退去強制とは|退去強制事由と3段階の手続・令書と送還までを弁護士が解説
2026/09/10
退去強制とは、入管法が定める退去強制事由に該当する外国人について、国の手続によって日本からの退去を強制することをいう。(入管法24条)
- 退去強制事由は入管法24条に列挙されている
- 違反調査、違反審査、口頭審理、裁決の順に進む
- 各段階に不服を述べる機会がある
- 令書が発付されると送還の手続に移る
- 退去強制されると上陸拒否期間が生じる
- 令書の発付に対しては取消訴訟と執行停止の申立てが中心となる
- 自費出国が許可されると上陸拒否期間が1年とされる場合がある(入管法52条5項)
どのような場合に退去強制の対象になるのか
入管法24条に列挙された事由のいずれかに該当する場合である。不法残留のように在留の資格に関するもののほか、刑事事件を理由とするものもある。
| 主な退去強制事由 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 不法残留 | 24条4号ロ | 在留期間を経過して日本に残留すること |
| 資格外活動の専従 | 24条4号イ | 資格外の活動を専ら行っていると明らかに認められること |
| 不法就労助長 | 24条3号の4 | 行為に及んだこと自体で該当し、刑事処罰を要しない |
| 薬物関係 | 24条4号チ | 有罪の判決のみで足り、罰金、執行猶予、刑の免除でも該当する |
| 1年を超える実刑 | 24条4号リ | 全部の執行を猶予された場合は除かれる |
4号リは、その柱書が定めるとおり、ニからチまでに掲げる者以外の者を対象とする規定である。したがって、薬物関係の事案は4号リではなく4号チで判断され、刑の重さを問わない扱いとなる。
手続はどのように進むのか
入国警備官の違反調査から始まり、入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣の裁決という3段階の審査を経る。まず入国警備官が調査し、収容令書が発付される場合がある。次に入国審査官が退去強制事由に該当するかを審査して認定する。認定に納得できない場合は3日以内に口頭審理を請求でき、特別審理官の判定にも納得できない場合はさらに3日以内に法務大臣に異議を申し出ることができる。裁決の段階で、在留特別許可をするかどうかが併せて判断される。
手続の間は必ず収容されるのか
従来は収容を前提とする運用であったが、令和6年6月10日以降は収容しない選択肢が設けられている。同日に施行された監理措置により、逃亡のおそれなどを個別に判断したうえで、社会内での生活を認めながら手続を進めることができるようになった。収容を避けられるかは、住居や生計の見通し、監理人となる者の有無を具体的に示せるかにかかっている。
退去強制令書が発付されるとどうなるのか
送還に向けた手続が進み、送還が可能になるまでの間、収容されるか監理措置に付される。送還先は国籍を有する国が原則である。なお、難民の認定を申請している間は送還が停止される仕組みがあるが、令和5年の改正により、3回目以降の申請などについては、申請を理由づける相当の理由がある資料を提出した場合を除き、この停止が及ばないこととされた。
退去強制された後、再び来日できるのか
上陸を拒否される期間が定められており、その期間を経過するまでは来日できない。入管法5条1項は、退去強制された者について原則として5年、過去にも退去強制されたことがある者については10年とする定めを置いている。これに対して、薬物に関する法令に違反した者は、入管法5条1項5号により年限の定めのない上陸拒否の対象となる。この場合、罰金でも外国の法令の違反でも該当し、再び入国するには入管法12条1項の上陸特別許可を得るほかない。
退去強制を争う方法はあるのか
手続の各段階における不服申立てのほか、裁決及び退去強制令書発付処分の取消訴訟があり、これとあわせて送還を止めるための執行停止を申し立てることになる。送還されてしまうと、訴訟を続けること自体が事実上困難になる。令書の発付を見越して、あらかじめ準備しておく必要がある。
執行停止は、処分の取消しの訴えを提起したうえで申し立てる。処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに、裁判所が決定によってその全部又は一部の停止をすることができる(行政事件訴訟法25条2項)。重大な損害を生ずるか否かの判断にあたっては、損害の回復の困難の程度が考慮され、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質も勘案される(同条第3項)。
他方で、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、執行停止をすることができない(同条第4項)。決定は疎明に基づいてされ(同条第5項)、申立てに対する決定には即時抗告ができる(同条第7項)。ただし、即時抗告それ自体には決定の執行を停止する効力はない(同条第8項)。
| 手段 | 根拠 | 要件の要点 |
|---|---|---|
| 異議の申出 | 入管法49条 | 口頭審理の判定に不服があるとき |
| 取消訴訟 | 行政事件訴訟法3条2項 | 裁決及び退去強制令書発付処分の違法を争う |
| 執行停止 | 行政事件訴訟法25条2項 | 重大な損害を避けるため緊急の必要があること |
| 国家賠償請求 | 国家賠償法1条1項 | 公務員が職務を行うについて、故意又は過失により違法に損害を加えたこと |
難民認定又は補完的保護対象者の認定の申請をしている間は、送還が停止される(入管法61条の2の9第3項)。ただし、この送還停止効には例外がある。本邦にある間に二度にわたりこれらの申請を行い、いずれについても一定の事由に該当することとなった者や、無期若しくは3年以上の拘禁刑に処せられた者は、適用の対象から外れる(同条第4項)。もっとも、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者は、この例外から除かれている。刑の内容によって扱いが変わるため、判決の確認が欠かせない。
