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他人名義の旅券の使用・旅券の貸与で逮捕されたら|旅券法・入管法の罪と退去強制(強制送還)への影響

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他人名義の旅券の使用・旅券の貸与で逮捕されたら|旅券法・入管法の罪と退去強制(強制送還)への影響

他人名義の旅券の使用・旅券の貸与で逮捕されたら|旅券法・入管法の罪と退去強制(強制送還)への影響

2026/09/10

他人名義の旅券を使ったり、自分の旅券を人に貸したりして旅券法23条の罪で刑に処せられると、罰金であっても執行猶予付きであっても、入管法24条4号ニの退去強制事由に当たります。4号ニは在留資格の種類を問わないため、別表第一の方と永住者・別表第二の方とで結論が変わらない点が、この類型の大きな特徴です。

もう一つ押さえておきたいのは、旅券法が対象とするのは日本国の旅券であるという点です。中国の旅券など外国の旅券の貸し借りや他人名義の外国旅券での入国は、主に入管法の不法入国や、不法入国等を目的とする旅券の所持・提供の罪として扱われ、こちらも退去強制に直結します。

本記事の要点

  • 旅券法23条の主な罪(他人名義旅券の行使、自己名義旅券の譲渡し・貸与など)は、5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科です。
  • 同条1項(6号を除く)から3項までの罪で刑に処せられれば、罰金でも執行猶予でも、永住者を含めて退去強制事由(4号ニ)に当たります。
  • 外国の旅券の貸し借りや他人名義の外国旅券での入国は主に入管法の問題となり、他人名義の旅券での入国は不法入国(24条1号)、不法入国等を目的とする旅券の提供・所持で刑に処せられれば4号ホに当たります。
  • いずれの類型でも出国命令の対象外となるため、在留を望む場合は在留特別許可が中心的な手段になります。

旅券法23条では、どのような行為が処罰されますか

旅券の不正な取得や、他人との間での貸し借り・売買が処罰の対象です。23条1項の主な内容は次のとおりで、法定刑はいずれも5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科です。

  • 1号:虚偽の記載などの不正な行為で旅券の交付を受けること
  • 2号:他人名義の旅券又は渡航書を行使すること
  • 3号:行使の目的で、自己名義の旅券又は渡航書を他人に譲り渡し、又は貸与すること
  • 4号:行使の目的で、他人名義の旅券又は渡航書を譲り渡し、貸与し、譲り受け、借り受け、又は所持すること
  • 5号:行使の目的で、旅券として偽造された文書を譲り渡し、貸与し、譲り受け、借り受け、又は所持すること

営利の目的で1号・4号・5号の罪を犯すと、7年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科に重くなります(同条2項)。所持を除く多くの行為は未遂も罰せられます(同条3項)。

ここでいう旅券は、旅券法に基づいて発給される日本国の旅券です。外国籍の方が問われるのは、たとえば日本人名義の旅券を譲り受けて手元に置く、出入国の手続でそれを示すといった場面です。日本国籍を取得した親族が、自分の日本の旅券を外国籍の家族に貸せば、貸した側も3号の罪に問われます。

中国の旅券など、外国の旅券を貸し借りした場合はどうなりますか

旅券法ではなく、入管法の罪と退去強制事由の問題になります。入管法74条の6の2は、他人の不法入国等を容易にする目的で、偽造旅券や、その人について効力を有しない旅券を提供・所持・収受することを、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科で処罰しています(営利目的なら5年以下の拘禁刑及び500万円以下の罰金)。自分の旅券を他人の入国のために渡す行為も、渡された人にとって効力のない旅券を提供したことになります。

この罪で刑に処せられると、罰金でも入管法24条4号ホの退去強制事由です。刑を受けていなくても、他の外国人の不法入国や不正な上陸をあおり、唆し、助けた者は4号ルに当たり、行為そのものが退去強制事由となります。

他人名義の旅券で日本に入国していた場合は、どうなりますか

他人名義の旅券による入国は、有効な旅券を持たずに入国したものとして不法入国(入管法3条1項1号違反)に当たり、24条1号の退去強制事由となります。刑事上も、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科の対象です(70条1項1号)。

その後、日本人と結婚するなどして生活の基盤を築いていても、偽りの身分で得た在留資格は取消し(22条の4第1項1号・2号)や退去強制手続の対象となりえます。もっとも、この場面こそ在留特別許可(50条)の判断で家族関係や在留期間が重く考慮される場面でもあります。当事務所でも、在留資格を失ったうえで起訴された方について、婚姻や認知の手続を並行して進め、在留特別許可を一度の申請で得られた例があります。

退去強制事由に当たりますか。永住者でも同じですか

同じです。4号ニは「刑に処せられた者」と定めるだけで刑の種類や在留資格を限定していないため、別表第一の方も永住者・別表第二の方も、有罪で刑を受ければ該当します。

在留資格不起訴罰金拘禁刑(全部執行猶予)1年を超える実刑
別表第一(留学・技術・人文知識・国際業務・家族滞在・経営・管理など)4号ニには当たらない4号ニに該当4号ニに該当4号ニに該当
永住者4号ニには当たらない4号ニに該当4号ニに該当4号ニに該当
日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者4号ニには当たらない4号ニに該当4号ニに該当4号ニに該当

