舟渡国際法律事務所

「被害者に直接会って謝れば早く済む」は本当か|接触が証拠隠滅・威迫と評価される危険と、弁護人を通す意味

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「被害者に直接会って謝れば早く済む」は本当か|接触が証拠隠滅・威迫と評価される危険と、弁護人を通す意味

「被害者に直接会って謝れば早く済む」は本当か|接触が証拠隠滅・威迫と評価される危険と、弁護人を通す意味

2026/09/13

「本人が反省しているのだから、家族が被害者のところへ行って頭を下げれば、きっと許してもらえる」。逮捕の連絡を受けたご家族から、こうしたご相談を受けることが少なくありません。中国では当事者同士で話を付ける文化が根強く、ご親族が先方の自宅や勤め先を探し当てて謝りに行こうとされることもあります。しかし日本の刑事手続では、この善意の行動が、被疑者ご本人にとって最も避けたい結果を招くことがあります。被害者への直接の接触が証拠隠滅や威迫と評価されると、勾留は長引き、保釈は遠のき、場合によっては別の罪で捜査の対象になります。本記事では、なぜ被害者への接触は弁護人を通さなければならないのか、その理由を条文に即して整理します。

本記事の要点

  • 被害者への直接の接触は、刑訴法60条1項2号の罪証隠滅のおそれや、同法89条4号・5号の保釈除外事由の裏付けとして扱われ、身柄拘束を長引かせる方向に働きます。
  • 被害者の住所や連絡先は、捜査機関が被害者本人の意向を確認したうえで、弁護人に限って伝える運用が定着しており、ご家族が自力で探し出して訪ねることは想定されていません。
  • ご家族が代わりに接触した場合でも、面会の強請や強談威迫は刑法105条の2の証人等威迫罪に当たり得るうえ、被疑者本人の罪証隠滅の一環と評価されます。
  • 示談は、弁護人が被害者の意向を確認し、供述に影響を与えない形で進めてはじめて、検察官の起訴・不起訴の判断(刑訴法248条)で正当に評価されます。
  • 外国人の方の場合、身柄拘束の長期化と有罪判決は在留資格の判断に直結するため、接触の方法を誤らないことが刑事と在留の両面で重要です。

被害者に直接謝りに行くと、なぜ「証拠隠滅」と評価されるのですか

被害者は、事件について最も重要な証拠である供述を持つ人だからです。刑事手続では、被害者の記憶や証言は物証と同じく「罪証」に当たり、これに働きかける行為は、たとえ謝罪の意図であっても、供述を変えさせようとする行為と区別がつきません。刑訴法60条1項2号は、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときを勾留の理由として定めており、被疑者の勾留にも同法207条1項によってこの規定が及びます。被害者を訪ねた事実は、この相当な理由を裏付ける具体的事情として扱われます。

さらに、裁判官が逃亡や罪証隠滅のおそれを認めたときは、刑訴法81条により、弁護人以外の者との接見を禁じ、手紙のやり取りを制限することができます。被害者への接触が発覚すると、ご家族との面会すら認められなくなる接見等禁止の決定につながることがあります。

起訴後の保釈でも同じ構造です。刑訴法89条は、保釈の請求があったときは原則として許さなければならないとしつつ、4号で罪証隠滅のおそれがある場合、5号で被害者やその親族の身体・財産に害を加え、又はこれらの者を畏怖させる行為をするおそれがある場合を除外しています。いったん保釈が認められても、同法96条1項3号・4号は、罪証を隠滅した場合や被害者を畏怖させる行為をした場合に保釈を取り消し、保証金を没取できると定めています。保釈の条件として被害者との接触禁止が付されるのは、同法93条3項が「その他適当と認める条件」を付することを認めているためです。

被害者の住所や連絡先は、どうすれば分かるのですか

結論から申し上げると、被害者の連絡先は弁護人を通じてしか開示されない運用が定着しています。逮捕された方は、被害者の氏名すら正確には知らされていないことが多く、ご家族が知り得る情報は更に限られます。

実務では、弁護人が検察官又は警察官に対し、被害者へ謝罪と被害弁償の申入れをしたい旨を伝え、捜査機関が被害者本人に「弁護人に連絡先を伝えてよいか」を確認します。被害者が承諾した場合に限り、弁護人に対して、被疑者やその家族には伝えないという条件付きで連絡先が開示されます。被害者が拒めば開示されず、その場合は捜査機関を介して謝罪の意向を伝えるにとどまります。

