わいせつな動画・画像の配信・販売で逮捕されたとき|刑法175条の頒布・公然陳列・有償頒布目的所持、海外サーバーでも国内犯となる理由と在留資格への影響
2026/09/13
「サーバーは海外にあるし、Telegramのグループで売っていただけだから、日本の警察には関係ないと思っていた」。有料の配信サイトやメッセージアプリを通じて無修正の動画を販売していた方が、わいせつ電磁的記録頒布の疑いで逮捕されるという報道が近時相次いでいます。海外に置いたサーバーや海外の決済サービスを使っていても、日本で立件されるのはなぜか。頒布と公然陳列と所持は何が違うのか。児童ポルノとの境目はどこか。そして、留学や就労の在留資格で日本にいる方が、この罪で有罪となった場合、在留はどうなるのか。順に整理いたします。
本記事の要点
- わいせつな電磁的記録を電気通信の送信により頒布した者は、2年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金若しくは科料、又は拘禁刑と罰金の併科とされます(刑法175条1項後段)。
- 有償で頒布する目的でわいせつな電磁的記録を保管した場合も同じ法定刑で処罰されますが(同条2項)、自分で見るためだけの所持は処罰されません。
- 海外のサーバーに動画を置いていても、日本国内から送信し、又は日本国内の顧客に受信させた場合には国内犯として日本の刑法が適用され(刑法1条1項)、最高裁判所も平成26年11月25日の決定でこの点を明らかにしています。
- 18歳未満の者が写っていれば児童ポルノ禁止法の問題となり、提供は3年以下、不特定多数への提供は5年以下の拘禁刑と格段に重くなるうえ、単純所持も処罰されます(同法7条)。
- 刑法175条は入管法24条4号の2が列挙する罪に含まれていませんが、1年を超える実刑は同条4号リに当たり、罰金や執行猶予でも在留期間更新の審査(同法21条3項)に影響します。
刑法175条は何を処罰していますか。頒布・公然陳列・有償頒布目的所持
刑法175条1項は、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者を、2年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は拘禁刑と罰金を併科すると定め、後段で、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も同様とすると定めています。2項は、有償で頒布する目的で、1項の物を所持し、又は1項の電磁的記録を保管した者を、同じ法定刑で処罰しています。
三つの行為類型を整理しますと、頒布とは、不特定又は多数の者に交付し、又はデータを送信して取得させることです。動画ファイルを購入者に送る、ダウンロードさせる行為はこれに当たります。公然陳列とは、不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことで、ウェブサイト上で閲覧できる状態にする行為が典型です。最高裁判所は平成13年7月16日の判決で、サーバーにわいせつな画像データを記憶させ、不特定多数の者が閲覧できる状態に置く行為が公然陳列に当たると判断しています。有償頒布目的所持は、販売する目的でファイルを手元に保管している段階を捉えるもので、実際に販売する前であっても成立します。
裏を返せば、自分で見るためだけにわいせつな動画を所持し、又は保管する行為は、刑法175条では処罰されません。逮捕された方の端末に大量のファイルがあった場合、それが販売用の在庫なのか、私的な所持なのかは、販売の履歴、フォルダの整理の仕方、購入者とのやり取りなどから判断されます。この区別は、罪の成否と、成立する場合の範囲の双方に関わる重要な争点です。
海外サーバー・Telegram・海外決済でも、日本で立件されるのはなぜですか
刑法は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用されます(刑法1条1項)。ここでいう国内とは、犯罪を構成する行為や結果の一部が日本国内で生じていれば足りると解されています。海外のサーバーに動画を置いていても、日本国内のパソコンから操作してアップロードした、日本国内の顧客に向けて販売し、顧客が日本国内でダウンロードしたという事実があれば、行為の一部又は結果が日本国内で生じたことになります。
最高裁判所は平成26年11月25日の決定で、日本国内の者が海外のサーバーにわいせつな動画のデータを記録させ、日本国内の顧客がこれをダウンロードして自らの端末に記録させた事案について、顧客による操作は被告人らが意図していた頒布の一部であるとして、刑法175条1項後段のわいせつ電磁的記録頒布罪の国内犯に当たると判断しています。サーバーの所在地が海外であることは、日本の刑法の適用を妨げません。
Telegramのような海外のメッセージアプリを使った場合も同じです。捜査機関は、決済サービスの記録、購入者の端末、SNSでの宣伝投稿、暗号資産の取引記録などから販売者を特定します。海外の決済サービスを使ったから追跡されないという考えは、現在の捜査の実態に照らして誤りです。
