舟渡国際法律事務所

「執行猶予が付いたから日本にいられる」は本当か|就労・留学の在留資格の方が知っておくべき入管法24条4号の2

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「執行猶予が付いたから日本にいられる」は本当か|就労・留学の在留資格の方が知っておくべき入管法24条4号の2

「執行猶予が付いたから日本にいられる」は本当か|就労・留学の在留資格の方が知っておくべき入管法24条4号の2

2026/09/18

刑事事件で執行猶予付きの判決を受けると、刑務所に行かずに済みます。そのため「執行猶予なら日本での生活は続けられる」と考える方は少なくありません。しかし、入管法の退去強制事由は、在留資格の種類と罪名によって仕組みが異なります。就労資格や留学、家族滞在などの在留資格の方は、執行猶予付きの判決でも退去強制の対象になる罪があります。2026年9月に当事務所が在留特別許可を得た事例も、まさにこの規定が問題となった事案でした。

本記事の要点

  • 入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます。
  • これとは別に、入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理、留学、家族滞在、特定技能等)で在留する方が、刑法の一定の罪で拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としています。こちらには執行猶予の除外がありません。
  • 対象となる罪には、住居侵入、文書偽造などの偽造の罪、傷害、窃盗、強盗、詐欺、恐喝などが含まれます。
  • 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者(別表第二の在留資格)の方には、4号の2は適用されません。
  • 4号の2は「拘禁刑」に処せられた場合の規定であり、罰金刑であれば当たりません。不起訴処分が最善であり、次善は罰金にとどめることです。

2つの規定の違い

入管法24条4号リは、在留資格の種類を問わず、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としています。ただし、刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。「執行猶予なら大丈夫」という理解は、この規定だけを見たものです。

一方、入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する者が、刑法第2編のうち住居を侵す罪(第12章)、通貨偽造・文書偽造・有価証券偽造・支払用カード電磁的記録・印章偽造の罪(第16章から第19章)、賭博(第23章)、殺人(第26章)、傷害(第27章)、逮捕・監禁(第31章)、略取・誘拐(第33章)、窃盗・強盗(第36章)、詐欺・恐喝(第37章)、盗品等に関する罪(第39章)等によって拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としています。刑期の長さの要件も、執行猶予の除外もありません。拘禁刑1年・執行猶予3年という判決でも、確定すれば退去強制事由に当たります。

なお、薬物事犯は別の規定(入管法24条4号チ)で扱われ、在留資格の種類を問わず、有罪判決を受ければ執行猶予付きでも退去強制事由に当たります。

在留資格ごとの整理

別表第一の在留資格は、日本で行う「活動」に基づく資格です。技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理、高度専門職、特定技能、技能実習、留学、家族滞在などがこれに当たります。これらの方が上記の罪で拘禁刑の判決を受ければ、執行猶予の有無にかかわらず退去強制の対象です。

別表第二の在留資格は、日本での「身分や地位」に基づく資格です。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者がこれに当たります。これらの方には4号の2が適用されないため、同じ罪でも、1年を超える実刑でなければ退去強制事由には当たりません(薬物事犯を除く)。ただし、日本人の配偶者等などの期限のある在留資格では、在留期間の更新の際に素行が審査され、前科が不利に働きます。

4号の2に当たらない罪(過失運転致死傷等)でも、別表第一の方は更新の審査で素行が問われます。退去強制事由に当たらないことと、在留を続けられることとは別の問題です。

当事務所の事例

2026年9月に在留特別許可を得たベトナム国籍の男性は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で約13年、会社員として働いてきた方でした。知人の依頼で他人名義の委任状を作り、課税証明書を取得しようとしたとして、有印私文書偽造・同行使の罪で懲役1年6月(現行法の拘禁刑に相当)、執行猶予3年の判決を受けました。文書偽造は刑法第2編第17章の罪ですので、判決の確定によって4号の2の退去強制事由に当たることになります。

このため、刑事段階では、窃盗の追起訴を防いで執行猶予付き判決にとどめ、4号リと入管法50条1項ただし書(1年を超える実刑の場合の制限)の対象にならないようにすることに力を注ぎました。そのうえで、判決確定後に配偶者の帰化が完了し、在留特別許可を日本人の配偶者として申請できたことが、許可につながりました。ご本人の同意を得て紹介しています。

だからこそ不起訴処分を最優先にする

別表第一の在留資格の方が4号の2の罪で捜査を受けている場合、刑事弁護の目標は執行猶予ではなく、不起訴処分です。不起訴であれば、そもそも「拘禁刑に処せられた」ことになりません。起訴を避けられない場合でも、略式手続による罰金にとどめれば、4号の2には当たりません。示談、被害弁償、嫌疑不十分を示す意見書の提出など、起訴の判断がされる前にできることは多くあります。

執行猶予付き判決を得て「良い結果でした」と説明を受けたものの、その後に入管から呼出しを受けて初めて問題を知る、というご相談は珍しくありません。刑事弁護を依頼する際は、入管法24条の号ごとの構造を踏まえて方針を立てる弁護士かどうかを確認してください。

初動で押さえておきたい3つのポイント

  • 黙秘権:取調べで話さない権利が保障されています(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)。事実関係と証拠を弁護人と確認するまでは、不用意に供述を重ねないでください。
  • 早期の弁護人選任:逮捕から勾留が決まるまでの72時間は、身柄の行方を左右します。ご家族からの依頼でも弁護人は接見に向かえます。
  • 通訳:捜査機関が付ける通訳とは別に、ご本人の側に立つ通訳を確保することで、供述の細かなニュアンスを正確に伝えられます。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判、入管手続まで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、他の言語は事案に応じて通訳を手配します。刑事手続後の在留資格の更新・変更は、提携の行政書士と連携して対応します。

刑事事件では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された方について無罪判決を得た事例、特殊詐欺の受け子として繰り返し逮捕された方について全件で不起訴処分を得た事例があります。入管手続では、上記のベトナム国籍の方の事例のほか、不法就労助長に問われた女性について、退去強制事由にも故意・過失が必要であるとして上訴審まで争い、その後、在留特別許可が認められた事例があります。

結語

「執行猶予なら大丈夫」かどうかは、在留資格と罪名を確認しなければ分かりません。就労資格や留学の方が、窃盗、詐欺、傷害、文書偽造などで捜査を受けている場合は、起訴される前にご相談ください。判決が出た後にできることは、限られてしまいます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士/第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)/舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)/中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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