舟渡国際法律事務所

ご家族向け・本人が妊娠中、出産直後、持病があるときの身柄解放|勾留の執行停止(刑訴法95条)、留置施設と拘置所の医療、ご家族が用意すべき診断書などの資料

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ご家族向け・本人が妊娠中、出産直後、持病があるときの身柄解放|勾留の執行停止(刑訴法95条)、留置施設と拘置所の医療、ご家族が用意すべき診断書などの資料

ご家族向け・本人が妊娠中、出産直後、持病があるときの身柄解放|勾留の執行停止(刑訴法95条)、留置施設と拘置所の医療、ご家族が用意すべき診断書などの資料

2026/09/13

「妻は妊娠7か月で、毎週病院に通っていました。警察に捕まってから薬も検診もどうなっているのか分かりません」。逮捕の連絡を受けたご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。ご本人が妊娠中である、出産して間もない、糖尿病や心臓病、精神疾患などの持病があって薬が欠かせない。そうした事情があるとき、身柄の拘束を続けることが許されるのか、施設の中でどのような医療を受けられるのか、外の病院にかかれるのか。刑事訴訟法には勾留の執行停止という制度があり、留置施設や拘置所には医療に関する法律上の義務がありますが、いずれもご家族が資料を整え、弁護人が申立てをして初めて機能します。制度の枠組みと、ご家族が今日から準備できることを整理してまいります。

本記事の要点

  • 裁判所は、勾留されている方を親族などに委託し、又は住居を制限して、勾留の執行を一時的に停止することができ(刑事訴訟法95条1項)、この規定は起訴前の被疑者にも同法207条1項により適用されます。
  • 出産、手術、入院が必要な治療は、勾留の執行停止が認められる典型的な場面であり、期間と出頭すべき日時・場所を指定して認められます(同法95条2項・3項)。
  • 留置施設と拘置所には、社会一般の医療水準に照らした医療上の措置を講じる義務があり、本人が指名する外部の医師による診療を自費で申請する制度もあります。
  • 勾留の理由や必要がなくなったときは勾留の取消し(同法87条)を、起訴後であれば保釈(同法88条)を、それぞれ執行停止と並行して検討します。
  • ご家族が用意すべき資料は、主治医の診断書、母子健康手帳の写し、処方薬の情報、受入先の上申書、身元引受書であり、弁護人が申立書に添えて提出します。

勾留の執行停止とは何ですか。妊娠や病気で認められますか

勾留の執行停止は、勾留の裁判そのものは維持したまま、その執行だけを一時的に止めて身柄を解放する制度です。刑事訴訟法95条1項は、裁判所が適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができると定めています。条文は被告人について書かれていますが、同法207条1項により、勾留を請求された被疑者についても裁判官が同一の権限を持ちますから、起訴前の段階でも申立てが可能です。

執行停止が認められる典型的な場面は、出産、手術、入院を要する治療、近親者の危篤や葬儀など、身柄を拘束したままでは対応できない事情がある場合です。妊娠中の方については、出産予定日が近い、切迫早産などの合併症があって安静と継続的な診療が必要である、といった事情が該当し得ます。出産直後の方については、産後の身体の回復と授乳、新生児の養育の必要が考慮されます。持病のある方については、施設内での対応が困難な治療、専門医による継続的な管理、透析や定期的な検査の必要などが根拠になります。

執行停止には期間を指定することができ(同法95条2項)、指定する場合には終期を日時で定め、その日時に出頭すべき場所を指定しなければなりません(同条3項)。必要があれば期間を延長することもできます(同条4項)。したがって、出産のために2週間、手術と術後の経過観察のために1か月、といった形で申し立てるのが一般的で、終期には自ら出頭して再び勾留に服することが前提です。

裁判官が重視するのは、医療上の必要性が客観的な資料で裏付けられているか、解放中の逃亡や罪証隠滅のおそれが受入先や監督者によって抑えられているか、の2点です。

留置施設・拘置所ではどのような医療を受けられますか

逮捕・勾留された方は、多くの場合、起訴されるまでは警察署の留置施設に、起訴後は拘置所に収容されます。いずれについても、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が医療に関する義務を定めています。

留置施設については、被留置者の健康を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な措置を講ずるものとされ(同法199条)、留置開始時に健康状態を聴取し、おおむね1か月に2回、委嘱する医師による健康診断を行うこと(同法200条)、負傷し又は疾病にかかっているとき、若しくはその疑いがあるときは速やかに医師による診療を行うこと(同法201条)が定められています。拘置所などの刑事施設についても同様に、社会一般の医療水準に照らした措置(同法56条)と、負傷・疾病時の速やかな診療(同法62条)が定められています。

