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「通訳がそう訳したのだから調書は自分の責任ではない」は本当か|署名押印の意味、読み聞かせと増減変更の申立て、通訳の誤りを後から争う方法

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「通訳がそう訳したのだから調書は自分の責任ではない」は本当か|署名押印の意味、読み聞かせと増減変更の申立て、通訳の誤りを後から争う方法

「通訳がそう訳したのだから調書は自分の責任ではない」は本当か|署名押印の意味、読み聞かせと増減変更の申立て、通訳の誤りを後から争う方法

2026/09/14

「調書には確かに署名しました。でも、通訳がそう訳したから書かれただけで、自分がそう言ったわけではありません」。公判が近づいてから、あるいは判決が出てから、このようにご説明になる方が少なくありません。取調べは中国語で受けた、調書は日本語で書かれている、読み聞かせも通訳を介して行われた。それなのに、署名した調書が「本人の供述」として扱われ、法廷で自分に不利な証拠になる。この仕組みに納得できないお気持ちはよく分かります。しかし、日本の刑事手続では、署名押印のある調書を後から覆すことは容易ではありません。この記事では、署名押印が法律上どのような意味を持つのか、調書を作る過程で認められている権利は何か、通訳の誤りを後から争う方法はあるのか、そして署名する前に何を確認すべきかを、条文に沿って整理します。

本記事の要点

  • 刑事訴訟法198条4項・5項により、調書は被疑者に閲覧させ又は読み聞かせ、誤りがないことを申し立てたときに初めて署名押印を求めることができ、署名押印は「内容に誤りがないと自ら確認した」ことの証しとして扱われます。
  • 通訳人は捜査機関が刑事訴訟法223条1項に基づいて嘱託する立場であり、被疑者のために動く通訳ではないため、訳の誤りはそのまま調書に残ります。
  • 署名押印のある調書は刑事訴訟法322条1項により証拠となり得ますが、任意性に疑いがあれば排除され、証拠になっても信用性は別途争えます。
  • 通訳の誤りを後から争うには、録音録画、通訳人の証人尋問、接見時の記録などの裏付けが必要であり、「訳が違った」と述べるだけでは足りません。
  • 署名前に、日付・金額・「知っていた」「思った」などの認識に関する表現を一文ずつ確認し、納得できなければ増減変更の申立てをするか、署名を拒むことができます。

調書への署名押印は、法律上どんな意味を持ちますか

署名押印は、「調書の内容を確認し、誤りがないと自ら申し立てた」ことの証しとして扱われます。刑事訴訟法198条3項は被疑者の供述を調書に録取することができると定め、同条4項は、その調書を被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤りがないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立てをしたときはその供述を調書に記載しなければならないとしています。そして同条5項は、被疑者が調書に誤りのないことを申し立てたときに、署名押印を求めることができると定め、ただし書で、被疑者がこれを拒絶した場合はこの限りでないとしています。

つまり、法律の建前では、署名押印は「読み聞かせを受け、訂正の機会を与えられ、その上で誤りがないと認めた」という三段階を経た結果です。通訳を介した場合でも、この構造は変わりません。通訳人が日本語の調書を中国語に訳して読み聞かせ、ご本人が「間違いない」と答え、署名押印した。裁判所はこの経過を、調書に添えられた通訳人の署名や、取調官の証言によって認定します。したがって、「通訳がそう訳しただけだ」という説明は、「読み聞かせのときになぜ訂正を申し立てなかったのか」という問いを必ず招きます。

逆に言えば、署名押印を拒む権利は明文で認められています。同条5項ただし書は、拒絶した場合には署名押印を求められないと定めており、拒んだことを理由に不利益を受けることはありません。署名を拒めば調書に「署名押印拒否」と記載されますが、その調書は同法322条1項の「被告人の署名若しくは押印のあるもの」に当たらず、原則として証拠にはなりません。

取調べの通訳人は、誰のために通訳しているのですか

捜査機関のためです。刑事訴訟法223条1項は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、通訳又は翻訳を嘱託することができると定めています。取調室にいる通訳人は、この規定に基づいて警察や検察が選び、費用を負担して依頼した通訳人です。中立の立場で正確に訳す義務を負ってはいますが、ご本人の利益のために言葉を選び、不利な表現を避けるよう助言する立場にはありません。

ここに、外国人事件に特有の危うさがあります。日本語の調書は、取調官が本人の話を要約し、法律上意味のある表現に整えて作成します。「そうかもしれないと思った」が「知っていた」に、「頼まれて預かった」が「受け取った」に置き換わることは珍しくありません。読み聞かせの際、通訳人はその日本語をそのまま訳しますが、「知っていた」と「そうかもしれないと思った」の法律上の違いを説明してくれるわけではありません。ご本人が中国語で聞いて違和感を覚えなければ、そのまま署名に至ります。

