舟渡国際法律事務所

【解決事例】有印私文書偽造で執行猶予付き判決を受けたベトナム国籍の方が、日本人の配偶者として在留特別許可を得た事例

お問い合わせはこちら

【解決事例】有印私文書偽造で執行猶予付き判決を受けたベトナム国籍の方が、日本人の配偶者として在留特別許可を得た事例

【解決事例】有印私文書偽造で執行猶予付き判決を受けたベトナム国籍の方が、日本人の配偶者として在留特別許可を得た事例

2026/09/18

2026年9月、当事務所がお手伝いしてきたベトナム国籍の男性(30代)に在留特別許可がされ、「日本人の配偶者等」の在留資格が認められました。男性は、有印私文書偽造・同行使の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けていました。刑事事件の起訴前の段階から入管手続の終わりまで、約1年8か月にわたって同じ弁護士が担当した事案です。ご本人とご家族から書面による同意をいただき、経過をご紹介します。氏名や地域など、ご本人の特定につながる情報は伏せています。

本記事の要点

  • 「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格(入管法別表第一の在留資格)で在留する方が文書偽造の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いていても入管法24条4号の2の退去強制事由に当たります。
  • 本件では、起訴前の弁護活動で窃盗の追起訴を防ぎ、当初の罪名だけで審理されて執行猶予付き判決となりました。
  • 上訴審を経て判決が確定した後に配偶者の帰化が完了し、在留特別許可の審査は「配偶者が日本人の場合」の類型で行われました。
  • 入管の事情聴取では確定判決の認定と整合する説明に整え、口頭審理は請求せずに在留特別許可の判断を受けました。
  • 入管庁が公表している在留特別許可の事例集(平成26年分から令和7年分)を当事務所で確認した限り、偽造系の罪名で有罪となった方に在留特別許可がされた例は見当たりません。

ご相談の経緯

男性は留学生として来日し、国内の大学を卒業した後、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で会社員として働いてきました。在日期間は約13年で、前科前歴はありません。妻もベトナム出身で、日本の専門学校を卒業した後、プログラマーとして働いています。2人は2019年に交際を始め、2021年に結婚しました。結婚の直後に自宅を夫婦の共有名義で購入し、住宅ローンを連帯して返済しています。

2024年、男性は知人から頼まれ、他人名義の委任状を作ってその人の課税証明書を取得しようとしたとして逮捕されました。さらに、税の還付金を口座から引き出した行為についても窃盗の疑いで捜査が進み、追起訴が検討されていました。

刑事段階の弁護活動

窃盗の追起訴を防ぐ

当事務所は、窃盗の嫌疑について、起訴の判断がされる前に、検察官へ不起訴処分を求める意見書を提出しました。帰国する外国人が還付金の受領を国内の知人に委ねることは、納税管理人の制度上も予定されていること、男性には他人の財物を盗む故意がなかったことを、資料を添えて示しました。あわせて、実質的な被害者との示談の用意があることも伝えました。結果として窃盗は起訴されず、有印私文書偽造・同行使の罪だけで審理されることになりました。

この違いは、後の入管手続で大きく効きます。起訴される罪が増えれば量刑は重くなり、1年を超える実刑となれば入管法24条4号リにも当たります。その場合、在留特別許可は入管法50条1項ただし書の「特別の事情」がある場合に限られます。公表事例を見る限り、就労資格などの別表第一の在留資格の方が実刑判決を受け、ただし書により許可された例は見当たりません。

公判

公判では、犯行が知人から頼まれた従属的な関与であったこと、深く反省していること、前科前歴がないことを主張しました。妻が情状証人として出廷し、今後の監督を裁判官の前で誓約しています。2025年5月、懲役1年6月(現行法の拘禁刑に相当)、執行猶予3年の判決が言い渡されました。判決は、妻の監督の誓約を有利な事情として考慮しています。

控訴と上告

判決宣告の際、控訴を申し立てるべき裁判所の告知が通訳されなかったことなどを理由に控訴し、さらに上告しました。いずれも棄却され、判決は2026年2月に確定しました。

