在留特別許可データベース|公表事例452件を「出頭申告・逮捕」「家族類型」「年」で集計した結果と使い方
2026/09/24
在留特別許可データベースとは、出入国在留管理庁が毎年公表している「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例」を1件ずつ整理し、発覚理由・家族類型・刑事処分・年ごとに集計・検索できるようにしたものです。当事務所では、平成26年分から令和7年分までの公表資料13回分・452件を原本PDFと照合して集計しました。
最終更新日:2026年9月23日/執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/微信(WeChat)ID:matsumura1119
本記事の要点
- 対象は平成26年分〜令和7年分の公表事例452件です。うち許可231件(改正法の「特別の事情」による許可6件を含む)、不許可221件です。
- 発覚理由で結果は大きく分かれます。出頭申告は212件中172件(約81%)が許可、警察逮捕は150件中25件(約17%)の許可にとどまります。
- 家族類型(配偶者が日本人/配偶者が正規在留の外国人/子と共に不法滞在/その他)の間では、許可と不許可の割合に大きな差はありません。入管庁が類型ごとに許可・不許可をほぼ同数ずつ選んで公表しているためです。
- 令和6年6月10日の改正法施行後は、1年を超える実刑判決を受けた方でも「特別の事情」で許可された事例が6件公表されています。
- 公表事例は入管庁が選んだ事例であり、実際の許可率ではありません。自分の事案に「似た事例」を探し、許可事例との違いを埋める材料として使うのが正しい使い方です。
在留特別許可データベースは、どの資料をもとにしているのか?
出入国在留管理庁(平成30年度までは法務省入国管理局)が公表した「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」13回分です。入管庁は平成16年から事例の公表を続けており、各回とも事例を類型別に分け、発覚理由、在日期間、違反(不法滞在)期間、婚姻期間、子の有無、刑事処分等、許可内容、特記事項を記載しています。
表1 データベースに収録した公表資料(件数は当事務所の集計)
| 対象期間 | 公表時期 | 許可 | 不許可 | 計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成26年 | 平成27年3月 | 20 | 18 | 38 |
| 平成27年 | 平成28年3月 | 20 | 18 | 38 |
| 平成28年 | 平成29年3月 | 19 | 19 | 38 |
| 平成29年 | 平成30年3月 | 19 | 19 | 38 |
| 平成30年 | 令和元年5月 | 19 | 19 | 38 |
| 令和元年 | 令和2年5月 | 19 | 19 | 38 |
| 令和2年 | 令和3年7月 | 19 | 19 | 38 |
| 令和3年 | 令和4年5月 | 19 | 19 | 38 |
| 令和4年 | 令和5年12月 | 18 | 18 | 36 |
| 令和5年 | 令和6年11月 | 18 | 18 | 36 |
| 令和6年1月1日〜6月9日 | 令和7年7月 | 12 | 12 | 24 |
| 令和6年6月10日〜12月31日 | 令和7年7月 | 16(うち特別の事情3) | 13 | 29 |
| 令和7年 | 令和8年7月 | 13(うち特別の事情3) | 10 | 23 |
| 合計 | ― | 231 | 221 | 452 |
令和6年分が2つに分かれているのは、令和5年改正入管法の施行日(令和6年6月10日)を境に、在留特別許可の手続が「法務大臣の職権による判断」から「本人の申請に基づく判断」に変わったためです(入管法50条2項)。
在留特別許可は、実際にどのくらい認められているのか?
公表事例だけを見ると約半数が許可ですが、これは実際の許可率ではありません。入管庁は各類型について許可事例と不許可事例をほぼ同数ずつ選んで公表しており、表1でも各回の許可・不許可はほぼ同数です。
実際の件数は、別途公表される統計で確認します。出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」によると、在留特別許可の申請を許可した件数は、令和6年6月10日から同年末までで469件、令和7年中で1,026件です。
したがって、公表事例は「確率を知る資料」ではなく、「どのような事情があれば許可され、どのような事情があると不許可になるのか」を知る資料として使います。
出頭申告と警察逮捕で、結果はどれだけ違うのか?
公表事例では、出頭申告の約81%が許可されたのに対し、警察逮捕で発覚した事例の許可は約17%にとどまります。452件を発覚理由ごとに集計した結果は次のとおりです。
表2 発覚理由別の許可・不許可(平成26年〜令和7年の公表事例452件)
| 発覚理由 | 事例数 | 許可 | 不許可 | 許可の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 出頭申告 | 212 | 172 | 40 | 約81% |
| 警察逮捕 | 150 | 25 | 125 | 約17% |
| 入管等による摘発 | 46 | 16 | 30 | 約35% |
| 職員探知 | 27 | 12 | 15 | 約44% |
| 関係機関・入国審査官からの通報 | 14 | 4 | 10 | 約29% |
| 児童相談所・警察による保護 | 2 | 2 | 0 | ― |
| 呼出状による出頭 | 1 | 0 | 1 | ― |
| 合計 | 452 | 231 | 221 | 約51% |
警察逮捕の事例の多くは刑事処分を伴っているため、この差は「発覚理由」だけでなく「刑事処分の有無」の影響も含んでいます。それでも、出頭申告が顕著に有利な事情として考慮されているという入管の傾向は、数字の上でもはっきり表れています。在留特別許可に係るガイドラインも、「不法滞在を申告するため、自ら地方出入国在留管理官署に出頭したこと」を積極要素として挙げています(第2の9「その他の事情」)。
家族類型によって、許可の見込みは変わるのか?
