舟渡国際法律事務所

ご家族向け・示談をご家族としてどう支えるか|被害者への連絡、謝罪文、示談金の準備と中国からの送金

お問い合わせはこちら

ご家族向け・示談をご家族としてどう支えるか|被害者への連絡、謝罪文、示談金の準備と中国からの送金

ご家族向け・示談をご家族としてどう支えるか|被害者への連絡、謝罪文、示談金の準備と中国からの送金

2026/09/11

「被害に遭われた方に謝りたいのに、どこへ行けばよいのかも分からない」。ご家族が身柄を拘束された直後、日本にお住まいのご家族からも、中国本土のご家族からも、必ずと言ってよいほど同じお言葉を伺います。ご本人は留置場の中にいて自由に動けず、ご家族は連絡先も知らされない。何もできないまま日だけが過ぎていく、というお気持ちは、痛いほど分かります。もっとも、実際にはご家族にしかできない準備がいくつもございます。本記事では、示談という手続の中で、ご家族という立場から何をどう支えていただけるのかを、順を追ってご説明いたします。

本記事の要点

  • 被害者の方の連絡先は、ご家族が直接知ることができないのが原則です。弁護人が検察官・警察官を通じて被害者の意向を確認し、被害者が同意した場合に限り、弁護人限りという条件で伝えられる運用です。
  • ご家族が独自に被害者を探して接触しようとすることは、罪証隠滅を疑われ、勾留や接見禁止の判断に不利に働き得ます。
  • ご家族にできることは、家族としての謝罪文、身元引受書、被害品の返還や弁償の準備、そして帰国後を含めた生活環境の整備です。
  • 中国本土からの送金は外貨管理の手続に時間と書類を要することがあり、早めに動き始めることが実際の成否を分けます。
  • 示談が成立しても必ず不起訴になるわけではなく、その事件が守ろうとしている利益の性質によって、示談の効き方は異なります。

被害者の方の連絡先を、家族が教えてもらうことはできますか

できないのが原則でございます。捜査機関は被害者の氏名・住所・電話番号を保護しており、加害者側に伝えることはいたしません。これは被害者の安全とプライバシーを守るための当然の扱いです。

示談交渉が可能になる経路は、実務上ひとつに絞られます。弁護人が検察官または警察官に対し、被害者の方に示談の意向を確認していただきたい旨を申し入れます。捜査機関がこれを被害者に伝え、被害者が「弁護士となら話をしてもよい」と同意された場合に限って、弁護人に対してのみ連絡先が伝えられます。この際、弁護人限り、すなわちご本人やご家族には連絡先を開示しないという条件が付されるのが通例です。逆に、被害者の方が接触を望まないという回答であれば、そこで一旦止まります。その場合は、贖罪寄付や供託といった別の形で誠意を示す方法を検討することになります。

つまり、ご家族が「連絡先を教えてもらえない」のは、弁護人の熱意が足りないからではなく、制度がそのように設計されているためです。この点をまずご理解いただきたく存じます。

ご家族が直接連絡を取ろうとすることの危うさ

SNSや共通の知人を通じて被害者の方を探し当て、直接お詫びに伺いたいというお申し出をいただくことがございます。お気持ちは十分に理解できますが、これは強くお止めしております。

第一に、被害者の方にとっては、加害者側の家族が突然現れること自体が新たな恐怖となり得ます。示談に応じる可能性があった方が、これによって態度を硬化させてしまう例は決して珍しくありません。第二に、法的な不利益が生じます。加害者側が被害者に接触したという事実は、罪証隠滅のおそれを基礎づける事情として扱われ、勾留を続けるかどうか、接見禁止を付すかどうかの判断に不利に働き得ます。身柄が長引けば、お仕事も在留資格も、そして家計も、いっそう厳しい状況に置かれます。被害者との窓口は弁護人に一本化する。これは冷たい対応ではなく、示談を成立させるための最も確実な道筋でございます。

では、ご家族には何ができるのか

できることは、想像以上に多くございます。しかも、そのいずれも弁護人が代わりに作ることのできない性質のものです。

  • ご家族としての謝罪文。ご本人が書く反省文とは別に、家族の立場から被害者にお詫びを述べ、今後の監督を約束する書面を作成します。ご本人が留置場の中で書く文章は、どうしても状況が限られます。外にいるご家族が、事件をどう受け止め、これから何をするのかを自分の言葉で書いたものは、検察官にも裁判官にも、そして被害者ご本人にも、確かな重みをもって届きます。
  • 身元引受書。ご家族が同居して監督にあたる、就労先を確保する、通院に付き添うといった具体的な内容を記した書面です。抽象的な決意ではなく、誰が、どこで、どのように監督するのかを具体的に書くほど、勾留や保釈の判断において実際の力を持ちます。
  • 原状回復の準備。被害品が手元にあれば速やかに保全し、弁護人を通じて返還します。売却済み、あるいは費消済みであれば、相当額を弁償できるよう資金を整えます。
  • 生活環境の整備。住居の確保、勤務先との連絡、お子様の就学先の手当て、そして事案によっては帰国後の受入れ先の確認まで含みます。これらは量刑や処分の判断材料であると同時に、その後の在留手続でも問われる事柄です。

