ご家族向け・身柄拘束中のお金の問題。家賃、携帯電話、口座、お子さんの学費をどう止めないか
2026/09/11
ご家族が警察に連れて行かれ、面会もできないまま数日が過ぎる。そのようなとき、多くのご家族が最初に直面されるのは、法律の難しい議論ではなく、来月の家賃をどう払うか、携帯電話が止まってしまわないか、子どもの学費の引き落としに間に合うか、という生活そのものの問題です。刑事手続の見通しは弁護人が引き受けます。他方で、生活のインフラは、待っていれば誰かが守ってくれるというものではありません。本記事では、ご本人が身柄を拘束されている間のお金と生活の問題について、日本にお住まいのご家族にも、中国本土にいらっしゃるご家族にも役立つ形で、実務上の考え方を整理いたします。
本記事の要点
- 逮捕や勾留それ自体を理由として預金口座が当然に凍結されるわけではありませんが、事件の内容によっては、金融機関の判断や、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(振り込め詐欺救済法)に基づく取引停止が行われることがあります。
- ご家族であるという理由だけで本人名義の口座から自由に引き出せるわけではなく、弁護人を通じた意思確認や委任の可否を、金融機関ごとに個別に検討する必要があります。
- 家賃や携帯電話料金の滞納そのものよりも、税や社会保険料の滞納が、後の在留期間の更新等の審査において不利に働き得ます。
- お子さんの就学は、保護者の在留資格の状況とは別に継続し得ます。学校、教育委員会、福祉の各窓口に早めにご相談ください。
- 押収された在留カード、旅券、携帯電話の還付、差入れ、弁護士費用の送金は、いずれも手順と時間を要します。逮捕の直後から並行して進める必要があります。
家族が逮捕されると、銀行口座は凍結されてしまうのですか
逮捕や勾留それ自体を理由として、預金口座が当然に凍結されるわけではありません。捜査機関が金融機関に対して口座を止めるよう指示する制度が一般的に存在するわけでもありません。
もっとも、事件の内容によっては、金融機関が自らの判断で取引を制限することがあります。とりわけ、他人からの振込みを受ける口座が事件に用いられたとされる場合には、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律、いわゆる振り込め詐欺救済法に基づき、金融機関が取引の停止等の措置を執ることがあります。この措置は、刑事手続の結論を先取りするものではなく、被害の申告や捜査機関からの情報提供を端緒として、金融機関が疑いの有無を判断して行うものです。したがって、後に不起訴処分となった場合でも自動的に元に戻るとは限らず、金融機関に対する説明と資料の提出が必要になることがあります。
加えて、口座が使える状態かどうかと、実際にお金を動かせるかどうかは別の問題です。キャッシュカードや通帳、携帯電話が押収されている場合には、凍結されていなくても、事実上、引き出しも振込みもできない状態になります。まずはご家族の側で、どの支払がいつ、どの口座から落ちるのかを一覧にしてみてください。それが最初の一歩になります。
本人の口座から家賃を払いたいのですが、家族が代わりに手続できますか
ご家族であるという理由だけで、本人名義の口座から自由に引き出せるわけではありません。金融機関は本人確認を厳格に行いますので、代理人による払戻しには、本人の意思に基づく委任状や本人確認書類等が求められるのが通常です。
ご本人が身柄を拘束されている状況では、こうした書面を整えること自体に手間がかかります。実務上は、弁護人が接見の機会にご本人の意思を確認し、必要な書面の作成に立ち会うという方法を検討いたします。ただし、代理払戻しに応じるかどうかは金融機関ごとに取扱いが異なり、応じない場合もあります。過度な期待をせず、次に述べる代替手段を同時に用意しておくことが現実的です。
検討の順序としては、第一に、支払を止めない工夫です。家賃であれば、賃貸人や管理会社に事情を説明し、支払時期の猶予を相談します。連絡がないまま滞納が続くことが、最も関係を悪化させます。第二に、支払の主体を変える方法です。ご家族名義の口座からの立替払いに切り替え、後日ご本人と精算するという整理が可能な場合があります。第三に、契約自体の見直しです。使っていない有料の契約や、拘束中は不要となるサービスは、この機会に解約を検討してください。
他方で、安易にご本人のキャッシュカードを使うことは避けていただきたいところです。ご本人の承諾があったとしても、拘束されている状況では承諾の存在自体を後から証明しにくく、親族間であっても紛争の種になり得ます。金額と使途を記録し、領収書を保管しておくことをお勧めします。
家賃や携帯電話、保険料を滞納すると、後の在留手続に響きますか
家賃や携帯電話の料金そのものが直ちに在留資格を左右するわけではありません。もっとも、税や社会保険料の滞納は、在留期間の更新や在留資格の変更の審査において、不利に働き得ます。
在留資格の変更、在留期間の更新のガイドラインでは、素行が善良であること、公的義務を適正に履行していることが考慮要素として掲げられています。国民健康保険料や住民税の滞納が積み上がりますと、後に更新を申請する段階で、その理由の説明を求められることがあります。ご本人が拘束されている間は納付が滞りやすく、気づいたときには相当の額になっていることも少なくありません。
市区町村の窓口は、収入が途絶えた場合の分割納付や減免の相談に応じています。滞納を放置するのではなく、事情を説明して相談した記録を残しておくことが、後の手続で意味を持ちます。納付が難しい理由を説明できる状態と、何の連絡もないまま滞納が続いた状態とでは、評価が異なり得るからです。
携帯電話については、解約すると同じ番号が失われ、本人確認や各種の連絡、金融機関の認証に支障が生じることがあります。利用を一時的に止める場合でも、番号を維持する方法がないか、契約先にご確認ください。釈放後にご本人が社会復帰する際、電話番号が残っているかどうかは、想像以上に大きな違いを生みます。
