警察から「ご家族からもお話を伺いたい」と言われたら|参考人としての事情聴取に応じる義務、話すべきこと・話してはいけないこと、家族の供述が本人の事件でどう使われるか
2026/09/12
息子さんや夫が逮捕されて数日後、担当の警察官から電話が入り、「一度署に来て、ご家族としてお話を伺いたい」と言われる。あるいは自宅に警察官が訪ねてきて、「ご主人の携帯電話と、部屋にある荷物を預からせてほしい」と求められる。断れば本人に不利になるのではないか、行けば自分も何か疑われるのではないか。中国から急いで来日されたご両親や、日本語に不安のある配偶者の方から、こうしたご相談が繰り返し寄せられます。本記事は、逮捕された本人ではなく、そのご家族が警察から参考人として事情を聴かれる場面に絞って、応じる義務の有無、通訳、話し方、そしてご家族の供述が本人の裁判でどう扱われるのかを整理いたします。
本記事の要点
- ご家族の事情聴取は刑事訴訟法223条に基づく参考人の取調べであり、出頭も供述も任意で、出頭を拒み、出頭後いつでも退去することができます。
- 供述調書に署名する前に、通訳を通じて内容を確認し、誤りがあれば訂正を申し立て、納得できなければ署名を拒むことができます。
- ご家族の供述調書は、公判で刑事訴訟法321条1項2号又は3号の要件を満たす場合に証拠となり得るため、本人に不利な内容が固定される危険があります。
- 本人の携帯電話や荷物の提出は任意提出であり、応じるかどうかは弁護人と相談してから決めるべきで、提出すれば返還まで長期間を要します。
- ご家族が知っている事実と、本人から聞いた話、推測や評価は区別して述べ、事実でないことを述べれば犯人隠避や証拠隠滅の問題が生じ得ます。
家族には警察の事情聴取に応じる義務がありますか
ありません。逮捕された本人の家族であっても、法律上の立場は「被疑者以外の者」、すなわち参考人です。刑事訴訟法223条1項は、捜査に必要があるときは被疑者以外の者の出頭を求めて取り調べることができると定めていますが、同条2項が準用する同法198条1項ただし書により、参考人は出頭を拒むことができ、出頭した後もいつでも退去することができます。警察署に呼び出されても、行かないという選択は法律上認められています。
ただし、2つの点に注意が必要です。第1に、参考人が出頭や供述を拒んだ場合、検察官は、その者が犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められるときに限り、第1回の公判期日前に裁判官に証人尋問を請求することができます(同法226条)。証人として裁判官の前で尋問される段階になると、出頭と証言は義務になります。もっとも、証人には同法147条により、自己の配偶者、三親等内の血族、二親等内の姻族が刑事訴追を受け又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒む権利が認められています。第2に、拒否したこと自体が本人に不利益に扱われることは法律上ありませんが、捜査機関の側で「家族が協力的でない」という印象が生じることは否定できません。応じるかどうかは、本人の弁護人と相談したうえで決めるのが適切です。
日本語に不安があります。通訳は付けてもらえますか
求めることができます。刑事訴訟法223条1項は、捜査機関が通訳を嘱託できることを定めており、日本語での聴取が困難な参考人には通常、警察が手配した通訳が付きます。しかし、その通訳は捜査機関のために働く通訳であり、あなたの利益を守る立場ではありません。
可能であれば、聴取に先立って、本人の弁護人に相談し、質問されそうな事項と答え方の整理をしておくことをお勧めします。弁護人は参考人の聴取に立ち会う法律上の権利を持ちませんが、事前の整理と、聴取後に何を聴かれ何を答えたかの確認は可能です。当事務所では、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、ご家族との打合せにもこの通訳を用いています。
話してよいこと、話してはいけないこと
原則は単純です。自分が直接に見聞きした事実は、正確に話す。本人から聞いた話、他の人から伝え聞いた話、自分の推測や評価は、それとして区別して話すか、話さない。事実でないことは、本人をかばう目的であっても決して言わない。この3点です。
第1の点について。事情聴取で尋ねられるのは、本人の生活状況、収入、交友関係、事件当日の行動、家族との連絡の内容などです。あなたが実際に知っている事実は、隠す必要がありません。本人の普段の働きぶりや家族への支えは、後に情状として弁護人が主張する材料にもなります。
第2の点について。「本人が電話で、自分は騙されただけだと言っていました」という供述は、あなたが直接見た事実ではなく、本人から聞いた話です。これを断定的に述べると、本人の弁解の内容が家族の口から固定されてしまい、後に本人が異なる説明をした場合に、供述の変遷として不利に扱われることがあります。「本人がこう言っていたと記憶しているが、詳しくは知らない」という程度にとどめ、推測で穴を埋めないことが大切です。特に、日付、金額、人数、場所といった具体的な数字は、記憶に自信がなければ「分からない」と答えるべきです。
第3の点について。本人をかばうために、事件当日に一緒にいたと嘘を言う、本人の持ち物を隠す、微信の履歴を消すよう本人の友人に頼むといった行為は、刑法103条の犯人蔵匿等や同法104条の証拠隠滅等に当たる可能性があります。同法105条は、親族が本人の利益のためにこれらの罪を犯した場合に刑を免除することができると定めていますが、これは「免除することができる」であって、罪が成立しないという意味ではありません。何より、家族の嘘が発覚すれば、本人の弁解全体の信用性が損なわれます。本人を守る最善の方法は、嘘をつくことではなく、事実の範囲で話し、話したくないことは話さないことです。
