舟渡国際法律事務所

微信での人民元と円の私的両替・地下銀行に関わったとき|銀行法・資金決済法・犯罪収益移転防止法と在留資格への影響

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微信での人民元と円の私的両替・地下銀行に関わったとき|銀行法・資金決済法・犯罪収益移転防止法と在留資格への影響

微信での人民元と円の私的両替・地下銀行に関わったとき|銀行法・資金決済法・犯罪収益移転防止法と在留資格への影響

2026/09/13

「日本にいる知人に円を渡し、中国の家族の口座に人民元を振り込んでもらった」「微信のグループで、レートの良い両替相手を見つけた」。在日中国人の方にとって、銀行を通さずに円と人民元を交換する取引は、長い間、生活の知恵のように扱われてきました。しかし近時、こうした取引を反復して引き受けていた方が、無免許で銀行業を営んだとして逮捕されたという報道が関東地方などで相次いでいます。しかも、資金の中に特殊詐欺の被害金が混じっていた場合、問われる罪は両替の枠を超え、マネー・ローンダリングへの関与とされる危険があります。どこからが犯罪で、何が争点になり、在留にどう響くのか。本記事で整理いたします。

本記事の要点

  • 現金を直接運ばずに隔地者間で資金を移動する依頼を引き受けることは為替取引に当たり、これを業として行うには銀行の免許(銀行法4条1項)又は資金移動業の登録(資金決済法37条)が必要です。
  • 免許を受けずに銀行業を営んだ場合の法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科です(銀行法61条1号)。
  • 扱った資金に詐欺等の被害金が含まれていれば、組織的犯罪処罰法10条の犯罪収益等隠匿(10年以下の拘禁刑)や11条の犯罪収益等収受(7年以下の拘禁刑)が問題となり得ます。
  • 銀行法違反そのものは入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、1年を超える実刑となれば同条4号リに当たり、経営・管理などの在留資格では更新不許可や取消しの問題も生じます。
  • この類型は執行猶予が付いても在留を失い得るため、起訴前の段階で不起訴処分を目指すことが最優先の目標となります。

微信で円と人民元を交換するだけで、犯罪になりますか

自分の手元にある円を知人の人民元と一回限りで交換する行為が、それだけで直ちに犯罪になるわけではありません。問題は、他人から依頼を受けて、日本で円を受け取り、中国側で人民元を相手の指定する口座へ届けるという仕組みを、繰り返し引き受けていた場合です。

銀行法は、為替取引を行うことを銀行業の一つと定め(同法2条2項2号)、銀行業は内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営むことができないとしています(同法4条1項)。そして、為替取引とは何かについて、最高裁判所は平成13年3月12日の決定で、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいうと判示しています。日本で円を預かり、中国の口座に人民元を入金する行為は、まさにこの定義に当たります。

免許を受けないで銀行業を営んだ者は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科されます(同法61条1号)。報道で「地下銀行」と呼ばれる事件は、多くの場合、この銀行法4条1項違反として立件されています。微信という手段を使ったか、店舗を構えていたかは、成否を左右しません。

「業として」に当たるかどうかの線引き

銀行法4条1項が禁じているのは、為替取引を「営む」こと、すなわち反復継続の意思をもって行うことです。したがって、争点の中心は、その取引が業として行われたと評価できるかどうかにあります。

実務で重視されるのは、取引の回数と期間、相手方が不特定または多数であったか、手数料やレート差による利益を得ていたか、募集や宣伝をしていたか、帳簿や台帳を付けていたか、といった事情です。微信のグループで両替の相手を募っていた、レートを提示して申込みを受け付けていた、手数料を取っていたという事実があれば、業として行ったという認定に近づきます。逆に、家族や親しい友人との間で、生活上の必要から数回行ったにとどまる場合には、営業性を否定する余地があります。

もう一つの視点は、行為の性質です。自己の資金を売買の対象として相手と交換したにすぎないのか、それとも他人の資金を預かって移動させる依頼を引き受けたのかで、為替取引該当性の評価は変わります。もっとも、両者の境界は曖昧であり、微信の履歴や送金記録がどのように読まれるかで結論が分かれます。捜査機関に説明する前に、記録全体を弁護人と共に確認する必要があるのは、このためです。

資金移動業の登録があれば認められる仕組みです

為替取引は、銀行だけに認められているわけではありません。資金決済に関する法律は、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことを資金移動業と定義し(同法2条2項)、内閣総理大臣の登録を受けた者は、銀行法4条1項の規定にかかわらず、資金移動業を営むことができるとしています(資金決済法37条)。国際送金を扱う登録業者が存在するのは、この仕組みによります。

