「外国人は不起訴になりやすい」は本当か|不起訴の仕組みと外国人事件の実務を弁護士が解説
2026/08/06
報道やSNSで、外国人の事件が不起訴となるたびに「外国人は不起訴になりやすいのではないか」という議論が起こります。他方、当事者やご家族の側からは「外国人だから重く扱われるのではないか」という正反対の不安も寄せられます。本記事では、外国人刑事事件を日常的に取り扱う弁護士の立場から、不起訴処分の仕組みと、外国人事件で不起訴が選択される背景事情を、できる限り冷静に整理いたします。
本記事の要点
- 不起訴処分には嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予などの種類があり、「不起訴=無罪放免の優遇」ではありません。
- 起訴するか否かは、国籍を問わず、証拠の程度・被害回復・情状等を考慮して検察官が判断します(起訴便宜主義・刑事訴訟法248条)。
- 外国人事件では、通訳を介した立証の難しさや、退去強制手続への移行見込みといった固有の事情が処分判断に影響することがあります。
- 不起訴となった外国人も、退去強制事由に該当すれば入管手続で国外退去となることがあり、「不起訴で終わり」ではありません。
- 個別事件の当否は、報道だけでは判断できません。処分理由の種類を確認することが出発点です。
不起訴処分の仕組み――そもそも「優遇」なのか
日本の刑事手続では、起訴するか否かについて、刑事訴訟法248条が、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の状況により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定めています(起訴便宜主義)。この仕組みは日本人・外国人を問わず等しく適用されるものであり、示談の成立や被害の回復、前科の有無などが広く考慮されます。
外国人事件に固有の事情はあるのか
実務の実感として、外国人事件には処分判断に影響し得る固有の事情があります。第一に、供述の全てが通訳を介するため、共犯者間の認識や故意の立証に困難が伴う場合があります。第二に、被疑者が退去強制事由に該当し国外に退去する見込みが高い事案では、日本国内での訴追の必要性の評価に影響することがあり得ます。第三に、本国の親族による被害弁償の履行可能性など、示談をめぐる事情も多様です。これらは「国籍による優遇」ではなく、個別事案の証拠構造・手続の見通しの問題です。
「不起訴=終わり」ではない――入管手続という第二の手続
見落とされがちなのは、刑事手続と入管手続が別立てだという点です。不法残留(入管法24条4号ロ)等の退去強制事由に該当する外国人は、刑事事件が不起訴で終わっても、退去強制手続により収容・送還の対象となり得ます。つまり不起訴となった外国人が常にそのまま日本で生活を続けるわけではなく、むしろ入管手続こそが本番となる事案が少なくありません。報道で「不起訴」の三文字だけを見て結論を論じることができない理由がここにあります。
弁護実務から見た不起訴の意味
外国人事件の弁護では、不起訴処分の獲得が決定的に重要です。罪名によっては、執行猶予付きの有罪判決でも入管法24条4号リ・チ等の退去強制事由に該当し得るため、有罪となった時点で在留の基盤が失われかねないからです。当事務所が捜査段階から不起訴処分の獲得を最優先目標とする弁護方針(不起訴目標主義)を採るのは、この構造を踏まえたものです。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野としています。特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案での全件不起訴処分、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決、前例のない在留特別許可の獲得などの実績を有し、刑事と入管を一体で見据えた弁護活動を行っています。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。
結びに
「外国人は不起訴になりやすい」「外国人だから不利になる」のいずれの見方も、個別事件の証拠と手続の構造を離れては論じられません。当事者となられた方は、感情的な議論に惑わされず、ご自身の事件の処分理由と入管手続の見通しを正確に把握することから始めてください。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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