ヤードで盗難車の解体・輸出に関わったとき|盗品等関与罪・組織的犯罪処罰法と在留資格への影響
2026/09/11
「自分は解体の作業を手伝っていただけです」。そうご説明になっていた方が、ある朝、窃盗ではなく盗品等関与の疑いで逮捕される。関東地方を中心に、盗難車両を搬入して解体し、部品や車体を海外へ送り出す拠点、いわゆるヤードの摘発が相次いでいるとの報道が続いており、運営していたとされる外国籍の事業者らが、盗品等関与や組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の疑いで逮捕、再逮捕されたと伝えられています。この類型では、車両を盗んだ本人でなくても刑事責任が及び得るうえ、就労資格の有無によっては在留にも直結します。仮に報道のとおりとすれば、どこに争点があり、どこで防御線を引けるのか。順に整理してまいります。
本記事の要点
- 盗んだ本人でなくても、盗品と知りながら運搬・保管・買受け・有償処分のあっせんに関われば、刑法256条の盗品等関与罪に問われ得ます。
- 最大の争点は「情を知って」の認定であり、未必の故意で足りるとされるため、仕入価格や書類の不備といった間接事実の評価が結論を左右します。
- 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律のもとでは、犯罪収益の没収・追徴や、収益の隠匿・収受の罪が別途問題となります。
- 在留への影響は立場で分かれ、経営に関与した事業者は入管法24条4号リ、現場で稼働していた方は同号イの資格外活動が問題になり得ます。
- 執行猶予が付いても在留が守られるとは限らないため、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を目標に据えることが重要です。
車を盗んだのは自分ではありません。それでも罪に問われますか
問われ得ます。刑法256条は、財産に対する罪に当たる行為によって領得された物について、無償で譲り受けた者を1項で、運搬し、保管し、有償で譲り受け、又は有償の処分のあっせんをした者を2項で処罰しています。法定刑は、1項が3年以下の拘禁刑、2項が10年以下の拘禁刑及び50万円以下の罰金であり、2項の方が格段に重い定めとなっています。
ヤードと呼ばれる施設での作業は、この2項に当たると主張されやすい構造を持っています。搬入された車両を敷地内に置いておけば保管、別の場所へ移せば運搬、解体した部品を買い取れば有償譲受け、買い手を探して引き合わせれば有償処分のあっせんという評価に結び付き得るからです。
さらに、盗んでくる側と事前に話が付いており、継続的に持ち込みを受ける態勢が整っていたと見られる場合には、刑法60条の共同正犯として窃盗そのものの責任を問われる可能性もあります。実行行為に直接加わっていなくても、謀議への関与の程度と果たした役割の重要性から正犯とされることがありますので、「運んだだけ」「言われた場所に置いただけ」というご説明がそのまま通るとは限りません。
「盗品だとは知りませんでした」という説明は、どこまで通りますか
盗品等関与罪は「情を知って」関与したことを要件としますから、本当に知らなければ成立しません。もっとも実務では、確定的な認識までは要せず、盗品かもしれないと思いながらあえて引き受けたという程度の認識、いわゆる未必の故意があれば足りると解されています。
そして、その認識は本人の弁解ではなく、周辺の事実から推認されます。仕入価格が相場から著しく離れていなかったか、車検証や譲渡証明書が揃っていたか、名義変更の手続が取られていたか、引渡しが深夜に行われていなかったか、登録番号標が外された状態で持ち込まれていなかったか、代金が現金でやり取りされていなかったか、仕入元の連絡先が携帯番号だけではなかったか。こうした間接事実が積み重なると、知らなかったというご説明は通りにくくなります。
したがって防御の要は、知らなかったと述べることそれ自体ではなく、どのような確認をどこまで行ったのかを具体的に示すことにあります。仕入元の身元確認、車検証と車台番号の照合、所有者欄の確認、取引記録の保存。これらが残っていれば、未必の故意を否定する方向の事情として機能します。逆に、確認を尽くしていないという事実は、確認義務を怠ったという評価を通じて、故意の推認を支えることになりかねません。
この点は、後に控える入管手続とも深く関わります。刑事事件では故意や過失の有無を論ずることが当然の出発点であるのに対し、入管実務では、退去強制事由に該当するかどうかの判断に故意・過失は要件とされないとする運用が長年踏襲されてまいりました。松村大介弁護士は、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという憲法上・行政法上の根本問題として、この実務を問う訴訟に取り組んでまいりました。現在も議論の続く重要論点であり、刑事事件の段階から故意・過失を丁寧に争っておくことが、将来の入管手続における主張の基礎を成すと考えております。
組織的犯罪処罰法が使われると、何が変わりますか
大きく変わるのは、刑の重さよりも、得た利益そのものが取り上げられるという点です。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律は、犯罪により得た財産を犯罪収益として没収の対象とし(同法13条)、没収することができないときはその価額を追徴すると定めています(同法16条)。加えて、犯罪収益の取得や処分について事実を仮装し、又はこれを隠匿する行為(同法10条)、情を知って犯罪収益を収受する行為(同法11条)が、それぞれ独立した罪とされています。