入管段階

判決確定から約6週間後の2026年3月、妻の帰化手続が完了し、妻は日本国籍を取得しました。帰化を許可相当とする判断は2025年4月に出ており、ベトナム国籍の離脱手続を待っている状態でした。その9日後に男性の在留期限が過ぎました。男性は逃げ隠れせず、自ら入管に出頭して在留特別許可を申請しました。

申請書では、次の事情を中心に据えました。

  • 日本人配偶者との約4年9か月の婚姻と、2019年からの交際の経過(位置情報付きの写真で裏付け)
  • 刑事公判で妻が監督を誓約し、裁判所がこれを有利な事情として認めたこと
  • 夫婦共有の自宅と住宅ローンの連帯債務、夫婦の安定した収入と納税の実績
  • 約13年の適法な在留と、在留期限経過後の自発的な出頭
  • 前科は執行猶予付きで50条1項ただし書に当たらず、在留カードの偽造のような入管行政の根幹に関わる違反でもないこと

申請から約4か月半後の2026年8月、入国審査官による事情聴取(違反審査)が行われました。審査官は刑事裁判の記録を手元に置き、違法性の認識について尋ねています。午前中の説明が確定判決の認定とずれていたため、昼の休憩時間にご家族を通じて弁護士から助言し、午後に「はっきり違法と認識していたわけではないが、違法の可能性は認識していた。今後は少しでも違法の可能性があることには一切関わらない」と説明を改めました。審査官からは説明が変わった理由を問われましたが、考え直した結果であると率直に答えています。

退去強制事由そのものには争う余地がなかったため、口頭審理は請求せず、違反審査の認定に服して在留特別許可の判断を受けることにしました。事情聴取から35日後の2026年9月、在留特別許可がされました。申請から許可までは約5か月半でした。

この事例から言えること

第1に、就労資格や留学などの別表第一の在留資格の方にとって、執行猶予は在留を守る保証になりません。文書偽造、窃盗、詐欺、傷害などの罪では、執行猶予付きの拘禁刑でも入管法24条4号の2に当たります。刑事段階で罪名と量刑をどこに収めるかが、そのまま入管での出発点になります。

第2に、配偶者の在留資格によって見込みは大きく変わります。公表事例では、配偶者が「技術・人文知識・国際業務」などの別表第一の在留資格で、本人に刑事処分がある事例は、確認できた8件すべてが不許可でした。本件は、審査の時点で配偶者が日本国籍を取得していたため、「配偶者が日本人の場合」の類型で判断されています。

第3に、入管の事情聴取は刑事裁判の記録と突き合わせて行われます。確定判決の認定と食い違う説明は、反省していない、再び同じことをするおそれがある、と受け取られかねません。

第4に、婚姻の実体を示す資料は、公的な手続の中で積み上がったものほど強い証拠になります。本件では、公判での監督の誓約、帰化手続での審査、共有の自宅がそれに当たりました。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所では、刑事事件の初動から入管手続の終わりまで、松村大介弁護士が全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、他の言語は事案に応じて通訳を手配します。在留資格の手続では、提携の行政書士と連携して対応します。

入管手続の解決事例としては、冤罪により不法就労助長に問われ強制退去の危機にあった女性について、退去強制事由にも故意・過失が必要であるとして上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められた事例があります。また、不法滞在で逮捕・起訴された方について、当局との交渉で婚姻と認知の手続を実現し、過去の許可事例の分析を踏まえて在留特別許可を得た事例もあります。

結語

在留特別許可は、入管に出頭した日から始まるものではありません。逮捕された日、あるいは捜査が始まった日から、刑事と入管の両方を見通した弁護が必要です。本件では、追起訴の阻止、公判でのご家族の協力、配偶者の帰化の完了、事情聴取での説明、手続の選択が一つにつながり、許可に至りました。同じような状況にある方は、判決が出る前の段階でご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士/第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)/舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)/中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

他の言語で読む

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

東京にて行政事件に関する対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。