子どもの学校はどうなりますか。学費や給食費の相談先は
保護者が身柄を拘束されている間も、お子さんの就学は続けることができます。保護者の在留資格の状況と、お子さんが学校に通えるかどうかは、別の問題としてお考えください。
公立の小中学校については、外国籍のお子さんであっても、保護者からの申出により就学の機会が確保される取扱いがされています。すでに在学している場合、保護者が事件に関わったことを理由に、学校が一方的に就学を打ち切るという扱いは想定されていません。
早めにご相談いただきたい窓口は3つあります。1つ目は学校です。担任の先生や管理職に事情を伝えておくことで、お子さんの様子の変化に周囲が気づきやすくなります。2つ目は市区町村の教育委員会です。給食費、教材費、修学旅行費等について、就学援助の制度を用意している自治体が多くあります。3つ目は福祉の窓口です。保護者が不在となる期間の生活について、子ども家庭支援や児童相談の窓口が相談に応じています。
お子さんに事実をどこまで伝えるかは、難しい問題です。学校に伝えることの利点と、伝え方によってはお子さんの学校生活に影響が及び得ることの双方を踏まえ、弁護人と相談しながら決めていただくことをお勧めいたします。
差入れと、押収された在留カードや旅券、携帯電話はどうなりますか
差入れの可否と方法は、身柄が置かれている施設ごとに取扱いが異なります。現金、衣類、書籍、信書等の差入れは可能ですが、点数や内容に制限があり、警察署の留置施設と拘置所とでは、受付時間も持込みが認められる物も異なります。事前に施設へ電話で確認するか、弁護人に確認を依頼してください。
差し入れた現金は領置金として管理され、ご本人が下着や日用品、書籍を購入する原資になります。中国本土のご家族が直接差し入れることは事実上難しいため、日本にいるご親族や弁護人を経由する方法をご検討ください。
押収された在留カード、旅券、携帯電話については、事件との関連性がなくなった段階で還付を受けられる場合があります。弁護人を通じて、還付の求めや、写しの交付を求めることを検討いたします。在留カードは常時携帯が義務付けられており、旅券は各種の手続で必要になります。手元にない状態が続きますと、釈放後の生活の立て直しが遅れます。
なお、身柄を拘束されている間も、在留期間の満了日は近づいてきます。拘束中に申請ができるかどうか、いつまでに何をすべきかは事案によって扱いが分かれますので、期間の満了が近い場合は、早い段階で弁護人にお伝えください。
弁護士費用と、勤務先への説明はどう考えればよいですか
弁護人には、ご自身やご家族が選任する私選弁護人と、資力が一定の基準に満たない場合に裁判所が付する国選弁護人があります。勾留された被疑者については国選弁護の制度が用意されており、資力申告書の提出が必要です。私選の場合はご家族が費用を負担されることが多いのですが、中国本土からの送金は、送金の上限や着金までの日数の問題があり、想定より時間を要します。逮捕の直後は時間に余裕がありませんので、弁護人の選任と送金の手配は並行してお進めください。
勤務先に伝えるかどうかは、慎重な判断を要します。伝えないまま無断欠勤が続けば、結果として解雇に至ることがあります。他方、伝えた結果として退職を求められることもあります。どちらが有利かを一般論で決めることはできませんので、事案の内容と復帰の見込みを踏まえ、弁護人とご相談ください。
ここで注意していただきたい点が2つあります。1つは、就労資格をお持ちの方が退職された場合、その在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていないときは、在留資格の取消しの対象となり得ることです(入管法22条の4第1項7号)。正当な理由があると認められるときは除かれる扱いですが、何もしないでよいという意味ではありません。もう1つは、所属機関に関する変更が生じたときは、14日以内に届け出る必要があることです(入管法19条の16)。ご本人が拘束されている間にこの期限が到来することもありますので、弁護人を通じた対応をご検討ください。
生活が止まらないこと自体が、その後の手続において意味を持ちます。住まいが維持されていること、家族の生活が成り立っていること、お子さんが学校に通い続けていることは、身元引受けの体制として、また情状として、さらに在留を認めるべき事情として、いずれの場面でも語ることのできる事実になるからです。
想定される刑事手続の流れ
逮捕されますと、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。この合計72時間は、原則として弁護人以外の方との面会ができません。ご家族がご本人の様子を知る手段は、弁護人の接見に限られるのが通常です。
勾留が決定されますと、原則10日間、延長により最大20日間、身柄を拘束したまま捜査が続きます。その期間の終わりに、検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴されますと公判が開かれ、判決に至ります。不起訴となれば、その時点で身柄は解放されます。
生活の問題も、この72時間から動き出すことが望ましいところです。勾留が決まってから慌てて家賃の相談を始めますと、支払期日を過ぎてしまうことが少なくありません。弁護人が選任されれば、ご本人の意思を確認したうえで、ご家族と手分けして進めることができます。
外国人事件特有のリスク(退去強制と在留資格)
外国人の刑事事件では、刑事手続の結論がそのまま在留の可否に直結します。ここは、日本人の事件とは決定的に異なるところです。