通訳人の能力にも幅があります。法律用語を正確に訳せるか、地方の方言を理解できるか、長時間の取調べで集中力を保てるか。捜査機関が手配する通訳人の質は事件ごとに異なり、ご本人が選ぶことはできません。だからこそ、依頼者のために動く通訳、すなわち弁護人側の通訳が接見の場で内容を確認し直すことに意味があります。

読み聞かせと増減変更の申立て(刑事訴訟法198条4項・5項)をどう使うか

読み聞かせは、形式的な儀式ではなく、調書を訂正させる唯一の機会です。同法198条4項は、被疑者が増減変更の申立てをしたときは、その供述を調書に記載しなければならないと定めています。取調官には申立てを記載する義務があり、「後でまとめて直す」「もう作り直せない」と言って拒むことは許されません。

実際の使い方は次のとおりです。読み聞かせが始まったら、一文ごとに区切って訳してもらい、少しでも自分の記憶や言い方と違うところがあれば、その場で「ここは違う」と述べます。特に、日付、時刻、金額、回数、人物の名前といった数値と固有名詞、そして「知っていた」「分かっていた」「思った」「聞いた」「疑わなかった」といった認識に関わる言葉は、一語の違いが故意の有無を分けます。訂正を求めた内容は、調書の末尾や欄外に「被疑者は次のとおり申し立てた」という形で記載されます。

訂正が反映されないまま署名を求められた場合、署名を拒むことができます。「署名しないと帰れない」「署名しないと不利になる」という言葉に根拠はありません。署名を拒んだ事実は記録に残り、後にその調書の信用性を争う際、ご本人が内容に納得していなかったことを示す事情になります。

署名した後で「通訳が間違えた」と争うことはできますか

できますが、容易ではありません。争い方は三つの層に分かれます。第1は証拠能力の問題です。刑事訴訟法322条1項は、被告人の署名又は押印のある供述録取書について、不利益な事実の承認を内容とするとき、又は特に信用すべき情況の下にされたときに限り証拠とすることができると定め、ただし書で、任意にされたものでない疑いがあるときは証拠とすることができないとしています。通訳が著しく不正確で、ご本人が内容を理解しないまま署名させられたといえる場合には、そもそも「被告人の供述を録取した」書面といえるのか、また任意性に疑いがあるのではないかという形で、証拠能力を争うことになります。

第2は信用性の問題です。証拠能力が認められて調書が取り調べられても、その内容が真実かどうかは別に判断されます。通訳を介した調書は、日本語の調書を中国語に訳し戻したときに本人の記憶と食い違う箇所があること、法律用語の訳し方に誤りがあることなどを具体的に指摘して、信用性を減殺していきます。

第3は立証手段の問題です。どちらの層で争うにせよ、「訳が違った」と法廷で述べるだけでは足りず、裏付けが要ります。裁判員裁判の対象事件や検察官の独自捜査事件では、刑事訴訟法301条の2により取調べの録音録画が制度化されており、検察官が調書の任意性を立証する場面で記録媒体の取調べが求められます。録音録画があれば、通訳人が実際にどう訳したかを検証できます。録音録画のない事件では、通訳人を証人として尋問し、訳語の選択や読み聞かせの方法を確認することになります。加えて、接見の際に弁護人と弁護人側の通訳が、ご本人の記憶を中国語で聞き取って記録しておけば、調書との食い違いを時間の経過とともに示す資料になります。

なお、公判では刑事訴訟法175条により、国語に通じない者に陳述をさせる場合には裁判所が通訳人に通訳をさせなければならないとされています。公判の通訳人は裁判所が選任する点で捜査段階の通訳人と異なりますが、法廷での通訳の正確さも、弁護人側の通訳が同席して確認することで担保されます。

署名する前に必ず確認すべきこと

署名前の確認は、後から争うことの何倍も効果があります。確認すべき点を整理します。

  • 調書の全文が、要約ではなく一文ずつ訳されたか。飛ばされた段落がないか。
  • 日付、時刻、金額、回数、人物の名前、場所が、自分の記憶と一致しているか。
  • 「知っていた」「分かっていた」「疑わなかった」「承知の上で」など、認識に関わる言葉が、自分の実際の心理と一致しているか。
  • 自分が述べていない事情や、取調官から示唆されて「そうかもしれない」と答えただけの事情が、断定の形で書かれていないか。
  • 訂正を求めた箇所が、実際に調書に記載されたか。

一つでも納得できない点があれば、増減変更の申立てをするか、署名を保留して弁護人に相談してからにする、と述べてください。取調べは複数回にわたることが通常であり、その日に署名しなければ調書が作れないという事情はありません。

想定される刑事手続の流れと、調書が作られる時期

逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。裁判官が勾留を認めれば原則10日、延長でさらに10日、合計で最大23日間の身柄拘束のうちに、起訴・不起訴が判断されます。

