中国の薬や化粧品を無許可で売って逮捕されたら|薬機法違反の刑罰と在留資格(強制送還)への影響
2026/09/10
中国の医薬品や化粧品、健康食品を許可なく販売した場合、問われるのは主に薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)違反で、この罪は入管法24条4号の2の列挙罪ではありません。罰金や執行猶予付きの判決にとどまれば、別表第一の在留資格の方でも、それだけで退去強制事由に当たることはありません。
ところが、販売していた製品に麻薬や向精神薬、覚醒剤の成分が含まれていた場合は事情が一変します。麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)などの薬物犯罪で有罪になれば、罰金でも執行猶予でも、永住者を含むすべての在留資格の方が退去強制事由(4号チ)に当たるからです。薬機法の罪と薬物犯罪の分かれ目を中心に、条文に沿って説明します。
本記事の要点
- 医薬品の無許可販売(薬機法24条1項)や化粧品の無許可の製造販売(12条1項)は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科です(84条)。
- 薬機法違反は4号の2の列挙罪ではなく、罰金・全部執行猶予では退去強制事由になりません。
- 製品に向精神薬などの規制薬物が含まれていれば、有罪判決の時点で在留資格を問わず4号チに当たります。
- 成分を知らなかったかどうかは、薬物犯罪の成否を左右する争点になります。
中国の薬や化粧品を無許可で売ると、どの条文で処罰されますか
医薬品を業として販売し、又は販売目的で貯蔵・陳列するには、薬局開設者か医薬品販売業の許可を受けた者でなければなりません(薬機法24条1項)。違反すると、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれらが併科されます(84条9号)。
自ら輸入した医薬品や化粧品を販売することは「製造販売」(2条13項)に当たり、製造販売業の許可(12条1項)が必要です。医薬品については、品目ごとの承認(14条1項)も求められます。宣伝の方法にも規制があり、承認を受けていない医薬品の名称や効能の広告は禁じられています(68条)。
| 行為 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 許可なく医薬品を業として販売・貯蔵・陳列する | 薬機法24条1項・84条9号 | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科 |
| 自ら輸入した医薬品・化粧品を許可なく販売する | 薬機法12条1項・84条2号 | 同上 |
| 承認のない医薬品を製造販売する | 薬機法14条1項・84条3号 | 同上 |
| 承認前の医薬品の効能を広告する | 薬機法68条・85条5号 | 2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又は併科 |
| 向精神薬をみだりに譲り渡し、又は譲渡目的で所持する | 麻薬及び向精神薬取締法66条の4 | 3年以下の拘禁刑(営利目的は5年以下、情状により100万円以下の罰金を併科) |
「個人輸入」ならどこまで許されるのですか
承認のない医薬品を輸入するには、原則として厚生労働大臣の確認を受けなければなりません(薬機法56条の2第1項)。自分で使う目的で、省令で定める数量以下にとどまる場合などは確認が不要とされています(同条3項2号)。
個人輸入はあくまで本人が使うための例外です。微信のグループや知人づてに注文を集め、まとめて取り寄せて代金を受け取る「代購」は、個人使用の範囲を超えた販売として24条違反などに問われるおそれがあります。販売目的を隠して輸入すれば、56条の2の確認の問題も生じます。
逮捕されると、起訴・不起訴が決まるまでどのくらいかかりますか
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、逮捕から72時間以内に勾留請求の判断がされます(刑事訴訟法203条・205条)。勾留は延長を含めて最長20日で、逮捕から最長23日の間に起訴か不起訴かが決まります。起訴前の保釈はありません。
薬機法違反には罰金刑があるため、略式命令による罰金で終わる事案もあります。一方、製品の鑑定で規制薬物の成分が見つかると、麻薬及び向精神薬取締法違反で再逮捕され、身柄拘束が長引くことがあります。同法66条の4の罪には罰金のみの選択肢がないので、起訴されれば公判となります。
退去強制(強制送還)に当たるかどうかは、何で決まりますか
決め手は、有罪となる罪が薬機法の罪だけか、薬物犯罪を含むかです。薬機法違反は4号の2の列挙外なので、1年を超える実刑(4号リ)でない限り退去強制事由にはなりません。これに対し、麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法などに違反して有罪判決を受けた場合は、刑の重さも在留資格の種類も問わず4号チに当たります。
| 罪名・処分 | 別表第一(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、留学など) | 別表第二(日本人の配偶者等、定住者など) | 永住者 |
|---|---|---|---|
| 薬機法違反で不起訴 | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし |
| 薬機法違反で罰金 | 退去強制事由なし。更新・変更で不利に考慮されうる | 退去強制事由なし。更新で不利に考慮されうる | 退去強制事由なし |
| 薬機法違反で拘禁刑(全部執行猶予) | 4号の2に当たらない | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし。新9号の取消事由の対象外 |
