オンラインゲームのチート・RMT・アカウント売買で警察が来たとき|私電磁的記録不正作出・電子計算機損壊等業務妨害・不正アクセスと留学生の在留
2026/09/14
「ゲームの中の話なのに、どうして警察が来るのですか」。留学生のご家族から、そのようなご相談を受けることがあります。人気のオンラインゲームでキャラクターの能力を書き換えるチートツールを使い、あるいはそれを販売し、ゲーム内の通貨やアイテム、育成済みのアカウントを現金で売買する行為は、日本では複数の刑罰法規に触れ得ます。近時も、関東地方で、チートツールの販売や他人のアカウントへの侵入をめぐって外国籍の若者が逮捕されたとの報道がありました。規約違反にとどまる行為と刑事事件になる行為の境目はどこにあるのか。留学の在留資格にどう響くのか。ご本人と、遠くから心配されているご家族に向けて、順に整理いたします。
本記事の要点
- チートツールでゲームのサーバーに不正な指令を送り運営を妨げた場合は電子計算機損壊等業務妨害(刑法234条の2)、キャラクターやアイテムのデータを書き換えた場合は私電磁的記録不正作出(同法161条の2)が問題になり得ます。
- ゲームの保護機能を外すプログラムを配布・販売する行為は、著作権法120条の2により、著作権者の告訴がなくても処罰の対象となり得ます。
- 他人のIDとパスワードでログインすれば不正アクセス禁止法3条違反となり、IDやパスワードを売買すること自体も同法4条・5条で処罰され得ます。
- 私電磁的記録不正作出は刑法第17章の罪であり、留学など別表第一の在留資格の方が拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても入管法24条4号の2の退去強制事由に該当し得ます。
- 規約違反と犯罪の境目は、データやサーバーに対する働きかけの有無と、他人の識別符号を使ったかどうかにあり、起訴前の段階で不起訴処分を目指す弁護活動が在留を守る鍵になります。
チートツールを使う・作る・売ると、どの罪になりますか
行為の態様によって、問われる罪が変わります。まず、サーバー側の処理に働きかけて運営を妨げる行為は、刑法234条の2の電子計算機損壊等業務妨害に当たり得ます。同条は、人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えるなどして、使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて業務を妨害した者を、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。未遂も処罰されます。ゲームのクライアントを改変し、本来あり得ない通信をサーバーに送って、他のプレイヤーが正常に遊べない状態を作り出したような場合が典型です。
次に、キャラクターの能力値や所持アイテム、ゲーム内通貨の残高といったデータそのものを書き換える行為は、刑法161条の2の私電磁的記録不正作出が問題になります。同条1項は、人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者を、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定め、3項は、不正に作られた電磁的記録を人の事務処理の用に供した者も同じ刑に処すると定めています。ゲーム内のデータがこの「電磁的記録」に当たるかどうかは事案ごとに争い得る論点ですが、有償のアイテムや通貨の残高のように課金処理の基礎となるデータについては、これに当たると判断される可能性が高いと考えるべきです。
これらの罪は、自分でチートを使った場合だけでなく、ツールを作った人や販売した人にも及び得ます。使用者の行為を認識しながら道具を提供していれば、刑法60条の共同正犯や幇助犯として責任を問われる余地があるからです。「売っただけだ」というご説明は、販売の事実を認める供述として扱われます。
著作権法はどこで関わってきますか
チートツールの多くは、ゲームプログラムの改変を防ぐ仕組み、すなわち技術的保護手段や技術的利用制限手段を無効にすることで動作します。著作権法120条の2は、こうした回避を機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、貸与し、公衆への譲渡や貸与の目的で製造・輸入・所持し、あるいは公衆送信する行為を、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。業として公衆の求めに応じて回避を行った者も同様です。
注意していただきたいのは、同条1号・2号の罪は告訴を必要としないという点です。著作権法123条1項は、親告罪となる罪を列挙していますが、120条の2については3号から6号までに限られており、回避プログラムの配布や回避の請負は含まれていません。運営会社が告訴していなくても、捜査機関は独自に立件することができます。
また、改変したゲームプログラムそのものを配布すれば、著作権侵害として同法119条1項の罪が問題になります。こちらは10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科という重い法定刑です。ツールの配布と改変プログラムの配布は法的な評価が異なりますので、どのファイルをどう扱ったのかを正確に整理する必要があります。
RMTやアカウント売買は、それ自体が犯罪ですか
ゲーム内の通貨やアイテムを現金でやり取りする、いわゆるRMTや、育成済みアカウントの売買は、多くのゲームで利用規約により禁止されていますが、規約違反であることと犯罪であることは別の問題です。売買の当事者が自分の正規のアカウントを自分の意思で譲渡するだけであれば、直ちに刑罰法規に触れるものではありません。
