白タク(無許可の送迎)で逮捕されたら|道路運送法の刑罰と在留資格(強制送還)への影響
2026/09/10
自家用車で空港送迎や観光客の送迎を請け負い、運賃を受け取る、いわゆる白タクは道路運送法違反に当たります。結論から言えば、この罪は入管法24条4号の2に列挙されていないため、罰金でも執行猶予付きの拘禁刑でも、それだけで退去強制事由にはなりません。
在留の問題が生じるのは、別の角度からです。留学・技術・人文知識・国際業務・特定技能などの方が運転の報酬を得ていれば資格外活動が、短期滞在の方なら不法就労が問われます。さらに、中国の運転免許証しか持たずに運転していた場合は、無免許運転も重なります。
本記事の要点
- 白タクは道路運送法4条1項違反(96条1号)又は78条違反(97条1号)として処罰され、いずれも4号の2の対象外です。
- 別表第一の在留資格の方が報酬を得て運転すると、資格外活動として4号イ・4号ヘが問題になります。
- 中国本土の運転免許証だけでは日本で運転できず、無免許運転に問われるおそれがあります。
- 退去強制事由に当たらなくても、在留期間の更新では素行の問題として考慮されえます。
白タクはどのような罪になり、刑罰はどのくらいですか
許可なく有償で旅客を運送する事業を営めば、道路運送法4条1項(一般旅客自動車運送事業の許可)違反として、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科となります(96条1号)。事業の経営とまではいえなくても、自家用自動車を有償で運送の用に供すること自体が78条で禁止されており、違反すると1年以下の拘禁刑若しくは150万円以下の罰金又は併科です(97条1号)。どちらの規定が問題になるかは、反復性や組織性など事案の実態によります。
78条には、災害時の緊急の場合や、市町村・NPO法人などによる自家用有償旅客運送、国土交通大臣の許可を受けた場合という例外があります。近年導入された自家用車を使う旅客運送の仕組みもこうした許可の枠組みで運営されるもので、個人がSNSで自由に客を集めてよいという意味ではありません。会社の業務として行われていれば、法人にも罰金刑が科される両罰規定があります(99条)。
中国系SNSで送迎の客を集めるケースでは、何が問題になりますか
微信のグループや旅行系アプリの投稿で「空港送迎」「日帰り観光の送迎」を募り、スマートフォン決済で代金を受け取る形は、有償性と反復性を裏付ける証拠が残りやすい類型です。捜査では、募集の投稿、客とのやり取り、決済履歴、走行記録などが押収され、何回・いくらで運送したかが具体的に積み上げられます。
一方で、知人を単発で送った際にガソリン代や高速代などの実費程度を受け取っただけなのか、それを超える対価を受けていたのかは、有償性の判断で争点になりえます。配車の手配役と運転手の役割分担、代金の流れも、誰がどの規定で責任を負うかを左右します。
逮捕された後は、どのように進みますか
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、72時間以内に勾留の請求がされるかどうかが決まります。勾留は最長20日で、逮捕から最長23日で起訴・不起訴が判断されます。起訴前の保釈はありません。在宅のまま捜査が進み、呼出しを受けて取調べに応じる形になることもあります。
取調べには黙秘権があり、弁護人とは立会人なしで接見できます。スマートフォンの記録について説明を求められることがあるため、記憶があいまいなまま推測で回数や金額を答えないことが大切です。
退去強制事由に当たりますか(別表第一と別表第二・永住者の違い)
道路運送法違反で刑罰を受けても、4号の2は適用されません。退去強制事由が問題になるのは、1年を超える実刑(4号リ)か、資格外活動・不法就労(4号イ・4号ヘ)の場面です。
| 状況 | 別表第一(留学・技人国・特定技能・経営・管理・家族滞在・短期滞在など) | 別表第二・永住者(永住者・日本人の配偶者等・定住者など) |
|---|---|---|
| 道路運送法違反で罰金 | 退去強制事由に当たらない | 退去強制事由に当たらない |
| 同じく執行猶予付き拘禁刑・実刑1年以下 | 当たらない(4号の2の対象外) | 当たらない |
| 同じく実刑1年超 | 4号リに当たる | 4号リに当たる |
| 運転の報酬を得ていた | 資格外活動。73条で拘禁刑なら4号ヘ、専ら行っていれば刑罰なしでも4号イ | 就労制限がないため資格外活動の問題は生じない |
| 不起訴(起訴猶予など) | 刑罰を要件とする号には当たらない(4号イは別途認定されうる) | 刑罰を要件とする号には当たらない |
在留資格の種類によって帰結が分かれる点については、外国人刑事・在留Q&Aでも整理しています。
留学生や会社員が報酬を得て運転していた場合はどうなりますか
別表第一の在留資格は活動の範囲が決まっており、その範囲外で報酬を受ける活動は資格外活動許可がなければ禁止されます(19条1項)。技術・人文知識・国際業務や特定技能で会社に勤める方が、休日に白タクで収入を得ていた場合が典型です。違反すると1年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又は併科(73条)で、拘禁刑に処せられれば4号ヘに当たります。