公表事例の上では、家族類型の間で許可・不許可の割合にほとんど差はありません。類型ごとに許可・不許可がほぼ同数になるよう事例が選ばれているためで、「どの類型なら有利か」を読み取る資料にはなりません。
表3 家族類型別の許可・不許可
| 類型 | 事例数 | 許可(うち特別の事情) | 不許可 |
|---|---|---|---|
| 配偶者が日本人である場合 | 122 | 63(2) | 59 |
| 配偶者が正規に在留する外国人である場合 | 109 | 56(2) | 53 |
| 子と共に不法に滞在している場合(令和4年分までは「外国人家族の場合」) | 45 | 23(0) | 22 |
| その他 | 176 | 89(2) | 87 |
| 合計 | 452 | 231(6) | 221 |
類型の中で結果を分けているのは、婚姻の実体と期間、子の年齢と養育状況、在日期間、刑事処分、退去強制歴・在留特別許可歴の有無です。同じ「配偶者が日本人」の類型でも、婚姻期間が短く同居の実態が乏しい事例や、配偶者に婚姻継続の意思がない事例は不許可になっています。
刑事処分がある場合、在留特別許可はどうなるのか?
刑事処分のある事例153件のうち許可は21件(約14%)で、刑事処分のない事例(299件中210件が許可)と比べて大きく下がります。許可された21件は、全件が前科なし・退去強制歴なし・在留特別許可歴なしでした。罪名別・刑事処分別の詳しい分析は、【犯罪別】在留特別許可の許可・不許可事例153件を分析にまとめています。
令和5年改正入管法により、無期または1年を超える拘禁刑の実刑判決を受けた方などについては、「本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」があると認めるときに限って在留特別許可をすることとされました(入管法50条1項ただし書)。公表事例では、この「特別の事情」による許可が令和6年後半に3件、令和7年に3件あり、いずれも在日期間が20年を超える事案です。
在留特別許可データベースは、自分の事案にどう使えばよいのか?
次の3つの手順で、自分の事案に近い許可事例と不許可事例を並べ、その差を埋める主張と証拠を準備します。
- 類型と発覚理由で絞り込む。配偶者の国籍・在留資格、子の有無、出頭申告か逮捕か、で近い事例を抽出します。
- 許可事例と不許可事例の「差」を特定する。在日期間、婚姻期間、子の年齢、刑事処分、退去強制歴などのうち、どの事情が結論を分けているかを見ます。
- 差を埋める証拠を揃える。婚姻の実体(同居、生計の一体性、親族・知人の証言)、子の監護・養育の状況、生活基盤、反省と更生の状況を、入管法50条5項の考慮事項に対応させて書面化します。
入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性を考慮事項として定めています。公表事例は、これらの事情が実際にどのように評価されたのかを示す唯一の公式資料です。
公表事例では不許可ばかりの類型でも、在留特別許可はあり得るのか?
あり得ます。公表事例は1年に数十件しかなく、実際の許可件数(令和7年は1,026件)のごく一部です。公表事例に許可例がないことは、許可の可能性がないことを意味しません。
たとえば、不法就労助長の事案は公表事例では不許可が並ぶ類型ですが、当事務所では不法就労助長の事案で在留特別許可を得た例があります。また、公表事例では偽装結婚・文書偽造の類型に許可例がありませんが、有印私文書偽造・同行使で執行猶予判決を受けた方が「日本人の配偶者等」で在留特別許可を得た事例もあります。
弁護士としての見解を付け加えると、在留特別許可の結論は、入管の段階だけで決まるわけではありません。刑事事件の段階で不起訴を得ること、そして違反調査・違反審査の初動から争うことが、公表事例の「不許可」の側に入らないための最も確実な方法です。
よくある質問
Q1 在留特別許可の公表事例はどこで見られますか?
出入国在留管理庁のウェブサイト「在留特別許可関係」のページで、年ごとのPDFが公開されています。平成26年分から令和7年分までの13回分が掲載されています。
Q2 公表事例の許可率はそのまま実際の許可率と考えてよいですか?
いいえ。入管庁は類型ごとに許可・不許可の事例をほぼ同数選んで公表しているため、公表事例の割合は実際の許可率を示しません。実際の件数は入管法違反事件の統計(令和7年は許可1,026件)で確認します。
Q3 出頭申告をすれば必ず在留特別許可が出ますか?
必ずではありません。公表事例でも出頭申告212件のうち40件は不許可です。不許可事例には、婚姻の実体が乏しい、在日期間が短い、刑事処分や退去強制歴がある、といった事情が見られます。
Q4 実刑判決を受けた場合、在留特別許可は受けられませんか?
1年を超える実刑判決を受けた方は、「人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」がある場合に限り許可されます(入管法50条1項ただし書)。公表事例では、令和6年後半から令和7年までに6件の許可例があります。
Q5 在留特別許可の申請はいつまでできますか?
退去強制令書が発付された後は申請できません(入管法50条3項)。申請できるのは、収容令書により収容された方または監理措置決定を受けた方です(同条2項)。時期を逃さないことが重要です。
Q6 不許可になった場合、争う方法はありますか?
在留特別許可をしない処分には理由を付した書面が交付されます(入管法50条10項)。処分の取消訴訟や、退去強制令書の執行停止の申立てなど、裁判所で争う方法があります。
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出典・根拠条文
- 出入国管理及び難民認定法50条1項・2項・3項・5項・10項(e-Gov法令検索、2026年9月23日時点の現行条文で確認)
- 出入国在留管理庁「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」平成26年分〜令和7年分(13回分)
- 出入国在留管理庁「在留特別許可に係るガイドライン」(令和6年6月改定、同月10日運用開始)
- 出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」
集計方法:各回の公表PDFから事例を1件ずつ抽出し、類型・許否・発覚理由を集計しました。各回冒頭に記載された公表件数(平成30年分〜令和5年分)と一致することを確認しています。
本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別の事案についての法的助言ではありません。公表事例の集計は当事務所によるものです。