妊産婦については、刑事施設に関して特別の定めがあります。同法65条1項は、老人、妊産婦、身体虚弱者その他の養護を必要とする被収容者について、その事情に応じ、傷病者のための措置に準じた措置を執るものとし、同条2項は、被収容者が出産するときは、やむを得ない場合を除き、施設の外の病院、診療所又は助産所に入院させるものとしています。つまり、施設の中で出産させることは原則として予定されておらず、外部の病院への入院が法律上の原則です。

ただし、どの医師が診るか、どの薬が処方されるかは施設側の判断に委ねられており、これまで服用していた薬がそのまま処方されるとは限りません。ご本人が「薬が変わって具合が悪い」と訴えているときは、弁護人を通じて主治医の診断書と処方内容を施設に伝え、対応を求める必要があります。

外の病院や、かかりつけの医師に診てもらうことはできますか

制度上は可能です。留置施設については、負傷し又は疾病にかかっている被留置者が、留置業務管理者の委嘱する医師以外の医師を指名して診療を受けることを申請した場合に、傷病の種類や程度、留置前にその医師の診療を受けていたことなどに照らして医療上適当と認めるときは、留置施設内又は適当と認める病院・診療所で、自費によりその診療を受けることを許すことができると定められています(同法202条1項)。刑事施設についても同趣旨の規定があり、施設内で自費により指名医の診療を受けることを許すことができるとされています(同法63条1項)。

この制度を使うには、施設側に「医療上適当」と認めてもらう必要があります。同じ産科医に通っていた、専門医が継続的に管理していたという事情はこの判断を後押ししますので、主治医が往診や情報共有に応じてくれるかを、あらかじめご家族から確認しておいてください。

また、施設側の判断で外部の病院への通院や入院が行われることもありますが、日常的な検診や継続治療について当然に外部通院が認められるわけではありません。外部での継続的な治療が不可欠であるならば、勾留の執行停止や取消しによって身柄を解放する方向で申し立てる方が確実です。

勾留の執行停止以外に、身柄を解放する手段はありますか

あります。事情に応じて並行して検討します。

第1に、勾留の取消しです。刑事訴訟法87条1項は、勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、配偶者、直系の親族などの請求により、又は職権で、勾留を取り消さなければならないと定めています。勾留は、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかを要件としますから(同法60条1項)、妊娠中や重い持病で行動が制約されている方については、逃亡のおそれが低いと主張する余地があります。取消しは勾留そのものを終わらせるものですから、認められれば解放は継続的なものになります。

第2に、保釈です。ただし、保釈は勾留されている被告人について認められる制度であり(同法88条1項)、起訴前の被疑者には適用されません(同法207条1項ただし書)。起訴後であれば、保釈保証金を納めて解放を求めることができ、健康上の事情は保釈の判断において考慮される事情になります。

起訴前の段階では、検察官に対して勾留延長を請求しないよう働きかけることや、そもそも勾留請求をしないよう求めることも、弁護人の重要な仕事です。妊娠中や持病のある方については、在宅で捜査を続けることが可能であると検察官に示すことが、最も早い解放につながる場合があります。

ご家族が用意すべき診断書などの資料

裁判官や検察官を動かすのは、訴えの切実さそのものではなく、裏付けとなる客観的な資料です。次のものをできる限り早く集めてください。

  • 主治医の診断書。病名、現在の治療内容、服薬の内容と用量、今後の治療の予定に加えて、身柄拘束を続けた場合に予想される健康上の危険、外部の医療機関での継続治療の必要性を、医師の言葉で具体的に書いてもらうことが重要です。妊娠中であれば、妊娠週数、出産予定日、合併症の有無、安静や定期検診の必要性を含めます。
  • 母子健康手帳の写し、通院記録、検査結果、処方箋やお薬手帳の写し。これまでの治療の経過を示す資料は、診断書の内容を裏付けます。
  • 服用中の薬の名称と用量が分かる資料。薬そのものを差し入れられるかは施設の判断によりますが、施設の医師が処方を判断する際の材料になります。
  • 受入先の上申書。執行停止や取消しの後にご本人がどこで生活し、誰が監督し、通院にどう付き添うのかを、受入先となる配偶者や親族が書面で示します。住所、連絡先、ご本人との関係、監督の方法、出頭日時に必ず同行する旨を記載します。
  • 身元引受書。受入先の方が身元引受人として署名します。日本語で作成する必要がありますので、弁護人が案文を用意し、ご家族に内容を確認していただく形が一般的です。

これらの資料は、弁護人が申立書や検察官宛ての意見書に添付して提出します。診断書の取得には日数がかかりますので、逮捕の連絡を受けたその日に主治医への依頼を始めてください。

想定される刑事手続の流れ

逮捕後、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを決めます。勾留が認められると原則10日間、延長されれば最大でさらに10日間の身柄拘束が続き、その間に起訴・不起訴が判断されます。妊娠中や持病のある方については、この最初の72時間のうちに健康上の事情を検察官と裁判官に伝えることが、勾留そのものを避ける最善の機会です。

