舟渡国際法律事務所

「会社が雇ったのだから、働いた自分に責任はない」という理解について。資格外活動罪は本人にも成立します

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「会社が雇ったのだから、働いた自分に責任はない」という理解について。資格外活動罪は本人にも成立します

「会社が雇ったのだから、働いた自分に責任はない」という理解について。資格外活動罪は本人にも成立します

2026/09/11

出入国在留管理庁が、外国人の不法就労の摘発を強化するため、今秋から他省庁と合同で立入調査を行う方針を固めたとされています。まず国土交通省と、10月にも解体業者を対象に実施する予定とされ、関係省庁の立入検査に入管の職員が同行し、その場で在留カードを確認するとされます。就労資格のない外国人が確認された場合には、出頭を求めたうえで事業者側の調査に進むとされています。こうした報道に接して、雇ってくれたのは会社なのだから、働いただけの自分に責任はないはずだ、とお考えの方がいらっしゃいます。しかし、その理解は正確ではありません。本記事では、事業者側の責任と本人側の責任が並存する構造を、条文に即して整理いたします。

本記事の要点

  • 事業者側の不法就労助長罪(入管法73条の2)と、働いた本人側の資格外活動罪(入管法70条1項4号、73条)は並存し、事業者が処罰されても本人の責任が消えるわけではありません。
  • 会社が許可を取ってくれていると思っていた、週の上限を知らなかったという説明は、故意や違法性の意識の可能性の問題として位置付けられ得ますが、当然に責任を免れさせるものではありません。
  • 退去強制事由である入管法24条4号イの判断は、刑事責任の判断とは枠組みが異なります。
  • 罰金や略式命令で終わった場合でも、在留期間の更新において素行の善良性(入管法21条3項)の観点から不利に評価され得ます。
  • 給与が未払いのまま摘発された場合でも、労働基準法上の賃金請求権は在留資格の有無にかかわらず失われないと解されています。

事業者が処罰されるのに、なぜ働いた自分まで処罰されるのですか

処罰の根拠となる条文が別々に用意されており、両者は並存する関係にあるからです。一方が処罰されれば他方が免責されるという仕組みにはなっておりません。

事業者の側は、他の外国人に不法就労活動をさせた等の行為について、不法就労助長罪(入管法73条の2)により処罰され得ます。法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科とされています。この罪は入管法24条3号の4の退去強制事由にも対応しており、事業者が外国人である場合には、退去強制の問題も生じます。

他方、働いた本人の側は、資格外活動として処罰され得ます。入管法19条1項の規定に違反して、専ら収益を目的とする業務を運営する活動又は報酬を受ける活動を行った者は、入管法70条1項4号により処罰され、その法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科とされています。専ら型に至らない場合であっても、入管法73条により、1年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はこれらの併科の対象となり得ます。

すなわち、雇った側と働いた側の双方に、それぞれの条文が用意されているということです。会社が悪いのだから自分は関係がない、という説明が捜査機関にそのまま受け入れられるわけではありません。

会社が許可を取ってくれていると思っていました。この説明は通用しますか

その説明が事実であれば、故意の有無や、違法性の意識の可能性という枠組みの中で検討されるべき事柄です。もっとも、そう述べれば当然に責任を免れるというものではありません。

刑事事件においては、故意や過失の有無を論ずることが当然の出発点となります。資格外活動についても、自分が何をしているかをどこまで認識していたのか、認識できる状況にあったのか、確認すべき義務を尽くしたといえるのか、といった点が問題になり得ます。会社から在留カードの提示を求められた記憶があるか、雇用契約書や説明の内容はどうであったか、給与明細や勤怠の記録がどうなっているか。こうした客観的な資料が、認識の内容を裏付ける材料になります。

他方、入管の実務では、退去強制事由の判断に故意や過失は要件とされないとする運用が、長年にわたり踏襲されてきました。松村大介弁護士は、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすべきかという憲法上、行政法上の根本問題として、この実務を問う訴訟に取り組んでまいりました。これは係争中の重要な論点であり、結論を断定できる段階にはありません。ただ、実務的に確かなことが1つあります。刑事事件の段階で故意や過失をきちんと争い、その記録を残しておくことが、将来の入管手続における主張の基礎を成すということです。刑事手続で何も争わないまま終えてしまえば、後の手続で持ち出せる材料が乏しくなります。

