ご家族向け・釈放後の生活再建|再就職と在留期間更新での説明、銀行口座と携帯電話の復旧、不起訴処分告知書の取得、入管から呼出しがあったときの対応
2026/09/13
「不起訴で釈放されました。でも、会社は辞めることになり、口座は止まったまま、携帯も解約されていて、来月には在留期限が来ます」。釈放の知らせに安堵したのも束の間、ご家族からはこうしたご相談が続きます。刑事手続が終わっても、勾留中に失われた仕事、止まった口座、切れた携帯電話、そして間近に迫る在留期間の更新は、放っておいて元に戻るものではありません。しかも、外国籍の方の場合、これらは一つ一つ独立した問題ではなく、在留資格の維持という一本の線でつながっています。仕事を失ったままでは更新が通りにくくなり、更新が通らなければ口座も携帯も再契約できない。この連鎖を断ち切るには、順番と期限を意識した手当てが必要です。本記事では、釈放の翌日から何をどの順番で進めるべきかを、ご家族の視点で整理してまいります。
本記事の要点
- 不起訴処分を受けたときは、刑事訴訟法259条に基づいて検察官に告知を請求し、不起訴処分告知書を取得して保管することが、その後のあらゆる手続の出発点になります。
- 勾留中に退職した場合、在留資格によっては14日以内に所属機関の変更を出入国在留管理庁に届け出る義務があり(入管法19条の16)、3か月以上活動しない状態が続くと在留資格取消しの対象になり得ます(同法22条の4第1項6号)。
- 在留期間更新の申請では、逮捕の事実を隠すのではなく、不起訴処分告知書と再就職の証明を添えて経緯を説明する方が、結果として更新の許可に近づきます。
- 銀行口座の凍結と携帯電話の契約解除は、それぞれ別の法律と契約に基づく措置であり、不起訴処分告知書を示して個別に解除や再契約を求める必要があります。
- 入管から呼出しがあったときは、それが違反調査(入管法27条・29条)であるのか、更新審査に伴う事情聴取であるのかを確認し、弁護士の助言を受けてから出頭することが大切です。
不起訴処分告知書とは何ですか。どうやって取得しますか
不起訴処分告知書は、検察官が事件を起訴しない処分をしたことを書面で証明するものです。刑事訴訟法259条は、検察官が公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨を告げなければならないと定めています。この条文に基づいて、ご本人又は弁護人が検察庁に請求すれば、書面で告知を受けることができます。請求しなければ交付されないのが通常ですので、釈放の際に弁護人から検察官に請求しておくのが最も確実です。
この書面が重要なのは、その後の全ての場面で「刑事事件はどうなったのか」と問われたときに、客観的に答えられる唯一の資料だからです。在留期間の更新申請、再就職先への説明、銀行や携帯電話会社への解除の申入れ、いずれにおいても、口頭で「不起訴になった」と述べるだけでは足りません。原本は大切に保管し、必要に応じて写しを提出する形で使います。
なお、不起訴処分告知書には不起訴の理由(嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予)が記載されないのが通常です。理由の区別が意味を持つ場面もありますから、弁護人が検察官に理由を確認し、記録しておくことをお勧めします。
勾留中に会社を辞めることになりました。何をすればよいですか
まず、在留資格に伴う届出の期限を確認してください。技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能などの在留資格で在留する中長期在留者は、契約の相手方である機関との契約が終了したとき、及び新たな契約を締結したときに、その日から14日以内に出入国在留管理庁長官に届け出る義務があります(入管法19条の16第2号)。経営・管理、留学、技能実習などの資格については、所属機関からの離脱や移籍が届出の対象です(同条1号)。勾留中に退職の扱いになっていた場合、期限を過ぎていることが多いのですが、遅れてでも届け出るべきです。届出を怠ったままにすることの方が、後の更新審査で不利に働きます。
次に、再就職です。就労資格の場合、在留資格に該当する活動を継続して3か月以上行わないで在留していることは、正当な理由がある場合を除き、在留資格取消しの事由とされています(入管法22条の4第1項6号)。勾留による離職は「正当な理由」に当たると主張する余地がありますが、その主張を支えるのは、釈放後すみやかに就職活動を再開し、実際に再就職したという事実です。再就職先からは、雇用契約書と在職証明書を受け取り、業務内容が在留資格に該当することを確認しておきます。
元の勤務先が復職を認めてくれる場合には、その旨の証明を得ておきます。復職が難しい場合でも、退職理由を「自己都合」として処理してもらえるか、離職票の記載を確認しておくと、後の説明が整います。ご本人が説明に迷う場面では、弁護人から勤務先へ、不起訴処分告知書を示して事情を説明することも可能です。
在留期間の更新申請で、逮捕されたことをどう説明しますか
隠さないことが原則です。在留期間の更新は、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるものであり(入管法21条3項)、審査では素行が善良であるかどうかが考慮されます。逮捕・勾留の事実が審査の過程で判明する可能性は十分にあり、申請書の記載と食い違えば、それ自体が虚偽申請と評価されて、更新の不許可だけでなく、後の在留資格取消し(同法22条の4第1項)の理由にもなり得ます。