勾留された後は、執行停止や取消しの申立てを行いつつ、施設内の医療について弁護人が施設と交渉します。起訴されれば拘置所に移送され、保釈の請求が可能になります。接見禁止が付されればご家族は面会できず、ご本人の健康状態を外から把握できるのは弁護人の接見だけになります。

在留資格への影響

ご本人が外国籍の場合、身柄の問題と並行して、在留資格の問題が進行します。妊娠や病気という事情は在留の判断で直ちに有利に働くものではなく、退去強制事由の該当性は罪名と刑によって決まります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、刑の全部の執行猶予を受けた者を除いています。他方、別表第一の在留資格の方については同条4号の2があり、刑法の一定の章の罪などにより拘禁刑に処せられた場合は、執行猶予が付いても該当し得ます。薬物事犯については同条4号チがあり、刑の軽重を問わずに該当し得ます。どの号が問題になるかは、被疑事実の罪名によって決まります。

さらに、勾留が長引いて就労や就学ができない期間が続くと、別表第一の資格については、本来の活動を継続して3か月以上行っていないことを理由とする在留資格の取消し(入管法22条の4第1項6号)が問題になり得ます。在留期間の更新も、法務大臣が相当の理由があると認めるときに限り許可されるものであり(同法21条3項)、逮捕された事実は素行の評価に影響します。身柄の早期解放は、ご本人の健康のためであると同時に、在留資格の維持のためにも意味を持ちます。

なお、ご本人が日本人や永住者と婚姻している場合や、生まれてくるお子さんが日本国籍を取得する場合には、身分関係の手続を刑事手続と並行して進めておくことが、後の在留の判断に大きく関わります。

なぜ不起訴処分を最優先の目標にするのか

当事務所は、身柄の解放と並行して、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えて弁護活動を組み立てております。理由は、罪名によっては執行猶予付きの判決でも退去強制事由に該当し、在留を失い得るからです。健康上の事情は、身柄の解放を求める根拠になるだけでなく、犯人の境遇や犯罪後の情況として、起訴猶予の判断(刑事訴訟法248条)においても考慮されるべき事情です。診断書や受入先の資料は、身柄解放の申立てと不起訴の意見書の双方に用いることができますから、ご家族に集めていただいた資料は二重に活きてまいります。

逮捕の連絡を受けたときの初動の三点

第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べに先立つ告知を求めています。体調が優れない中での取調べでは、早く終わらせたい一心で捜査官の言葉に沿った調書に署名してしまう危険があります。体調不良を理由に取調べの中断や休憩を求めることは正当な権利であり、その場で無理に答える必要はありません。

第2に、早期の私選弁護人の選任です。ご家族は、ご本人と独立して弁護人を選任することができます(同法30条2項)。勾留の執行停止も取消しも、弁護人が申立てをして初めて動き出しますし、施設との医療上の交渉も弁護人が行います。勾留が決まってから動き出すのでは、勾留を避ける最初の機会を失います。

第3に、通訳の質です。症状の説明や薬の名称は、通訳の正確さがそのまま健康に関わります。捜査機関の通訳は捜査のための通訳であり、ご本人の体調を施設に伝えるために動く立場ではありません。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見の場でご本人の体調を正確に聞き取り、施設や裁判所への申立てに反映させています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、ご本人の健康状態の聞き取りから、ご家族との連絡、施設との交渉まで、一貫して対応いたします。提携する行政書士とともに、在留資格の維持に向けた手続も並行して進めます。

若い女性の依頼者の事案では、特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況に置かれていたこと、犯意がなかったことを主張立証し、不起訴処分を獲得いたしました。ご本人の置かれていた境遇を具体的な資料で示すことが、身柄の解放と処分の判断の双方を動かした事案です。

身分関係の手続を刑事手続と並行して進めた事案として、在留資格を失い不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知の手続を実現させ、入管の過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例がございます。妊娠や出産を控えたご本人の事案では、お子さんの身分関係を早期に整えることが、その後の在留の判断を左右します。

このほか、国際的な刑事事件や裁判員裁判対象事件への対応経験があり、中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。

結語

妊娠中の方、出産直後の方、持病のある方が身柄を拘束されたとき、法律は、施設の医療上の義務、外部の医師による診療、勾留の執行停止、勾留の取消し、保釈という複数の手段を用意しています。しかし、いずれも申立てと資料があって初めて動く仕組みです。ご家族にできることは、心配して待つことではなく、主治医に診断書を依頼し、通院記録と処方の情報を集め、受入先として名乗り出る準備を整えることです。それらの資料を受け取った弁護人が、身柄の解放と不起訴の双方に向けて動き出します。ご本人の健康と、生まれてくるお子さんの生活を守るために、今日できることから始めていただければと思います。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):写给家属・本人怀孕、刚生产或有慢性病时如何争取释放|勾留执行停止(刑诉法95条)、留置设施与拘置所的医疗、家属应准备的诊断书等资料

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