この運用は、被害者の安全と平穏を守るための仕組みです。公判段階では、刑訴法299条の3が、検察官は被害者特定事項が被告人その他の者に知られないよう弁護人に求めることができると定めており、捜査段階の運用もこれと同じ考え方に立っています。ご家族がSNSや知人のつてを頼って被害者を探し出す行為は、この仕組みを迂回するものであり、それ自体が捜査機関と被害者の不信を招きます。

家族が代わりに被害者の家や職場を訪ねるのは、何が危険なのですか

第1に、ご家族自身が刑事責任を問われる危険があります。刑法105条の2は、自己若しくは他人の刑事事件の捜査又は審判に必要な知識を有すると認められる者やその親族に対し、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者を、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定めています。被害者が面会を望んでいないのに自宅の前で待つ、職場に押しかける、断られても繰り返し連絡するといった行為は、この面会の強請に当たり得ます。言葉遣いが丁寧であっても、被害者が畏怖を感じれば強談威迫と評価される余地があります。

第2に、被疑者ご本人の不利益になります。ご家族の行動は、ご本人の意向を受けた罪証隠滅の一環と見られ、勾留延長や接見禁止、保釈却下の理由に使われます。被害者が「加害者の家族が家まで来て怖かった」と供述すれば、それは処罰感情を強める事情として調書に残り、示談の可能性を自ら閉ざすことにもなります。

第3に、ご家族が被害者に対し「取り下げてほしい」「警察には軽く言ってほしい」と頼めば、他人の刑事事件に関する証拠の隠滅を求める行為として刑法104条の証拠隠滅罪の問題も生じます。同条は他人の刑事事件についての証拠隠滅を3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象としており、被疑者本人ではなくご家族に適用されます。

弁護人を通すと、何が変わるのですか

弁護人が窓口になることで、謝罪と被害弁償が「供述への働きかけ」ではなく「被害の回復」として正当に評価される道が開けます。弁護人は、被害者の意向を確認し、被害者が望まない接触を避け、面会するとしても弁護人が同席し、供述内容には一切触れないという枠組みを守ります。この枠組みがあってはじめて、捜査機関も裁判官も、示談交渉を罪証隠滅と切り離して見ることができます。

示談が成立した場合の効果は、検察官の起訴・不起訴の判断に現れます。刑訴法248条は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定めており、被害弁償と被害者の宥恕は「犯罪後の情況」の中心的な要素です。逆に、示談が整わなくても、弁護人が謝罪の意向と弁償の準備を書面で示しておくことは、起訴後の量刑や保釈の判断に生きてきます。

また、弁護人は示談書の内容にも責任を持ちます。宥恕文言、被害届の取下げや告訴取消しの意向、接触しない旨の誓約、清算条項などを、後の紛争を招かない形で整えます。ご家族同士の口約束や、金銭を渡しただけの領収書では、検察官に対して被害回復の実質を説明しきれないことがあります。

被害者と面識がある場合、SNSや電話で謝ってもよいですか

お勧めできません。面識がある事案、たとえば職場の同僚、取引先、知人同士の傷害や暴行、元交際相手に対する事件では、ご本人やご家族が被害者の連絡先を既に知っていることがあります。それでも、釈放後に自分から連絡することは避けるべきです。

理由は2つあります。1つは、連絡の内容が善意であっても、受け取った側が「圧力を感じた」と述べれば、それが供述として記録され、刑訴法89条5号や96条1項4号の事情になることです。もう1つは、メッセージの文面が固定された証拠として残り、ご本人の意図と離れて解釈される危険があることです。「話し合いたい」という一言が、面会の強請と読まれることもあります。連絡先を知っている場合でも、弁護人が先に被害者に接触し、ご本人からの連絡を受け入れる意思があるかを確認してから、内容と方法を決めることが安全です。

なお、元交際相手や配偶者に対する事件では、被害者の側から連絡が来ることもあります。その場合も、返信の前に弁護人にご相談ください。応答の仕方によっては、接触禁止条件への違反やストーカー規制法上の問題に発展し得ます。

想定される刑事手続の流れ

被害者のある事件で逮捕された場合、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。裁判官が勾留を認めると原則10日間、延長されればさらに最長10日間、身柄拘束が続きます。被害者への接触が問題になるのは、この勾留の可否と延長の判断においてです。裁判官は、被害者との関係、住所の近さ、接触の可能性を具体的に見て、罪証隠滅のおそれの有無を判断します。

弁護人が早期に選任されていれば、勾留請求の段階で、被害者に接触しない旨の誓約書、ご家族の監督の誓約、弁護人が示談窓口となる旨の意見書を裁判官に提出し、勾留を争うことができます。勾留が決まった後も、示談の進捗は勾留延長への反対や、起訴前の釈放を求める材料になります。起訴されれば保釈の請求が可能になり、ここでも接触禁止の誓約と示談の状況が判断を左右します。