供述調書には署名しなければなりませんか
署名を拒むことができます。刑事訴訟法223条2項が準用する同法198条3項から5項は、参考人の供述を調書に録取できること、調書を閲覧させ又は読み聞かせて誤りがないかを問い、増減変更の申立てがあればその供述を記載しなければならないこと、そして署名押印を求めることができるが拒絶した場合はこの限りでないことを定めています。
調書は、あなたが話した言葉をそのまま書き取ったものではなく、警察官が質問と答えを整理して文章にしたものです。通訳を介した場合、日本語の調書を通訳が中国語に訳して読み聞かせますが、細かなニュアンスが変わっていることは少なくありません。「大体合っている」で署名せず、違うと感じた部分は訂正を求め、それでも納得できなければ署名を断ってください。署名を拒んでも、あなたが不利益を受けることはありません。
家族の供述は、本人の裁判でどう使われますか
ここが最も重要な点です。あなたが署名した供述調書は、本人の刑事裁判において証拠として提出され得ます。刑事訴訟法321条1項は、被告人以外の者の供述を録取した書面について、検察官の面前での供述調書は、供述者が公判で異なる供述をしたときなどに、公判での供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況がある場合に限り証拠とすることができるとし(同項2号)、警察官の面前での供述調書は、供述者が死亡や国外滞在などにより公判で供述できず、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであって、特に信用すべき情況の下にされたものである場合に限り証拠とすることができるとしています(同項3号)。
この構造から、外国人のご家族に特有の危険が見えてきます。3号は「国外にいるため」公判で供述できない場合を含んでいます。中国から一時的に来日したご両親が、警察で調書に署名して帰国した場合、その後の公判で証人として出廷できないことを理由に、警察官の面前での調書が証拠として採用される道が開かれるのです。通常であれば、警察官の面前での調書は、供述者が公判で証言すれば証拠にはなりません。しかし帰国してしまえば、調書の中身が、あなたの意図と異なる形で本人に不利な証拠として残り得ます。来日中に聴取を受ける場合、この点を弁護人と必ず確認してください。
なお、被告人側が証拠とすることに同意した書面は、これらの要件を満たさなくても証拠となり得ます(同法326条)。弁護人は、家族の調書に本人に不利な記載があれば同意しないのが通常ですが、そのためにも調書の存在と内容をあらかじめ把握しておく必要があります。聴取を受けた後は、何を聴かれ、何を答え、署名したかどうかを、できるだけ早く弁護人に伝えてください。
本人の携帯電話や荷物の提出を求められたら
警察官が自宅を訪ね、本人の携帯電話、パソコン、通帳、荷物などを「預からせてほしい」と求めることがあります。これは刑事訴訟法221条の任意提出であり、所有者、所持者又は保管者が任意に提出した物を警察が領置するという仕組みです。任意ですから、断ることができます。断った場合、警察は裁判官の令状を得て差押えを行うことができますが(同法218条1項)、そのためには令状の要件を満たす必要があります。
応じるかどうかは、弁護人と相談してから決めるべきです。提出した物は捜査が終わるまで返還されないことが多く、本人が仕事や生活に必要とする物であれば、その影響は小さくありません。また、携帯電話の中には、本人だけでなく家族や友人との私的なやり取りが含まれています。他方で、本人の無実を裏付ける記録が携帯電話の中にある場合、弁護人がその内容を先に確認し、必要な部分を保全したうえで提出するという方法もあります。その場の雰囲気に押されて渡す前に、弁護人に確認する時間を取ってください。
想定される刑事手続の流れと、家族が動ける時期
本人が逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めれば原則10日、延長でさらに10日、最長23日間の身柄拘束のうちに起訴か不起訴かが決まります。ご家族への事情聴取や荷物の提出の要請は、この勾留期間中に集中します。
逮捕から勾留が決まるまでのおよそ72時間は、ご家族が本人と面会することができません。この間に本人と接することができるのは弁護人だけです。勾留が決まった後も、接見禁止が付けば家族との面会は認められません。刑事訴訟法30条2項は、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹が独立して弁護人を選任できると定めていますので、本人が身柄拘束中で動けなくても、ご家族が弁護人を選任し、弁護人を通じて本人の意思と事件の状況を把握することができます。
在留資格への影響
本人の在留については、罪名と刑の重さによって入管法24条の該当号が変わります。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者は同条4号リに該当しますが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。他方、留学、技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能、家族滞在などの別表第一の在留資格で在留する方については、同条4号の2が、刑法の窃盗、詐欺、傷害などを含む一定の罪により拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、執行猶予を除外していません。薬物事犯は同条4号チにより刑の軽重を問わず該当し得ます。退去強制事由に当たらなくても、在留期間更新の許可は同法21条3項により相当の理由がある場合に限られ、在留資格の取消し(同法22条の4)も別の入口となります。