入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めています。4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法等の規定に違反して有罪の判決を受けた者を挙げており、薬物事犯は刑の重さを問わず該当し得ます。4号ニは、旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者を挙げ、旅券法違反は罰金でも該当し得ます。3号の4は、他の外国人に不法就労活動をさせた等の者、すなわち不法就労助長罪(入管法73条の2)に係るものです。4号ロは在留期間の経過後の残留、4号イは資格外活動(入管法19条1項に違反して専ら在留資格に属しない収入活動を行っていると明らかに認められる者)です。さらに4号の2は、別表第一の在留資格をお持ちの方に限り、一定の特定犯罪を挙げています。
これらに加えて、在留資格の取消し(入管法22条の4)、在留期間の更新の不許可(入管法21条3項、更新および変更のガイドラインにおける素行の善良性)のリスクが併存します。執行猶予が付いたから日本に居られる、という理解は正確ではありません。号ごとに要件が異なりますので、ご自身の在留資格と罪名に即した検討が必要です。
不起訴処分の重要性(不起訴目標主義)
当事務所は、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くのではなく、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護活動を組み立てます。
入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま、執行猶予なら大丈夫と説明することは、結果として在留資格の喪失につながり得るからです。刑事手続の段階から、退去強制手続を一体のものとして視野に入れ、必要な証拠と主張を先に組み立てておく。この姿勢が、ご本人とご家族の生活を守ることに直結いたします。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。取調べにおいて話すかどうか、何を話すかは、弁護人と方針を確認してから決めるべき事柄です。言葉の壁がある状況で作成された供述調書が、後の手続で長く影響します。
第二に、早期の弁護人選任です。逮捕直後は当番弁護士の制度を利用でき、その後、私選または国選の弁護人を選任します。72時間の使い方が、その後の見通しを左右します。
第三に、通訳の質です。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、接見から公判まで刑事手続の全般にわたってご利用いただけます。ニュアンスの取り違えが供述の意味を変えてしまうことは、実務上、決して珍しいことではありません。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行いません。ご家族との連絡、生活面の整理、勤務先や学校への説明の仕方についても、刑事弁護の一部としてご相談を承ります。
在留資格に関わる場面では、提携する行政書士と連携し、在留期間の更新、在留資格の変更、資格外活動許可等の手続をあわせてお支えいたします。刑事手続の結論が出てから入管手続を考えるのではなく、両者を同時に設計することが重要です。当事務所は入管手続についても実績を有しており、事例D-1、事例D-2はその一例です。
事例D-1は、観光目的で来日された相談者が日本人女性との間にお子さんを授かったものの、在留資格を失い、不法滞在で逮捕、起訴された事案です。婚姻と認知が未了であったため当局から一旦は不受理とされましたが、憲法的な観点から交渉を重ねて婚姻と認知を実現し、国籍国が発行する公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析したうえで、1回の申請で在留特別許可を獲得いたしました。家族の生活が現に営まれているという事実を、書面と証拠で丁寧に示した事案です。
事例B-2は、特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案です。徹底した取調べ対応、不当な取調べへの抗議、そして主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得いたしました。再逮捕が繰り返される事案では、ご家族の生活が長期にわたり不安定になります。身柄拘束が長引くほど、生活の維持と刑事弁護は不可分になります。
事例H-1は、虚偽の株主総会決議により代表取締役を解任されたとされた事案で、決議が存在しないことを主張し、東京地方裁判所、東京高等裁判所のいずれにおいても勝訴いたしました。刑事事件に限らず、ご本人の地位や財産の基盤に関わる紛争についても、当事務所は取り扱っております。生活の基盤をどう守るかという観点から、必要な手続を横断的にご提案いたします。
結語
ご家族が身柄を拘束された直後の数日間は、情報が乏しく、判断の材料もないまま、次々に期日が到来します。家賃の支払日、携帯電話の請求日、保険料の納付期限、学校への提出物。そのひとつひとつは小さく見えても、放置すれば積み重なり、ご本人が戻ってきたときに帰る場所そのものを失わせてしまいます。刑事手続の見通しを立てることと、生活を止めないこと。この2つを同時に進められるかどうかが、その後を大きく左右いたします。まずは弁護人にご連絡いただき、何を誰がいつまでに行うのかを整理するところから始めていただければ幸いです。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):致家属:本人被羁押期间的金钱问题。房租、手机、账户、子女学费如何不中断
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舟渡国際法律事務所
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東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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