「わいせつ」に当たるかどうかは、どのように判断されますか
わいせつの意味について、最高裁判所は昭和32年3月13日の判決で、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうとしており、昭和55年11月28日の判決では、作品全体との関係で性描写の程度や手法、芸術性、思想性などを総合して判断すべきものとしています。
実務では、性器がモザイク処理なしに映っているかどうかが、わいせつ性の判断において大きな意味を持っています。日本の成人向け作品が修正を施して流通しているのは、この判断基準を前提にしたものです。海外で合法的に流通している無修正の作品を、日本国内の顧客に販売する行為は、日本の基準ではわいせつ物の頒布と評価されます。海外では合法であるという主張は、日本の刑法の適用の場面では通りません。
児童ポルノとの区別。18歳未満が写っていれば別の法律です
写っている人物が18歳未満である場合には、刑法175条ではなく、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律が適用されます。同法は、児童を18歳に満たない者と定義し(同法2条1項)、児童ポルノを、児童を相手方とする性交等に係る姿態、性器等を触る行為に係る姿態、衣服を着けず性的な部位が殊更に露出又は強調された姿態を描写したものと定めています(同条3項)。
法定刑は刑法175条とは比較になりません。児童ポルノを提供した者、電気通信回線を通じて児童ポルノに当たる電磁的記録を提供した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(同法7条2項)、不特定又は多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科です(同条6項)。さらに、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持し、又は電磁的記録を保管した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金とされ(同条1項)、刑法175条と異なり、私的な所持自体が処罰されます。
配信や販売をしていた方にとって、扱っていた動画の中に18歳未満の者が写ったものが一つでも含まれていれば、罪名も法定刑も大きく変わります。出演者の年齢を確認していなかった、海外の作品で年齢が分からないという事情は、故意の有無の争点にはなり得ますが、出演者が明らかに若年に見える場合には、認識があったと推認されやすいのが実情です。
想定される刑事手続の流れ
逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかを判断します。勾留は原則10日、延長でさらに最大10日です。この類型では、逮捕に先立って、決済記録や購入者の端末から販売者が特定され、家宅捜索でパソコン、スマートフォン、外付けの記録媒体が押収されるのが通常です。押収された端末の解析には時間がかかるため、解析結果を待って再逮捕や追起訴がされることもあります。
販売の規模が小さく、初犯で、前科がない場合には、罰金刑の略式命令で終わる例も少なくありません。他方で、組織的に多数の動画を販売し、売上げが大きい場合や、児童ポルノに当たるものが含まれる場合には、正式に起訴され、公判で実刑が争われることになります。
在留資格への影響。入管法24条のどの号が問題になるか
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。刑法175条の法定刑の上限は2年以下の拘禁刑ですから、実刑で1年を超える刑が言い渡されれば該当します。児童ポルノの提供であれば法定刑が3年又は5年以下となり、実刑の場合にこの号に当たる可能性が高まります。
別表第一の在留資格、すなわち留学、技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理などで在留する方には、同条4号の2があります。同号は、刑法第2編の特定の章の罪、暴力行為等処罰法の罪などで拘禁刑に処せられた者を、執行猶予の有無を問わず退去強制事由とするものですが、列挙されている章は住居侵入、偽造、賭博、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐、窃盗強盗、詐欺恐喝、盗品等の各章であり、わいせつの罪を定める第2編第22章は含まれていません。児童ポルノ禁止法も列挙されていません。したがって、刑法175条や児童ポルノ禁止法の違反そのものは、4号の2の対象ではありません。ただし、動画を送らずに代金だけを受け取っていたなどの事情から詐欺罪(第2編第37章)が併せて認定されれば、同号に該当し、執行猶予でも退去強制事由となります。