説明の仕方には工夫が要ります。単に「逮捕されたが不起訴だった」と書くのではなく、不起訴処分告知書の写しを添付し、事件の経緯を簡潔に述べ、現在は再就職して在留資格に該当する活動を行っていること、届出義務を履行したこと、納税や社会保険の手続に滞りがないことを、資料とともに示します。不起訴の理由が嫌疑なし又は嫌疑不十分であれば、その旨を弁護人の報告書などで補足することも考えられます。起訴猶予の場合には、事実関係を認めたうえで、被害弁償や再発防止の取組みを示す方向になります。
在留期限が迫っている場合には、期限内に申請することを最優先してください。申請が受理されれば、審査中は期限を過ぎても在留を続けることができます。書類が揃わないからといって申請を遅らせることは、最も避けるべき選択です。当事務所では、提携する行政書士とともに、更新申請の書類の整え方と説明文の内容を弁護士の立場から確認しております。
銀行口座が止まり、携帯電話が解約されていました。元に戻せますか
戻せる場合が多いのですが、それぞれ根拠が異なるため、個別に対応する必要があります。
銀行口座については、詐欺などの犯罪に利用された疑いのある口座について、金融機関が取引を停止する仕組みがあります。犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律に基づく手続が進むと、預金保険機構の公告を経て口座の預金に関する権利が消滅することがありますので、放置は禁物です。不起訴処分告知書と身分証明書を持参して金融機関の窓口に申し出て、凍結の解除又は残高の返還を求めます。金融機関によっては、警察からの連絡を根拠に凍結している場合があり、その場合には警察への確認を求める必要があります。弁護人が金融機関と連絡を取る方が、話が早く進むことも少なくありません。
携帯電話については、料金の不払いによる契約解除と、犯罪利用の疑いによる利用停止とがあります。勾留中に料金が引き落とせず解除されていた場合は、未払い分を精算すれば再契約できることが一般的ですが、同じ番号を回復できるとは限りません。新規契約には在留カードの提示が求められ、在留期限が残り少ないと契約を断られることがありますので、更新申請の受理を先に済ませてから手続する方が円滑です。
このほか、住民税や国民健康保険料の納付が勾留中に滞っていることがあります。更新審査で納税状況が確認されますから、区役所や市役所の窓口で未納分を確認し、分割納付の相談を含めて早めに整えておくことをお勧めします。
身元保証人を頼まれました。何をする人ですか
在留期間の更新や在留資格の変更、在留特別許可の手続では、身元保証人の書面が求められることがあります。入管手続における身元保証人は、ご本人の滞在費、帰国旅費、法令の遵守について責任を持つ旨を約束する立場であり、民事上の保証人のように金銭債務を直接負うものではありません。ただ、審査においては、日本に安定した生活基盤を持つ人が保証しているという事実が、ご本人の定着性を示す資料として評価されます。
刑事手続の段階で身元引受人となったご家族や勤務先の方に、そのまま入管手続の身元保証人もお願いする形が自然です。身元保証人の側にも、ご本人の状況を正確に理解していただく必要がありますから、不起訴処分告知書を示し、その後の再就職の状況を伝えたうえで依頼することをお勧めします。
入管から呼出しがあったときの対応
釈放後しばらくして、出入国在留管理庁から出頭を求める連絡が来ることがあります。このとき最初に確認すべきは、その呼出しの性質です。入国警備官は、入管法24条各号の退去強制事由に該当すると思料する外国人について違反調査をすることができ(同法27条)、必要があるときは容疑者の出頭を求めて取り調べ、供述を調書に記載します(同法29条)。これは退去強制手続の入口に当たる調査であり、更新申請に伴う通常の事情聴取とは意味が異なります。
不起訴処分を受けている場合、刑法の一定の罪について拘禁刑に処せられたことを要件とする入管法24条4号の2や、1年を超える拘禁刑を要件とする4号リには当たりません。しかし、資格外活動や不法就労助長のように、刑事処分の有無とは別に退去強制事由該当性が問題になる類型もあり、その場合には不起訴であっても違反調査が行われることがあります。
入管の取調べでも、供述は調書として残り、その後の手続で繰り返し参照されます。刑事手続で述べた内容と入管での供述が食い違えば、いずれかが虚偽であると評価されかねません。出頭前に弁護士に相談し、刑事手続での供述内容を踏まえて何をどう述べるかを整理しておくこと、必要に応じて弁護士が同行することをお勧めします。なお、当事務所は、退去強制事由の該当性を判断するに当たって故意や過失を要するかという論点について、冤罪により不法就労助長罪に問われた依頼者の事案で訴訟を提起し上訴審まで争った経験があります。同じ方について、その後、在留特別許可が認められました。この論点は議論の途上にあり結論を断定することはできませんが、入管の調査段階から刑事事件での故意・過失の主張を一貫させておくことは、後の手続の基礎になります。
想定される刑事手続の流れと、釈放の形の違い
