外国人の刑事事件で弁護人は取調べに立ち会えるか|立会い要求の実務と、認められないときの対処
2026/10/04
この記事の要点
- 弁護人に取調べへの立会いを認める明文の規定は刑事訴訟法にありません。実務上も、立会いはほとんど認められていません。
- それでも外国人の事件では、言語の壁と在留資格への波及があるため、当事務所は立会いを積極的に要求しています。
- 取調べの前に弁護人が被疑者と接見し(刑事訴訟法第39条第1項)、黙秘権・署名拒絶・増減変更の申立てを伝えることが防御の中心です。
- 取調べ直前に警察官と協議して牽制することで、有利な処分につながった例が当事務所には多くあります。
外国人の刑事事件では、弁護人は取調べに立ち会えるのでしょうか。結論から言えば、法律に立会いの権利を定めた規定はなく、実務上も立会いが認められることは現状ほとんどありません。ただし、認められないから諦めるのではなく、要求すること自体と、取調べ前後の弁護活動で被疑者を守ることができます。本稿では、立会いの法的な位置づけと、外国人の事件で当事務所が行っていることを説明します。
弁護人は取調べに立ち会えますか?
立ち会えるとは限りません。刑事訴訟法第198条は、捜査機関による被疑者の取調べを定めていますが、弁護人の立会いを権利として認める規定は置いていません。弁護人に保障されているのは、身体を拘束された被疑者と「立会人なくして接見」すること(同法第39条第1項)です。
そのため、立会いを申し入れても、警察や検察が応じないのが通常です。当事務所の経験でも、立会いが実際に認められることは現状ほぼありません。
立会いが認められないのに、なぜ要求するのですか?
外国人の事件では、立会いを求めることに独自の意味があるからです。
- 言語の問題。取調べは日本語で行われ、通訳を介しても、供述の微妙な意味が調書に正確に反映されないおそれがあります。
- 調書の問題。調書は日本語で作成され、被疑者が内容を確かめないまま署名してしまうと、後から争うことが困難になります。
- 在留資格の問題。入管法第24条第4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者。刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者などを除く)や、同号チ(薬物関係法令違反で有罪の判決を受けた者)に当たると、退去強制の対象となりえます。刑事処分の結果が在留に直結するため、取調べの段階から慎重な対応が必要です。
立会いを要求すると、捜査機関は弁護人が取調べの内容を厳しく見ていることを意識します。これが、取調べの進め方を慎重にさせる効果を持つことがあります。
立会いが認められないとき、弁護人は何をするのですか?
当事務所は次の順で対応します。
- 取調べの前に、被疑者と接見します。接見には立会人が付かないため、事件の見通しや、取調べでの対応を率直に伝えられます。
- 取調べでの対応の基本を伝えます。自己の意思に反して供述する必要がないこと(刑事訴訟法第198条第2項)、調書の内容に誤りがあれば増減変更を申し立てられること(同条第4項)、署名押印を拒絶できること(同条第5項)です。
- 取調べの直前に、警察官と協議します。立会いの申入れや、取調べの進め方についての申入れを行い、牽制します。当事務所では、これが有利な処分につながった例が多くあります。
- 取調べの後に、再び接見し、何を聞かれ、何を話したかを確認します。
取調べで被疑者にはどのような権利がありますか?
| 場面 | 被疑者の権利・弁護人の手段 | 根拠 |
|---|---|---|
| 取調べの開始時 | 自己の意思に反して供述する必要がない旨の告知を受ける | 刑事訴訟法第198条第2項 |
| 調書の作成時 | 内容を閲覧し又は読み聞かせを受け、誤りがあれば増減変更を申し立てる | 同条第4項 |
| 調書への署名押印 | 誤りがないと申し立てた場合に求められるが、拒絶することができる | 同条第5項 |
| 在宅の被疑者 | 出頭を拒み、又は出頭後いつでも退去することができる(逮捕・勾留中を除く) | 同条第1項ただし書 |
| 身体を拘束された被疑者 | 弁護人と立会人なくして接見できる | 刑事訴訟法第39条第1項 |
| 一定の事件の取調べ | 逮捕・勾留中の取調べの録音・録画が、供述の任意性の立証に用いられる | 刑事訴訟法第301条の2 |
なお、第39条第3項により、捜査機関は捜査のため必要があるときは接見の日時・場所・時間を指定できますが、その指定は被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものであってはなりません。
外国人の事件で特に注意すべき点は何ですか?
第一に、通訳の正確性です。通訳人が使う訳語によって、供述の意味が変わることがあります。疑問があれば、その場で確認を求めることが大切です。
第二に、日本語で書かれた調書に安易に署名しないことです。内容が理解できないまま署名すると、その内容を認めたものとして扱われる危険があります。
第三に、刑事処分と在留資格の関係です。不起訴や罰金で終わるか、執行猶予が付くか、実刑になるかによって、在留への影響は大きく異なります。逮捕直後の初回接見で、この点を被疑者本人に正しく理解してもらうことを当事務所は重視しています。
いつ弁護士に連絡すべきですか?
逮捕された場合はもちろん、警察から出頭を求められた段階で連絡してください。取調べは、早い時期の供述が後の判断に大きく影響します。弁護人が早く関与するほど、取調べ前の助言や警察官との協議が可能になります。
よくある質問
弁護人は取調べに立ち会えますか。
刑事訴訟法に立会いを権利として定める規定はなく、実務上もほとんど認められていません。ただし、要求すること自体に意味があり、取調べ前の接見と警察官との協議を通じて被疑者を守ることができます。
取調べで黙秘できますか。
できます。取調べに際しては、自己の意思に反して供述をする必要がない旨が告げられます(刑事訴訟法第198条第2項)。供述するかどうかは、弁護人と相談して決めるのが安全です。
日本語の調書に署名しなければなりませんか。
署名押印を求められても、拒絶することができます(刑事訴訟法第198条第5項)。内容を理解できない調書や、誤りのある調書には署名しないでください。誤りがあれば増減変更を申し立てられます(同条第4項)。
通訳は付きますか。
外国人の被疑者の取調べでは、通訳人を介して行われるのが通常です。訳語に疑問があるときは、弁護人に伝えてください。中国語の通訳については、当事務所の専属通訳が対応します。
取調べの結果は在留資格に影響しますか。
取調べ自体ではなく、最終的な刑事処分が影響します。無期又は1年を超える拘禁刑の実刑や、薬物関係法令違反による有罪判決は、退去強制事由に当たりえます(入管法第24条第4号リ・チ)。
ご相談について
逮捕されたご家族がいる場合や、警察から出頭を求められた場合は、早い段階でご相談ください。中国語でのご相談に対応しています(専属通訳が常駐)。全国からご相談を承ります。
お電話 050-7587-4639/微信(WeChat)ID matsumura1119/お問い合わせフォーム/中国語でのご相談
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最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所