偽ブランド品の販売・輸入で逮捕されたら|商標法違反の刑罰と在留資格(強制送還)への影響
2026/09/10
偽ブランド品を販売したり輸入したりすると、商標法違反や関税法違反に問われますが、これらは入管法24条4号の2に列挙された罪ではないため、罰金刑や執行猶予付きの判決だけで退去強制事由に当たることはありません。在留資格が技術・人文知識・国際業務などの別表第一であっても、永住者や日本人の配偶者等であっても、この結論は同じです。
ただし、1年を超える実刑判決を受けた場合、そして「本物です」と偽って売り代金をだまし取ったとして詐欺罪に問われた場合には、話が大きく変わります。フリマアプリや越境ECで販売していた方に向けて、刑罰と在留への影響を条文に沿って整理します。
本記事の要点
- 商標権侵害は10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はその併科(商標法78条)で、販売目的の所持などのみなし侵害は5年以下・500万円以下(78条の2)です。
- 商標法・関税法の罪は入管法24条4号の2の列挙罪ではなく、罰金や全部執行猶予では退去強制事由になりません。
- 本物と偽って販売すれば詐欺罪(刑法第37章)が問題となり、別表第一の方は執行猶予でも4号の2に当たりえます。
- 1年を超える実刑は在留資格を問わず4号リに当たり、1年以上の拘禁刑は執行猶予付きでも再入国の場面で問題になりえます。
偽ブランド品の販売・輸入は、どのような罪になり、刑罰はどれくらいですか
中心となるのは商標法違反と、輸入の場面での関税法違反です。登録商標と同じ標章を付けた商品を販売することは、商標の「使用」(商標法2条3項2号)に当たり、商標権の侵害として10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処され、又はこれらが併科されます(78条)。
一方、販売や引渡しのために偽物を所持する行為や、登録商標に類似する標章を使う行為は「侵害とみなす行為」(37条)とされ、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科です(78条の2)。在庫を置いていただけでも、この規定で立件されえます。
| 行為 | 適用条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 偽ブランド品を販売する(登録商標の使用) | 商標法78条 | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又は併科 |
| 販売目的で在庫を所持する、類似の標章を使う | 商標法37条・78条の2 | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科 |
| 商標権侵害物品を輸入する(未遂を含む) | 関税法69条の11第1項9号・109条2項・3項 | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又は併科 |
| 本物と偽って売り、代金を受け取る | 刑法246条(詐欺) | 10年以下の拘禁刑 |
「本物だと思っていた」という主張は、どこまで通りますか
商標法違反は故意犯なので、偽物であることを知らなかった場合には犯罪は成立しません。もっとも、捜査機関は、仕入れ値が正規品と比べて極端に安いこと、仕入先とのチャットに「N級」「スーパーコピー」といった言葉があること、購入者からの苦情の履歴などから、少なくとも偽物かもしれないと認識していた(未必の故意)と主張することがあります。
争う場合には、仕入れの経緯、正規品と信じた具体的な根拠(正規代理店を名乗る取引先の説明、付属書類、過去の取引実績)、販売数量と価格設定を、客観的な資料で一つずつ示していくことになります。黙秘権(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)を含め、どう供述するかは早い段階で弁護人と相談してください。
逮捕された後は、どのような流れで起訴・不起訴が決まりますか
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留が請求されます(刑事訴訟法203条・205条)。勾留は原則10日で、延長を含めると逮捕から最長23日で起訴か不起訴かが決まり、起訴前の保釈はありません。
商標法違反には罰金刑があるため、事案によっては略式命令による罰金(100万円以下、本人の同意が前提)で終わることもあります。販売規模が大きければ、公判請求されて拘禁刑と罰金が併科されることもあります。
偽ブランド品の販売で、退去強制(強制送還)の対象になりますか
商標法違反・関税法違反だけであれば、1年を超える実刑でない限り退去強制事由には当たりません。入管法24条4号の2は別表第一の在留資格者が特定の罪で拘禁刑に処せられた場合を定めていますが、商標法や関税法の罪はその列挙に含まれていないためです。刑の種類ごとの帰結は次のとおりです。
| 処分・刑 | 別表第一(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、留学、家族滞在など) | 別表第二(日本人の配偶者等、定住者など) | 永住者 |
|---|---|---|---|
| 不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分) | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし |
| 罰金(略式命令を含む) | 退去強制事由なし。更新・変更で素行が不利に考慮されうる | 退去強制事由なし。更新で不利に考慮されうる | 退去強制事由なし |
| 拘禁刑(全部執行猶予) | 4号の2に当たらない(列挙外の罪) | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし。2027年施行の取消事由(新9号)の対象外 |
| 拘禁刑1年以下の実刑 | 退去強制事由なし。更新は厳しくなりうる | 退去強制事由なし。更新は厳しくなりうる | 退去強制事由なし |
| 拘禁刑1年を超える実刑 | 4号リに該当 | 4号リに該当 | 4号リに該当 |
