スキミング・偽造クレジットカードで逮捕されたら|罪名・刑罰と在留資格(強制送還)への影響
2026/09/10
スキミングで抜き取った情報から偽造クレジットカードを作ったり、そのカードを使ったり持っていたりすると、刑法第18章の2「支払用カード電磁的記録に関する罪」が成立します。この罪は入管法24条4号の2が挙げる罪に含まれるため、留学、技術・人文知識・国際業務、家族滞在など別表第一の在留資格の方は、拘禁刑に処せられれば執行猶予付きでも退去強制事由に当たります。
これに対して、永住者や日本人の配偶者等・定住者など別表第二の方は、現行法では1年を超える実刑でない限り退去強制事由にはなりません。もっとも永住者については、2027年4月1日から、同じ範囲の罪で拘禁刑に処せられたことが在留資格の取消事由に加わります。
本記事の要点
- 偽造カードの作出・使用・譲渡し等は10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、所持は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
- 別表第一の方は、拘禁刑であれば執行猶予付きでも入管法24条4号の2の退去強制事由に当たります。
- 永住者・別表第二の方は、現行法では1年を超える実刑(4号リ)でなければ退去強制事由になりませんが、永住者は2027年4月から取消制度の対象になります。
- 偽造カードの使用には詐欺罪や窃盗罪が併せて成立することがあり、これらも4号の2の対象となる罪です。
スキミングや偽造カードでは、どのような罪が成立しますか
中心は刑法第18章の2の罪で、情報の抜き取りから偽造カードの作成・使用・譲渡し・所持まで、段階ごとに処罰規定があります。
- 不正作出(163条の2第1項):クレジットカードやキャッシュカードを構成する電磁的記録を不正に作ること。10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
- 供用(同条2項):不正に作られた電磁的記録を、決済端末やATMで事務処理に使わせること。刑は不正作出と同じです。
- 譲渡し・貸渡し・輸入(同条3項):偽造カードを人に渡したり、国外から持ち込んだりすること。これも同じ刑です。
- 所持(163条の3):人の財産上の事務処理を誤らせる目的で偽造カードを持つこと。5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
- 準備(163条の4):偽造に使う目的でカード情報を取得・提供・保管すること、スキマーなどの器械や原料を準備すること。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
不正作出・供用・譲渡し等と、情報の取得・提供には未遂を罰する規定もあります(163条の5)。さらに、偽造カードを店で示して商品を受け取れば詐欺罪(246条、10年以下の拘禁刑)が、ATMから現金を引き出せば窃盗罪(235条)が問題になります。詐欺罪には罰金刑がないため、有罪となれば刑は拘禁刑に限られます。
「運ぶだけ」「使うだけ」と頼まれた場合でも罪になりますか
偽造カードだと分かったうえで引き受けていれば、役割が小さくても処罰を免れるとは限りません。SNSや知人から「カードで買い物をするだけ」「荷物を届けるだけ」と報酬付きで誘われ、使用役や運び役になってしまう構図が見られます。偽造と認識して使えば供用や詐欺の実行者となり、指示役との共同正犯に問われることもあります。
偽造と本当に知らなかったのであれば、故意がなく罪は成立しません。何を聞かされ、どれほどの報酬を約束されていたのかが故意の判断を左右します。曖昧なまま「怪しいとは思った」と話すと未必の故意を認めたと受け取られかねないため、供述の前に弁護人と話し合っておくことが大切です。
逮捕された後は、どのような流れになりますか
逮捕から最長23日の間に、起訴か不起訴かが決まります。警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官に送り(刑事訴訟法203条)、検察官は24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します(205条)。勾留は原則10日で、延長を含めると最長20日です(208条)。
起訴される前の段階には、保釈の制度がありません。関係者の多い事件では、弁護人以外との面会を禁じる接見等禁止(81条)が付されることもあります。それでも弁護人は立会人なしで接見でき(39条1項)、黙秘権(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)の使い方を含めて助言できます。本国の領事機関への通報も求められます(領事関係に関するウィーン条約36条1項(b))。
退去強制事由に当たりますか。在留資格によって違いはありますか
刑法第18章の2は、入管法24条4号の2が挙げる「第16章から第19章まで」の範囲に入るため、別表第一の方は拘禁刑に処せられれば執行猶予付きでも該当しますが、別表第二の方にはこの号が適用されません。
| 在留資格 | 不起訴・罰金 | 拘禁刑(全部執行猶予) | 1年以下の実刑 | 1年を超える実刑 |
|---|---|---|---|---|
| 別表第一(留学、技術・人文知識・国際業務、家族滞在、特定技能など) | 退去強制事由に当たらない(更新への影響は残る) | 4号の2に該当 | 4号の2に該当 | 4号の2と4号リに該当 |
| 永住者(2027年3月まで) | 当たらない | 当たらない | 当たらない | 4号リに該当 |
| 永住者(2027年4月以降) | 当たらない | 取消事由(新22条の4第1項9号) | 取消事由 | 取消事由、かつ4号リに該当 |
| 日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者 | 当たらない | 当たらない | 当たらない | 4号リに該当 |
詐欺罪が併せて成立していれば、罰金という選択肢はありません。刑の一部執行猶予を受けた場合は、猶予されなかった部分が1年を超えれば4号リの対象となります。