見落とされがちなのは、ご家族ご自身の在留です。家族滞在の在留資格で在留する配偶者が、事情聴取の中で、資格外活動の許可を受けずに、あるいは許可された週28時間を超えて働いていたことを述べれば、それは家族自身の入管法19条1項違反の供述となります。専ら報酬を受ける活動を行っていると明らかに認められる場合は同法24条4号イの退去強制事由に当たり、同法73条の罪により拘禁刑に処せられれば同条4号ヘに該当します。また、扶養者である本人が退去強制されれば、家族滞在の在留資格はその基礎を失います。事情聴取では本人のことだけでなく家族自身の生活も尋ねられますので、自分自身の在留に関わる事項についても、事前に弁護人と整理しておく必要があります。
不起訴処分を最優先の目標とする理由
上に述べたとおり、別表第一の在留資格の方は、執行猶予付きの判決であっても退去強制の対象となり得ます。したがって当事務所は、執行猶予判決を最終目標に置くのではなく、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えて弁護活動を組み立てます。ご家族の事情聴取は、この目標に直接関わります。家族の供述が本人の弁解と食い違えば起訴の方向に働き、家族の供述が本人の生活の安定と監督の体制を裏付ければ、起訴猶予の判断を支える材料になります。
ご家族にお願いしたいのは、聴取に応じる前に、本人の弁護人と方針を共有していただくことです。何を聴かれるか、どこまで答えるか、身元引受や監督の意思をどう伝えるか。これらを整理したうえで臨む聴取と、何も知らないまま臨む聴取とでは、結果が大きく異なります。
逮捕の連絡を受けたご家族が、まず何をすべきか
第1に、本人の黙秘権を守ることです。憲法38条1項が保障し、刑事訴訟法198条2項が取調べに先立つ告知を求めている権利であり、行使しても不利益に扱われません。ご家族が本人に「全部正直に話しなさい」と伝えたくなる気持ちは自然ですが、記憶が曖昧なまま述べた内容が調書に固定されると、後から訂正するのは容易ではありません。そしてご家族自身についても、参考人の供述は任意であり、話したくないことは話さなくてよいという点は同じです。
第2に、できる限り早く私選の弁護人を選任することです。ご家族は本人と独立して弁護人を選任することができます。勾留が決まるまでのおよそ72時間に本人と接することができるのは弁護人だけであり、ご家族の事情聴取への対応もこの弁護人と相談して決めることになります。
第3に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳は、捜査のための通訳です。「知っていた」と「聞いたことがある」、「働いていた」と「手伝ったことがある」の違いが、訳し方ひとつで変わる場面は少なくありません。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、本人の接見から公判まで、そしてご家族との打合せまで、依頼者のために動く通訳を一貫してご利用いただけます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。ご家族からのご相談も弁護士本人が直接お受けし、事情聴取への対応、身元引受書の作成、面会の段取りまで一体で担当いたします。刑事手続と並行して、提携する行政書士とともに在留資格に関するサポートも行っております。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況に置かれていたこと、犯意が存在しなかったことを主張し、不起訴処分を獲得いたしました。
特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された方の事案では、不当な取調べに対して抗議を重ね、主張と立証を尽くした結果、全件について不起訴処分となりました。ご家族との連絡を絶やさず方針を共有し続けたことが結論につながりました。
在留資格を失い不法滞在で起訴された方の事案では、婚姻と認知の手続を実現させ、入管が公表する過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得いたしました。ご家族の協力なしには実現できなかった事案です。
結語
警察から「ご家族からも話を聞きたい」と言われたとき、応じるか断るかの二択で悩む必要はありません。参考人の聴取は任意であり、応じる場合でも、話す範囲を自分で決め、調書の内容を確認し、署名を拒む権利があります。そして、ご家族の言葉は、本人を守る力にも、本人を追い詰める材料にもなります。その違いを分けるのは、聴取に臨む前に弁護人と方針を共有していたかどうかです。ご家族が最初に取るべき行動は、警察署に向かうことでも、本人の荷物を渡すことでもなく、弁護人に連絡することです。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):警察说“也想听听家属的说法”时怎么办|作为参考人接受事情听取有无义务、什么该说什么不该说、家属的供述在本人案件中会被如何使用
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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