確認する必要がある。個別の整理は執行猶予判決でも強制送還されることがあるのかにまとめている。
刑事と入管を別々の弁護士に頼むと、何が起きやすいのか?
刑事の弁護目標が入管上の分かれ目とずれること、刑事段階の資料が入管の手続で使われないこと、短い期限を見落とすことの3点が起きやすい。
拘禁刑は、1年を超えるか、全部の執行猶予が付くか、罰金にとどまるかで、4号リの該当性が分かれる。刑事の弁護人が、この分かれ目を意識せずに量刑を考えると、判決が確定した後で、入管上は取り返しのつかない結果になっていることがある。
示談書、被害弁償の証明、身元引受書、反省文など、在留特別許可の判断でも意味を持つ資料は、刑事の段階でなければ整えにくいものが多い。取調べで作られる供述調書や、入管の違反審査・口頭審理の調書も、後の判断の資料となり得るので、供述の方針は手続を通じて一貫させる必要がある。
期限も短い。口頭審理の請求は認定の通知を受けた日から3日以内(入管法48条1項)、異議の申出も判定の通知を受けた日から3日以内である(同法49条1項)。詳しくは口頭審理と異議の申出とはを参照されたい。
退去強制の手続に進んだとき、弁護士は何をするのか?
認定、口頭審理、異議の申出の各段階で、在留特別許可を求める主張と資料を出し、退去強制令書が発付された後は、取消訴訟と執行停止の申立てで争う。
在留特別許可は、退去強制の対象となる外国人に、法務大臣が例外として在留を認める処分である(入管法50条1項)。申請できるのは、収容令書により収容された人と監理措置決定を受けた人で、退去強制令書の発付前に限られる(同条2項・3項)。判断は、同条5項の考慮事情の総合評価で行われる。1年を超える拘禁刑の実刑などがある場合は、特別の事情が必要とされる(同条1項ただし書)。
不許可の通知を受けたときや、退去強制令書が発付されたときは、取消訴訟と執行停止の申立てで争うことができる。在留特別許可が不許可になったらどうなるか、退去強制令書の取消訴訟、執行停止で、それぞれ説明している。
在留特別許可の見込みは、どのように見通すのか?
出入国在留管理庁が公表する許可・不許可の事例を、罪名、刑、家族、在日期間などの事情ごとに照らして見通す。結果を保証するものではない。
公表事例は個人情報の関係で記載が抽象化されているため、完全な一致を求めず、本質的な事情の類似性で比べる。当事務所は、公表事例を集計したデータベースを作り、方針を立てる際の材料にしている(在留特別許可データベース)。
たとえば、1年を超える実刑に当たる事案(入管法50条1項ただし書の該当事案)で許可された公表事例は、令和6年後半分と令和7年分の事例集で計6件あり、刑はいずれも拘禁刑1年2月から1年6月の範囲である。許可された6件の本人は、いずれも別表第二の在留資格又はこれに準ずる定着性のある方で、別表第一の在留資格の方が実刑判決を受けて許可された公表事例は、当事務所の確認した範囲では見当たらない。拘禁刑2年6月の実刑は、日本人の実子の監護養育があっても不許可となった事例がある。刑事の段階で、刑の種類と重さをどこまで抑えられるかが、入管の結論に直結することが分かる。
外国人の刑事事件で、退去強制と在留特別許可まで任せる弁護士を選ぶとき、何を確認すればよいのか?
次の6点を、相談の場で具体的に質問して確かめるのがよい。
| 確認する点 | 質問の例 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 入管法24条の理解 | 私の罪名・刑・在留資格だと、24条のどの号に当たる可能性がありますか | 号と、執行猶予の扱いまで具体的に答えられるか |
| 2 量刑の分かれ目を意識した方針 | 不起訴、罰金、全部執行猶予、1年以下の刑のうち、何を目標にしますか | 入管上の分かれ目と結びつけて説明があるか |
| 3 在留特別許可と訴訟の経験 | 在留特別許可や退去強制令書の取消訴訟を扱った経験はありますか | 秘密に配慮しつつ、具体的に説明できるか |
| 4 取調べと接見の動き | 取調べへの立会いを求めますか。最初の接見では何を説明しますか | 在留資格を失うおそれの説明が、最初から入っているか |
| 5 通訳と母語での説明 | 私の言語で、直接説明してもらえますか | 通訳を介する場合も、体制が示されるか |
| 6 担当の一貫性 | 捜査から判決後の入管手続まで、同じ弁護士が担当しますか | 担当弁護士が誰か、連絡の窓口が明確か |
弁護士は、事件が依頼者に有利な結果になることを保証してはならないとされている(弁護士職務基本規程29条2項)。結果を約束する説明があった場合は、見通しの根拠を質問するのがよい。選び方の全体は外国人の刑事事件で弁護士を選ぶときに確認したい7つのことにもまとめている。
当事務所では、これらの点にどのように対応しているのか?
刑事弁護の最初の接見から入管手続を視野に入れ、松村大介弁護士が直接担当している。中国語の対応は、中国律師が在籍する体制で行っている。
外国人の刑事事件では、取調べへの弁護人の立会いを求める方針をとっている。立会いが認められることは現状ほとんどないが、取調べの直前に警察官と協議することがある(取調べへの立会い)。最初の接見では、入管法上の在留資格を失うおそれについて、本人に正確に理解してもらうことを重視している。
在留特別許可の見込みは、公表事例のデータベースで調べたうえで、弁護の方針を立てている。当事務所は、覚醒剤事件での無罪判決(一部無罪)、不法就労助長の冤罪事案や入管法違反事案での在留特別許可などの実績がある。個別の事件の詳細は、依頼者の秘密に関わるため公表していない。当事務所が扱った行政事件の解決は、学術誌に掲載され、法学者の研究対象にもなっている。
担当弁護士は弁護士紹介に、相談の窓口はお問い合わせに掲載している。微信ID:matsumura1119。
よくある質問
執行猶予が付けば、強制送還は避けられるのか?
罪名と在留資格による。入管法24条4号リは、全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いているが、薬物関係の有罪判決(同号チ)は執行猶予や罰金でも対象になり得る。別表第一の在留資格の方には、4号の2が執行猶予付きでも問題になる場合がある。詳しくは執行猶予判決でも強制送還されることがあるのかで説明している。
刑事事件の弁護士とは別に、入管の弁護士を探す必要があるのか?
必須ではない。ただし、別の弁護士に頼む場合は、刑事段階の方針、供述の内容、示談書などの資料を、入管の手続を担当する弁護士に確実に引き継ぐ必要がある。一人で通して担当できるかどうかは、最初の相談で確認するとよい。
在留特別許可は、いつまでに申請すればよいのか?
申請できるのは、収容令書により収容された人と監理措置決定を受けた人で、退去強制令書が発付される前に限られる(入管法50条2項・3項)。口頭審理の請求と異議の申出は、通知を受けた日から3日以内に行う(同法48条1項・49条1項)。在留特別許可とはに制度の全体をまとめている。
不起訴になれば、在留への心配はなくなるのか?
有罪判決を前提とする退去強制事由には当たらなくなるが、不法就労助長のように行為そのものが事由となる規定は、刑事処分の有無と別に判断される。在留期間の更新などの審査でも、素行が別に見られる。不起訴・起訴猶予で在留資格はどうなるのかも参照されたい。
中国語で相談できるのか?
中国語での相談に対応しており、中国律師が在籍し、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。微信ID:matsumura1119。