週28時間を超えただけでも、退去強制になりますか

上限を超えた事実があれば直ちに退去強制となる、というものではありません。退去強制事由と刑事責任とでは、判断の枠組みが異なります。

入管法24条4号イは、入管法19条1項の規定に違反して、専ら在留資格に属しない収入活動を行っていると明らかに認められる者を、退去強制事由として掲げています。専らという要件と、明らかに認められるという要件が置かれている点が重要です。留学の在留資格をお持ちの方に一般的に与えられる包括的な資格外活動許可には、原則として1週について28時間以内という条件が付されますが、この条件を若干超えた事実があるというだけで、直ちに専ら在留資格に属しない収入活動を行っていると明らかに認められるとは限りません。

もっとも、学業の実態がほとんどなく、就労の時間と収入が生活の中心を占めているという実態が積み重なりますと、評価は変わり得ます。加えて、在留資格の取消し(入管法22条の4)の問題も併存いたします。上限を超えた時間数だけを見るのではなく、在留資格に対応する活動を実際に行っていたかどうかという実態から検討する必要があります。

罰金で済めば、在留期間の更新はできますか

罰金や略式命令で終わった場合でも、在留期間の更新において不利に評価され得ます。刑事手続が終わったことと、在留が認められることは、別の事柄です。

在留期間の更新は、入管法21条3項により、法務大臣が在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるものとされています。更新および変更のガイドラインでは、素行が善良であること、公的義務を適正に履行していることが考慮要素として掲げられており、資格外活動により処罰を受けた事実は、この素行の善良性の評価に関わってまいります。

ここで、罪名の表面ではなく保護法益から考えることが有用です。財産や身体、名誉といった個人的法益を侵害する類型では、示談や被害弁償により反社会性が個別的に解消される余地が広くあります。他方、資格外活動が侵害するとされるのは出入国管理の秩序という社会的法益であり、特定の被害者との示談によって評価が解消される性質のものではありません。したがって、この類型では、示談ではなく、経緯の説明、是正の措置、再発を防ぐ体制、これまでの納税や社会保険の履行状況といった事柄を、資料とともに積み上げていくことが中心になります。

自分から入管に申告した方がよいのですか

一般論として、自ら出頭して申告した場合と、摘発を受けた場合とでは、在留特別許可の考慮において差が生じ得ます。ただし、どちらを選ぶべきかは事案により、必ず有利になると申し上げられるものではありません。

出入国在留管理庁は平成16年以降、在留特別許可の許可事例と不許可事例を年度別に公表しています。これらは行政自身が許可相当と判断した先例であり、同種の事情を有する事案について合理的な理由なく異なる取扱いをすることは、憲法14条1項の平等原則の観点から問題となり得るという主張の根拠になります。公表事例を丁寧に分析し、ご本人の事情と対照して主張を組み立てることが、実務上の要となります。もっとも、公表事例に類似するからといって必ず許可されるというものではありません。

出頭申告の判断は、在留期間の残りの状況、就労の期間と態様、家族の状況、これまでの手続の履行状況等によって変わります。単独で決断される前に、必ず弁護人にご相談ください。申告の内容と時期、提出する資料の順序が、その後の展開を左右いたします。

給料が未払いのまま摘発されました。請求することはできますか

在留資格の有無や資格外活動に当たるかどうかにかかわらず、実際に働いた分の賃金請求権は失われないと解されています。労働基準法は、国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁じており、現に労務を提供した以上、その対価を請求できるという考え方が実務上とられています。

事業者の側が、通報すると言って支払を拒む例が見受けられます。しかし、支払わない理由として在留資格を持ち出すことは、法律上、正当化されるものではありません。労働時間の記録、給与明細、勤務表の写真、仲間との連絡の記録等、証拠になり得るものはできるだけ保全しておいてください。摘発後は、こうした資料の入手が難しくなります。

また、労働基準監督署への相談という手段もあります。ただし、ご自身の在留状況との関係で、相談の順序とタイミングには配慮を要します。刑事手続と入管手続の見通しを踏まえたうえで進めることをお勧めいたします。

想定される刑事手続の流れ

立入調査の現場で在留カードの確認を受け、就労資格がないと判断された場合、出頭を求められることがあります。その場で逮捕される場合もあれば、後日の呼出しとなる場合もあります。逮捕されますと、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。この合計72時間の使い方が、その後の見通しを大きく左右します。

