偽造在留カードの購入・所持・使用で逮捕されたら|罪名・刑罰と退去強制(強制送還)への影響
2026/09/10
偽造在留カードを買う、持つ、見せるといった行為は、それだけで入管法24条3号の5の退去強制事由に当たり、刑事裁判で有罪になるかどうかは要件ではありません。この号は在留資格の種類を問わないため、別表第一の方だけでなく、永住者や日本人の配偶者等の方にも適用されます。
刑罰の面では、偽造カードの行使・提供・収受が1年以上10年以下の拘禁刑(入管法73条の3)と重く定められています。仕事を得るために偽造カードを手に入れる方、自分のカードを知人に貸す方、偽造カードを確認せずに雇ってしまった会社側まで、立場ごとの帰結を整理します。
本記事の要点
- 偽造在留カードの購入・所持・使用、他人名義カードの使用、自分のカードの貸与は、いずれも刑罰の有無と関係なく退去強制事由(3号の5)に当たりえます。
- 永住者・別表第二の方も対象で、罪名による在留資格ごとの違いがほとんどない類型です。
- 偽造カードの行使や提供・収受は下限1年の重い罪で、執行猶予付きでも上陸拒否事由(5条1項4号)が問題になりえます。
- 偽造カードの持ち主を働かせた事業者は、不法就労助長罪(73条の2)と退去強制事由(3号の4)の問題を抱えます。
偽造在留カードを買ったり持っていたりすると、どのような罪になりますか
行為の内容によって条文と法定刑が分かれ、最も重いものは1年以上10年以下の拘禁刑です。主な類型は次の表のとおりです。
| 行為 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 偽造・変造(行使の目的) | 73条の3第1項 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 偽造カードの行使(勤務先や役所に示す等) | 73条の3第2項 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 偽造カードの提供・収受(売る・買う) | 73条の3第3項 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 偽造カードの所持(行使の目的) | 73条の4第1項 | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 偽造のための器械・原料の準備 | 73条の5第1項 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 他人名義カードの行使・提供・収受・所持、自己名義カードの提供 | 73条の6第1項 | 1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金 |
73条の3の罪は未遂も罰せられます(同条7項)。インターネットで偽造カードを注文し、受け取った時点で「収受」に当たり、手元に置いていれば「所持」、勤務先に提示すれば「行使」と、一連の流れの中で複数の罪が問題になります。
有罪にならなくても、退去強制されることがあるのですか
あります。入管法24条3号の5は、偽造在留カードの偽造・提供・収受・所持・行使や、他人名義カードの行使・所持、自己名義カードの提供などの行為そのもの(これを唆し、助けた場合を含む)を退去強制事由としており、刑に処せられたことを要件としていません。
そのため、刑事手続で起訴猶予となっても、出入国在留管理庁が違反調査(27条)を行い、行為があったと認定すれば退去強制手続が進むことがあります。不起訴は大切な目標ですが、この類型では入管段階の対応まで見据える必要があります。また、3号の5に当たる方は、自ら出頭しても出国命令(24条の3)を受けることができません(同条2号)。
一方で、偽造と知らずに渡された場合や、行使の目的がなかった場合は、刑事上の罪だけでなく3号の5の該当性そのものを争う余地があります。
永住者や日本人の配偶者等でも、同じように扱われますか
同じように扱われます。3号の5は、別表第一の方に限った4号の2とは異なり、在留資格による区別を設けていません。
| 在留資格 | 不起訴・罰金 | 拘禁刑(全部執行猶予) | 1年を超える実刑 |
|---|---|---|---|
| 別表第一(留学・技術・人文知識・国際業務・家族滞在・特定技能など) | 行為が認定されれば3号の5に該当 | 3号の5に該当 | 3号の5・4号リに該当 |
| 永住者 | 行為が認定されれば3号の5に該当 | 3号の5に該当 | 3号の5・4号リに該当 |
| 日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者 | 行為が認定されれば3号の5に該当 | 3号の5に該当 | 3号の5・4号リに該当 |
2027年4月から始まる永住者の取消制度(新22条の4第1項9号)の対象となる罪には入管法違反は含まれていません。ただし、それは永住者に有利という意味ではなく、現行法の段階で既に3号の5により退去強制事由に当たるということです。退去強制事由に当たった場合でも、在留特別許可(50条)を求めることはでき、永住許可を受けていることは同条1項1号に掲げられた事情です。
自分のカードを貸したり、他人のカードを借りて働いたりした場合はどうなりますか
いずれも73条の6の罪と3号の5の問題になります。正規の在留資格を持っている方が、在留カードのない知人に「仕事に使うだけだから」と頼まれて自分のカードを渡せば、行使の目的での自己名義カードの提供に当たります。