退去強制事由に当たらない場合でも、在留期間の更新は、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるものであり(入管法21条3項)、更新の審査では素行が善良であることが求められます。罰金刑であっても、有罪の事実は更新の審査で考慮されます。また、留学の在留資格の方が販売による収入を継続的に得ていた場合には、資格外活動の問題が加わり、専ら収入を伴う活動を行っていると明らかに認められれば、同法24条4号イの退去強制事由にも当たり得ます。動画の販売で生計を立てていたと評価されるかどうかは、この観点からも重要です。
不起訴処分を最優先目標とする理由
刑法175条違反は、罰金刑で終わることも多い犯罪類型ですが、在留資格を持つ方にとっては、罰金であっても前科として更新の審査に響き、詐欺罪が加われば執行猶予でも退去強制事由に当たります。したがって、当事務所は、執行猶予や罰金で済ませることを目標とするのではなく、起訴前の段階で不起訴処分を得ることを最優先の目標としております。
不起訴に向けた主張の柱は、第1に、わいせつ性や頒布該当性を争う余地の検討、第2に、販売の規模と期間が限定的であること、第3に、販売をやめ、ファイルを消去し、サイトやアカウントを閉鎖して再発を防ぐ体制を整えたことです。この罪は社会的法益に対する罪であり、被害者との示談という形を取ることができませんから、贖罪寄付や再発防止の具体的な取組みによって、反省と更生の意思を示していくことになります。
逮捕の連絡を受けたら押さえるべき3点
第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑訴法198条2項は取調べに先立つ告知を求めています。この類型では、販売の期間、本数、売上げについて、記憶に頼って多めに述べてしまうと、それが事実認定の出発点になります。端末の解析結果が出る前に、方針を決めることが先です。
第2に、早期の私選弁護人の選任です。逮捕から勾留決定までの72時間は、ご家族が面会できず、弁護人だけがご本人と接することができます。この間に、扱っていた動画に18歳未満が写ったものが含まれていないか、詐欺と評価される取引がなかったかを確認できるかどうかで、事件の輪郭が変わります。
第3に、通訳の質です。捜査機関の通訳は捜査のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場ではありません。販売の経緯や動機の説明は、言葉の選び方一つで、営利目的の計画的な犯行にも、軽率な小遣い稼ぎにも読めてしまいます。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から公判まで、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。中国語の専属通訳が常駐しており、押収された端末の内容やアプリ上のやり取りを、弁護士と通訳が一体となって読み解きます。刑事手続と並行して、提携する行政書士とともに在留資格に関するサポートも行っております。
覚醒剤取締法違反の営利目的所持で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問を積み重ね、無罪判決を獲得した事例がございます。電子的な証拠が中心となる事件では、解析結果をどう読み、どこに反論の余地があるかを見抜く力が問われますが、その基礎は同じです。
逮捕報道や前科に関する報道の削除にも対応してまいりました。わいせつ電磁的記録頒布の事件は、実名で報道されることがあり、不起訴となった後もインターネット上に記事が残り続けることがあります。刑事手続の結果を得た後、報道の削除まで一貫して対応いたします。
このほか、国際的な刑事事件や、世界的に報道された事件への対応経験を積んでおり、中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。
結語
海外のサーバーやメッセージアプリを使った動画の販売は、日本の刑法の適用を免れるものではなく、頒布か公然陳列か所持か、成人か児童か、詐欺の要素があるかによって、罪名も法定刑も在留への影響も大きく変わります。逆に言えば、これらの区別を正確に把握し、早い段階で方針を立てれば、不起訴や罰金にとどめ、在留を守る道は十分にあります。逮捕の連絡を受けたご家族は、ご本人の記憶に頼って説明を重ねるのではなく、方針を立てられる立場の者に早くご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):因传播、销售淫秽视频与图片被逮捕时|刑法175条的散布、公然陈列与有偿散布目的持有,服务器在海外仍构成国内犯的理由,以及对在留资格的影响
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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東京を中心に刑事事件の弁護
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