飲食店・コンビニでの迷惑動画・落書き・備品持ち帰りで逮捕されたとき|器物損壊・偽計威力業務妨害・損害賠償とSNS拡散、留学生・技能実習生の在留
2026/09/14
仲間との食事の席で、卓上の調味料に口を付ける、共用のスプーンをなめる、壁に落書きをする、店の器を鞄に入れて持ち帰る。その様子を撮った数秒の動画が翌朝には数百万回再生され、店名と顔が特定され、数日後に警察から連絡が来る。近時も、関東地方の飲食店やコンビニをめぐって、同様の動画が拡散し、外国籍の若者が逮捕されたとの報道がありました。「悪ふざけのつもりだった」「店に迷惑をかける気はなかった」という弁解は、日本の刑事手続では通りにくく、留学生や技能実習生にとっては在留を左右する問題に発展します。どの罪に当たるのか、店からの損害賠償にどう向き合うのか、拡散した動画と報道はどうなるのか。順に整理いたします。
本記事の要点
- 備品を汚す、壊す、使えなくする行為は刑法261条の器物損壊(3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料)に当たり、告訴がなければ起訴できない親告罪です(同法264条)。
- 動画の撮影・投稿によって店の営業に支障を生じさせれば、刑法233条の偽計業務妨害又は234条の威力業務妨害(いずれも3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)が問題になり、撮影者や投稿者も共犯として責任を負い得ます。
- 店の器や備品を持ち帰る行為は刑法235条の窃盗(10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)であり、金額の小ささは成立を妨げません。
- 窃盗は刑法第36章の罪であり、留学・技能実習など別表第一の在留資格の方が拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても入管法24条4号の2の退去強制事由に該当し得ます。
- 店との示談と告訴の取下げが処分を大きく左右するため、起訴前の段階で不起訴処分を目指す弁護活動が、在留を守る中心になります。
迷惑動画の行為は、どの罪に当たりますか
行為の内容によって、3つの罪が使い分けられます。第1に、刑法261条の器物損壊です。同条は他人の物を損壊し、又は傷害した者を、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料に処すると定めています。ここでいう損壊は、物理的に壊すことに限られず、物の効用を失わせる行為を広く含むと解されています。共用の調味料容器に口を付ける、食器をなめる、店内の壁や備品に落書きをするといった行為は、その物を客に提供できない状態にするものとして、器物損壊に当たり得ます。
第2に、刑法233条の偽計業務妨害と234条の威力業務妨害です。233条は虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて人の業務を妨害した者を、234条は威力を用いて人の業務を妨害した者を、いずれも3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。店側に気付かれないように行う行為は偽計に、店員の目の前で騒ぎ立てる行為は威力に当たると整理されることが多く、店が備品の交換や消毒、営業の一時停止、客の減少への対応を余儀なくされれば、業務が妨害されたと評価されます。実際に営業が止まらなくても、妨害のおそれのある行為で足りるとする考え方が実務では有力です。
第3に、動画の撮影者と投稿者です。行為者本人ではなくても、迷惑行為を撮影して投稿することを事前に打ち合わせていれば、刑法60条の共同正犯として、行為を知りながら撮影と拡散を引き受けていれば幇助犯として、責任を問われ得ます。「撮っただけ」「面白いと思って上げただけ」という説明は、責任を免れる理由にはなりません。
店の器やグラスを持ち帰るのは、どの程度の罪ですか
記念に器を持ち帰る、グラスを鞄に入れる、店の看板や装飾品を外して持ち出す。こうした行為は、刑法235条の窃盗です。同条は他人の財物を窃取した者を、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。物の値段が数百円であっても、窃盗の成立に影響しません。
窃盗は親告罪ではなく、店が告訴しなくても起訴されることがあります。また、後述のとおり、窃盗は刑法第36章に置かれた罪であり、留学や技能実習の在留資格の方にとっては、器物損壊や業務妨害とは在留への影響の構造が異なります。同じ動画に写っている行為でも、「器を汚した」のか「器を持ち帰った」のかによって、在留の帰結が変わり得ることを、ご本人もご家族も知っておく必要があります。
店からの損害賠償請求と示談は、どう考えればよいですか