刑事事件になるのは、そこに他人の識別符号や虚偽が絡んだときです。第1に、購入したアカウント、あるいは何らかの方法で入手した他人のIDとパスワードを使ってログインする行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条に違反し、同法11条により3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます。アカウントの元の所有者が承諾していたとしても、アクセス管理者である運営会社が認めていない以上、「買ったアカウントだから自分のものだ」というご理解は通用しないことがあります。
第2に、不正アクセスの目的で他人のIDとパスワードを取得する行為は同法4条で禁止され、相手が不正アクセスに使うことを知りながらIDとパスワードを提供する行為は同法5条で禁止されます。いずれも同法12条により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となり、不正アクセスの目的を知らずに提供した場合でも同法13条により30万円以下の罰金の対象となります。アカウントを「売る」行為が、この識別符号の提供に当たると評価される可能性があります。
第3に、存在しないアイテムを渡すと偽って代金を受け取る、チートで不正に生成した通貨を正規の通貨と偽って販売するといった行為は、刑法246条の詐欺が問題になります。取引相手が個人であれば個人的な財産の侵害であり、被害弁償が有利な事情として働く余地がありますが、運営会社のシステムを欺いて不実の記録を作らせて利益を得た場合は、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺(10年以下の拘禁刑)が検討されることになります。
なお、留学の在留資格でこうした取引を反復し、まとまった収入を得ていた場合には、それが入管法19条1項に違反する資格外活動に当たるのではないかという、刑事とは別の問題が生じます。
留学生に多い類型と、発覚のきっかけ
ご相談の類型は大きく3つに分かれます。1つ目は、母国で流通しているツールを日本のサーバーで使い、運営会社の検知によりアカウント停止と通報に至るもの。2つ目は、SNSや動画配信でチートの使用を実演し、あるいは販売を告知したことで、視聴者の通報から捜査が始まるもの。3つ目は、アカウント売買の相手方とトラブルになり、相手が警察に相談したことで、不正アクセスの事実が明るみに出るものです。
いずれの類型でも、証拠はほぼすべて電子的に残っています。サーバーのログ、決済アプリの送金履歴、チャットの記録、配信のアーカイブ。ご本人が「もう消した」と思っている記録も、運営会社や決済事業者の側には残っており、捜査機関はこれらを確保した上で逮捕に踏み切ります。把握されている事実の範囲を知らないまま供述を重ねると、記録と食い違う部分だけが取り出され、虚偽の弁解として扱われる危険があります。
また、ツールの入手先や販売先に同じ大学の留学生が含まれ、一人の逮捕がグループ全体の事件に発展することもあります。誰が作り、誰が翻訳し、誰が販売し、誰が代金を受け取ったのか。役割の違いは罪の成否と量刑に直結しますので、記憶が曖昧なまま他の人の役割を語ることは避けるべきです。
想定される刑事手続の流れ
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。裁判官が勾留を認めれば原則10日間、やむを得ない事由があれば最大でさらに10日間、身柄を拘束されたまま取調べが続きます。ゲームをめぐる事件では、押収したパソコンやスマートフォンの解析に時間がかかるため、勾留延長が請求されやすく、解析結果に基づいて別の罪名で再逮捕されることもあります。
一方で、住居が定まった学生で、証拠が運営会社側に保全されていて隠滅のおそれが小さいと説明できる事案では、勾留請求そのものを争い、在宅捜査に切り替えさせる余地があります。逮捕から72時間の間に弁護人が動けるかどうかで、出席状況、ひいては在留資格の維持に大きな差が出ます。
留学の在留資格にどう影響しますか
入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めており、この類型では3つの入口を分けて考える必要があります。
第1に、同条4号リです。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者が該当しますが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。不正アクセス禁止法違反や電子計算機損壊等業務妨害、著作権法違反については、この4号リが基本的な判断枠組みとなります。
第2に、同条4号の2です。別表第一の在留資格、すなわち留学、技術・人文知識・国際業務、技能実習、家族滞在などで在留する方が、刑法第2編第12章、第16章から第19章まで、第23章、第26章、第27章、第31章、第33章、第36章、第37章又は第39章などの罪により拘禁刑に処せられた場合、刑期の長短を問わず、執行猶予が付いていても該当します。私電磁的記録不正作出は刑法第2編第17章の文書偽造の罪に置かれており、電子計算機使用詐欺は第37章の詐欺及び恐喝の罪に置かれています。したがって、留学生がこれらの罪で執行猶予付きの拘禁刑判決を受けた場合、4号リでは除外されても、4号の2によって退去強制事由に該当する構造になっています。同じチート事件でも、電子計算機損壊等業務妨害(第35章)で処理されるか、私電磁的記録不正作出(第17章)で処理されるかによって、在留への結論が変わり得るのです。