書面は分量よりも具体性です。「二度とさせません」という一文よりも、「毎朝一緒に出勤し、勤務先の担当者から週に一度、私宛に連絡をいただく約束をしました」という一文の方が、はるかに強く働きます。

示談金の準備と、中国本土からの送金にかかる時間

示談は、被害者の方の合意が得られたその時に、支払える資金が実際に用意できているかどうかで成否が決まります。合意の見込みが立ってから資金の手当てを始めますと、起訴・不起訴の判断に間に合わないことがございます。

とりわけご注意いただきたいのが、中国本土からの送金です。中国では外貨の持ち出しに関する管理が行われており、まとまった額を国外へ送金する際には、資金の出所や送金目的を示す書類の提出を求められること、また銀行での手続に相応の日数を要することがございます。ご家族が「必要になったらすぐ送れる」とお考えのまま日が過ぎ、いざという段になって手続に時間がかかり、示談の機会を逃すという事態を、私どもは何度も見てまいりました。

したがいまして、事件の見通しがまだ固まっていない段階であっても、資金の準備だけは並行して進めていただくことをお勧めしております。複数回に分けた送金が可能か、必要書類は何かといった点を、早い段階で銀行にご確認ください。なお、資金の出所については後に説明を求められる場面がございますので、記録の残る形で整えていただくことが大切です。

示談書に何を書くか、そして示談すれば必ず不起訴になるのか

示談書は、金額さえ合意すればよいというものではございません。弁護人は、被害者の方のお立場に配慮しながら、次のような条項の入れ方を調整いたします。清算条項、すなわち今回の件について当事者間に他に債権債務がないことを確認する条項。宥恕の文言、すなわち被害者の方が加害者を許し、処罰を望まない旨のお気持ちを述べていただく部分。そして、示談の内容と当事者の情報を公表しないという条項です。宥恕の文言をどこまでお願いできるかは被害者のお気持ち次第であり、無理にお願いすべきものではございません。書き方ひとつで被害者を傷つけかねない場面ですので、ここは弁護人にお任せいただく領域です。

そして、最も誤解の多い点を申し上げます。示談が成立しても、必ず不起訴になるわけではございません。判断を分けるのは、その罪が守ろうとしている利益の性質です。財産、身体、名誉といった被害者個人の利益(個人的法益)を侵害する類型では、示談と被害弁償によって侵害された利益が個別的に回復されますので、反社会性の評価が具体的に和らぐ余地が広くございます。他方、薬物統制の秩序、公衆衛生、出入国管理の秩序、取引の安全といった社会全体の利益(社会的法益)を侵害する類型では、そもそも示談の相手方となる個人の被害者が存在しないか、存在しても示談だけでは素行不良の評価が解消しにくいのが実情です。罪名の表面ではなく、何が守られようとしている利益なのかで考える。これが、示談に力を注ぐべき事件かどうかを見極める基準でございます。

示談の成否が、量刑だけでなく在留にまで及ぶ理由

外国籍の方の事件では、示談の成否が刑事処分の枠を超えて響きます。示談が成立して不起訴となれば、有罪判決という事実そのものが生じません。反対に、示談が間に合わずに起訴され、判決が言い渡されますと、その内容が在留の可否を左右いたします。

入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めております。4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げ、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いております。4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法等に違反して有罪の判決を受けた者を挙げており、薬物事犯は刑の重さを問わず該当し得ます。4号ニは旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者を、3号の4は他の外国人に不法就労活動をさせた等の者(入管法73条の2の不法就労助長罪)を、4号ロは在留期間の経過後の残留を、4号イは入管法19条1項に違反して専ら在留資格に属しない収入活動を行っていると明らかに認められる者を、それぞれ挙げております。加えて、別表第一の在留資格をお持ちの方については、4号の2が一定の特定犯罪を定めております。