刑事事件とは別に、店は民法709条に基づいて損害賠償を請求することができます。請求の内容は、汚損した備品の交換費用や消毒費用にとどまらず、動画の拡散によって客が減少したことによる売上の減少、風評への対応費用、営業を一時停止した期間の逸失利益にまで及ぶことがあります。大手チェーンでは、本部が方針として厳しい対応を取る例もあり、請求額が本人の想定を大きく上回ることも珍しくありません。
もっとも、示談は刑事処分に直結します。器物損壊は親告罪ですから、店が告訴を取り下げれば起訴はできなくなります。業務妨害や窃盗は親告罪ではありませんが、被害弁償と宥恕は不起訴の判断に大きく影響します。示談の交渉では、請求された金額を全て受け入れるのではなく、実際に生じた損害と動画の拡散との因果関係を整理し、ご本人が支払える範囲で、店側が受け入れ得る内容を組み立てることになります。店側が本人との直接の接触を拒むことも多く、弁護人が間に入る必要があります。
なお、示談金を用意するためにご家族が中国から送金する場合、金額と時期によっては、在留資格の審査で生活費の出所を問われることがあります。示談の段取りは、刑事と在留の両方を見通して組み立てるべきものです。
SNSで拡散した動画や実名報道は、どうなりますか
動画の拡散は、刑事手続の内外で二重に影響します。まず、拡散の規模そのものが、業務妨害の結果の大きさとして評価され、処分を重くする方向に働きます。次に、拡散に伴って、ご本人の氏名、学校、勤務先、住所が第三者によって特定され、公開されることがあります。この段階で、ご本人は加害者であると同時に、名誉毀損や私生活の暴露の被害者にもなります。
対応としては、元の動画の投稿者が自分であれば直ちに削除すること、他人が投稿した動画や個人情報については、投稿の削除請求と、必要に応じて仮処分の申立てを検討することになります。逮捕報道が出た場合、不起訴となった後に報道の削除や修正を求める手続も選択肢です。ただし、拡散後の動画を完全に消し去ることは現実には難しく、削除に取り組む一方で、刑事処分を軽く抑えることが、将来への影響を最小限にする現実的な道です。
報道について一つ注意があります。逮捕の段階で実名が報道されるかどうかは、事件の社会的な注目度と、捜査機関の発表の仕方に左右されます。動画が広く拡散した事件では、逮捕前から本人が特定されているため、実名報道の可能性は高くなります。報道に対して本人やご家族が反論の投稿をすることは、事態を悪化させることが多く、お勧めできません。
想定される刑事手続の流れ
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。勾留が認められれば原則10日間、延長されれば最大でさらに10日間、身柄の拘束が続きます。迷惑動画の事件では、動画そのものが証拠として保全されており、行為の内容に争いが少ないため、住居が定まっていて逃亡のおそれが小さいと説明できれば、勾留されずに在宅で捜査が進む例も少なくありません。逆に、共犯者が複数いて口裏合わせが疑われる場合や、動画の削除を繰り返していた場合には、証拠隠滅のおそれを理由に勾留されやすくなります。
逮捕から72時間の間に、弁護人が店との接触を始め、示談の意向を検察官に伝えられるかどうかで、勾留の有無と処分の見通しは大きく変わります。留学生であれば授業の出席、技能実習生であれば実習の継続に、勾留の日数がそのまま響きます。
留学生・技能実習生の在留にどう影響しますか
入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めています。この類型では、罪名によって構造が分かれます。
第1に、同条4号リです。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者が該当し、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。器物損壊や偽計・威力業務妨害については、この4号リが基本的な判断枠組みとなります。器物損壊は刑法第40章、業務妨害は第35章に置かれており、次に述べる4号の2の対象には含まれていません。
第2に、同条4号の2です。留学、技能実習、技術・人文知識・国際業務、家族滞在などの別表第一の在留資格で在留する方が、刑法第2編第36章(窃盗及び強盗の罪)などの罪により拘禁刑に処せられた場合、刑期の長短を問わず、執行猶予の有無を問わず、退去強制事由に該当します。器を持ち帰った行為が窃盗として処理され、執行猶予付きの拘禁刑判決を受けると、4号リでは除外されても4号の2によって在留を失い得るのです。同じ動画に写った行為でも、器物損壊として処理されるか窃盗として処理されるかで、結論が変わります。
第3に、退去強制事由に当たらなくても、別の入口があります。留学生が逮捕を理由に退学処分となれば、留学の活動を行っていない状態となり、在留資格の取消し(同法22条の4第1項5号・6号)の対象になります。技能実習生が実習実施者から実習を打ち切られた場合も同様です。在留期間の更新(同法21条3項)では、有罪判決や処分の事実が素行の評価に影響します。