第3に、資格外活動です。留学の在留資格は、許可を受けた範囲を超えて収入を伴う活動を行うことを禁じており(入管法19条1項)、アカウントやアイテムの販売で継続的に収入を得ていた事実は、資格外活動として同法24条4号イの退去強制事由の検討対象となり得ます。刑事責任としては、専ら収入を伴う活動を行っていると明らかに認められる場合に同法70条1項4号が予定されています。
さらに、退去強制事由に当たらなくても、逮捕をきっかけに大学を退学処分となれば、留学の活動を行っていない状態となり、在留資格の取消し(同法22条の4第1項5号・6号)が問題になります。在留期間の更新(同法21条3項)においても、有罪判決や処分の事実は素行の評価に影響します。
不起訴処分を最優先の目標とする理由
当事務所は、この類型において、執行猶予判決を目指すのではなく、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先の目標に据えています。理由は前章のとおりです。私電磁的記録不正作出や電子計算機使用詐欺で処理された場合、留学生は執行猶予付きの判決であっても入管法24条4号の2により在留を失い得ます。「執行猶予なら大丈夫」という見通しは、この類型では成り立ちません。
不起訴処分に向けては、運営会社への被害弁償と謝罪、アカウントやツールの廃棄、取引相手への返金、再発防止の具体的な約束が中心になります。侵害された利益は、運営会社の業務や著作権と、取引相手の財産に分かれますので、それぞれに対応した手当てが必要です。あわせて、データの書換えが本当に「権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録」に対するものであったのか、ログインが他人の識別符号によるものであったのかといった構成要件の当てはめを、証拠に即して丁寧に争います。技術的な事実関係を弁護人が正確に理解し、検察官に説明できるかどうかが、処分の結論を左右します。
警察が来たとき、最初にすべき3つのこと
第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べの前に供述を拒めることを告げるよう求めています。黙秘を理由に不利益に扱うことは許されません。ゲームの事件では、専門用語が多く、通訳を介した説明が正確に調書に反映されないおそれが特に高い分野です。何を話し何を話さないかを弁護人と決めるまでは、供述を控えるのが原則です。
第2に、できる限り早く私選の弁護人を選任することです。逮捕直後には当番弁護士を呼ぶことができますが、勾留請求を争い、運営会社との示談を進め、大学との連絡を調整する一連の活動は、事件を継続的に担当する弁護人でなければ担えません。勾留が決まってからでは、最初の72時間を失っています。
第3に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳は、捜査のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場にはありません。チート、改変、識別符号、電磁的記録といった言葉を、中国語でどう訳し、日本語でどう聞き返すかによって、供述の意味は変わります。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から公判まで、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。技術的な事実関係が結論を左右するこの類型では、押収されたデータの意味を弁護人自身が読み解く必要があるからです。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、留学生のご本人とも中国本土のご家族とも直接にやり取りできます。
証拠の分析が結論を分けた事例として、覚醒剤取締法違反の営利目的所持で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問、反対尋問を重ね、無罪判決を獲得したものがあります。捜査機関が組み立てた事実の流れを、証拠の一つ一つに立ち返って検証する姿勢は、ログや通信記録が中心となるゲームの事件でも同じように生きてまいります。
また、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方について、不当な取調べに対する抗議と主張立証を重ね、全件について不起訴処分を得た事例があります。解析結果に基づいて再逮捕が繰り返されやすい類型において、取調べの適正を守りながら不起訴を積み上げる活動は、この事例で培ったものです。
国際的な刑事事件や世界的に報道された事件への対応経験もあり、中国籍の方の重大事件にも多数対応してまいりました。
結語
ゲームの中の出来事であっても、サーバーに不正な指令を送り、データを書き換え、他人のIDでログインすれば、日本の刑罰法規は現実の犯罪として扱います。そして留学生にとっては、どの罪名で処理されるかによって、執行猶予でも在留を失うかどうかが分かれます。逮捕の連絡を受けたご家族が最初にすべきことは、ご本人に事情を聞き出すことではなく、技術的な事実関係と入管法の構造を同時に扱える弁護人に、一刻も早くつなぐことです。学業を続け、日本での将来を守る道は、初動の数日で大きく変わります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):因网络游戏外挂、RMT、账号买卖被日本警方调查时|私电磁记录不正作出罪、电子计算机损坏等业务妨害罪、非法访问与留学生的在留
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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