ここでご家族に必ずお伝えしていることがございます。「執行猶予が付いたのだから日本に居られる」とは限りません。4号リが執行猶予者を除いているのは事実ですが、それは退去強制事由に当たらないというだけであって、在留資格を保てることを意味しません。在留資格の取消し(入管法22条の4)が別途検討されますし、在留期間の更新は入管法21条3項により法務大臣の裁量に委ねられ、更新・変更のガイドラインが掲げる素行善良の要件が独立に審査されるからです。

だからこそ、当事務所は執行猶予判決の獲得を最終目標に置かず、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先目標として弁護活動を組み立てております。入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま「執行猶予なら大丈夫」とご説明することは、結果として在留資格の喪失につながり得るからです。ご家族に示談の準備を急いでいただくようお願いしているのも、この一点に理由がございます。

中国語で書いた書面は、そのまま提出できますか

中国語で書いていただいて差し支えございません。ご家族が最も正確に気持ちを表せる言語で書かれた文章の方が、内容として優れているのが通例です。ただし、捜査機関や裁判所に提出する際には、日本語の翻訳文を添えるのが通例でございます。翻訳は、単に語を置き換えれば足りるものではなく、法的な文脈を踏まえた訳出が必要です。

当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続の全般にわたってご利用いただけます。ご家族との打合せ、ご本人への接見、書面の翻訳のいずれについても、同じ通訳が一貫して関わりますので、経緯を最初から説明し直していただく必要がございません。

想定される刑事手続の流れ

ご家族が逮捕されますと、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。この合計72時間が、身柄拘束が長期化するかどうかを分ける最初の関門でございます。この段階で弁護人が意見書を提出し、身元引受けの体制を示すことができれば、勾留されずに釈放される可能性が生まれます。

勾留が決まりますと原則10日間、延長されてさらに10日間、身体の拘束が続き得ます。この期間内に検察官が起訴・不起訴を決めますので、示談交渉はこの限られた時間との勝負です。接見禁止が付されている間はご家族が面会できませんが、弁護人はいつでも接見できますので、ご本人の様子やお気持ちをご家族にお伝えすることが可能です。

初動対応で押さえていただきたい3つのこと

第一に、黙秘権の行使です。ご本人は取調べの中で、早く帰りたい一心で、事実と異なる内容の調書に署名してしまうことがございます。弁護人を通じて「弁護士と話すまでは署名しなくてよい」とお伝えするだけで、事態が変わることがございます。

第二に、早期の弁護人選任です。逮捕された方は当番弁護士を1回無料で呼ぶことができますが、当番弁護士は原則としてその1回限りの対応です。示談交渉を含む継続的な活動を求められる場合には、私選弁護人の選任をご検討ください。示談は時間との勝負ですので、選任が1日早いことに実際の意味がございます。

第三に、通訳の質です。接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。通訳の理解が浅いために供述の意味が変わってしまう事態を避けるため、専属の通訳が一貫して関与する体制を整えております。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。示談交渉は、当事務所が長く力を注いできた分野のひとつです。

深夜の盗撮被害の事案では、被害者側の代理人として刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料を支払う内容の示談を成立させました。被害者側に立って交渉した経験は、加害者側の弁護においても大きく活きております。被害者の方が何を求め、どのような伝え方であれば受け入れやすいのかを、実感として理解しているからです。

卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭われた事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得いたしました。刑事手続と民事の交渉を組み合わせて設計するという発想は、示談の場面でも同様に用いております。

また、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在といった主観的な事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。示談だけでなく、ご本人がどのような状況に置かれていたのかを丁寧に描き出すことが、不起訴という結論を導くことがございます。この事案でも、ご家族から伺った生活の実情が、主張を支える重要な材料となりました。

入管手続についても、刑事と切り離さずに扱っております。在留資格を喪失して不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知を実現した上で入管当局の過去の許可事例を分析し、1回の申請で在留特別許可を獲得した事案、冤罪により不法就労助長罪に問われた女性について、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を問う訴訟を提起し、その後入管から在留特別許可が認められた事案がございます。提携の行政書士による在留資格・ビザのサポート体制も備えており、刑事手続の終了後に必要となる申請まで、途切れなくご相談いただけます。

おわりに

ご家族にできることは何もない、と思い込んでしまわれる方が本当に多くいらっしゃいます。けれども実際には、謝罪文を書くことも、身元引受けの体制を整えることも、送金の手続を始めることも、ご家族にしかできないことです。そして、そのいずれもが、起訴・不起訴の判断がされるまでのわずかな期間に間に合わせなければならないものでございます。今日から始めていただけることが必ずございますので、どうか一人で抱え込まずにご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):致家属|家属如何在和解中提供支持:与被害人的联络、谢罪书、和解金的筹备与从中国汇款

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。