不起訴処分を最優先の目標とする理由
当事務所は、この類型で、執行猶予判決を目指すのではなく、起訴前の不起訴処分を最優先の目標にしています。窃盗として処理される事案では、別表第一の在留資格の方は執行猶予でも在留を失い得ますし、器物損壊や業務妨害であっても、有罪判決の存在は更新や取消しの場面で不利に働きます。
迷惑動画の事件は、店という特定の被害者がいる点で、示談の効果が現れやすい類型です。器物損壊は親告罪であり、告訴の取下げがあれば起訴されません。業務妨害と窃盗についても、被害弁償と宥恕を得た上で、行為が一過性のものであること、動画の削除に努めたこと、学校や実習先の監督の下で生活を立て直すことを具体的に示すことで、不起訴の判断につなげることができます。他方で、被害が店の営業という社会的な広がりを持つ場合には、示談だけでは足りず、再発防止の取組みを併せて示すことが求められます。
逮捕されたとき、最初にすべき3つのこと
第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べに先立って供述を拒めることを告げるよう求めています。動画が残っている事件では、「映っているのだから認めるしかない」と考えがちですが、誰が言い出したのか、撮影と投稿を誰が決めたのか、持ち帰った物の扱いをどう考えていたのかは、動画には映っていません。共犯者の役割を推測で語ることは避け、弁護人と方針を決めてから供述することが原則です。
第2に、できる限り早く私選の弁護人を選任することです。店との示談、動画の削除、学校や実習先への説明、入管への対応は、事件を継続して担当する弁護人でなければ一体として進められません。勾留が決まってからでは、最初の72時間を失っています。
第3に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳は捜査のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場ではありません。「ふざけた」「壊すつもりはなかった」「借りるつもりだった」といった言葉の訳し方で、故意の認定は変わります。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から公判まで、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。迷惑動画の事件では、刑事手続、店との示談、動画と報道への対応、在留資格の4つが同時に進みますので、担当を分けずに一人の弁護士が全体を見通す体制を取っています。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、中国本土のご家族との連絡も直接に行えます。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を得た事例があります。仲間に言われるままに行為に及んでしまった若い方の事件で、経緯と心理状態を丁寧に主張して不起訴につなげる活動は、迷惑動画の事件にも通じるものです。
また、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方について、不当な取調べへの抗議と主張立証を重ね、全件について不起訴処分を得た事例があります。
ネット上の対応では、逮捕報道や前科に関する報道の削除を実現した事例、なりすましアカウントを仮処分により削除させた事例があります。動画の拡散と個人情報の暴露に直面したご本人を、刑事手続と並行して守る活動の基礎になっています。
結語
一瞬の悪ふざけが、器物損壊、業務妨害、窃盗という現実の犯罪として扱われ、数百万回の再生と実名の特定を伴って、留学や実習の継続そのものを揺るがす。迷惑動画の事件は、行為の軽さと結果の重さの落差が最も大きい類型の一つです。しかし、被害者である店が特定されているからこそ、示談と告訴の取下げによって不起訴に至る道筋も、比較的はっきりしています。逮捕の連絡を受けたご家族が最初にすべきことは、ご本人を叱ることでも、ネット上で弁明することでもなく、店との交渉と在留の見通しを同時に扱える弁護人に、一刻も早くつなぐことです。日本での学びと仕事を続ける道は、初動の数日で守ることができます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):在餐饮店、便利店拍恶搞视频、涂鸦、顺走餐具而被逮捕时|器物损坏罪、伪计威力业务妨害罪、损害赔偿与社交平台扩散、留学生与技能实习生的在留
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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