執行停止とは|退去強制令書による送還を止める申立ての要件と流れを弁護士が解説
2026/10/07
執行停止とは、処分の取消しの訴えを起こした場合に、処分の効力、処分の執行または手続の続行を、裁判所が決定によって一時的に止める制度をいう(行政事件訴訟法第25条第2項)。
この記事の要点
- 訴えを起こしただけでは処分の執行は止まらない(行政事件訴訟法第25条第1項)。送還を止めるには、執行停止の申立てが必要である。
- 要件は、重大な損害を避けるため緊急の必要があること、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと、本案について理由がないとみえないこと、の3点である(同条第2項・第4項)。
- 申立ては疎明に基づいて判断され、口頭弁論を経ないですることができる(同条第5項・第6項)。ただし、あらかじめ当事者の意見を聴く必要がある。
- 決定に対しては即時抗告ができるが、抗告に執行を止める効力はない。また、内閣総理大臣が異議を述べると、執行停止はできなくなる(同法第27条)。
執行停止とは、どのような制度ですか
結論として、執行停止は、本案の判決が出るまでのあいだ、処分の効力や執行を一時的に止めて、権利が回復できなくなることを防ぐ制度である。行政処分は、訴えを起こしても効力が続くのが原則(執行不停止の原則)であるため、その例外として設けられている。
退去強制令書の事案では、令書に基づく送還が先に実行されてしまえば、判決で勝っても生活の基盤や家族との生活を取り戻せない。このため、取消訴訟とセットで申し立てることが多い。取消訴訟そのものについては、退去強制令書の取消訴訟とはで解説している。
執行停止が認められる要件は何ですか
結論として、次の表のとおり、積極要件が2つ、消極要件が2つある。
| 要件 | 区分 | 条文(行政事件訴訟法) |
|---|---|---|
| 取消訴訟が提起されていること | 積極要件 | 第25条第2項 |
| 処分の執行等により生じる重大な損害を避けるため、緊急の必要があること | 積極要件 | 第25条第2項 |
| 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと | 消極要件 | 第25条第4項 |
| 本案について理由がないとみえないこと | 消極要件 | 第25条第4項 |
重大な損害を生ずるか否かの判断では、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度、処分の内容・性質も勘案される(同条第3項)。また、処分の効力の停止は、処分の執行または手続の続行の停止で目的を達することができるときはできない(同条第2項ただし書)。
退去強制令書の事案では、何を主張しますか
結論として、中心は「重大な損害」と「本案に理由がないとはいえないこと」の2点である。
- 重大な損害:送還されると、日本での生活基盤、仕事、家族や子どもとの生活が失われ、金銭では償えず、回復も困難になること。収容による身体的・精神的な負担も、事案に応じて主張する。
- 本案の理由:退去強制事由の該当性や、在留特別許可を認めなかった判断の裁量違法など、取消訴訟で主張する内容に、少なくとも理由がないとはいえない点があること。
- 公共の福祉:本人の送還を止めても、公共の福祉に重大な影響は及ばないこと。
これらの主張は、疎明資料(家族関係の資料、生活歴を示す資料、陳述書など)で裏づける。具体的な見通しは、事案ごとに異なる。
申立ての手続と、判断の流れを教えてください
結論として、申立ては疎明に基づいて判断され、口頭弁論を経ないで決定ができる。ただし、裁判所はあらかじめ当事者の意見を聴かなければならない(行政事件訴訟法第25条第5項・第6項)。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 申立て | 取消訴訟の提起と併せて、または提起後に、執行停止の申立書と疎明資料を提出する。 |
| 裁判所の審理 | 疎明に基づき、双方の意見を聴いて判断する。口頭弁論は必須ではない。 |
| 決定 | 認容または却下の決定がされる。 |
| 即時抗告 | 決定に不服があれば、即時抗告ができる(第25条第7項)。 |
認容決定に対して即時抗告がされても、抗告は決定の執行を停止する効力を有しない(同条第8項)。
内閣総理大臣の異議とは何ですか
結論として、内閣総理大臣が裁判所に異議を述べると、執行停止はできず、すでにされた決定も取り消されなければならない(行政事件訴訟法第27条第1項・第4項)。異議には理由を付し、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示す必要がある(同条第2項・第3項)。
異議は、やむをえない場合でなければ述べてはならず、述べたときは次の常会で国会に報告しなければならない(同条第6項)。制度としては例外的な位置づけである。
執行停止が認められても、問題は解決しますか
結論として、執行停止は一時的な措置であり、最終的な解決は本案の判決による。執行停止によって、判決が出るまでの間、送還を避けられる可能性がある一方、身柄の扱いは別に検討する必要がある。収容されている場合は、仮放免や監理措置の請求を並行して行う。
よくある質問
執行停止は、どの裁判所に申し立てますか。
取消訴訟が係属している(または提起する)裁判所に申し立てる。取消訴訟の提起が前提である。
申立てから決定まで、どのくらいかかりますか。
事案によって異なり、一律にはいえない。送還が差し迫っている場合は、その事情も踏まえて、早期の判断を求める。
執行停止が認められなかったら、どうなりますか。
決定に対しては即時抗告ができる。ただし、送還が実行される可能性があるため、方針を早期に弁護士と検討することが重要である。
収容中でも申し立てられますか。
申し立てられる。弁護人が接見して委任を受け、訴状や申立書を提出する。
中国語で相談できますか。
できる。電話は050-7587-4639、微信(WeChat)IDはmatsumura1119である。
関連する用語解説
最終更新 2026年10月7日 / 執筆 舟渡国際法律事務所 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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