在留資格への影響

被害者のある事件で有罪となった場合、在留への影響は罪名と刑の重さで異なります。傷害、暴行、詐欺、窃盗などで無期又は1年を超える拘禁刑の実刑を受ければ、入管法24条4号リの退去強制事由に当たります。刑の全部の執行猶予を受けた場合は同号から除かれます。

しかし、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、留学、技能実習などの別表第一の在留資格で在留している方には、同条4号の2があります。同号は、刑法第2編の一定の章の罪、たとえば傷害の罪(第27章)、窃盗及び強盗の罪(第36章)、詐欺及び恐喝の罪(第37章)などにより拘禁刑に処せられた者を掲げており、執行猶予の有無や刑期の長短による除外はありません。被害者のある事件の多くはこれらの章に属しますから、別表第一の方は執行猶予判決でも在留を失う危険があります。

退去強制事由に当たらない場合でも、在留期間更新の許可は入管法21条3項により「更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるときに限られ、有罪判決や長期の身柄拘束による就労の中断は、この判断に影響します。被害者への接触が原因で勾留が長引き、会社を解雇されれば、在留資格の取消し(同法22条の4)の問題も現実になります。

不起訴処分を最優先の目標にする理由

上記の構造から、別表第一の在留資格の方については、執行猶予判決を得ても在留が守られるとは限らず、起訴そのものを避けることが在留を守る最も確実な道になります。当事務所は、逮捕直後から不起訴処分の獲得を最優先の目標に置きます。そして、不起訴に向けた最大の武器が、被害者との適切な示談です。

だからこそ、示談の入口を誤ってはなりません。ご家族の直接接触で被害者の処罰感情が固まってしまえば、弁護人が後から関係を修復するのは容易ではありません。示談は、正しい順序と方法で進めたときに、刑訴法248条の判断で最大の効果を発揮します。

逮捕の連絡を受けたら、まず何をすべきか

第1に、黙秘権の理解です。黙秘権は憲法38条1項が保障し、刑訴法198条2項は取調べに先立って供述を強いられない旨を告げることを義務付けています。被害者との関係や事件の経緯について、記憶が曖昧なまま供述すると、後に被害者の供述と食い違い、それ自体が不利に扱われます。何を話し何を話さないかは、弁護人と方針を決めてからにしてください。

第2に、早期の私選弁護人の選任です。示談の窓口は弁護人しかなく、被害者の連絡先を知る手段も弁護人に限られます。勾留が決まってから動き出すのでは、最も重要な最初の72時間を使い切ってしまいます。そして、ご家族はその間、被害者を探すのではなく、弁護人に本人の生活状況や資力に関する情報を提供することに力を注いでください。

第3に、通訳の質です。捜査機関の通訳は捜査のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場ではありません。示談の場面でも、謝罪の言葉のニュアンス、支払条件の理解、示談書の意味を正確に伝える通訳が不可欠です。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から示談交渉、公判まで一貫して依頼者のために対応します。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。被害者との示談交渉も、事務員任せにせず弁護士自身が行い、被害者の心情に配慮しながら、依頼者の刑事と在留の両面に最善となる形を目指します。

特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方の事案では、不当な取調べに対する抗議と、事実関係の主張立証を重ね、全ての事件について不起訴処分を得ました。身柄拘束が長期化する事案でも、捜査機関との適切な距離を保ちながら防御を尽くすことが結果に結び付きます。

特殊詐欺の出し子とされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔と脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。被害者のある事件でも、示談だけでなく、そもそも犯罪が成立するかという入口の主張を怠らないことが重要です。

在留の面では、在留資格を失い不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知の手続を実現し、入管の過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例があります。刑事事件の帰結が在留に及ぶ場合でも、次の手を用意しています。

結語

被害者に直接会って謝りたいというお気持ちは、反省の表れとして尊いものです。しかし、日本の刑事手続では、そのお気持ちを結果に結び付けるには、正しい順序と方法が必要です。弁護人を通じた謝罪と弁償は、遠回りに見えて、実は最も早く、最も確実に身柄の解放と不起訴に近づく道です。ご家族にできる最善のことは、被害者を探すことではなく、一刻も早く弁護人に状況を伝え、ご本人の生活と将来を守るための準備を始めることです。当事務所は、その最初の一歩からご一緒いたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):「直接去找被害人道歉就能早点了结」是真的吗|接触被害人为何会被视为毁灭证据、威胁,以及通过辩护人的意义

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