反対に、就労制限のある在留資格の方や在留期間を過ぎてしまった方が、他人名義のカードを借りて勤務先に示せば、他人名義カードの行使です。こうした方は、その就労自体についても、資格外活動(19条1項違反、73条。拘禁刑に処せられれば4号ヘ、専ら行っていると明らかに認められれば4号イ)や不法残留(4号ロ)の問題を抱えます。就労をめぐる問題全般は不法就労のご相談で解説しています。
雇った会社や、仕事を紹介した人はどのような責任を負いますか
働く資格のない外国人を事業活動に関して働かせた事業者は、不法就労助長罪に問われえます(73条の2)。刑は現在、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科ですが、2027年4月1日からは5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科に引き上げられます。
同条2項により、相手が働けない立場だと知らなかったことは処罰を免れる理由にならず、過失がない場合に限って責任を免れます。偽造カードを示された事業者の過失の有無は、カードの確認方法などから判断されます。事業者や、業としてあっせんした者が外国人であれば、3号の4により行為そのものが退去強制事由となり、この号にも刑罰は要件とされていません。当事務所では、不法就労助長に問われた方について、退去強制事由の認定に故意・過失を要しないとする実務に対し、責任主義がどこまで及ぶかを上訴審まで争い、その後に在留特別許可が認められた経験があります。現在も議論のある論点です。
逮捕された後、刑事手続と入管手続はどうつながりますか
まず刑事手続が進み、逮捕から最長23日で起訴・不起訴が決まります(刑事訴訟法203条・205条・208条)。起訴前の保釈はありませんが、弁護人は立会人なしで接見でき(39条1項)、領事機関への通報を求めることもできます(領事関係に関するウィーン条約36条1項(b))。
刑事手続が終わると、不起訴で釈放された場合でも、執行猶予付きの判決を受けた場合でも、入管に身柄が引き継がれ、収容か監理措置かが審査されることがあります(入管法39条)。在留特別許可を求めるのであれば、刑事段階から家族関係や生活の資料をそろえておくことが大切です。退去強制手続の全体像は退去強制・在留特別許可の解説をご覧ください。
在留期間の更新や、帰国後の再入国に影響はありますか
退去強制手続に至らなかった場合でも、更新・変更の審査(21条・20条)では、在留管理の根幹にかかわる違反として素行の評価に強く影響すると考えられます。
再入国の面では、73条の3の罪は法定刑の下限が1年ですので、酌量減軽などがない限り判決の刑期は1年以上になり、執行猶予付きでも上陸拒否事由(5条1項4号)に当たることになります。退去強制された場合は、原則として5年間(過去にも退去強制歴等があれば10年間)上陸を拒否されます(同項9号)。
当事務所はどのような弁護をしますか
この類型では、刑事の不起訴と入管の在留特別許可の両方を視野に入れて動きます。不起訴処分の獲得を最優先に据えつつ、偽造と知っていたか、行使の目的があったかといった事実を証拠に即して争い、同時に入管段階で必要となる家族関係や就労の事情を整理します。
刑事事件の接見から入管での手続まで、松村大介弁護士が本人として一貫して担当します。外国人事件専属の中国語通訳が接見に同行し、ご本人の説明を正確にくみ取ります。中国本土のご家族とは微信(WeChat ID:matsumura1119)でやり取りでき、資料の取り寄せもご相談いただけます。
よくある質問
偽造在留カードを注文しただけで、まだ届いていません。それでも問題になりますか。
受け取る前の段階でも、73条の3の収受などの罪は未遂が処罰の対象とされており(同条7項)、注文の状況によっては問題になりえます。3号の5は行為を唆し又は助けた者も対象としているため、注文の経緯や相手とのやり取りを弁護人に詳しく伝えてください。
永住者です。知人に頼まれて自分の在留カードを貸しました。永住資格は大丈夫でしょうか。
行使の目的で自己名義の在留カードを提供することは73条の6の罪に当たり、同時に3号の5の退去強制事由にも当たりえます。永住者であっても例外ではないため、早い段階で事実関係を確認し、入管手続への備えを始めることをお勧めします。
不起訴になれば、入管の手続も心配ありませんか。
3号の5は刑罰を要件としないため、不起訴でも入管が行為を認定すれば退去強制手続が進むことがあります。不起訴の理由が嫌疑不十分であれば、入管段階でも該当性を争う材料になりえます。
雇っていた外国人の在留カードが偽造だと後から分かりました。会社はどうなりますか。
不法就労助長罪(73条の2)は、知らなかったことだけでは処罰を免れず、過失がなかった場合に限って責任を免れます。在留カードをどのように確認していたかが問題になりますので、確認の記録を保全したうえでご相談ください。
偽造在留カードで働いていましたが、自分から入管に出頭すれば出国命令で帰れますか。
3号の5に当たる方は出国命令の対象から除かれています(24条の3第2号)。そのため退去強制手続の中で、在留特別許可を求めるか、帰国するかを検討することになります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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