ヤード類型では、解体して輸出した部品の売上、口座に入金された代金、購入した重機や車両などが、犯罪収益又はその果実として主張され得ます。そのため弁護活動は、罪責を争い、あるいはその範囲を限定するだけでは足りず、どの財産がどの犯罪と結び付くのかという対象財産の範囲についても、資金の流れに即して具体的に反論する必要があります。
なお、同法3条は、一定の罪について団体の活動として組織により行われた場合に法定刑を加重していますが、加重の対象となる罪は同条が列挙するものに限られます。報道で組織的犯罪処罰法違反とされるものが、加重規定によるのか、収益の隠匿や収受によるのかは、事案ごとに確かめる必要があります。
輸出や仕入れの場面で、別に問われることはありますか
あります。まず輸出の局面では、関税法が、貨物を輸出しようとする者に税関長への申告と許可の取得を義務付けており(同法67条)、申告の内容が実際と異なる場合や、許可を受けずに輸出した場合には処罰の対象となります。中古部品として申告した内容と現物の実態が食い違う、価格を実際より低く申告するといった事情は、この点で問題となり得ます。
次に仕入れの局面では、古物営業法が問題となります。中古の自動車や部品の売買を業として行うには都道府県公安委員会の許可を要し(同法3条)、取引の相手方の身元を確認し(同法15条)、帳簿等に取引の内容を記載して保存すること(同法16条)が求められます。許可を受けずに営めば処罰の対象となりますし、確認や記録を欠いていた事実は、先ほど述べたとおり、故意の推認を支える方向に働きかねません。
このほか、登録番号標が取り外されていた、車台番号が削られ又は改められていたと指摘される場合には、道路運送車両法上の規律や、刑法上の関係規定の適用が問題となることがあります。ただし、どの規定が適用されるかは行為の具体的な態様によって異なりますので、報道の段階で確定的に述べることは差し控えます。
事業者と、現場で作業していた従業員とで、在留への影響は違いますか
大きく異なります。同じ現場にいても、持っている在留資格が違えば、危険の所在も、打つべき手も変わってまいります。
経営・管理などの就労資格を得て自ら事業を営んでいた方の場合、まず問題となるのは入管法24条4号リです。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者が退去強制事由に当たるとされ、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。加えて、事業の実体が失われれば在留資格該当性そのものが揺らぎ、在留資格の取消し(入管法22条の4)や在留期間更新の不許可(同法21条3項)も現実の問題となります。
他方、現場で解体や積込みの作業に従事していた方の場合は、その方の在留資格で就労が認められているかどうかが出発点です。留学や家族滞在のように就労に制限のある資格で稼働していたのであれば、入管法19条1項に違反する資格外活動として、退去強制事由である同法24条4号イが問題となります。刑事責任としては、専ら在留資格に属しない収入活動を行っていると明らかに認められる場合は同法70条1項4号、そこに至らない場合は同法73条が予定されています。在留期間を過ぎて残っていたのであれば、これに不法残留(同法24条4号ロ、70条1項5号)が重なります。
想定される刑事手続の流れ
逮捕された場合、警察は48時間以内に事件を検察官へ送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めれば原則10日間、延長されればさらに10日間、身柄を拘束したまま捜査を続ける手続に入ります。起訴されるかどうかが決まるまで、最大で23日間という計算になります。
このうち、逮捕から勾留が決まるまでのおよそ72時間は、特に重みのある時間です。この間、ご家族は面会することができず、ご本人と接することができるのは弁護人だけです。取調べの初期に作られた供述調書は、その後の捜査、公判、さらには入管の手続に至るまで、繰り返し参照されます。最初のご説明が事実と違っていた場合、後から訂正するには相当の労力を要します。
ヤード類型では、関係者が多く、車両ごとに事実関係が異なることから、再逮捕や追起訴が繰り返され、身柄の拘束が数か月に及ぶことも珍しくありません。取調べで何をどう述べるかを、早い段階で方針として固めておくことが求められます。
「執行猶予なら日本に残れる」とは限りません
入管法24条は、退去強制事由を号ごとに定めています。よく知られているのは4号リで、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者が該当し、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。ここだけを見れば、執行猶予が付けば安心のように思えます。