送還されそうなとき、何を急ぐ必要があるか
入国警備官は、退去強制令書を執行するときは、令書又はその写しを示して、速やかに送還先に送還しなければならないとされている(入管法52条3項)。時間的な余裕があるとは限らない。
送還を直ちに実施できないときは、入国警備官はその旨を主任審査官に通知し、通知を受けた主任審査官は、その者を監理措置に付すか収容するかを審査しなければならない(入管法52条7項、第8項)。収容された後に、送還することができないことが明らかになったときは、住居及び行動範囲の制限その他の条件を付して放免されることがある(同条第10項)。
また、主任審査官は、送還のために必要がある場合には、相当の期間を定めて、旅券の発給の申請その他必要な行為をすべきことを命ずることができる(同条第12項)。この命令を受けた場合の対応は、争う方針と密接に関わるため、応じる前に確認が必要である。
自ら出国する場合、上陸拒否期間は短くなるのか
短くなる場合がある。退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により自ら本邦を退去しようとするときは、その申請に基づいて許可されることがある(入管法52条4項)。この場合、令書の記載にかかわらず、申請に基づいて送還先を定めることができる。
そのうえで、法務大臣は、この許可を受けた者であって、過去に本邦からの退去を強制されたことも出国命令により出国したこともない者に対し、その者の素行、退去強制の理由となった事実その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申請に基づき、上陸を拒否される期間を1年とする旨の決定をすることができる(同条第5項)。ただし、退去後に短期滞在の活動を行おうとする場合は除かれる。決定をしたときは、書面で通知される(同条第6項)。
争って在留を求めるのか、自費出国によって上陸拒否期間の短縮を目指すのかは、方針が大きく分かれる。在留特別許可の見込み、家族の状況、刑事事件の内容を踏まえて、早い段階で判断する必要がある。
刑事事件を起こした外国人はどのような影響を受けるのか
刑の重さだけでなく、罪名によって在留への影響が変わる。薬物関係は有罪の判決があれば足り、罰金でも執行猶予でも退去強制事由に該当する(24条4号チ)。これに対して、その他の犯罪は原則として1年を超える拘禁刑の実刑が基準となり、全部の執行を猶予された場合は含まれない(24条4号リ)。退去強制事由に該当しない場合であっても、在留期間の更新の審査で素行が問題とされ、更新が認められないことがある。
よくある質問
執行猶予がついても退去強制されますか
罪名によります。薬物に関する事件は有罪の判決があれば足りるため、罰金や執行猶予でも退去強制事由に該当します。それ以外の犯罪は、1年を超える拘禁刑の実刑が基準となり、全部の執行を猶予された場合は除かれます。まず罪名と刑の内容の確認が必要です。
退去強制と出国命令はどう違いますか
出国命令は、自ら出頭を申し出た不法残留の方に認められる簡易な出国の手続で、収容されずに進み、上陸拒否期間は1年です。これに対し退去強制は、収容の可能性があり、原則として5年の上陸拒否期間が生じます。要件を満たすかどうかの確認が出発点になります。
手続にはどのくらいの時間がかかりますか
事案により幅があります。事実関係に争いがなく在留を求めない場合は比較的短く終わりますが、在留特別許可を求める場合や訴訟に移行する場合は年単位になることもあります。収容されているか監理措置に付されているかによっても進み方が変わりますので、見通しは個別にご確認ください。
日本に家族がいる場合はどうなりますか
法務大臣の裁決の際に、在留を特別に許可するかどうかが判断されます。入管法50条5項は考慮する事情として家族関係を明示しています。婚姻や親子の実態、同居の状況、子の就学や養育の状況を具体的な資料で示すことが重要になりますので、早い段階から準備を始めてください。
送還を止める方法はありますか
取消訴訟とあわせて執行停止を申し立てる方法があります。難民の認定を申請している間の送還停止の仕組みもありますが、令和5年の改正で3回目以降の申請などには例外が設けられました。送還の時期が迫っている場合は時間的な余裕がないことが多いため、早めのご相談をお勧めします。
訴訟をしている間に送還されてしまうことはありますか
あります。訴えを提起しただけでは、処分の効力、処分の執行又は手続の続行は妨げられません(行政事件訴訟法25条1項)。送還を止めるには、別に執行停止を申し立てる必要があります。重大な損害を避けるため緊急の必要があると認められることが要件です(同条第2項)。令書の発付が見込まれる段階から準備してください。
難民認定の申請をすれば送還は止まりますか
申請中は送還が停止されるのが原則です(入管法61条の2の9第3項)。ただし例外があり、過去に二度にわたり申請を行い、いずれについても一定の事由に該当することとなった方や、無期若しくは3年以上の拘禁刑に処せられた方は対象から外れます(同条第4項)。もっとも、刑の全部又は一部の執行猶予の言渡しを受けた方はこの例外から除かれています。判決の内容の確認が必要です。
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最終更新日:2026年10月2日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119
中文版:退去强制是什么|退去强制事由、三阶段程序与遣返后的影响(日本律师解说)
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