登録を受けるには、財産的基礎、利用者資金の保全、本人確認体制、マネー・ローンダリング対策などの要件を満たす必要があり、個人が微信上で行う両替がこの登録を受けている例はまずありません。登録を受けずに為替取引を業として営めば、資金決済法の例外に当たらないため、銀行法4条1項違反として処罰されるという構造になります。

なお、資金移動業者との間の為替取引に用いるカードや口座情報を、他人になりすまして送金する目的で有償で譲り受け、又は譲り渡す行為は、犯罪による収益の移転防止に関する法律28条で処罰され、業として行えば5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科です(同条3項)。両替の便宜のために自分名義の口座やアプリのアカウントを他人に使わせる行為は、それ自体が別の罪に当たり得ます。

マネー・ローンダリングへの関与とされる危険

地下銀行の事件で最も重い結果を招くのは、扱った資金の中に犯罪の被害金が含まれていた場合です。特殊詐欺の受け子や出し子が集めた現金を、地下銀行を通じて中国側へ送るという流れは、報道でも繰り返し指摘されています。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律は、犯罪収益等の取得又は処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者を10年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科とし(同法10条1項)、情を知って犯罪収益等を収受した者を7年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科としています(同法11条)。他人名義の口座を経由させる、複数の口座に分散させる、両替を装って送金するといった行為は、隠匿や仮装と評価される典型です。

ここで争点となるのは「情を知って」、すなわち犯罪収益であることの認識です。確定的に知っていた必要はなく、犯罪収益かもしれないと思いながら引き受けたという未必の故意で足りるとされます。依頼者の素性を確認していなかった、金額が生活上の送金としては不自然に大きかった、現金の受渡しが人目を避けて行われていた、通常より高い手数料が提示されていたといった事情は、認識を推認させる方向に働きます。逆に、依頼者の身元と資金の出所を確認し、記録を残していたのであれば、認識を否定する事情となります。

犯罪による収益の移転防止に関する法律は、銀行や資金移動業者などの特定事業者に、取引時の本人確認(同法4条)と疑わしい取引の届出(同法8条)を義務付けています。地下銀行は、まさにこの確認と届出を回避する経路として利用されるため、捜査機関は、両替をしていた本人が資金の性質をどこまで認識していたかを厳しく追及します。

中国側の外貨管理規制との関係

この類型が生まれる背景には、中国の外貨管理があります。中国では、個人が銀行を通じて外貨に換える、あるいは人民元に戻す金額に年間の総額枠が設けられており、年間5万米ドル相当が目安とされています。枠を超える送金や、留学費用や不動産購入などの用途を巡る審査の厳しさから、正規の経路を避けて地下銀行に頼る需要が生じてきました。

しかし、中国側でも、外貨を非合法に売買し、又は資金の支払決済業務を無許可で営む行為は、非法経営罪として処罰の対象とされており、2019年には最高人民法院と最高人民検察院が地下銭荘を念頭に置いた司法解釈を公表しています。つまり、日本で銀行法違反として立件される行為は、中国側でも違法とされる可能性が高く、送金先の家族が中国当局の調査を受けることも考えられます。

日本の刑事手続の中では、中国側の規制の存在は、動機の説明として一定の意味を持ちます。海外送金の枠が足りず、家族への生活費や学費のために非正規の経路を使ったという事情は、営利目的の地下銀行の運営者と、利用者又は小規模の仲介者とを区別する材料になります。ただし、中国語で書かれた資料や微信のやり取りを、日本の捜査機関がどのように翻訳し理解するかによって、同じ事実が全く違う意味を持ち得ます。翻訳の正確さは、この類型の防御の生命線です。

想定される刑事手続の流れ

逮捕後、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかを判断します。勾留は原則10日で、延長によりさらに最大10日となります。この間に起訴か不起訴かが決まります。地下銀行の事件は、微信の履歴、送金記録、口座の入出金という電子的な証拠が中心となるため、逮捕と同時に携帯電話やパソコンが押収され、その解析結果が取調べの材料となります。

注意していただきたいのは、銀行法違反で逮捕された後に、組織的犯罪処罰法違反や詐欺の幇助で再逮捕されるという展開です。最初の取調べで、資金の出所を確認していなかったこと、依頼者が誰か分からないことを軽い気持ちで認めてしまうと、それが後の犯罪収益の認識を裏付ける供述として扱われます。両替の事実と、資金の性質に関する認識とは、切り分けて考えなければなりません。