しかし、条文の構造はそれほど単純ではありません。薬物事犯については4号チが、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法などに違反して有罪の判決を受けた者を掲げており、刑の重さを問わずに該当し得ます。旅券法違反については4号ニが、同法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者を掲げ、罰金でも該当し得ます。他の外国人に不法就労活動をさせた場合は3号の4、不法残留は4号ロ、資格外活動は4号イです。別表第一の在留資格で在留する方については、一定の特定犯罪を対象とする4号の2も置かれています。
さらに、退去強制事由に当たらなかったとしても、在留資格の取消し(入管法22条の4)や、在留期間更新の不許可(同法21条3項)という別の入口があります。更新・変更のガイドラインは素行が善良であることを求めており、有罪判決を受けた事実はこの評価に影響します。刑事事件の見通しと在留の見通しは、別々に立てなければなりません。
起訴前の段階で不起訴処分を目指す理由
当事務所は、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くのではなく、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護活動を組み立てております。入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま「執行猶予なら大丈夫」とご説明することは、結果として在留資格の喪失につながりかねないからです。刑事手続の段階から退去強制手続を一体のものとして視野に入れる必要があります。
もっとも、被害弁償や示談の効き方は、罪名の表面ではなく保護法益によって変わります。盗品等関与罪は、被害者が盗まれた物を取り戻すことを困難にするという側面を持ち、財産的な被害の回復が有利な事情として働く余地があります。他方で、盗難車両が国外へ流出する事態は、取引の安全という社会的な利益にも関わりますから、被害者との示談が成立したというだけで素行の評価が解消されるとは限りません。弁償と並行して、事業の体制をどう改めるのか、再発を防ぐ具体的な仕組みをどう用意するのかを示していくことが求められます。
逮捕の連絡を受けたら、まず何をすべきか
第1に、黙秘権を正しく理解し、行使すべき場面では行使することです。黙秘権は憲法38条1項が保障し、刑事訴訟法198条2項が取調べに先立つ告知を求めている権利であり、行使したことを不利に扱うことは許されません。ヤード類型では、記憶があいまいなまま日付や台数、金額を述べてしまうと、それが後の事実認定の出発点として扱われることがあります。話す内容と話さない内容を、方針として整理することが先決です。
第2に、できる限り早く弁護人を選任することです。逮捕の直後であれば当番弁護士を呼ぶことができますし、継続的な弁護活動をお望みであれば私選の弁護人を選任することになります。勾留が決まってから動き出すのでは、最も重要な72時間を使い切ってしまいます。
第3に、通訳の質です。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、接見から公判まで一貫してご利用いただけます。専門用語の訳し方ひとつで供述の意味が変わってしまう場面は、決して少なくありません。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行っておりません。刑事手続と並行して、提携する行政書士とともに在留資格に関するサポートを行い、退去強制手続に進んだ場合の入管対応まで一体で担当いたします。
事業体としての紛争にも対応してまいりました。外資系企業の支配権をめぐる紛争において、依頼者側の勝訴を獲得した事例がございます。ヤード類型では、法人の運営体制、出資関係、誰が意思決定をしていたのかという構造が刑事責任の輪郭を左右しますので、企業をめぐる紛争を扱ってきた経験が、事実関係の整理に生きてまいります。
また、国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象となる事件、世界的に報道された事件への対応経験を積んでまいりました。中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。共犯者が多数に及び、報道が先行する類型では、事件全体の見取り図を早期に描く力が問われます。
取引の相手方の実態を突き止める作業も、当事務所の得意とするところです。卸売業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得いたしました。仕入元が誰であったのか、どのような説明を受けていたのかを裏付ける作業は、盗品等関与罪における故意の争いにおいても中核を成します。
結語
ヤードでの作業に関わったとされる事案は、窃盗の実行行為者ではないというだけで安心できる類型ではありません。「情を知って」という要件をめぐる争いは、逮捕直後のご説明の仕方に大きく影響されますし、犯罪収益の没収・追徴は事業そのものの存続に関わります。そして、刑事の結論がどうであれ、在留の問題は別の枠組みで進んでいきます。ご本人やご家族が最初に取るべき行動は、記憶に頼ってご説明を重ねることではなく、方針を立てられる立場の者に早くご相談いただくことです。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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