別表第一の方だけが対象となる4号の2とは仕組みが異なり、在留資格による差が生じない点に注意が必要です。なお、表は旅券法の罪についての整理であり、他人名義の旅券で入国していた場合は、刑事処分の結果にかかわらず24条1号が別に問題になります。外国人の刑事事件と在留の関係は外国人の刑事事件と在留でも解説しています。

逮捕された後は、どのような手続になりますか

逮捕から48時間以内に検察官へ送致され(刑事訴訟法203条)、逮捕から72時間以内に勾留が請求されます(205条)。勾留は延長を含めて最長20日で(208条)、この間に起訴か不起訴かが決まります。起訴前には保釈の制度がありません。

旅券の入手経路や仲介者の存在が捜査の焦点になりやすく、接見等禁止(81条)が付されることもありますが、弁護人との接見は立会人なしで認められます(39条1項)。本国の領事機関への通報も求められます(領事関係に関するウィーン条約36条1項(b))。取調べでは、黙秘権(憲法38条1項)を踏まえ、話す内容を弁護人と整理してから臨むことが大切です。

出国命令や在留特別許可、在留期間の更新はどうなりますか

4号ニ・4号ホ・4号ルに当たる方は、自ら出頭しても出国命令を受けることができません(入管法24条の3第2号)。退去強制手続の中で、在留特別許可を求めるかどうかを判断することになります。在留特別許可では、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間などが考慮されます(50条5項)。手続の流れは退去強制・在留特別許可の解説をご覧ください。

退去強制手続に至らない段階でも、在留期間の更新(21条)や在留資格の変更(20条)では素行の善良さが問われます。旅券の不正使用は出入国管理の根幹にかかわる行為であり、審査に強く影響すると考えられます。

帰国した後、再び日本に来ることはできますか

退去強制された場合は、原則として退去の日から5年間、過去にも退去強制歴等があれば10年間、上陸を拒否されます(5条1項9号)。これとは別に、1年以上の拘禁刑に処せられたことがあれば、執行猶予付きでも期間の限定のない上陸拒否事由となります(同項4号)。

再入国許可を受けて出国した場合などに、相当と認められれば上陸を拒否しない特例(5条の2)はありますが、個別の判断にとどまります。判決後に出国を考える場合は、その前に弁護士へご相談ください。

不起訴を目指すために、どのような弁護活動をしますか

旅券法違反には直接の被害者がいないため、示談ではなく、事実と証拠に即した主張が中心になります。

  • 目的と認識を争う:旅券法23条の多くの罪は「行使の目的」を要件とします。預かっただけで使うつもりがなかった事情や、他人名義・偽造だと知らなかった事情を、やり取りの記録から具体的に示します。
  • 営利性の否定:報酬を受けていないことを明らかにし、刑の重い営利目的類型(23条2項)の適用を防ぎます。
  • 関与の程度と経緯:仲介者に言われるまま関わった事情、旅券を返還済みであることなどを整理し、意見書にまとめます。

起訴猶予や嫌疑不十分で不起訴になれば、刑に処せられていない以上、4号ニ・4号ホには当たりません。

当事務所はどのように対応しますか

当事務所は、この類型では罰金でも退去強制事由になることを前提に、起訴前の不起訴処分を最優先の目標としています。刑事弁護と、その後に続く入管手続を分けずに一人の弁護士が見通すことが、方針のぶれを防ぎます。

松村大介弁護士が接見の初動から在留特別許可の手続まで一貫して担当し、外国人事件専属の中国語通訳が接見に同行します。この通訳は捜査側の通訳とは別に、ご本人のために動く立場です。中国本土のご家族とは微信(WeChat ID:matsumura1119)で直接連絡を取り合えます。

よくある質問

中国の旅券を友人に貸しましたが、旅券法違反になりますか。

旅券法が対象とするのは日本国の旅券ですので、中国の旅券の貸与は旅券法の問題ではありません。ただし、友人の不法入国等を容易にする目的があれば入管法74条の6の2の罪となり、刑に処せられれば罰金でも退去強制事由(4号ホ)に当たります。

旅券法違反で罰金になりました。永住者なので問題ありませんか。

旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪で刑に処せられた者は、罰金であっても、永住者を含めて退去強制事由(入管法24条4号ニ)に当たります。退去強制手続の中で在留特別許可を求めることになります。

何年も前に他人名義の旅券で入国しました。今は日本人の配偶者がいます。どうすればよいですか。

他人名義の旅券による入国は不法入国として退去強制事由(24条1号)に当たります。一方で、在留特別許可では家族関係や在留期間が考慮されますので、婚姻の実態を示す資料を整えたうえで、手続の進め方を弁護士とご相談ください。

預かっていただけで、使うつもりはありませんでした。それでも処罰されますか。

旅券法23条1項3号から5号までの罪は、行使の目的があることを要件としています。使うつもりがなかったのであれば、預かった経緯やその後の扱いを具体的に示し、目的の有無を争う余地があります。

関連コラム

本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

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