短期滞在の方は、報酬を受ける活動そのものが禁じられているため(19条1項2号)、観光で来日中に送迎の仕事をすれば不法就労です。専ら就労していると明らかに認められれば、刑罰を受けなくても4号イに当たりえます。留学生で包括許可を受けていても、許可された時間を超える就労は資格外活動となり、違法な仕事で得た収入は更新の審査で厳しく見られるおそれがあります。
運転免許や車両については、どのような問題がありますか
中国本土の運転免許証だけでは、日本で運転することはできません。国際運転免許証は道路交通に関する条約に基づく制度で中国はその対象外であり、翻訳文を付けて運転できる国・地域(道路交通法施行令39条の4:スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、モナコ、台湾)にも含まれていないためです。日本の免許(外国免許からの切替えを含む)を持たずに運転すれば、無免許運転として3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となります(道路交通法117条の2の2第1項1号)。
国際運転免許証等を持つ方も、運転できるのは上陸の日から1年間です(同法107条の2)。住民基本台帳に記録されている方がいったん出国し、3か月未満で戻った場合は、その上陸では期間が改めて始まりません。上陸から1年を超えて運転すれば無免許運転となります。
在留期間の更新や、出国・再入国にはどう影響しますか
退去強制事由に当たらない場合でも、更新(21条)や変更(20条)では素行の善良さが考慮され、道路運送法違反や無免許運転の前科、資格外活動の事実は不利に働きえます。経営・管理の在留資格で旅行業や送迎事業を営む方は、事業に必要な許可を得ているかが、事業の継続性とあわせて問われます。本来の活動をせずに運転で生計を立てている状態が続けば、在留資格取消し(22条の4第1項5号・6号)の問題も生じます。
出国については、罰金なら通常は上陸拒否事由の問題になりません。ただし、1年以上の拘禁刑に処せられると、執行猶予付きでも5条1項4号の上陸拒否事由に当たるため、判決後に出国する前には弁護士に相談してください。
不起訴を目指して、どのような弁護活動をしますか
白タクは特定の被害者がいない罪なので、事実と証拠の精査が中心になります。受け取った金銭が実費の範囲か、募集は不特定多数に向けたものか、回数と期間はどうか、配車役か運転手かといった点を、押収された記録と照らし合わせて検討し、罪名や関与の程度について検察官に意見を述べます。
そのうえで、車両の処分や送迎グループからの脱退、勤務先・学校の協力による生活の立て直し、場合によっては贖罪寄付など、再び行わないための具体的な措置を示します。起訴猶予による不起訴になれば、刑罰を要件とする退去強制事由の問題は生じません。不起訴の意味は不起訴処分とはで詳しく解説しています。
舟渡国際法律事務所の対応
白タクの事件は、刑罰そのものは比較的軽くても、資格外活動や無免許運転が重なることで在留への影響が大きくなりえます。当事務所は、起訴前に不起訴処分を得ることを最優先に据え、刑事の処分と入管上の評価を同時に見通して方針を立てます。担当は松村大介弁護士で、初回の接見から更新・変更の手続まで自ら対応します。
外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、接見にも同行します。捜査機関の通訳とは別に、ご本人の説明を正確に弁護人へ伝える役割です。中国本土のご家族は微信(WeChat ID:matsumura1119)から直接ご相談いただけます。
よくある質問
白タクで罰金になりました。これで強制送還されますか。
道路運送法違反は24条4号の2の列挙に含まれていないため、罰金を理由に退去強制事由に当たることはありません。ただし、別表第一の在留資格で報酬を得ていた場合は資格外活動が別に問題となり、更新の審査でも不利に考慮されえます。
友人を空港まで送ってお礼をもらっただけでも白タクになりますか。
有償性や事業性の有無が問題になります。単発で実費程度を受け取った場合と、SNSで広く客を募集して反復して対価を得ていた場合とでは、評価が大きく異なります。具体的な受取額、回数、募集の方法を整理して判断する必要があります。
永住者が白タクで執行猶予付きの判決を受けたらどうなりますか。
永住者は4号の2の対象外で、執行猶予付きであれば4号リにも当たらないため、退去強制事由にはなりません。道路運送法違反は令和9年施行の永住者の在留資格の取消事由(新22条の4第1項9号)の対象罪にも含まれていません。ただし、1年以上の拘禁刑であれば、出国後の上陸拒否事由(5条1項4号)が問題になります。
中国の運転免許証で送迎をしていた場合、何が問題になりますか。
中国の運転免許証は国際運転免許証の制度の対象外で、翻訳文を付けて運転できる国・地域にも入っていないため、日本の免許を持たずに運転すれば無免許運転(道路交通法117条の2の2第1項1号)になりえます。道路運送法違反と重ねて処罰されると、処分が重くなる要因になります。
配車の手配だけをしていて、自分では運転していません。責任はありますか。
客を集めて運転手に割り振り、代金を受け取る立場であれば、無許可で旅客運送事業を経営したものとして、運転手より重い責任を問われる可能性があります。報酬の流れと役割分担を具体的に確認することが重要です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係などの事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119