| 薬機法違反で拘禁刑1年を超える実刑 | 4号リに該当 | 4号リに該当 | 4号リに該当 |
| 麻向法・覚醒剤取締法違反で有罪(罰金・執行猶予を含む) | 4号チに該当 | 4号チに該当 | 4号チに該当 |
| 薬物犯罪は嫌疑不十分で不起訴、薬機法違反のみ罰金 | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし | 退去強制事由なし |
海外製の痩身用製品などから、日本では医薬品として規制される成分が検出され、注意喚起がされた例があります。「漢方」「天然成分」と表示されていても安心はできません。4号チに当たっても在留特別許可(入管法50条)を求める道はありますが、許否は事情次第です。手続の全体像は薬物事件のご相談でもご案内しています。
在留期間の更新・変更や、在留資格の取消しへの影響はありますか
在留期間の更新(入管法21条)と在留資格の変更(20条)では素行が考慮されるため、薬機法違反の罰金や執行猶予も不利な事情になりえます。薬機法違反そのものを理由とする在留資格の取消規定はありませんが、経営・管理の方は、事業の中身が無許可販売だったと評価されると、事業の適正さや継続性が更新審査で厳しく見られるおそれがあります。
永住者の方については、2027年4月施行予定の取消制度(新22条の4第1項9号)が薬機法違反を対象としていないため、この点での心配は小さいといえます。
出国や再入国の際に、問題になることはありますか
麻薬や向精神薬などの取締法令に違反して刑に処せられたことがある方は、罰金であっても上陸拒否事由に当たります(入管法5条1項5号)。薬機法違反のみの場合も、1年以上の拘禁刑に処せられれば執行猶予付きでも5条1項4号に当たります。再入国許可があれば特例(5条の2)の余地はありますが、判決後の出国は弁護士と相談してから判断してください。
成分を知らなかった場合や、無許可販売を認める場合、弁護活動はどう変わりますか
規制薬物の成分が問題になっている事案では、何を仕入れたと認識していたかが中心です。仕入先とのやり取り、商品のパッケージや成分表示、販売時の説明文、価格などを集め、成分の存在を知らなかったことを具体的に示して、嫌疑不十分による不起訴を求めます。取調べでの供述が結論を左右しやすいため、黙秘権の行使も含めて早期に方針を決める必要があります。
薬機法違反のみで事実を認める場合は、在庫の廃棄や販売ページの閉鎖、許可を得た事業者への切替えなど再発防止策を示し、起訴猶予を目指します。薬機法の罪には被害者がいないため、示談ではなく、違法状態を解消したことと今後の見通しを具体的に説明することが中心になります。
当事務所にご依頼いただいた場合の進め方
当事務所では、薬機法違反で終わるのか薬物犯罪に広がるのかという分岐を最初に見極め、起訴前に不起訴処分を得ることを最優先に据えます。刑事の結論が在留の結論を決める事件ですので、入管手続まで一体として見通しを立てます。
弁護は、最初の接見から在留手続まで松村大介弁護士が一貫して担当します。外国人事件専属の中国語通訳が接見に同行し、ご本人の側に立って言葉を支えます。中国本土のご家族からのご相談は、微信(WeChat ID:matsumura1119)でも直接お受けしています。執行猶予の意味と在留への影響は執行猶予とはで解説しています。
よくある質問
中国から個人輸入した薬を、知人に分けただけでも違法になりますか。
薬機法24条が禁じるのは「業として」の販売・授与で、反復継続する意思があれば無償でも該当しえます。一度きりの無償の譲渡がただちに同条違反になるとは限りませんが、個人輸入は自分で使うことを前提とした仕組み(56条の2第3項)ですので、知人の分までまとめて取り寄せ、代金を受け取って渡すことを繰り返せば、違反と評価されるおそれが高まります。
中国の化粧品を仕入れてネットで販売するには、どのような許可が必要ですか。
自ら輸入した化粧品を販売することは薬機法上の「製造販売」(2条13項)に当たり、化粧品製造販売業の許可(12条1項)が必要です。無許可での製造販売は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科とされています(84条2号)。国内の許可業者が輸入した商品を仕入れて小売りするのであれば、この許可は不要です。
痩身用のサプリメントに向精神薬の成分が入っているとは知りませんでした。それでも在留資格を失いますか。
麻薬及び向精神薬取締法違反で有罪判決を受ければ、罰金や執行猶予でも入管法24条4号チに当たりますが、同法違反も故意犯なので、成分を知らなかったという事情は犯罪の成否に関わる重要な争点です。仕入れの経緯、商品の表示、仕入先の説明などを早い段階で整理し、嫌疑不十分による不起訴を目指すことになります。
永住者ですが、薬機法違反で罰金刑になりました。永住資格に影響はありますか。
薬機法違反の罰金刑は退去強制事由に当たらず、2027年4月施行予定の永住者の在留資格取消し(新22条の4第1項9号)の対象罪にも含まれていません。ただし、同じ事件で麻薬及び向精神薬取締法違反も有罪となっていれば、在留資格を問わない4号チの問題になります。
健康食品として販売していたのに、医薬品に当たると言われました。どういうことですか。
薬機法は、疾病の治療や予防、身体の構造や機能への影響を目的とする物を医薬品と定義しています(2条1項)。食品の形をしていても、医薬品の成分を含んでいたり、「病気が治る」「飲むだけで痩せる」といった効能をうたっていたりすると、承認も許可もない医薬品と判断されることがあります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
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