逮捕後、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。勾留は原則10日、延長で最大20日となり、その間に起訴・不起訴が決まります。釈放には、勾留されずに釈放される場合、勾留満了時に不起訴で釈放される場合、処分保留のまま釈放される場合、起訴後に保釈される場合があり、それぞれ意味が異なります。
特に処分保留での釈放は、事件が終わったことを意味しません。検察官の判断が続いており、後日呼出しを受けて起訴されることもあります。この状態では不起訴処分告知書は交付されませんので、弁護人を通じて検察官に処分の見通しを確認しつつ、不起訴に向けた意見書の提出を続けることになります。生活再建の手続も、処分が確定していないことを前提に進める必要があります。
在留資格への影響
釈放後の在留に関わる規定を整理します。退去強制事由のうち、入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、刑の全部の執行猶予を受けた者を除きます。別表第一の在留資格の方については、同条4号の2が、刑法の一定の章の罪などにより拘禁刑に処せられた場合を、執行猶予の有無を問わず対象としています。不起訴処分であればこれらには当たりませんが、在留期間更新の許可は法務大臣の判断に委ねられており(同法21条3項)、逮捕の事実と再就職の状況が審査に影響します。
また、在留資格の取消し(同法22条の4第1項)は、有罪判決とは無関係に、在留資格に該当する活動を継続して3か月以上行っていないこと(6号)や、虚偽の申請(1号から4号)を理由として行われます。釈放後の生活再建は、この取消事由を作らないための作業でもあります。取消しに当たっては意見聴取の機会が設けられますので(同条2項)、通知を受けたときは弁護士に相談してください。
なぜ不起訴処分を最優先の目標にするのか
本記事で述べた生活再建の手続は、いずれも不起訴処分告知書を出発点としています。逆に言えば、起訴されて有罪判決を受けた場合、たとえ執行猶予が付いたとしても、別表第一の在留資格の方は罪名によって入管法24条4号の2に該当し、更新申請の前に退去強制手続が始まることになります。当事務所が起訴前の段階から不起訴処分を最優先の目標に据えているのは、刑事手続の結果が、その後の在留と生活の全てを決めてしまうからです。釈放後の手続をどれほど丁寧に進めても、有罪判決という前提があれば、その効果は限られてしまいます。
逮捕の連絡を受けたときの初動の三点
釈放後の生活再建を見据えるなら、逮捕直後の対応が全てを左右します。第1に、黙秘権です。憲法38条1項と刑事訴訟法198条2項に基づく権利であり、取調べの初期に作られた供述調書は、不起訴の可否だけでなく、後の入管の調査でも参照されます。第2に、早期の私選弁護人の選任です。不起訴処分告知書の請求、勤務先や金融機関への説明、入管手続の準備は、いずれも刑事手続の途中から始めておくべき作業であり、弁護人が早く関与するほど釈放後の再建は速く進みます。第3に、通訳の質です。捜査機関の通訳は捜査のための通訳です。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、接見から釈放後の各手続まで、ご本人の立場で言葉を伝えます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。中国語の専属通訳が常駐し、釈放後の勤務先・金融機関・入管との連絡もご本人の言葉で正確に行える体制を整えています。提携する行政書士とともに、在留期間更新や在留資格変更の申請も一体で支援いたします。
在留資格を失い不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知の手続を実現させ、入管の過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例がございます。刑事手続と在留の手続を一体として設計することの意味を示す事案です。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方について、不当な取調べへの抗議と主張立証により全件不起訴処分を獲得した事例もございます。複数の事件が並行する場合、全件について不起訴処分告知書を揃えることが、その後の在留期間更新での説明の土台になります。
結語
釈放は終わりではなく、生活を立て直す作業の始まりです。不起訴処分告知書を取得し、届出の期限を守り、再就職の証明を整え、更新申請を期限内に出し、口座と携帯電話を一つずつ復旧させる。順番と期限を意識して進めれば、これらは着実に片付いていきます。そして、入管から呼出しがあったときにも、刑事手続で貫いてきた主張を土台に、落ち着いて対応することができます。ご家族が今できることは、ご本人の手元にある書類を整理し、期限を書き出し、迷う点を弁護士に確認することです。当事務所は、釈放の翌日からの再建についても、ご本人とご家族に伴走してまいります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):写给家属・释放后如何重建生活|再就职与在留期间更新时的说明、银行账户和手机的恢复、不起诉处分告知书的取得、接到入管传唤时的应对
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------