在留資格への影響。入管法24条のどの号が問題になるか

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。銀行法違反の法定刑の上限は3年以下の拘禁刑ですから、実刑で1年を超える刑が言い渡されれば、この号に該当します。組織的犯罪処罰法違反が併せて認定されれば、量刑は重くなりやすく、実刑の可能性が高まります。

別表第一の在留資格、すなわち技術・人文知識・国際業務、経営・管理、留学、技能などで在留する方には、同条4号の2が置かれています。これは、刑法の特定の章の罪や暴力行為等処罰法の罪などで拘禁刑に処せられた者を、執行猶予の有無を問わず退去強制事由とする規定です。銀行法や資金決済法の違反は、同号が列挙する罪には含まれていません。ただし、詐欺(刑法第2編第37章)の共犯として処罰された場合には、同号の対象となり、執行猶予でも退去強制事由に当たることになります。

退去強制事由に当たらなくても、在留は安泰ではありません。経営・管理などの在留資格で在留する方が本来の活動を行わず他の活動を行っている場合や、3か月以上本来の活動を行っていない場合は、在留資格の取消しの対象となります(入管法22条の4第1項5号・6号)。また、在留期間の更新は、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるものであり(同法21条3項)、更新の審査では素行が善良であることが求められます。罰金刑や執行猶予付き判決であっても、更新が不許可となる例は現に存在します。

不起訴処分を最優先目標とする理由

この類型では、執行猶予判決を得ても在留を守れるとは限りません。上に述べたとおり、更新の審査では有罪判決そのものが素行の評価に影響し、詐欺の共犯と構成されれば執行猶予でも退去強制事由に当たります。したがって、当事務所は、起訴前の段階で不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いております。

不起訴に向けた主張の柱は、第1に営業性の否定、すなわち家族や友人のための一時的な交換にとどまり業として営んだものではないこと、第2に犯罪収益に関する認識の不存在、第3に得た利益の僅少さと、依頼者としての立場です。あわせて、微信の履歴を時系列で整理し、資金の出所を示す資料を集め、日本語と中国語の双方で説明できる形に整えることが、検察官の判断を左右します。

逮捕の連絡を受けたら押さえるべき3点

第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑訴法198条2項は取調べに先立つ告知を求めています。この類型では、取引の回数や金額、相手方の素性について、記憶に頼って曖昧に述べた内容が、営業性や犯罪収益の認識を裏付ける供述として固定される危険があります。話す前に方針を決めることが先です。

第2に、早期の私選弁護人の選任です。逮捕から勾留決定までの72時間は、ご家族が面会できず、弁護人だけがご本人と接することができます。この間に、押収された端末に何が残っているのか、中国側の家族に何を確認すべきかを整理できるかどうかで、その後の展開が変わります。

第3に、通訳の質です。捜査機関の通訳は捜査のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場ではありません。微信の中国語の言い回しが、両替の申込みなのか、単なる相談なのか、翻訳の仕方で意味が変わる場面は少なくありません。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から公判まで、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。中国語の専属通訳が常駐しており、微信の履歴や中国側の資料の読み解きを、弁護士と通訳が一体となって行います。刑事手続と並行して、提携する行政書士とともに在留資格に関するサポートも行っております。

特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況を明らかにし、犯意が存在しなかったことを主張して、不起訴処分を得た事例がございます。地下銀行の事件でも、上位者の指示で現金の受渡しを担っただけの方について、犯罪収益の認識を争う構図は共通しております。

特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された方について、不当な取調べに抗議し、主張と立証を重ねて、全件について不起訴処分を得た事例がございます。再逮捕が繰り返される類型では、最初の供述を固定させないことが、全体の結果を決めます。

このほか、国際的な刑事事件や、世界的に報道された事件への対応経験を積んでおり、中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。

結語

円と人民元の私的な両替は、在日中国人の生活に長く根付いてきた慣行ですが、日本の法律の下では、反復して引き受ければ銀行法違反となり、資金の性質によっては犯罪収益の隠匿や収受という重い罪に発展します。そして、刑事の結論がどうであれ、在留の判断は別の枠組みで進みます。もっとも、営業性と認識という二つの争点は、記録を丁寧に読み解けば十分に争う余地のあるものです。逮捕の連絡を受けたご家族は、ご本人の記憶に頼って説明を重ねるのではなく、早い段階で方針を立てられる立場の者にご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):通过微信私下兑换人民币与日元、涉及地下钱庄时|银行法、资金决济法、犯罪收益转移防止法与在留资格

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