退去強制事由に当たっても、手続の中で在留特別許可(50条)を求める道は残ります。家族関係、在留期間、素行、退去強制の理由となった事実などが考慮され(同条5項)、1年を超える実刑の場合は、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情が求められます(同条1項ただし書)。手続の全体像は退去強制・在留特別許可の解説をご覧ください。
永住者の方は、2027年からどう変わりますか
2027年4月1日以降は、永住者の方がこの罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予付きであっても永住者の在留資格の取消事由になります(新22条の4第1項9号)。この規定はまだ施行されていません。
取り消す場合でも、在留が適当でないと認められる場合を除き、職権で永住者以外の在留資格への変更が許可されます(新22条の6)。出入国在留管理庁は、多くの場合「定住者」を想定していると説明しています。施行前に確定した判決がどう扱われるかは法文上明らかでなく、今後の運用を確認する必要があります。取消し制度の仕組みは在留資格取消しとはで解説しています。
在留期間の更新や在留資格の変更には影響しますか
退去強制事由に当たらない場合でも、更新や変更の審査では不利に働くおそれがあります。更新(21条)と変更(20条)は「相当の理由」があるときに許可され、素行の善良さが考慮されるからです。罰金や執行猶予で終わっても、素行の評価には影響しえます。更新が認められなければ、在留期間の満了によって在留資格を失います。永住許可(22条)の申請を考えている方にとっても、前科は不利な事情になります。
別表第一の方は、身柄拘束が長引いて学業や仕事から離れると、本来の活動を継続して3か月以上行っていないとして在留資格取消し(22条の4第1項6号)が問題になる場面もあります。正当な理由があれば取消しの対象にならないため、学校や勤務先への説明を早めに整えておくことが大切です。
判決を受けた後に出国すると、再び日本に入国できますか
判決の内容によっては、再入国の際に上陸拒否事由が問題になります。1年以上の拘禁刑に処せられたことのある方は、執行猶予付きであっても上陸拒否事由に当たり(5条1項4号)、この事由には期間の限定がありません。
また、別表第一の方が4号の2の罪で拘禁刑の判決の宣告を受け、確定する前に出国した場合には、確定の日から5年間、上陸拒否事由となります(5条1項9号の2)。再入国許可を受けて出国した場合などに、相当と認められれば上陸を拒否しない特例もありますが(5条の2)、認められるかどうかは個別の判断です。みなし再入国許可での出国を考える前に、弁護士へご相談ください。拒否期間の考え方は上陸拒否期間とはも参考になります。
不起訴を目指すために、どのような弁護活動をしますか
この類型では、不起訴で終われるかどうかが在留の帰結を最も大きく分けます。起訴猶予や嫌疑不十分で不起訴になれば有罪判決がないため、4号の2にも4号リにも当たりません。
- 故意を争う:偽造と知らなかったことを、指示の内容や報酬の水準、メッセージの記録から具体的に示します。
- 関与の範囲を明らかにする:情報の抜き取りや偽造そのものには関わっていないこと、使用の回数や金額が限られていることを整理します。
- 被害の回復:カード会社や加盟店への弁償を申し出て、示談書や弁償の記録を検察官に届けます。
- 意見書と身元引受け:ご家族や勤務先・学校の身元引受書を添え、起訴を見送るべき理由を意見書にまとめます。
当事務所ではどのように対応しますか
舟渡国際法律事務所は、起訴前の段階で不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いています。別表第一の方にとって、執行猶予では在留を守れないためです。刑事弁護と入管手続を一つの事件として扱います。
最初の接見から在留手続まで、松村大介弁護士が自ら一貫して担当します。接見には外国人事件専属の中国語通訳が同行し、捜査機関が手配する通訳とは別に、ご本人の側に立って言葉を補います。中国本土のご家族とは微信(WeChat ID:matsumura1119)で直接やり取りできます。
よくある質問
スキミング装置を設置しただけで、カードはまだ作っていません。それでも罪になりますか。
偽造に使う目的でカード情報を取得すれば、支払用カード電磁的記録不正作出準備罪(刑法163条の4第1項)が成立しえます。スキマーなどの器械を準備しただけでも同条3項の対象となり、刑はいずれも3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
留学生で、偽造カードの所持について罰金で終わりました。退去強制されますか。
罰金にとどまった場合、拘禁刑を要件とする入管法24条4号の2には当たりません。ただし、在留期間の更新では素行の評価に影響しうるため、説明の準備をしておくことが望まれます。
永住者ですが、執行猶予付きの判決を受けました。永住資格はどうなりますか。
現行法では、執行猶予付きの判決だけで永住者が退去強制事由に当たることはありません。2027年4月1日以降は、この罪で拘禁刑に処せられたことが取消事由に加わりますが、施行前に確定した判決の扱いは法文上明らかでなく、今後の運用を確認する必要があります。
偽造カードとは知らず、頼まれて使っただけです。どうすればよいですか。
偽造と知らなかったのであれば故意がなく、罪は成立しません。依頼の経緯が分かるメッセージは消さずに残し、弁護人と相談するまでは黙秘することも検討してください。
出国命令の制度を使って帰国することはできますか。
出国命令は不法残留などに限った制度で、4号の2は含まれていません。日本に入った後に同じ範囲の罪で拘禁刑に処せられた方は、不法残留の場合でも出国命令を受けられません(入管法24条の3第3号)。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
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