調書は、この期間の全体を通じて作られますが、逮捕直後の弁解録取書、勾留直前の警察官調書、勾留延長後の検察官調書には、それぞれ役割があります。とりわけ検察官が作成する調書は、公判で最も重視される傾向にあり、起訴直前に作られることが多いため、内容の確認に最も慎重を要します。勾留が決まるまでのおよそ72時間はご家族の面会ができず、弁護人だけが接見できます。この間に、どの事実を認め、どの事実を認めないのか、方針を固めることが、調書の内容を左右します。

在留資格への影響:調書は入管の手続でも使われます

調書の内容は、刑事裁判の結論を通じて在留に影響するだけでなく、退去強制の手続でも直接参照されます。入管法63条1項は、刑事手続が行われている外国人について、収容しないまま退去強制の手続を進めることを認めており、入管の違反調査や口頭審理では、警察や検察の作成した供述調書が資料として用いられます。刑事裁判で有罪となった事実は、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。刑の全部の執行猶予は除く)や、薬物事犯の4号チ(刑の軽重を問わない)、別表第一の在留資格で在留する方の特定犯罪を掲げる4号の2(拘禁刑であれば執行猶予でも該当)の該当性を基礎付けます。

さらに、有罪判決に至らない場合でも、調書に記載された事実は、在留期間更新の許可(同法21条3項)の際の素行の評価や、在留資格の取消し(同法22条の4)の判断に影響し得ます。刑事の結論と在留の結論は別々に進みますが、その双方の出発点にあるのが、逮捕直後に署名した調書です。

なぜ起訴前に不起訴処分を最優先の目標にするのか

当事務所は、執行猶予判決ではなく、起訴前の段階で不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いています。調書の問題は、この目標と密接に結び付いています。起訴されてから調書の任意性や信用性を争うのは、既に作られた不利な記録を法廷で覆す作業であり、労力に比して成果が得られにくい場面です。これに対し、起訴前であれば、不利な調書がそもそも作られないように、あるいは事実に即した内容になるように、接見を重ねて助言することができます。

不起訴になれば、有罪判決を前提とする退去強制事由は生じません。反対に、執行猶予が付いたとしても、薬物事犯(入管法24条4号チ)や別表第一在留者の特定犯罪(同条4号の2)の類型では在留を失い得ます。どの類型に当たるのかを逮捕直後に見極め、調書の内容を管理することが、在留を守る最も確実な道です。

逮捕直後に守るべき三つのこと

第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べに先立ってその旨を告げることを求めています。黙秘は、通訳の誤りを防ぐ最も確実な方法でもあります。話さなければ、誤って訳される供述も生まれません。話す内容と話さない内容を方針として整理した上で取調べに臨むことが、調書の内容を左右します。

第2に、早期の私選弁護人の選任です。読み聞かせの場に弁護人は同席できませんが、接見でその日の取調べの内容を聞き取り、翌日の取調べで何を訂正すべきかを助言することはできます。勾留が決まってから動き出すのでは、最も重要な調書が既に作られてしまいます。

第3に、通訳の質です。捜査機関の通訳人は捜査のための通訳であり、ご本人のために動く通訳が別に必要です。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見の場で調書の内容をご本人の言葉で確認し直し、公判では法廷通訳の正確さを確認します。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。中国語の専属通訳とともに接見に赴き、その日に作られた調書の内容をご本人の記憶と照らし合わせ、翌日の取調べに向けた助言を行います。この積み重ねが、不利な調書を作らせない最も確実な方法です。

特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方について、不当な取調べに抗議し、主張と立証を重ねて、全ての事件について不起訴処分を得た事例がございます。取調べの過程を接見で逐一確認し、供述の変遷を作らせなかったことが、この結果の基礎になりました。

また、特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔と脅迫的な状況を明らかにし、犯意がなかったことを主張して不起訴処分を得た事例がございます。「知っていたかどうか」という認識の問題は、調書の一語で結論が変わる論点であり、署名前の確認と接見での聞き取りが決定的な意味を持ちました。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された方について、証拠の徹底した分析と被告人質問、反対尋問を通じて無罪判決を得た事例もございます。捜査段階の供述と客観証拠との食い違いを法廷で明らかにする作業は、調書の信用性を争う場面そのものです。

結語

「通訳がそう訳したのだから自分の責任ではない」という感覚は、自然なものです。しかし、法律は署名押印を「自ら確認した」ことの証しとして扱い、後から覆すには裏付けを要求します。だからこそ、力を注ぐべきなのは署名の前です。一文ずつ訳してもらうこと、認識に関わる言葉を確かめること、納得できなければ訂正を求め、あるいは署名を拒むこと。これらは全て法律が認めている権利であり、行使しても不利益はありません。そして、この権利を実際に使えるよう支えるのが、ご本人のために動く弁護人と通訳です。取調べが始まる前に、ぜひご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):「是通译那样翻译的,笔录不是我的责任」,这种想法对吗|签名盖章的含义、宣读核对与增删变更的申请、事后争议通译错误的方法

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