| 本物と偽った詐欺罪で拘禁刑(執行猶予を含む) | 4号の2に該当 | 4号の2は対象外 | 現行は対象外。2027年4月以降は取消事由(新9号)に当たりうる |
注意すべきは最後の行です。詐欺罪は刑法第37章の罪で、4号の2の列挙罪に入っています。同じ偽ブランド品の販売でも、偽物と知りながら「正規品」と説明して売っていた場合には、商標法違反に加えて詐欺罪で起訴される可能性があり、別表第一の方は執行猶予でも退去強制事由に当たります。どの罪名で起訴されるかは、在留にとって決定的な違いになります。退去強制手続に進んだ場合の在留特別許可については、外国人の刑事事件と在留で詳しくご説明しています。
在留期間の更新や在留資格の変更には、どう影響しますか
退去強制事由に当たらなくても、在留期間の更新(入管法21条)や在留資格の変更(20条)は「相当の理由」がある場合に許可されるもので、素行が善良であることが考慮されます。罰金刑や執行猶予付き判決は、この点で不利に働きうる事情です。更新が許可されなければ、在留期間の満了によって在留を続けられなくなります。
商標法違反を理由とする在留資格の取消規定はありませんが、留学や家族滞在の方が継続的な転売で収入を得ていれば資格外活動(入管法19条)が、会社員の方が解雇されて3か月以上本来の活動をしていなければ22条の4第1項6号の取消しが、それぞれ問題になりえます。
帰国や再入国に支障は出ますか
1年以上の拘禁刑に処せられたことがあると、執行猶予付きであっても上陸拒否事由(入管法5条1項4号)に当たります。そのため、判決後にみなし再入国許可で帰国し、日本に戻ろうとした際に上陸が問題になるおそれがあります。再入国許可を受けている場合などには特例(5条の2)がありますが、出国前に弁護士へ相談されることをおすすめします。上陸拒否の仕組みは上陸拒否期間とはでも解説しています。
フリマアプリ・越境EC・中国からの仕入れならではの注意点はありますか
中国の工場や卸業者から商品を直接取り寄せる場合、輸入の段階で税関に止められ、認定手続(関税法69条の12)を経て没収されることがあります。商業的な数量であれば、販売の実態を含めて捜査に発展することもあります。
フリマアプリでは、出品画像や商品説明、購入者とのメッセージがそのまま証拠になります。「正規品」「本物保証」と書いていたかどうかは、詐欺罪が問題になるかの分かれ目になりえますので、出品履歴や仕入先とのやり取りを削除することは、証拠隠滅と受け取られるおそれがあるため避けてください。経営・管理の方は、会社への両罰規定(商標法82条)による処罰と事業の継続性が更新審査に影響する点にも注意が必要です。
不起訴を目指すには、どのような弁護活動が必要ですか
故意を争う事案では仕入れの経緯を裏付ける資料を集めて意見書で示し、事実を認める事案では、商標権者との示談や損害賠償、在庫の任意放棄、販売アカウントの閉鎖、再発防止策などを具体的に示し、起訴猶予(刑事訴訟法248条)を求めることになります。
別表第一の方にとっては、詐欺罪が加わるかどうかが在留に直結し、それは事実関係の整理にかかっています。不起訴処分の種類と効果は不起訴処分とはをご覧ください。
当事務所では、どのように対応しますか
当事務所は、執行猶予では在留を守りきれない場面があることを踏まえ、起訴前の段階で不起訴処分を得ることを第一の目標に据えています。罪名の選択が在留の帰結を左右するこの種の事件では、刑事弁護と入管手続を切り分けず、一つの事件として見通しを立てます。
初回の接見から在留手続まで、松村大介弁護士が自ら担当します。外国人事件を専門に扱う中国語通訳が接見に同行し、捜査機関の通訳とは別に、ご本人の立場で言葉の橋渡しをします。中国本土のご家族とは微信(WeChat ID:matsumura1119)で直接連絡を取り合い、状況をお伝えしています。
よくある質問
偽物だと明記して販売していれば、罪にはならないのではありませんか。
いいえ。「コピー品」と表示していても、登録商標と同じか類似の標章を付けた商品を業として販売すれば、商標権侵害(商標法78条又は78条の2)が成立します。偽物と明示していれば詐欺罪にはなりにくいものの、商標権を侵害する点は変わりません。
自分で使うつもりで偽ブランド品を買っただけでも処罰されますか。
商標法の罰則は「業として」の商標の使用などを前提としているため、販売目的のない個人的な購入は、通常、同法違反で処罰される場面ではありません。ただし、海外の事業者から国内の個人宛てに送られた模倣品は、税関で没収の対象になります(関税法69条の11第1項9号の2、同条2項)。
永住者ですが、偽ブランド品の販売で罰金刑を受けました。永住資格はどうなりますか。
商標法違反の罰金刑は退去強制事由に当たらず、2027年4月施行予定の永住者の在留資格取消し(新22条の4第1項9号)の対象罪にも含まれていません。ただし、本物と偽って売った詐欺罪で拘禁刑に処せられた場合は、施行後の取消事由に当たりえます。
技術・人文知識・国際業務の在留資格で、商標法違反の執行猶予付き判決を受けました。強制送還されますか。
商標法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではないため、執行猶予付きの拘禁刑でも同号には当たらず、全部執行猶予なら4号リにも当たりません。ただし、更新では素行の点で不利に考慮されえますし、刑期が1年以上なら再入国の際に上陸拒否事由(5条1項4号)が問題になりえます。
税関から、輸入した商品について認定手続を執るという通知が届きました。どうすればよいですか。
税関長は、商標権侵害の疑いがある貨物について認定手続を執り、輸入しようとする者に証拠の提出や意見を述べる機会を与えます(関税法69条の12)。正規品であると主張するなら、取引記録などの資料を期限内に提出することが大切です。刑事事件に発展することもあるため、書面を出す前に弁護士に相談されることをおすすめします。
関連コラム
- 在留資格と罪名で見る退去強制・取消しの早見表|執行猶予でも強制送還になる組合せ
- 中国の薬や化粧品を無許可で売って逮捕されたら|薬機法違反の刑罰と在留資格(強制送還)への影響
- 金の密輸で逮捕・告発されたら|関税法・消費税法の刑罰と在留資格(強制送還)・再入国への影響
- 勤務先の金を着服して業務上横領で逮捕されたら|刑罰と在留資格(強制送還)への影響
本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119