勾留が決定されますと、原則10日間、延長により最大20日間、身柄を拘束したまま捜査が続きます。その終わりに、検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。資格外活動の事案では、刑事手続と並行して、あるいはその後に、入管による違反調査、収容、退去強制の手続が進むことがあります。刑事と入管の2つの手続が並走するという点が、この類型の難しさです。

最初の取調べで、就労の期間、時間数、時給、紹介の経緯、認識の有無について供述を求められます。ここで述べた内容が、その後の入管手続でも参照されます。供述の前に弁護人と方針を確認することが、極めて重要です。

外国人事件特有のリスク(退去強制と在留資格)

入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めており、号によって要件が異なります。4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法等の規定に違反して有罪の判決を受けた者を挙げ、薬物事犯は刑の重さを問わず該当し得ます。4号ニは、旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者を挙げ、旅券法違反は罰金でも該当し得ます。3号の4は、他の外国人に不法就労活動をさせた等の者、すなわち不法就労助長罪(入管法73条の2)に係るものです。4号ロは在留期間の経過後の残留、4号イは資格外活動です。4号の2は、別表第一の在留資格をお持ちの方に限り、一定の特定犯罪を挙げています。

これらに加えて、在留資格の取消し(入管法22条の4)、在留期間の更新の不許可(入管法21条3項、更新および変更のガイドラインにおける素行の善良性)のリスクが併存いたします。執行猶予が付いたから日本に居られる、という理解は正確ではありません。ご自身の在留資格と罪名に即して、どの号が問題となるのかを個別に確認する必要があります。

不起訴処分の重要性(不起訴目標主義)

当事務所は、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くのではなく、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護活動を組み立てます。

入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま、執行猶予なら大丈夫と説明することは、結果として在留資格の喪失につながり得ます。資格外活動の類型は、刑事の処分が軽く見えても、在留の場面で重い帰結を招くことがある典型です。当事務所は、刑事手続の段階から退去強制手続を一体的に視野に入れ、後の入管手続で使える形で記録と資料を整えてまいります。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。就労の期間や認識の有無について、記憶が曖昧なまま述べた内容が、そのまま調書になります。話すかどうか、何を話すかは、弁護人と方針を確認してから決めてください。

第二に、早期の弁護人選任です。逮捕直後は当番弁護士の制度を利用でき、その後、私選または国選の弁護人を選任します。呼出しの段階でご相談いただければ、出頭の前に方針を整えることができます。

第三に、通訳の質です。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、接見から公判まで刑事手続の全般にわたってご利用いただけます。資格外活動の事案では、聞いていた、知らされていた、確認したといった微妙な言い回しが結論を分けますので、通訳の精度は決定的な意味を持ちます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行いません。在留資格に関わる場面では、提携する行政書士と連携し、在留期間の更新、在留資格の変更、資格外活動許可等の手続をあわせてお支えいたします。入管手続についても実績を有しており、事例D-1、事例D-2はその一例です。

事例D-2は、冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。退去強制事由には故意や過失を要しないとする従来の実務に対し、責任主義および過失責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。争点は現在も議論の続く重要論点であり、結論を断定できるものではありませんが、故意や過失を早い段階から争っておくことの実務的意義を示す事案です。

事例D-1は、観光目的で来日された相談者が日本人女性との間にお子さんを授かったものの、在留資格を失い、不法滞在で逮捕、起訴された事案です。婚姻と認知が未了であったため当局から一旦は不受理とされましたが、憲法的な観点から交渉を重ねて婚姻と認知を実現し、国籍国が発行する公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析したうえで、1回の申請で在留特別許可を獲得いたしました。

事例B-1は、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在といった主観的な事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事案です。言われたとおりに動いただけであるという状況が、どのような資料によって裏付けられるのか。この点を丁寧に組み立てる作業は、会社に言われて働いたという資格外活動の事案とも通じるところがあります。

結語

会社が雇ったのだから、働いた自分に責任はない。この理解のまま取調べに臨まれますと、事実関係の説明が中途半端になり、本来であれば有利に働いたはずの事情が記録に残らないまま手続が進んでしまいます。事業者側の責任と本人側の責任は並存いたしますが、本人がどこまで認識していたのか、確認の機会があったのかという事情は、刑事の場面でも、入管の場面でも、なお意味を持ちます。立入調査が強化されるとされる時期であればこそ、供述の前に弁護人にご相談いただき、通訳を確保したうえで臨んでいただきたいと考えております。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):「是公司雇的,打工的我没有责任」这一理解是否成立。资格外活动罪对本人同样成立

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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